2021-06-01
ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン、三浦雅士、斎藤成也、他
高村薫著『レディ・ジョーカー』を読んで、ものを書く気が失せた。まあ惚れ惚れする文章だ。努力だけでは辿り着けない高みである。正確な言葉遣いと澱みない文章から才気の香りが立ち上る。というわけで覚え書きを。
『マンガでわかる! すぐに使えるNLP』藤川とも子(日本実業出版社、2018年)/半分ほどで挫折。悪くはないがよくもない。「マンガでわかる!」は嘘である。てっきり漫画本だと思い込んでいたのだが、漫画は各節を1ページでまとめている程度となっている。説明はわかりやすいのだが項目がずらりと並んでいる印象が強く、これを覚えなければならないと思っただけでゲンナリさせられる。加藤聖龍〈かとう・せいりゅう〉著『手にとるようにNLPがわかる本』(かんき出版、2009年)の方がずっといい出来栄えだ。アメリカキリスト教におけるプラグマティズム~ニューソート~ポジティブ・シンキング、はたまたニューエイジに至るまでを私は「西洋における大乗思想の勃興」と考えている。そして密教に傾いていないところを評価している。ま、英語圏の説明能力はやっぱり凄いよ。
『旧字旧かな入門』府川充男、小池和夫(柏書房、2001年)/挫折。「同音の漢字による書きかえ」を調べるために読んだのだが、ちょっと違った。活字だと書き方が微妙にわからない。漢字検定の上級者向きか。
『[旧字源]旧漢字でわかる漢字のなりたち]青木逸平〈あおき・いつへい〉(瀬谷出版、2018年)/読書中。旧字を丁寧に解説。こちらは読みやすい。旧字体と新字体という名称を使っている。
『若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間』ジョシュ・ミッテルドルフ、ドリオン・セーガン:矢口誠訳(集英社インターナショナル、2018年)/読書中。好著。ネオダーウィニズム批判の書。日本版に寄せたメッセージで随分と日本を褒め称えている。「集団選択」という新しい概念で老化のメカニズムを解明する。
『DNAから見た日本人』斎藤成也〈さいとう・なるや〉(ちくま新書、2005年)/読書中。文章の圧縮度が高い。期待できそうだ。
『身体の零度』三浦雅士〈みうら・まさし〉(講談社選書メチエ、1994年)/読書中。ナンバ本で紹介されていた一冊。三浦は『ユリイカ』『現代思想』の編集長を経て評論活動に入ったらしい(見返しより)。文章も視点もユニーク。独創性がある。青森県出身。
2021-05-31
同じ走行距離を望むならガソリンの15倍もの重さのバッテリーを積む必要がある電気自動車/『「水素社会」はなぜ問題か 究極のエネルギーの現実』小澤詳司
・『自動車の社会的費用』宇沢弘文
・『リサイクル幻想』武田邦彦
・同じ走行距離を望むならガソリンの15倍もの重さのバッテリーを積む必要がある電気自動車
前世紀の二つの世界大戦は、石油による石油のための戦争だった。自動車の技術を応用した兵器が実用化されて実戦で使われたが、そのために石油は不可欠の戦略資源となった。アジア太平洋戦争における日本の開戦と敗戦もまた石油と大きく結びついていた。
敗戦後の日本は、朝鮮戦争の特需をきっかけに、奇跡の経済成長を遂げる。その牽引役の一つが自動車産業であった。日本の自動車メーカーのいくつかは、軍需産業の解体から出発した。
【『「水素社会」はなぜ問題か 究極のエネルギーの現実』小澤詳司〈おざわ・しょうじ〉(岩波ブックレット、2015年)以下同】
ブックレットという判型はあまり好きじゃないが本書はおすすめできる。
(※『Who Killed The Electric Car?(誰がその電気自動車を殺したのか?)』(監督:クリス・ペイン、ソニーピクチャーズ)の内容を紹介し)スチュードベイカーエレクトリックからEV-1に至るまで、市販されたEVは数多いが、いずれもベストセラーにもロングセラーにもなることはなく消えてしまった。効率がよくクリーンで静かで運転もしやすいのに、EVはなぜ受け入れられないのか。
それはガソリン車と比べてみるとよくわかる。ガソリン自動車は燃料としてガソリンをタンクに積む。EVは同じように電気をバッテリーに充電する。ガソリンの発熱量は1リットルあたり約8000キロカロリー=9300ワット時。これを40-50リットルのタンクに積むと、車種や走行条件にもよるが、フルタンクで400-500キロメートル走り続けることができる。
一方、バッテリーに充電できる電力量を体積(リットル)あたりでみたエネルギー密度は、鉛バッテリーが40-100ワット時、ニッケル水素バッテリーが100-300ワット時、リチウムイオンバッテリーでも300-600ワット時ほどである。リチウムイオンバッテリーであってもガソリンの15分の1から30分の1でしかない。さらに重量あたりのエネルギー密度で比べると、ガソリンのわずか2%以下だ。つまりガソリン自動車と同じ航続距離(1フル充電あたりの走行距離)を稼ごうとすると、エンジン効率とモーター効率の差を考えても、ガソリンの15倍もの重さのバッテリーを積まなくてはいけないことになる。また、その充電にも長い時間がかかる。これは非現実的だ。
