2016-02-25

中川右介


 1冊読了。

 23冊目『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』中川右介〈なかがわ・ゆうすけ〉(幻冬舎新書、2010年)/手に汗握りながら一気読み。時系列順で120人に及ぶ人々の証言を網羅する。「事件はリアルタイムで起こっている」ような迫力あり。四半世紀を経て日本人は敗戦を無自覚なままやり過ごした。三島由紀夫はその日本人に覚醒を促したのだが、眠りは更に深くなった。誰一人として三島の言葉を真剣に受け止めた者がいない。左翼に目を奪われて、GHQを忘れてしまったかのようだ。日本は魂まで占領されてしまったのだろう。

2016-02-24

中条省平、西尾幹二、他


 2冊挫折、2冊読了。

「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子〈たかはし・くにこ〉(ブルーバックス、2003年)/特定の食べ物や栄養が与える影響を過大に評価することをフードファディズムという。高橋が紹介した言葉である。「発掘!あるある大事典」の納豆ダイエットを覚えている人も多いことだろう。ま、捏造だったわけだが。私は常々「体験を根拠とする主張」を批判してきたが、本書に関しては逆に「体験のなさ」が科学的視点の無味乾燥を際立たせている。面白味のない正論といった印象を受けた。鋭さもなければ柔らかさもない。東洋医学を批判する西洋医学の視点と一緒だ。

主食をやめると健康になる 糖質制限食で体質が変わる!』江部康二〈えべ・こうじ〉(ダイヤモンド社、2011年)/江部は糖質制限の言い出しっぺ。高橋からすればフードファディズムとなろう。健康本に共通するのは活字の大きいスカスカ本という作り。悪い本ではないのだが、時間がないため中止。

 21冊目『三島由紀夫の死と私』西尾幹二(PHP研究所、2008年)/若き日に封印した私情を赤裸々に開陳する。それが西尾にとっては三島への誠実であったのだろう。「『死』から見た三島文学」と「不自由への情熱」を収録。三島事件に欠かせないテキストである。江藤淳批判については心情において同調せざるを得ない。

 22冊目『三島由紀夫が死んだ日 あの日何が終り 何が始まったのか』中条省平〈ちゅうじょう・しょうへい〉編・監修(実業之日本社、2005年)/憲法改正の政治的機運が高まる今、東亜百年戦争(ペリー来航から大東亜戦争敗戦まで)、戦後占領の実態、そして三島由紀夫の憤死を省みる必要がある。岸信介の日米安保改定でとどまっていてはダメだ。新左翼の敗退と三島の死が戦後にピリオドを打ったのである。市ヶ谷の自衛隊駐屯地で三島は憲法改正のために自衛隊の決起を促した。自衛隊員たちは野次と怒号をもって応えた。

2016-02-18

継母への溢れる感謝/『新編 知覧特別攻撃隊 写真・遺書・遺詠・日記・記録・名簿』高岡修編


『国民の遺書 「泣かずにほめて下さい」靖國の言乃葉100選』小林よしのり責任編集
『大空のサムライ』坂井三郎
『父、坂井三郎 「大空のサムライ」が娘に遺した生き方』坂井スマート道子

 ・継母への溢れる感謝

『今日われ生きてあり』神坂次郎
『月光の夏』毛利恒之
『神風』ベルナール・ミロー
『高貴なる敗北 日本史の悲劇の英雄たち』アイヴァン・モリス

日本の近代史を学ぶ

少尉 第77振武隊 昭和20年5月4日出撃戦死 宮城県 18歳 相花信夫

 遺書
 母を慕いて
 母上お元気ですか
 永い間本当に有難うございました
 我六歳の時より育て下されし母
 継母とは言え世の此の種の女にある如き
 不祥事は一度たりとてなく
 慈しみ育て下されし母
 有難い母 尊い母

 俺は幸福だった
 遂に最後迄「お母さん」と呼ばざりし俺
 幾度か思い切って呼ばんとしたが
 何と意思薄弱な俺だったろう
 母上お許し下さい
 さぞ淋しかったでしょう
 今こそ大声で呼ばして頂きます
 お母さん お母さん お母さんと
(注:ノート2頁に楷書でペン書き)

【『新編 知覧特別攻撃隊 写真・遺書・遺詠・日記・記録・名簿』高岡修編(ジャプラン、2010年/村永薫編、ジャプラン、1991年『知覧特別攻撃隊 写真・遺書・日記・手紙・記録・名簿』改題)】

 検索したのだが高岡修編と村永薫編の違いが判明せず。副題も微妙に異なる。

 沖縄戦では知覧(ちらん/鹿児島県)と都城(みやこのじょう/宮崎県)から特攻隊は飛び立った。

 特別攻撃隊といえば誰もが真っ先に神風(「しんぷう」が正式名称)特攻隊を思い浮かべることだろう。250kg爆弾を搭載し敵艦に体当たりを決行する攻撃を採用したのは大西瀧治郎海軍〈おおにし・たきじろう〉中将であった。物資が乏しくなる中で阿吽(あうん)の呼吸で生まれた作戦といってよい。決して上から一方的に命じたものではない。「特攻を行えば天皇陛下も戦争を止めろと仰るだろう。この犠牲の歴史が日本を再興するだろう」と大西は語った。祖国を守るための犠牲であったことは疑う余地もない。大西の壮絶な最期については以下のページが詳しい。

【号泣必至】特攻の生みの親、大西瀧治郎海軍中将の凄絶なる生涯。

 DVDのリンクが切れているが、まだ販売されている→『あゝ決戦航空隊



 しっかりとした筆跡で継母(けいぼ)への「残した思い」を記している。大きく伸びたお母さんの「ん」の字に涙を禁じ得ない。私は彼らの遺言に対して何かを書こうとする気が起こらない。ただ、「彼らが守ろうとした」祖国で生きることに尽きせぬ感謝を覚える。そして兵器も兵士もなくなった祖国が、国家の未来を担う十代の少年たちに旧式の戦闘機で死ねと命じた事実は忘れまい。

 各人が自分の眼で見て、読んで、彼らの思いに触れて判断すればいいだろう。ただしイデオロギーに基づく非難・政治利用はやめるべきだ。本当に日本が嫌いな共産主義者であれば、さっさと中国かロシアに移住すべきだろう。














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