2016-11-27
2016-11-25
目撃された人々 70
夏の出来事である。集合住宅の玄関に七夕の笹竹が飾られていた。何気なく短冊に目をやると、金釘流の文字で「なるべくおかいものにいきます。たまにはおちゃとかもしたいです」と書いてあった。胸に痛みが走った。リハビリ中のお年寄りなのだろう。やっとの思いで綴った筆跡に違いない。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年11月24日
体が不自由になっても季節を愛(め)で寿(ことほ)ぐ姿勢に私は感じ入った。
— 小野不一 (@fuitsuono) 2016年11月24日
2016-11-19
2016-11-10
アリステア・マクリーン、他
3冊挫折、1冊読了。
『ポジティブ・チェンジ 主体性と組織力を高めるAI』ダイアナ・ホイットニー:株式会社ヒューマンバリュー訳(ヒューマンバリュー、2006年)/『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』で紹介されている書籍はどれも最後まで読むことができず。目新しい言葉がやたらと多いことと、長い前置きがその原因だ。マルチ商法のバイブルとしか思えない。
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 新天皇論』小林よしのり(小学館、2010年)/確認のために読んだ。案の定予想通りであった。amazonレビューの多くが正鵠を射ている。小林の根強いファンが手厳しい評価を下す。連載ものであることを踏まえたとしても同じ内容の繰り返しが多すぎ、それが言いわけじみた姿に映る。小林の言い分には一定の説得力があり、私には覆すだけの知識はない。Y遺伝子についてもきちんとした反論が述べられている。にもかかわらず本書の紙価を貶めているのは、小林の放つ個人攻撃が口汚く、終始自分を正当化しているためだ。読み手は信念を押し付けられる格好となる。その牽強付会ぶりに小林が声高らかに主張する女系天皇の弱さが透けて見える。本書の前に小林自身の心の揺れを丁寧に描いておけば、評価もまた変わったことだろう。
『さよならパヨク』千葉麗子(青林堂、2016年)/ネット文体はよしとしても、「パヨク」などの言葉の定義がなく雰囲気だけで読み進めることは不可能である。ニコニコ大百科(仮)程度の脚注があって然るべきだろう。著者はあっけらかんと不倫を綴り、現在は右翼民族派の活動をしているという。両義的な意味で「腰が軽い」と言わざるを得ない。
161冊目『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン:村上博基〈むらかみ・ひろき〉訳(ハヤカワ文庫、1972年)/再読。33年振りか。訳文がゴリゴリの文体で校正ミスも目立つ。何度も挫けそうになった。読み終えるのに10日間ほど要したと思う。冒険小説の類いは一般的に娯楽と考えられているが、若い私は本書と『鷲は舞い降りた』を読んで生き方が変わった。極限状況を生きる態度を学んだといってよい。ユリシーズ号は架空の軽巡洋艦であるが、第二次世界大戦における北極海の死闘を描く。極寒を感じるためにもやはり冬に読むのが望ましい。ヴァレリー艦長を中心とする海の男たちの勇姿に涙を禁じ得ない。戦争の不毛や軍隊内の官僚主義もきちんと描かれている。登場人物が把握しにくく、上下関係もわかりにくいのが難点だが、何度も繰り返して読むだけの価値はある。「必読書」から何かを外した際に本書を付け加えておいた。尚、今知ったのだが村上博基が今年の4月に逝去していた。哀悼の意を表する。
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