2018-05-20

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主役としての近代 〔竹山道雄セレクション(全4巻) 第4巻〕
竹山 道雄
藤原書店
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ツヴァイク全集〈17〉権力とたたかう良心 (1973年)

みすず書房
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金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい
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朝日新聞出版 (2016-12-07)
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この国を縛り続ける金融・戦争・契約の正体
大井 幸子 片桐 勇治
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円消滅! ~第二の金融敗戦で日本は生き残れない
大井 幸子
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虹をつかむ男 (ハヤカワepi文庫)
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光媒の花 (集英社文庫)
道尾 秀介
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午前零時の自動車評論
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ヒモトレ革命 繫がるカラダ 動けるカラダ
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ホントにカンタン! 誰でもできる! 個人ではじめる輸入ビジネス 改訂版
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いちばん儲かる!Amazon輸入ビジネスの極意
竹内 亮介
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2018-05-13

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まだ科学で解けない13の謎
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非線形科学 同期する世界 (集英社新書)
蔵本 由紀
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マンガ 現代物理学を築いた巨人 ニールス・ボーアの量子論 (ブルーバックス)
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図説・日本人の国民性 (1965年)
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稲盛和夫の実学―経営と会計
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黙示〔下〕 (ハヤカワ文庫NV)
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早川書房
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深川安楽亭 (新潮文庫)
山本 周五郎
新潮社
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2018-05-12

武田邦彦「スポーツは無意味」


 sport という語は 19世紀から 20世紀にかけて使用されるようになった英語です。その語源はラテン語の「deportare」です。 この語は、日々の生活から離れること、すなわち、気晴らしをする、休養する、楽しむ、遊ぶなどを意味しました。

第1回 スポーツの語源 « 基礎教育センター活動ブログ

 多分「競争」は資本主義経済の影響なのだろう。「スポーツのルールには何の合理性もない。非合理な制約を設けて競争するのがスポーツで、スポーツそのものに意味はない」との主旨。「非合理な制約を設けて競争する」のは宗教も一緒だ。

2018-05-06

米ドル崩壊のシナリオ/『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓
『資本主義の終焉と歴史の危機』水野和夫

 ・米ドル崩壊のシナリオ

『ドル消滅 国際通貨制度の崩壊は始まっている!』ジェームズ・リカーズ
『金価格は6倍になる いますぐ金を買いなさい』ジェームズ・リカーズ

 1971年8月15日、穏やかな日曜日の夜、リチャード・ニクソン大統領はアメリカで最も高視聴率を誇っていたテレビ番組の時間に、電波を使って新経済政策を発表した。政府は価格統制を行い、高率の輸入課徴金を課し、ドルと金の交換を停止すると宣言したのである。継続中の通貨戦争によって米ドルに対する信認が打ち砕かれ、アメリカは危機のさなかにあった。思い切った措置が必要だと、大統領は決断していたのである。

【『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ:藤井清美訳(朝日新聞出版、2012年)以下同】

「トランプ米大統領は8日の記者会見で、鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%と10%の関税を課す輸入制限を実施することを正式に発表した。カナダとメキシコを対象外とすることも改めて明らかにした」(ロイター 2018年3月9日)――あとはドル安に誘導すればニクソンショックの再現となる。東京オリンピックの翌年がちょうど半世紀後に当たるから、日中戦争はこのタイミングになるような気がする。もちろん米国債を大量保有している日中を戦わせるシナリオを用意しているのはアメリカだ。序文の続きを紹介しよう。

