・『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎 2012年
・『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎
・マネーと言葉に限られたコミュニケーション
・『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎 2015年
・『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
・『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
・『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
・『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
・『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
・『脱税の世界史』大村大次郎
・世界史の教科書
・必読書リスト その二
歴史というのは、政治、戦争などを中心に語られがちだ。「誰が政権を握り、誰が戦争で勝利したのか」という具合に。
【だが、本当に歴史を動かしているのは、政治や戦争ではない。
お金、経済なのである。】
お金をうまく集め、適正に分配できるものが政治力を持つ。そして、戦争に勝つ者は、必ず経済の裏付けがある。
だからこそ、【お金の流れで歴史を見ていくと、これまでとはまったく違う、歴史の本質が見えてくる】ものなのだ。
【『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(KADOKAWA、2015年)以下同】
大村大次郎は脂(あぶら)が乗っている。読みやすいビジネス書だと思ったら大間違いだ。著作が多いため重複する内容も目立つが必ず新しい視点を提供してくれる。元国税庁の調査官ということもあって節税本が殆どだが、具体的なアドバイスもさることながら、税に対する認識や意識が変わる。それは「国民の自覚」と言い換えてもよかろう。
小室直樹が「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(『消費税は民意を問うべし 自主課税なき処にデモクラシーなし』)と喝破している。それをわかりやすく敷衍(ふえん)したのが上記テキストだ。
なぜ古代エジプトだけが3000年もの間、平和で豊かな時代を送ることができたのか?
筆者は、その大きな要因に、徴税システムがあると考える。
古代から現代まで、その国の王や、政府にとって、一番、面倒で大変な作業というのは、徴税なのである。税金が多すぎると民は不満を持つし、少ないと国家が維持できない。
また税金のかけ方が不公平になっても、民の不満材料になるし、徴収のやり方がまずければ、中間搾取が多くなり国の収入が枯渇(こかつ)する。
【古今東西、国家を維持していくためには、「徴税システムの整備」と「国民生活の安定」が、絶対条件】なのである。
チンパンジーの世界でも「所有と分配の両方が行なわれている」(『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール)。ラットですら目の前で苦しむ仲間がいれば自分の利益を放棄する(『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール)。
ドゥ・ヴァールは「思いやりも本能である」と主張する動物行動学者だが、昨今の消費税増税は明らかに公平性を欠いており、段階的に下げられてきた富裕層の所得税を踏まえると、格差社会は政策によって生まれたと言いたくなる。
バブル崩壊(1991年)後の日本を見てみよう。終身雇用が失われ非正規雇用が増え始める。学校ではいじめが日常茶飯事となり、若者の間ではニートや引きこもりが増加。人口構成は高齢化社会(65歳以上人口が7%、1970年)~高齢社会(高齢化率14%、1994年)~超高齢社会(高齢化率21%、2007年)と変遷してきた(Wikipedia)。有吉佐和子が少子高齢化を指摘したのが1972年のことである(『恍惚の人』)。200万部を超えるベストセラーとなったが政治家も国民も本気で考えようとはしなかった。
私は少子化を問題とは思っていない。ピークを迎えた人口構成が緩やかに下がることはあるだろう。問題は「結婚したくてもできない」「恋愛をするほどの余裕もない」若者を増やし、挙げ句の果てには「子供をつくりたいと思えない」国家の有り様である。より本質的には災害や戦争が訪れることを告げているように思われてならない。
近代以降のコミュニケーションはマネーと言葉に限定されてしまった感がある。古(いにしえ)の人々には祈り、踊り、狩り、祭りを通したコミュニケーションが存在した。現代人がスポーツや音楽に魅了されるのは「言葉を超えたコミュニケーション」を感じるためだ。コミュニケーションは交換が交感を生み交歓に至る、というのが私の持論だが、大前提として交換するものが少なすぎる。
平等という価値観は既に左翼が汚してしまった。せめて公正さを取り戻すべきだろう。社会が崩壊する前に。