2016-08-12

弁護士を信用するな/『証拠調査士は見た! すぐ隣にいる悪辣非道な面々』平塚俊樹


『桶川ストーカー殺人事件 遺言』清水潔

 ・弁護士を信用するな

『実子誘拐ビジネスの闇』池田良子

必読書リスト

 また、これも重要なことだが、弁護士をすぐに信用しないことだ。いまだに日本人はこの職業名に弱いようだが、クズみたいな弁護士が世の中には山ほどいることを知っておいてほしい。
 なにしろ、こやつらの悪さは言語に絶する。私も悪いやつはたくさん見てきたが、この地球上で一番悪いのは、ヤクザでもない、詐欺師でもない、間違いなく(悪辣な)弁護士である。これは仕事でつきあいのある警察幹部や探偵、他の弁護士などとも一致した意見だ。これほど人の心をもてあそんで平気でいられる生き物を私は他に知らない。
 しかも、その目的がただの金だというのだから、その愚劣さは筆舌につくしがたい。やつらの悪さと比較したら暴力団などはまだ善良……なんていうとまたクレームがきそうだが、そう言いたいほど、鬼畜生にも劣る外道だ。断じて許すことはできない。

【『証拠調査士は見た! すぐ隣にいる悪辣非道な面々』平塚俊樹(宝島社、2012年)】

 証拠調査士(エビデンサー)とは「警察や弁護士が手を出せないトラブルの解決に向けて調査をし、証拠を集め、最終的に解決を図る仕事」とのこと。海外ではメジャーな仕事らしい。警察は事件が起こった後でしか動けない。弁護士は正義を証明するわけではない。法律に適っているか違(たが)っているかを争うだけの仕事である。

 その弁護士に悪い連中が蔓延(はびこ)っているという。具体的に触れているのは所謂(いわゆる)「別れさせ屋」という仕事で、会社を経営している資産家の夫とその妻がターゲットである。手口としては会社の乗っ取り・カネ・別居状態で莫大な養育費を請求するなど。で、妻に対してイケメンの弁護士・コンサルタント・医師・ベンチャー企業社長を紹介し肉体関係を持たせる。籠絡(ろうらく)された奥方は引くに引けなくなるという寸法だ。紹介した男は性交渉だけが目的のヤリチン野郎だ。

 弁護士は既に需給関係が逆転し無職弁護士が増加している。法科大学院制度も失敗した。仕事のない弁護士が悪知恵を働かせる構図はいかにもあり得る。法に精通しているがゆえに彼らの悪徳がやくざを凌駕するのも当然だろう。

 本書では証拠調査士が見てきた数々の驚くべき事件が紹介されている。現代社会の危険を知るためにも広く読まれるべき一冊である。



売春に罰則があるのは管理売春のみ/『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』野崎幸助

2016-08-07

「胸に痛みのない心筋梗塞」がある/『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし


『心臓は語る』南淵明宏

 ・「胸に痛みのない心筋梗塞」がある

『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』吉田たかよし

必読書リスト その一

【健康で長生きするための秘訣は、安静にしているときにはしっかり心拍数を下げて、心臓と血管に無理をさせないことです。】そのためにとっておきの方法が、「心臓呼吸法」です。心臓のブレーキである迷走神経は、息を吐いているときに活発に働き、心拍数をより強力に下げてくれます。心臓呼吸法はこうした効果を利用して、息をゆっくり長く吐くことによって心拍数を低く保つというものです。【目安としては、10秒間ほどかけて息を吐くのがおすすめです。】
 本当に心拍数が下がっているかどうか、脈を取りながら息を吐いてみるといいでしょう。

【『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし(角川SSC新書、2009年)以下同】

 知っているようで知らないのが自分である。私が知る自分とは鏡に映った顔や心の反応といった表面に限られる。自分の後ろ姿は見たことがないし、心の奥底に何が潜んでいるかは案外わからぬものだ。時折、腕を横に振ったり、ガニ股で走っている人を見掛けることがある。自分の胸元や足元すら見えていないのだろう。まして体の内側ともなれば、とんと見当がつかない。体を自覚するのは異変を感じた時である。

