2015-11-07

あなたならどうする?


 これは社会実験だがアメリカには文字通り「What Would You Do?(あなたならどうする?)」(ABC放送)という番組がある。




催涙スプレー(防犯スプレー)

マッカーシズムは正しかったのか?/『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア


『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫
『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫
『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男
・『ハリウッドとマッカーシズム』陸井三郎

 ・マッカーシズムは正しかったのか?

『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫
・『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ 「日米近現代史」から戦争と革命の20世紀を総括する』馬渕睦夫

 さらに重大なのは、驚くほど多くの数のアメリカ政府高官がソ連とつながっていたことが、「ヴェノナ」解読文によって判明したことだった。彼らは、そうと知りつつソ連情報機関と秘密の関係をもち、アメリカの国益をひどく損なう極秘情報をソ連に渡していたのである。アメリカ財務省におけるナンバー2の実力者で、連邦政府の中でも最も影響力のある官僚の一人であり、国際連合創立のときのアメリカ代表団にも参加していたハリー・デクスター・ホワイトが、どのようにすればアメリカの外交をねじまげられるかをKGBに助言していたこともわかってきた。
 また、フランクリン・ルーズベルトの信任厚い大統領補佐官だったラフリン・カリーは、ソ連のアメリカ人エージェントとして重要な地位にあったグレゴリー・シルバーマスターをFBIが調べ始めたとき、そのことをKGBに通報していた。このため、米政府内の大変有益なスパイ一団を指揮していたシルバーマスターは、捜査を逃れてスパイ活動を続けることができた。当時のアメリカの主要なインテリジェンス機関であったOSS(戦略事務局)で調査部長の地位についていたモーリス・ハルパリンは、数百ページものアメリカの秘密外交通信をKGBに渡していたのであった。
 アメリカ政府のすぐれた若手航空科学者だったウィリアム・パールは、アメリカのジェット・エンジンやジェット機についての極秘の設計試験結果をソ連に知らせており、彼の裏切りのおかげで、ソ連はジェット機開発でアメリカが技術的にリードしていた大きな格差を克服し、早期に追いつくことができた。朝鮮戦争で、米軍指導部は自分たちの空軍力なら戦闘空域で敵を制圧できると考えていたが、これは北朝鮮や共産中国の用いるソ連製航空機がアメリカのものにはとうてい太刀打ちできない、と考えていたからである。しかし、ソ連のミグ15ジェット戦闘機はアメリカのプロペラ機よりはるかに速く飛行できただけでなく、第一世代のアメリカのジェット機と比べても明らかに優っていたため、米空軍は大きな衝撃を受けた。その後、アメリカの最新ジェット機のF-86セイバーの開発を急ぐことででやっと、アメリカはミグ15の技術的能力に対抗することができた。アメリカ空軍はようやく優位を得たが、それはアメリカ航空機の設計よりも大部分、米軍パイロットの技量によるものであった。

【『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア:中西輝政監訳、山添博史〈やまぞえ・ひろし〉、佐々木太郎、金自成〈キム・ジャソン〉訳(PHP研究所、2010年/扶桑社、2019年)以下同】

 ほぼ学術書である。中西輝政は自著で「ヴェノナ文書によってマッカーシズムが正しかったことが証明された」と言い切っているが、私にその確信はない。ただ明らかなのは米国首脳部にまでKGB(カーゲーベー)の手が及んでいた事実である。はたまたルーズヴェルト本人が左翼であったという説もある(『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ 「日米近現代史」から戦争と革命の20世紀を総括する』馬渕睦夫、2015年)。

 日本の読者がこの本の中でとくに関心をもつのは、ソ連がアメリカの原爆開発「マンハッタン・プロジェクト」に多くのスパイを送り込んでいたため、アメリカの原爆開発の実態を非常によく知っていた、という部分だと思います。事実、1945年の7月にポツダムでトルーマン大統領はスターリンに会い、アメリカは非常に強力な新兵器をすぐに日本に対して使用することができる、と話しましたが、そのときスターリンには驚いた様子は全くありませんでした。おそらくスターリンは原爆について、トルーマンよりも早く、そしてより多くのことを知っていたのでしょう。(日本語版に寄せて)

 また、今日読み終えた『ひと目でわかる「GHQの日本人洗脳計画」の真実』(水間政憲、2015年)によれば、実は長崎に原爆は2発落とされていて、もう1発の不発弾はソ連に渡った可能性があるという。証拠として瀬島龍三元中佐が署名した「原子爆弾保管ノ件」という機密文書を掲載している(ロシア国防省中央公文書館所蔵)。

 冷戦前夜の第二次世界大戦は米ソのスパイが暗躍する時代であった。日本だとソ連の手先としてはリヒャルト・ゾルゲ尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉が知られる(いずれも死刑)。

 ひょっとすると帝国主義を葬ったのはコミンテルンの指示を受けた工作員の活躍によるところが大きいのかもしれない。彼らに下された使命は国家転覆を狙った破壊と混乱であった。