このバッテリーの性能問題が電気自動車の最大のウィークポイントであり、その普及を妨げてきた理由なのである。
同様のことは太陽光発電にも言える。10年分の太陽光電気代で太陽光発電パネルを作ることはできないだろう。所詮はコスト(費用)とベネフィット(便益)の問題である。私が知る限りでは武田邦彦が一番最初に、「国際的な脱炭素社会に向けた電気自動車への動きはトヨタ潰しである」と喝破した。要は欧米自動車メーカーがトヨタの技術に太刀打ちできない背景がある。競争に敗れれば、自分たちが有利になるようルールを変更するのが白人の流儀だ。
いずれにしても電気を使うから、その電機をどうやってつくるかという問題がある。電気そのものが何らかのエネルギー源を使って起こさなければならない二次エネルギーだから、それによってつくる水素は三次エネルギー、その水素で起こす電気は四次エネルギーということになる。最初のエネルギー源が化石燃料であればCO2発生は免れないし、コストが大変高いものになる。
私は電気に関する知識はそこそこあるので最初から気づいていた。いずれにせよ脱炭素への動きはグレートリセットを先取りするもので、世界の仕組みを変える意志を示したものだろう。
自動車はそもそも過剰性能ではないのか。買い物や通勤・通学のために、最高時速180キロメートル、航続距離400キロメートル、4-7人乗りなどという性能が必要なのだろうか。PHVにせよFCVにせよEVにせよ、日常用途も休日のドライブも1台の車で満たそうとするのは欲張りすぎなのではないか。
実は自動車と自動車中心社会がもたらす数々の問題を解決するうまい方法がある。それは自動車を小さく、軽く、そして遅くすることだ。自動車の消費エネルギーは、空気抵抗と転がり抵抗に大きく左右される。空気抵抗は速度の二乗に比例し、転がり抵抗は重さに比例する。つまり速度を遅く、重量を小さくすれば、それだけエネルギー消費が少なくてすむのである。
実際、乗用車1台あたりの月間平均走行距離は380キロメートル、うち58%が300キロメートル以下である。すなわち、乗用車の6割近くは1日平均10キロメートル以下しか走っていないことになる。そして、8割以上が二人以下の乗用人数なのである。
つまり自動車は税負担を増やすだけの道具と化したわけだ。二重三重の課税は完全な憲法違反である。
それでも人々は移動の自由を欲する。国家も道路を整備してそれに応える。自動運転は運転する喜びを奪う愚行だ。
効率を目指すのであれば路面電車を張り巡らすのが一番いいと思う。自動化も可能だろう。
低資質本/『アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事 高脂質・低糖質食で、みるみる腹が凹む』マーク・ハイマン
・『1年で10億つくる! 不動産投資の破壊的成功法』金森重樹
・『借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記』金森重樹
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『ガチ速“脂"ダイエット 極上レシピ大全』金森重樹
・低資質本
・『まさか!の高脂質食ダイエット 本当にやせる「糖質制限2.0」』グラント・ピーターセン
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
・『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』吉田たかよし
・『自分の小さな「箱」から脱出する方法 人間関係のパターンを変えれば、うまくいく!』アービンジャー・インスティチュート
減量のための低炭水化物・高脂質食について多数の研究が行われ、多くの報告がなされているが、その結論は明らかなように思える――低炭水化物・高脂質食より低炭水化物・高脂質食のほうが効果的ということだ。ここで、なぜ、どのようにして、私がその結論にたどり着いたかを明確にするために、低脂質食と高脂質食を比べる重要な研究をいくつか検討してみよう。(67-68ページ)
【『アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事 高脂質・低糖質食で、みるみる腹が凹む』マーク・ハイマン:金森重樹監修(SBクリエイティブ、2020年)】
佐藤優のアドバイスに従って読むのをやめた。ソフトバンクなんぞがカネに任せて出版事業に手を出すとこうなる。「低炭水化物・高脂質食より低炭水化物・高脂質食のほうが効果的」という箇所を5回ほど読み直した。入力する際も何度となく確認した。たぶん前者が「高炭水化物・低脂質食」なのだろう。致命的な誤植である。
校正はグループで行った方がいいと思う。書籍を見る限りでは日本人の仕事がどんどん杜撰(ずさん)になってきている。正確さを失うところから世の中は狂い始める。孔子が「名を正す」と語ったのはそういう意味だろう。
2021-05-23
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