 私は三十の頃から酒を呑み始め、気がつくと中年太りになっていた。塵も積もれば山となり、不摂生が積もればデブになる。健康に留意するようになったのは最近のことだ。

 知ることは備えることである。体のメカニズムを知れば自ずと生活習慣も変わる。吉田たかよしは東大で量子化学を専攻し、東大大学院で分子細胞生物学を学び、NHKアナウンサーとなる。その後NHKを退職し、北里大学医学部を卒業。加藤紘一元自民党幹事長の公設第一秘書を経て、現在は開業医をしながら東京理科大学客員教授も務める。医学と科学に関してはポスト池上彰になるかもね。中高年は本書を座右に置くべし。

 実際にやってみると直ぐわかるが、息を長く吐くと心拍数が遅くなる。哺乳類の一生は心拍数20億回で共通している(『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』本川達雄、1992年)。ということは、ゆっくりと呼吸をすれば長生きできる計算になる。また、「心臓は“浪”を通じて体中にメッセージを伝えている可能性もある」(『心臓は語る』南淵明宏、2003年)から、ゆっくりと落ち着いたリズムは好ましいと思う。

 これほど、痛みに特徴がある心筋梗塞ですが、大きな例外があります。【心筋梗塞にかかっても4人に1人は胸の痛みがないのです。特に75歳以上の高齢者の場合は、4人に3人が胸に痛みを感じません。】そのため本人は心筋梗塞だと気づかず、手遅れとなって死亡してしまうケースも少なくないのです。
 このような場合に備えて、「胸が痛まない心筋梗塞」に関する知識をぜひとも覚えておいてください。【ポイントは、胸以外の場所が痛むこと。特に、左肩が痛みます。また、左腕、アゴ、それに奥歯が痛いということもあります。】
 心筋梗塞なのに、心臓ではない部分が痛くなるのは不思議に思われるでしょうが、これには理由があります。一言で言えば、脳がだまされるのです。心臓の痛みを伝える神経は、脊髄(せきずい)に入って脳につながっていきますが、この脊髄に入る場所が肩の痛みを伝える神経と近いため、脳は心臓の痛みを肩の痛みと勘違いすることがあるのです。神経が関連している痛みだから、関連痛といいます。

 あな恐ろしや。無知による死といってよい。肉体の痛みですら誤って伝わることがあるのだから、心の痛みはもっと誤謬(ごびゅう)にまみれていることだろう。大病を患(わずら)えば「なぜ私が?」と懊悩する。病気という事実に対して、我々は別の物語を付け加えてしまう。これをブッダは「第二の矢」と名づけた(『ブッダ神々との対話 サンユッタ・ニカーヤI』中村元訳、1986年)。

 体が発するメッセージを正しく受け取るために知っておくべきことは多い。



・・鼻うがい/『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修

嘘で滅びゆくアメリカ/『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
・『プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯

 ・嘘で滅びゆくアメリカ

菅沼光弘

〈「ブッシュ大統領は世界の脅威2位 英紙の世論調査
[ロンドン=本間圭一]ブッシュ米大統領が、北朝鮮の金正日総書記やイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界平和の脅威だ――。
 3日付の英紙ガーディアンは、世界の指導者で誰が平和への脅威になっているかに関して聞いた世論調査でこうした結果が出たと1面トップで報じた。
 調査は、英国、カナダ、イスラエル、メキシコの4か国でそれぞれ約1000人を対象に世論調査機関が実施した。
 英国民を対象とした調査によると、最大の脅威とされたのは国際テロ組織アル・カーイダ指導者、ウサマ・ビンラーディンで87%。これに続いてブッシュ大統領が75%で2位につけ、金総書記69%、アフマディネジャド大統領62%を上回った。ビンラーディンは他の3国でもトップとなった。〉(読売新聞2006年11月4日)

