・『彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行
・『ほんとに、彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行
・瀬島龍三はソ連のスパイ
・イラク日本人人質事件の「自己責任」論
・『私を通りすぎた政治家たち』佐々淳行
・『私を通りすぎたマドンナたち』佐々淳行
・『私を通りすぎたスパイたち』佐々淳行
・『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行
私が意見具申したのは、この事件は周囲の人が止めるのも振り切ってバクダッド陥落1周年というもっとも危険なときに、無謀にも現地入りをした本人たちの「自己責任」の問題であるということを前提に、
(1)善意のNGOを人質にするのは許しがたいとの日本政府の怒りの表明
(2)すぐ解放せよという要求
(3)自衛隊はイラク復興のためにサマワに派遣されたのであって、1発も撃っていない。老幼婦女子を殺しているという犯行グループによる非難は、まったく当たらないという、強い否定。
(4)したがって、撤退はしない
(5)だが日本政府は、人名尊重の見地からアメリカ特殊部隊の力を借りてでも人質は必ず救出する
という5点だった。
この意見具申の電話は、家内が後ろで聞いていた。また、私はすぐさま佐々事務所の石井事務局長にも内容を伝え、「官房長官はハト派だから、たぶんこのノー・バットの強硬な意見はボツだろうね」と話し合っていたところ、驚いたことに、この意見具申の12分後、福田官房長官が緊急記者会見を行い、順番まで私の言った通りに政府声明をテレビで発表したのである。
【『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(海竜社、2013年)以下同】
(1分30秒から福田官房長官)
佐々が伝えた相手は自民党国対委員長をしていた中川秀直だった。国家の危機管理という視点から見事なアドバイスが為されていると思う。だが佐々が提案した「自己責任」論は直ぐさま暴走を始め、人質となった3人に対して昂然とバッシングが行われた。まざまざと記憶が甦る。私も自己責任との言葉に乗せられた一人だ。テレビカメラ越しに見た彼らの印象がよくなかった。人質の一人(共産主義者であると自ら表明)が日本の空港で出迎えた両親と口論する様子まで報じられた(下の動画2分53秒から)。
イラク日本人人質事件(2004年)はまず4月に高遠菜穂子〈たかとお・なほこ〉ら3人が解放され、同月さらに2人が解放された。しかし10月に1人が殺害された。インターネット上には斬首動画が出回った。遺族は「息子は自己責任でイラクに入国しました。危険は覚悟の上での行動です」との声明を発表した。
後に高遠菜穂子がこう語っている。
ちょうど新潟県中越地震が起きたばかりのときだったんですけど、「新潟の被災者とか、日本にも困ってる人はいっぱいいるのに、それを放っておいて外国で何をやってる」ということだったみたいです。でも、最初は意味がわからなくて。「うーん、でも私の身体は一個しかないし、今はイラクのことで忙しいので、じゃあすいませんけどあなたが新潟に行ってもらえますか」とか、真面目だけどかなりとんちんかんな返事をしてました(笑)。
事件前から同じようなことは言われてたんだけど、私は「日本の中も外も同じ」みたいに思っていたから。事件後にものすごい剣幕でそう言われたときは、本当に意味がわからなかったです。
【高遠菜穂子さんに聞いた その2】
当初から「これがアメリカであれば彼らは英雄として迎えられたことだろう」と言われた。日本のマスコミは彼らを袋叩きにした。「解放された人質3人の帰国を待っていたのは温かな抱擁ではなく、国家や市民からの冷たい視線だった」(ニューヨーク・タイムズ)。
日本の共同体を維持してきた村意識にはリスクを嫌う性質がある。「出過ぎた真似をするな」というわけだ。善悪の問題ではなくして、こういうやり方で日本の秩序は保たれてきたのだろう。また「遠くの親戚より近くの他人」という俚諺(りげん)が人質となった彼らには不利に働く。日本人に深く根づく「内と外」意識は単純な理屈で引っくり返せるような代物ではない。
もちろん自己責任は自業自得と同義ではない。自国民の救出・保護に全力を尽くすのは国家の責務である。日本政府としては、何としても人質を救出するぞという確固たる決意があった。
国家の危機管理を行う立場からすれば、佐々が示した対応はほぼ完璧に近い。ただし自己責任論が予想以上の広がりを見せたことに苦い思いがあったのだろう。
今年の1月、イスラム国で二人の日本人が殺害された。そして、またぞろ自己責任論がまかり通った。日本の民族的遺伝子には元々モンロー主義的要素があるような気がする。「君子危うきに近寄らず」「触らぬ神に祟りなし」と。
佐々淳行や菅沼光弘の目の黒いうちに中央情報機関の設置を強く望む。特に最近、中国や韓国による歴史捏造は目に余るものがあり、日本にとって最大の危機といっても過言ではない。正確な情報できちんと反撃しておく必要がある。
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