・『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
・『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
・『21世紀型大恐慌 「アメリカ型経済システム」が変わるとき』山崎養世
・『超帝国主義国家アメリカの内幕』マイケル・ハドソン
・『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫
・『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ
・ポスト・ドル体制の青写真
・『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ
・『ペトロダラー戦争 イラク戦争の秘密、そしてドルとエネルギーの未来』ウィリアム・R・クラーク
・必読書リスト その二
本書はドルの終焉(しゅうえん)について論じる本だ。その延長線上で、国際通貨制度の崩壊の可能性についても論じることになる。なぜなら、ドルに対する信認が失われた場合、他のどの通貨も世界の準備通貨というドルの地位を引き継ぐ用意はできていないからだ。ドルは基軸である。ドルと国際通貨制度は表裏一体なので、ドルが崩壊したら、それとともに国際通貨制度全体が崩壊する。このダブル崩壊は恐ろしい可能性だが、これから説明していく理由により、ますます避けがたくなっているように見える。
【『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2015年)以下同】
SDR(特別引出権)の意味を初めて理解できた。「FRBがドルを捨てる方向に動いている」というのが真意である。SDRは事実上、世界通貨であり、ゆくゆくはSDR建てでアメリカの大型株が発行される可能性を示唆する。ゴールドの価値は不変であり、価格の上下はドルの価値が動いているに過ぎない、との指摘に目から鱗が落ちる。アベノミクスについても触れており、アメリカ経済の今後を日本の金融政策(金融緩和)が占うという。基本的には緩和マネーが資産バブルを形成し、首が回らなくなるという見立てである。ドル基軸通貨体制崩壊後に関しては三つのシナリオが描かれているが、ゴールドを裏付けとするSDR基軸通貨が実現するような気がする。デフレという化け物に紙幣が敗れる日はそう遠くない。
ドルに対して使われる【崩壊】という言葉が世界の終わりのように響くとき、それは100パーセント実際的な意味を持っている。崩壊とは、簡単に言うと、ドルの未来の購買力に対して市民や中央銀行が信認を失うということだ。その結果として、ドルを持っている者たちは、通常より速いペースで支出したり実物資産を購入したりすることによってドルを手放すことになる。この急激な行動変化は、当初は金利の上昇やインフレ率の上昇、それに資本形成の崩壊を引き起こす、最終的な結果は(1930年代のように)デフレのこともあれば、(1970年代のように)インフレのこともあり、その両方になることもある。
米10年債の金利がいよいよ3.0%を超えてきた。実際は今までの低金利が異常事態であって、年利が2%であれば国債のリスク・プレミアムはインフレ上昇分と相殺されてしまう。つまりリターンが低すぎて投資家はリスクを取る意味がない。で、なぜ低金利だったかというとFRB(連邦準備理事会)が量的緩和政策(QE)を行い国債を買い漁ってきたためだ。QEが終了すれば金利は当然上がる。
今年はリーマン・ショックからちょうど10年目に当たる。もはや経済は企業や人々が自然に織りなす営みとは言い難い。人為を過信してマネーを水道の供給みたいに考えている節(ふし)がある。氾濫(はんらん)したマネーが逆流すれば次は津波のような被害が世界を襲うに違いない。リーマン・ショックは100年に一度の金融危機と言われたが、次なる危機は「1000年に一度」となる可能性が高い。
ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!
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ジェームズ・リカーズ
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