4冊挫折、3冊読了。
『評伝 若泉敬』森田吉彦(文春新書、2011年)/若泉敬の死について何か書いてあるのかと思ったが何もなかった。
『21世紀の貨幣論』フェリックス・マーティン:遠藤真美訳(東洋経済新報社、2014年)/遠藤の訳が悪い。「真逆」が何度も出てきたのでやめた。
近頃、「滑舌」なる言葉を聞くようになったが、巧みな弄舌を思わせて薄気味悪い。きちんと「歯切れ」と表現すべきだろう。私が絶対使わない言葉に「真逆」もあるが、これは本来「まさか」と読む。逆や正反対で間に合うし、「真」を付与する意味が理解できない。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2013年1月6日
『3.11 慟哭の記録 71人が体感した大津波・原発・巨大地震』金菱清〈かねびし・きよし〉編、東北学院大学震災の記録プロジェクト(新曜社、2012年)/71人の被災者による手記である。一切手は加えられていない。金菱によれば「エスノグラフィー(民族誌)の応用」だという。記録に意味はあるだろう。学術的な価値も認められよう。ただし読むに堪(た)えない代物である。27ページで挫けた。「仮土葬という言葉に私は怒りを覚えた」(25ページ)とある。このような極めて個人的で瑣末な記述は読み物たり得ない。少なからず何らかの気づきや発見は見受けられるものの、被害の大きさを思えばあまりにも弱いと思う。結局、我々は同じことを何度も繰り返す生き方しかできないのだろう。輪廻からの脱却という視点が欲しかった。
『西欧近代を問い直す』佐伯啓思〈さえき・けいし〉(PHP文庫、2014年)/ジェームズ・リカーズ著『通貨戦争』の複雑性科学にまつわる文章を目にした後では読めた代物ではない。文学というものはスピードを欠いているのだろうか。ま、大学の講義を編んだものなので仕方がないが、丁寧に哲学史をフォローすることで、批判が弱まっているように感じられる。個人的には全く異なる価値観で頭から否定すべきだと思う。西欧の論理に乗っかった批判という印象を受けた。
37冊目『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)/一度挫けている。やはりこの人は桁外れに頭がよい。第10章の複雑性科学の件(くだり)だけでも必読である。その辺の科学本より説明が優れている。本書の続きは『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』で披露されている。FRBは既にドルを手放すつもりでいるようだ。あまりにも印刷しすぎたということなのだろう。基軸通過にあぐらをかいた借金経済がいつまでも回るわけがない。ドルが沈んで人民元が台頭する時、どのような経済的混乱が生じるのか? また人類はそれをコントロールし得るのか? 数年間のうちに結果が判明することだろう。波乱は今年の総選挙以降に始まる。
38冊目『原訳「法句経(ダンマパダ)」一日一話』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2003年)/三読目。書写も終了。
39冊目『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡伸一(木楽舎、2009年)/相変わらず清新な文章である。分子生物学的な動的平衡は仏教で説かれる五蘊(ごうん)の色蘊(しきうん)を見事に説明していると思う。五蘊とは五つの集まりを意味する言葉であるが、存在論の文脈で語れば五蘊皆空(ごうんかいくう)である。その意味で動的平衡という言葉は空(くう)の本質を衝(つ)いている。尚、ももクロに「GOUNN」という歌があるようだが、歌詞を見る限りでは噴飯物の内容となっている(笑)。