 今日、われわれは新たな通貨戦争の渦中にあり、ドルに対する信認の危機がふたたび訪れようとしている。危機の影響は、ニクソンが直面したものよりはるかに深刻になるだろう。あれから40年の間にグローバル化が進み、デリバティブ(金融派生商品)やレバレッジ(借り入れを利用する投資)が多用されるようになったことで、金融パニックやその伝播(でんぱ)を抑え込むのはほぼ不可能になっているからだ。
 新しい危機は為替(かわせ)市場で始まって、またたく間に株式や債権やコモディティ(商品)市場に波及するだろう。ドルが崩壊したら、ドル建て金融商品の市場も崩壊する。パニックはまたたく間に世界中に広がるだろう。
 その結果、アメリカ大統領が――それはオバマ大統領かもしれない――電波とサイバー空間を使って、ドルを全面崩壊から救うための大胆な介入計画を発表し、法的権限を行使するだろう。この新しい介入計画には、金本位制への復帰という策まで含まれるかもしれない。もしそうなったら、膨張したマネーサプライ(通貨供給量)を限られた量の金で支えるために、金の価格は現在より劇的に高い水準に設定されるだろう。早くから金に投資していたアメリカ人は、金価格の上昇による棚ぼた利益に対して、公正の名の下に90パーセントの「超過利潤税」を課せられるだろう。現在ニューヨークに保管されているヨーロッパや日本の金は、接収されて「新ドル政策」を支えるために使われるだろう。ヨーロッパや日本は接収された金の代わりに受取書を与えられ、その受取書は以前より大幅に高い新価格で新しいドルと交換できるとされるだろう。
 もう一つの可能性として、大統領は金本位制への復帰は避けて、さまざまな資本規制やIMF(国際通貨基金)のマネー創造機能を使って流動性を供給し、状況を安定させようとするかもしれない。IMFによるこのグローバルな救済は、金との兌換(だかん)性のない古いドルではなく、新たに発行されるSDR(特別引き出し権)と呼ばれるグローバル通貨で行われるだろう。世界は回り続けるだろうが、国際通貨精度はすっかり様変わりするだろう。
 これは荒唐無稽(むけい)な推論ではない。そっくり同じことがかつて起きているのである。紙券通貨が崩壊して、資産の凍結、金の接収、資本規制という措置が取られたことは過去に何度もある。アメリカもこうした措置と無縁ではなかった。それどころか、アメリカは1770年代から1970年代まで、独立戦争、南北戦争、大恐慌、そしてカーター政権時代のハイパーインフレーション(物価暴騰)を経験するなかで、ドル安政策を積極的に推し進めてきた。通貨崩壊が30年余り起きていないという事実は、次の崩壊の機が熟しすぎるほど熟していることを暗に示しているだけだ。単なる推論の所産ではなく、前提条件はすでに整っているのである。

 二度の世界大戦で英ポンドは凋落(ちょうらく)し基軸通貨は米ドルに変わった(1944年)。ブレトン・ウッズ体制はニクソン・ショック(1971年)で終焉を迎え、為替(かわせ)の変動相場制が幕を開ける。それにしても米ドルが現在も基軸通貨の地位を譲っていないのは何とも不思議な話である。兌換(だかん)紙幣は死んだ。金(ゴールド)の裏づけを失ったマネーは物としての価値を消失したが信用情報として生き延びた。

 基軸通貨とは簡単に言えば「石油や武器を買う時に使用できる通貨」のことだ。日本が中東から石油を購入した場合、1万円札で支払えば相手が困るのは誰にでも理解できよう。国家の基盤が弱い国ほど外貨が必要となる。

 イラクのフセイン大統領は原油の決済通貨をドルからユーロに変えたために殺された。「要するに、イラク戦争というのは、イラクにある石油利権を植民地主義敵に囲い込むための戦争だったのではなく、ドルを基軸としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だった」(『超マクロ展望 世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人)。ルールを決めるのはいつだって強者だ。


 1ドル360円が半分の価値になるまでわずか10年である。1990年代から2000年代初頭にかけてアメリカではITバブルが、続いて住宅バブルが絶頂を迎える(2007年7月)。そして物づくりを放棄して金融工学にうつつを抜かしていた彼の国を襲ったのがリーマン・ショックであった(2008年9月)。10月28日には日経平均が7000円台を割り込んだ。グローバリゼーションは恐慌のスピードを加速する。

 トランプ大統領が唱えるアメリカ・ファーストとは、今まで世界中から物を買ってきたアメリカが「物を売る側」にシフトするとの宣言である。とすればドルが強くなることはあり得ない。しかしながら世界から資金を集める必要があれば株価は釣り上げてくることだろう。更にはアメリカが覇権から一歩退くことで東アジアと中東に混乱が生じるに違いない。