 マッカーシズムを否定的に篤かった書籍に陸井三郎著『ハリウッドとマッカーシズム』(1990年)がある。個人的に読み物としてはどちらもあまり評価できない。

 これだけだと「ヴェナノ文書」を理解することはできないと思われるので動画と関連書を紹介する。








憲法9条に埋葬された日本人の誇り/『國破れて マッカーサー』西鋭夫

台湾の教科書に載る日本人・八田與一/『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三


『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む』中村哲
『セデック・バレ』魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督
特集『KANO 1931海の向こうの甲子園』馬志翔(マー・ジーシアン)監督

 ・台湾の教科書に載る日本人・八田與一

『街道をゆく 40 台湾紀行』司馬遼太郎

 以来、八田與一〈はった・よいち〉の名前は、嘉南60万の農民の心に刻み込まれ、永遠に消えることはなかった。
 不毛の大地として、見捨てられていた広大な嘉南平原の隅々にまで灌漑用水が行き渡るのを見届けて、八田與一は思い出多い烏山頭の地を後にし、家族と共に台北へ去っていった。八田技師と共に工事に携わっていた人々は、作業服姿で大地に腰を下ろした八田技師の銅像を作り、起工地点に据えてその功績を称えた。
 素朴な嘉南の農民は、「嘉南大圳(かなんたいしゅう)の父」という畏敬の念に満ちた言葉を贈り、終生八田與一への恩を忘れないようにした。
 嘉南大圳の完成は、世界の土木界に驚嘆と賞賛の声を上げさせた。
 烏山頭(うさんとう)ダムは東洋では随一の湿式土壌堤であり、その規模において世界に例を見ない。このため、アメリカ合衆国の土木学会は、特に「八田ダム」と命名し学会誌上で世界に紹介した。八田與一の技術の勝利であり、日本の灌漑土木工事の優秀さを、世界に証明するのに十分な土木工事の一大金字塔であった。
 嘉南平原が絨毯(じゅうたん)を敷き詰めたような緑の大地に甦り、台湾最大の穀倉地帯と呼ばれるようになった頃、八田與一は勅任官技師になり「台湾に八田あり」と言われるようになる。やがて、戦雲が世界を覆い包んだ。昭和16年、台湾からも零戦が飛び立ち嘉南平原を軍歌が音をたてて通り過ぎて行った。昭和17年5月5日、フィリピンの綿作灌漑調査を、軍より命ぜられた八田與一は広島県宇品港で大洋丸に乗船し、日本を後にした。
 5月8日、五島列島の南を航行中、大洋丸が撃沈された。アメリカ海軍の潜水艦による魚雷攻撃であった。八田與一は、56歳の生涯を東シナ海で終えた。それから3年後、太平洋戦争は敗戦で幕を閉じた。

【『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三〈ふるかわ・かつみ〉(改訂版、2009年/青葉図書、1989年『台湾を愛した日本人 嘉南大圳の父八田与一の生涯』改題)以下同】

 古川勝三は教員である。文部省海外派遣教師として台湾の日本人学校に3年間勤務。その時初めて八田與一を知った。日本では全く無名の八田を世に知らしめたのが本書である。司馬遼太郎が称賛した。

 八田の仕事が偉大な壮挙であったのは言うまでもないことだが、台湾の人々の心をつかんだのは八田の振る舞いであった。大東亜戦争においても日本の軍人がアジアの人々の心をつかんだのは武士道もさることながら、やはり人種差別のない振る舞いが大きかったことだろう。


 古川は作家でないせいか、冒頭部分で手の内を全てさらす。八田の死は更なる悲劇を招いた。

 八田與一が青春を捧げた台湾は中華民国に返還され、日本人はことごとく台湾を去らねばならなくなった。
 愛する夫を戦争で奪われた外代樹(とよき)は今また夫と共に過ごした台湾を去らねばならぬ苦しみに打ちひしがれ、虚脱したからだを夫の終生の事業であった烏山頭ダムの放水口に踊らせて、45歳の生涯を閉じた。
 日本人が去り、日本人の銅像や墓が次々と壊されていく中で、嘉南の人々は御影石を買い求め、日本式の墓石を造り八田技師の銅像のすぐ後に建てた。昭和21年12月15日のことである。以来、嘉南の人々は八田與一の命日になると、烏山頭ダムから一斉に放水して、その功績を偲び嘉南の大地と農民を愛し続けた若き技師の「追悼式」を、毎年欠かすことなく行ってきた。


『セデック・バレ』そのものである。しかも烏山頭ダムが完成した1930年に霧社事件が起こっているのだ。古い時代と新しい時代の波がぶつかり合う時、過去の歴史は恐るべき様相で飛沫を散らす。外代樹夫人が入水(じゅすい)した9月1日は烏山頭ダムの着工記念日であった。

八田技師の妻、外代樹夫人の銅像除幕式/台湾・台南

「台湾を愛した日本人」は台湾で発行されていた日本人会報に連載。大きな反響があり後に書籍化される(ダムインタビュー 45 古川勝三さんに聞く「今こそ、公に尽くす人間が尊敬される国づくり=教育が求められている」)。八田の生きざまが古川の胸を響かせ、その余韻が多くの読者にまで伝わる。心を打つのはやはり心なのだ。