「イラク戦争の開戦理由は全部大ウソ」であることを証明した、アメリカ上院報告書は、2006年9月に出されています。そして、2006年11月の世論調査がこれ。
 イギリス、カナダ、イスラエル、メキシコ、つまり親米国家で、75%が「ブッシュは平和の脅威だ!」と認識していた。
 その他の国々では、もっとひどかったことでしょう。
 実際、ブッシュが、「ウソの理由」で、イラク戦争をはじめたことで、アメリカの権威は失墜しました。いえ、「ウソがバレたことで」というべきですね。

【『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2014年)以下同】

 新聞記事冒頭の【「】が閉じていないが原文通りである。記事内のゴシック表記についても脚註がない。そして相変わらず改行が多い。文章の問題はコミュニケーション能力の問題でもある。膨大な余白の量を思えば価格は1500円以下が望ましいと思う。ネット文体で片づけるわけにはいかない。

 ブッシュ大統領やチェイニー副大統領が「イラクは大量破壊兵器を保有している」と繰り返しメディアで訴え、アメリカはイラク攻撃(2003年)に踏み切った。小泉首相が真っ先に手を上げ、「アメリカ支持」を表明したことも記憶に新しい。だがそれは嘘だった。

 イラク戦争の真の目的はドル基軸通貨体制を守るためで、フセイン大統領が始めた石油のユーロ決済を阻止することにあった。本書で初めて知ったのだが、プーチン大統領はロシア産資源の決済通貨をドルからルーブルに変えたという。ジョージ・ソロスの財団がNPO法人を通してカラー革命を支援する理由もこのあたりにあるのだろう。外交の舞台裏で行われている「小さな戦争」を日本人は知らなさすぎる。

 みなさん、以下の事実をご存知でしょうか?

(1)イランは核兵器を開発する意向を一度も示したことがない。
(2)アメリカも数年前まで、イランには「核兵器を開発する意図がない」ことを認めていた
(3)核兵器開発が「戦争」の理由であるなら、真っ先に攻撃されるべきはイランではない。

 イランのアフマディネジャド大統領を最も危険視した人物に佐藤優がいる。ラジオ番組での解説を聴いて、「やはりイスラエルの代弁者か」と落胆した覚えがある。日本という米英情報ピラミッドの中で犬のように振る舞う学者や専門家だけがテレビ出演を許される。民主政が成熟しないのは、新聞・テレビが多様な意見を伝えないことが大きい。

 少しでも世界情勢を知っている人であれば、以下の二つの「絶対的定説」をご存知でしょう?

(1)アメリカがシリア攻撃を検討したのは、アサド大統領の軍が、「化学兵器を使ったから」である。
(2)アサド大統領は、「独裁者で悪」である。反アサド派は、「民主主義社で善」である。

 どうでしょう?
 ほとんどすべての人が、「そのとおりじゃないか!」と思っていることでしょう。
 しかし、この二つの「ウソ」が暴露された。
 少なくとも、「反アサド派」に関する「大ウソ」が世界に明らかにされた。
 それで、アメリカはシリア攻撃できなくなったのです。

 その後、「シリア反体制派がサリンガスを使用した可能性がある」と国連調査委員会が指摘した。更に反アサド派が殺害した政府側軍人の内蔵を食べる映像を公表した。

18禁:動画

 プーチン大統領はアサド政権を支持する。そして反アサド派はイスラム国(ISIS)となって今日に至るまで世界各地でテロを実行している。

 嘘で滅びゆくアメリカを日本は他山の石とすることができるだろうか? 難しいと言わざるを得ない。安全保障に関する情報をアメリカに依存している以上、アメリカが日本をコントロールするのは容易だ。まずは愛国心が否定されない程度の「普通の国家」になることが求められよう。