通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!
ジェームズ・リカーズ
朝日新聞出版
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作家の手帖 (1981年)
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カミカゼじゃあのwww
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2018-05-02

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凍土の共和国――北朝鮮幻滅紀行
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壜の中の手記 (角川文庫)
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2018-04-30

「洛中洛外図」の日本的視点/『増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い』高階秀爾


・『怖い絵』中野京子

 ・「洛中洛外図」の日本的視点

『日本人の身体』安田登
『新・悪の論理』倉前盛通
『肚 人間の重心』 カールフリート・デュルクハイム

必読書リスト その四

 西欧の遠近法や明暗法は、ちょうどある位置でカメラを構えてシャッターを切った時のように、画家の視点は一定の場所に固定されていて、対象も変化のない一定不変の状態にあるということが、基本的前提になっている。画家と対象との距離の差を画面における形態の大小や色彩の鮮明度に翻訳して表現するのが遠近法であり、対象に対する光のあたり方を陰影によって表現するのが明暗法だからである。(中略)だが、画家と対象との距離というものは、当然のことながら、画家の位置が変わればそれに応じて変わる。もし画家が人物を描くたびに、つねにそのすぐそばまで移動して描いたとしたら、遠近法は成立しないであろう。その代り、画中の人物は、つねに同じ大きさで鮮明に描き出されるということになる。洛中洛外図において日本の画家が行なったのは、まさにそのようなことである。画家は町のなかを自由に動き廻って、さまざまの場所を観察し、店先の様子や人びとの姿などをいわば至近距離から眺めて、それぞれの部分を次つぎと画面の上に並べていった。つまり洛中洛外図は、ひとつの固定した視点から眺められた都市図ではなく、都市のさまざまの部分を、つまり複数の視点による都市の姿を画面の上に並置したものなのである。そのそれぞれの部分は、いずれも、例えば人物たちの顔かたちや衣裳の模様まではっきりとわかるように鮮明に描かれているので、相互のあいだに距離感の差はなく、全体として画面は平面的な拡がりを見せることとなる。
 しかも、視点の自由な移動は、町のなかだけにはとどまらない。都市の構造の基本的骨格を形成する建物の配置を描く時は、画家は視点を高めて、あたかも高い塔の上から町を見下ろしたかのような具合に描き出す。われわれの日常の体験において、高い所から見下ろした時の方が町の構成はよくわかるが、洛中洛外図の画家は、まさしくそのような視点によって、都市の空間構造を見る者に伝えてくれるのである。そしてその上で、それぞれの場所における人びとの姿や生活情景が描き出される。その場合、建物そのものは上方から見られているから、例えば屋根などがそのように描き出されるが、しかしその正面部、例えば店先の様子やあるいは通りを歩く人びとの姿は、通常の水平方向の視点で描かれる。つまり、洛中洛外図は、さまざまの部分的情景の集合であるが、そのひとつひとつの部分においても、俯瞰視と水平視という異なった視点が共存しているのである。

【『増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い』高階秀爾〈たかしな・しゅうじ〉(岩波現代文庫、2009年/旧版、岩波書店、1991年新板、同時代ライブラリー、1996年)】

 まずは「洛中洛外図」(らくちゅうらくがいず)をご覧いただこう。

Wikipedia
洛中洛外図屏風(上杉本)狩野永徳
洛中洛外図 - 日テレ
狩野永徳《上杉本洛中洛外図屏風》 金雲に輝く名画の謎を読む──「黒田日出男」:影山幸一

 確かに妙な絵である。のっぺりとしていて奥行きがない。私の印象はそこで止まってしまう。ところが高階秀爾の眼は画家の手法を解析し、西洋美術との視座の異なりにまで及ぶ。専門家とは「見る世界」を広げてくれる人物であることがよくわかる。

 西欧の視点が固定されているのは「個人」という意識が確立されていたためだ。もちろんその背景には「神」の存在がある(『翻訳語成立事情』柳父章)。つまり思想や価値観によって目の前の世界は違って見えるということだ。視覚情報は視覚野が翻訳したものだ。現実は都合のいいように歪められる。例えば常に見えているはずの自分の鼻を我々は気にかけることがない。