台湾人に神様レベルで感謝されてる日本人がいた

2015-11-06

古川勝三


 1冊読了。

 146冊目『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三〈ふるかわ・かつみ〉(改訂版、2009年/青葉図書、1989年『台湾を愛した日本人 嘉南大圳の父八田与一の生涯』改題)/書き忘れていた。8月に読了。今書評を書いているところ。「必読書」入り。

2015-11-05

星亮一、藤田紘一郎、土師守、久野譜也、藤原弘達、西鋭夫、他


 2冊挫折、6冊読了。

GHQ焚書図書開封 2 バターン、蘭印・仏印、米本土空襲計画』西尾幹二(徳間書店、2008年/徳間文庫カレッジ、2004年)/息の長い仕事のためスピード感に欠ける。1と比べると見劣りすると言わざるを得ない。

方法 1 自然の自然』エドガール・モラン:大津真作訳(叢書・ウニベルシタス、1984年)/ツイッターで薦められたのだがチンプンカンプン。ボードリヤールの数段上を行っている。

 140冊目『國破れてマッカーサー』西鋭夫〈にし・としお〉(中央公論社、1998年/中公文庫、2005年)/こんな凄い本を見落としていたとはね。西は「スタンフォード大学フーヴァー研究所教授」を名乗っているが、「Postdoctral Fellow」との記述もある。ポスドクか。アメリカで公開された極秘資料を元にマッカーサーの日本占領政策を見つめ直すドキュメント。教育行政についても詳しく触れている。やや物足りなかったのはヴェナノ文書について全く触れていないところ。本は文句なしで素晴らしいのだが、怪しげな商売に手を染めている。例えばこれ。「講演録」が書籍であると思っていたら、届いたのはDVDに見せかけたCD-ROMだった。収録されているのは音声のみ。しかも申し込んだ直後、サイトからダウンロードできるのと同じもの。つまり「送料手数料550円」は丸ごと利益になっているのだろう。もちろん更なる高額商品を購入させるべく、山ほどメールが送られてくる。で、致命的なことに話が下手だ。虚仮威しに近い大声を時折張り上げる。そこはかとなく新興宗教の香りが漂う。余命の短さを思えば、本を書くのが馬鹿らしくなってきたのかもね。

 141冊目『この日本をどうする 2 創価学会を斬る』藤原弘達〈ふじわら・ひろたつ〉(日新報道、1969年)/かつて創価学会が起こした言論出版妨害事件でターゲットにされたのが本書である。最後は自民党の田中角栄幹事長(当時)までもが圧力をかけてきた。出版妨害としては今尚これに過ぎる事件はないだろう。マンモス教団と化しつつあった創価学会を藤原は「民主主義の落ち穂拾い」と嘲る。批判本はどうしても小人物の印象を与えてしまう。ただし、昭和44年の時点で自公連立を予見したのはさすがというべきか。

 142冊目『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也〈くの・しんや〉(飛鳥新社、2014年)/良書。久野は筑波大学院教授でインナーマッスルとして知られる大腰筋(※画像)に初めて注目した人物。きっかけは高野進のMRI撮影であった。太腿の筋肉を撮影したところ大学の陸上選手と変わらぬ太さ。ついでにあちこち撮影したところ高野の大腰筋が異様に太いことがわかったという。イスさえあれば直ぐにできるトレーニングメニューも紹介。40歳以上の善男善女は必読のこと。

 143冊目『』土師守〈はせ・まもる〉(新潮社、1998年/新潮文庫、2002年)/山下京子著『彩花へ 「生きる力」をありがとう』が1997年だから、翌年に出たことになる。結果がわかっているだけに読み進むのが辛い。山下が母としての立場からメッセージを送ったのに対し、土師は父として厳しい見方を示す。私も少年法は改正して、犯罪によってはきちんと刑事罰を与える仕組みが必要であると考える。びっくりしたのだが犯人である少年Aの母親が何度か登場する。非常識な姿がスケッチされている。

 144冊目『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎〈ふじた・こういちろう〉(三五館、2012年)/傑作。これは必読書ですな。バイセクシュアルの一休禅師を肯定的に捉えるあたりが素晴らしい。タイトルそのまんまの内容である。生物にとって腸の歴史は古く、脳の歴史は浅いため「まだ脳が身体に馴染んでいない」とまで言い切る。セックスレスの風潮にも警鐘を鳴らす。あと、幼児の英才教育は子供をダメにするとも。早速、私は本日より糖質制限に挑戦している。もちろん腸のために。

 145冊目『偽りの明治維新 会津戊辰戦争の真実』星亮一〈ほし・りょういち〉(だいわ文庫、2008年)/微妙。視点がふらつくのが気になる。会津戊辰戦争に至るアウトラインはわかりやすい。「あとがき」の中途半端さが本書を雄弁に語っている。