日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
北野 幸伯
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2016-08-06

日英同盟を軽んじて日本は孤立/『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯

 ・日英同盟を軽んじて日本は孤立

『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯

菅沼光弘

 第一次世界大戦が始まる時、日本とイギリスは同盟国、イギリスとアメリカは同盟国ではありません。
 つまり、日本とイギリスのほうが、米英よりも近い関係にあった。
 しかし、第一次世界大戦の態度の違いにより、日英関係は冷え込み、米英は「もっとも重要な同盟国」になってしまいます。
「味方が苦しんでいるのを見捨てた」日本の「武士」らしからぬ行動は、すぐに悪い結果となって現れてきました。
 米英は、日本を強く警戒するようになり、以後「日本の力を削ぐ」ことが重要な目標になっていきます。
【1921年、日英同盟破棄が決定】されました。
 1922年に締結された「ワシントン海軍軍縮条約」で、日本の戦艦保有は、米英の6割と定められました。
 日本は7割を主張しましたが、米英は一体化して、これを拒否しています。
【1923年、日英同盟が失効。】
 このように、【日本の孤立は、第一次世界大戦時、日英同盟を軽んじたところから始まった】のです。

【『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2013年)】

 改行まみれである(笑)。女子中学生の日記みたいだ。ロシアで失脚したプーチンが日本に柔道留学する。日本の無能な政治家がプーチンにアドバイスを求める。つまりプーチンであればどのような日本の舵取りをするか、とのテーマで国家としての自立を示す内容となっている。

 ヨーロッパ列強の中で「栄光ある孤立」を貫いてきた大英帝国が翳(かげ)りを帯びた。日英同盟は大英帝国の覇権が弱まったことを意味した。

 同盟の直接的なきっかけとなったのは義和団の乱(1900年)であり、柴五郎とジョージ・アーネスト・モリソンの邂逅(かいこう)が両国を結ぶに至った(『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人、『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス瑛子)。そしてモリソンは日本とロシアを戦争にまで誘導する(『日露戦争を演出した男 モリソン』ウッドハウス瑛子)。

 日英同盟破棄には伏線があった。第一次世界大戦後にパリ講和会議で日本による人種的差別撤廃提案が否決されたことである(1919年)。

白人による人種差別/『国民の歴史』西尾幹二

 19世紀末から日本が歩んだ半世紀を振り返ってみよう。

(1868年 明治元年
 1894-95年 日清戦争
 1896年- 欧米豪で黄禍論が台頭  1900年 義和団の乱
 1902年 第一次日英同盟
 1904-05 日露戦争
 1905年 第二次日英同盟
 1911年 第三次日英同盟
 1921-22年 ワシントン海軍軍縮条約  1921年 四カ国条約  1931年 満州事変
 1933年 日本が国際連盟を脱退
 1937年 支那事変
 1941-45年 太平洋戦争(日本は支那事変を含めて大東亜戦争と称した)

 武士が刀を置き、チョンマゲを落として(散髪脱刀令 明治4年/1871年)からわずか23年で戦争に突入した。日本の近代化は文字通り戦争の歴史であった。

 幕末の知識人は阿片戦争(1840-42年)に衝撃を受けた。幕府は外国船に対して宥和政策を執らざるを得なくなった。そこに黒船が来航(1853年)する。迫りくる帝国主義に対する国家改造が明治維新であった。日本が遅れて帝国主義の波に乗ろうとした。だが当時の世界はそれを許さなかった。

 戦後の日本は安全保障を米軍に肩代わりさせて、まんまと経済発展を遂げた。辛うじて国体は護持したものの国家観を見失った。GHQの占領期間が終わっても尚、自国の歴史を教えることがなかった。日教組の教員は堂々と国旗掲揚を非難し、君が代斉唱を拒んだ。義務教育では戦前を暗黒史として教えた。マルクス史観を貫く進歩というテーマのために古い時代は悲惨と位置づけられた。


