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『国民の遺書 「泣かずにほめて下さい」靖國の言乃葉100選』小林よしのり責任編集
・ユニーク極まりない努力
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『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子
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『新編 知覧特別攻撃隊 写真・遺書・遺詠・日記・記録・名簿』高岡修編
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『今日われ生きてあり』神坂次郎
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『月光の夏』毛利恒之
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『神風』ベルナール・ミロー
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『高貴なる敗北 日本史の悲劇の英雄たち』アイヴァン・モリス
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日本の近代史を学ぶ
そして最後には、私は昼間の星を探しはじめた。これはなかなかむずかしいことであった。発明や発見は、現状を否定するところから生まれるといわれるが、これをやりとげるには、いろいろな段階を経なければならなかった。
子供のころ歌った童謡に、一番星見つけた、二番星見つけた、という歌詞があるが、私はまず日の暮れに、その一番星を1秒でも早く見つける練習、また、明け方には、最後まで消え残る星を追ってみた。そのうえ簡単な星座の勉強をして、昼間、頭の上にくる星の中でどの星が一番明るかを調べた。そして、毎日のように頭の真上の大空を見つめたものである。
大空のすみきった11月のある日の午後、私は飛行場の芝草の上にあお向けに寝て、大体見当をつけておいた一点を、長い時間見つづけていたことがある。寝たのは頭がぐらぐらしないようにするためだが、30分ほど青空の一点を見つづけても何も見えないので、あきらめて立ち上がろうとして両眼を横に動かした瞬間、白いケシ粒のようなものが、ちらっと見えたような気がした。おやっ、と思ってよく見ると、星があった。私は思わず「見えた!」と叫び声をあげた。
【『大空のサムライ』坂井三郎(講談社+α文庫、2001年/光人社NF文庫、2003年/講談社、1992年『坂井三郎 空戦記録』改題)】
弛まぬ努力によって坂井の視力は2.5となる。
マサイ族並みの視力である。まだ戦闘機にレーダーがない時代である。目の良さが生と死を分けた。坂井はただの一度も敵から先に発見されたことがないという。日中の星探しはアメリカに嫁いだ娘を通して孫も行っている。
坂井はユニークな発想で次々と新たな訓練を生み出す。トンボやハエを素手でつかむ練習、逆立ち15分、息を止める稽古2分30秒などなど。いずれも戦闘機技術に直結したものである。天才とは独創の異名か。
坂井三郎は毀誉褒貶(きよほうへん)の多い人である。本書にも若干の脚色があるようだ。それでも「米軍が恐れた男」である事実は動かない。サカイの名は敵にまで知られていた。戦後になって戦った相手と邂逅(かいこう)する場面が忘れ難い。緊張の面持ちで臨むも、一旦打ち解けてしまえばスポーツ選手のように互いの健闘を称(たた)え合う。空の男には乾(かわ)いた爽やかさがある。
幾多の戦闘をくぐり抜けてきた坂井もついに負傷する。大事に大事にしてきた眼までやられてしまう。坂井は飛行機を降りた。一度復活したがやはりダメだった。
経験した者にしかわからない戦場の生々しさが伝わってくる。歴史の現場は何という迫力に満ちていることか。
尚、講談社+α文庫は2分冊で光人社NF文庫は1冊となっている。続篇以降を読みたい人は光人社版がよかろう。