 日本の領土問題は北方領土竹島尖閣諸島の三つである。GHQが意図的に島嶼(とうしょ)部の扱いを曖昧にして混乱要因を残したという説もある。そして中国・ロシアが領空・領海を日常的に侵犯している。こうした状況にありながら平和憲法にしがみつくのは一種の教条主義であろう。日本の安全を保障してきたのは憲法第9条ではなくアメリカの核の傘であった。理想を見つめるあまり脅威を無視できる人々が多いことに暗澹(あんたん)たる思いがする。彼らにとってはチベットやパレスチナは他人事なのだろう。

 1990年代にようやく自虐史観を乗り越える動きが始まり、東日本大震災を通して尊皇の気風が回復しつつある。

 しかし、被災地で、また避難先で、今日もなお多くの人が苦難の生活を続けています。特に、年々高齢化していく被災者を始めとし、私どもの関心の届かぬ所で、いまだ人知れず苦しんでいる人も多くいるのではないかと心に掛かります。
 困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく、一日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います。

東日本大震災5年 追悼式の天皇陛下お言葉全文 2016年3月11日

 このお言葉を政治家は真剣に受け止めているだろうか? 右も左も関係ない。幕末にあって攘夷派も開国派も尊皇という一点は共通していた。日本が世界最古の国(【ギネス認定】日本は世界最古の国)たり得たのは天皇陛下の存在があったからだ。天皇という国家の軸を失えば「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(「果たし得ていない約束」三島由紀夫/サンケイ新聞 昭和45年7月7日付夕刊)という三島の予言が現実のものとなる。

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2016-08-03

ジョン・D・バロウ、他


 4冊挫折、1冊読了。

ブッダの脳 心と脳を変え人生を変える実践的瞑想の科学』リック・ハンソン、リチャード・メンディウス:菅靖彦訳(草思社、2011年)/狙いはいいのだが力及ばずといったところ。半分ほど読んだが自我を肯定しているため心理学レベルの療法にとどまっている。それでも新しい表現があって参考にはなる。

がんが自然に治る生き方 余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』ケリー・ターナー:長田美穂訳(プレジデント社、2014年)/キレとコクを欠く。悪い本ではない。

千日の瑠璃 究極版(上)』丸山健二(求龍堂、2014年)/厳密に比較したわけではないのだが文章が長くなっているように感じた。「究極版」との尊大なタイトルの割には冗長さしか感じない。しかも旧版はウェブ上で公開されており、わざわざ改行を増やして2000ページにした意味が不明だ。巻末に加えられた詩的な文章もかつての丸山と比べると澱みがある。求龍堂からは古い作品が陸続と増刷され、眞人堂では「丸山健二文学賞」なるものまでできた。古いファンからすれば、やや不思議なスポンサーシップである。丸山が強気なのはこうしたパトロンの存在もあるのだろう。個人的に『千日の瑠璃』は好きな作品なのだが、多くのファンからは見限られた。究極版とはいうものの文章に誤りがある。

科学vs.キリスト教 世界史の転換』岡崎勝世〈おかざき・かつよ〉(講談社現代新書、2013年)/三部作の最終章。読み物としての山場に欠ける。機会があれば読み直すつもりである。

 114冊目『宇宙が始まるとき』ジョン・D・バロウ:松田卓也訳(草思社、1996年)/「ジョン・バロウ」と表記されているが多分『無の本 ゼロ、真空、宇宙の起源』と同じ著者だろう。“なお、訳書の名義は「ジョン・D・バロウ」、「ジョン・バロウ」、「J.D.バロー」など、出版社ごとに異なる”(Wikipedia)。出だしは易しいのだが、あっという間に難解な領域に踏み込む。その手並みが鮮やか。松田の訳もこなれていておすすめ。時間論と人間原理についての言及もある。