 戦後教育はGHQによる「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」(戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画)に基づいており、日本の過去は否定されるべき歴史として描かれるようになった。また輪を掛けるように左翼や進歩的文化人が江戸時代から戦前までを革命前段階の抑圧世界と位置づけた。原爆慰霊碑に記された「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませぬから」との碑文がまさしくその象徴である(原爆を正当化する米国のプロパガンダを、日本人が鵜呑みにする必要はない | 私的憂国の書)。

 19世紀半ばにヨーロッパで日本美術が注目を浴びジャポニスム文化が花開いた。「きっと物珍しかったのだろう」などと思うのは不届き者だ。長らく続いた白人支配は「人間には理性がある→理性とは神を理解する能力である→神を信じない者は人間に非ず」という三段論法に基づいている。アメリカ先住民のインディアンやアフリカの黒人を彼らは【人間と見なさなかった】のだ。大量虐殺は文字通り虫けらを退治するように粛々と行われた。こうした歴史にとどめを刺したのが日露戦争だった(『世界が語る大東亜戦争と東京裁判 アジア・西欧諸国の指導者・識者たちの名言集』吉本貞昭)。

 しかも西ヨーロッパが日本の文化を認めたということはキリスト教世界に衝撃を与え、混乱を招いたことをも示唆している。なぜなら文化は人間の社会からしか生まれないからだ。現代においてすらフランスは文化を鼻に引っ掛けイギリス人を猿だと馬鹿にしている。フランス人のピエール・ブールは第二次世界大戦でフランス領インドシナに派兵され日本軍の捕虜となった。この体験から着想を得て後に小説としたのが『猿の惑星』である。そう。猿とは日本人のことなのだ。

 彼らの人種差別意識に対して日本美術が亀裂を入れた事実を我々は誇っていいだろう。



武術の達人/『武術の新・人間学 温故知新の身体論』甲野善紀

すべてのミュージシャンが必読すべき珠玉の短篇/『松風の門』山本周五郎


『一人ならじ』山本周五郎
『日日平安』山本周五郎

 ・壮烈な心と凄絶な生き方
 ・すべてのミュージシャンが必読すべき珠玉の短篇

必読書リスト その一

 ……そしていつでも話の結びには斯(こ)う云った。
「そうです、わたくしはずいぶん世間を見て来ました。なかには万人に一人も経験することのないような、恐しいことも味わいました。そして世の中に起る多くの苦しみや悲しみは人と人とが憎みあったり、嫉(ねた)みあったり、自分の欲に負かされたりするところから来るのだということを知りました。……わたくしにはいま、色々なことがはっきりと分ります。命はそう長いものではございません。すべてが瞬(またた)くうちに過ぎ去ってしまいます。人はもっともっと譲り合わなくてはいけません。もっともっと慈悲を持ち合わなくてはいけないのです」
 老人の言葉は静かで、少しも押しつけがましい響を持っていなかった。それで斯ういう風な話を聞いたあとでは、ふしぎにもお留伊は心が温かく和やかになるのを感じた。(「鼓くらべ」/「少女の友」昭和16年1月号)

【『松風の門』山本周五郎(新潮文庫、1973年)以下同】

「松風の門」と「鼓くらべ」のニ篇が与える衝撃の度合いは桁外れだ。「必読書」には『日日平安』を入れてあるが甲乙をつける必要はないだろう。

 新年の催しとして領主が金沢の城中で観能をし、その後で民間から鼓の上手な者が御前で腕比べを行う。お宇多というライバルとお留伊の二人も選ばれていた。旅の老人はお留伊に「友割り鼓」の話をする。

 十余年まえに、観世市之■(※極のツクリ部分/かんぜ・いちのじょう)と六郎兵衛という二人の囃子方があって、小鼓を打たせては竜虎(りゅうこ)と呼ばれていたが、ふたりとも負け嫌(ぎら)いな烈(はげ)しい性質で、常づね互に相手を凌(しの)ごうとせり合っていた。……それが或る年の正月、領主前田侯の御前で鼓くらべをした。どちらにとっても一代の名を争う勝負だったが、殊(こと)に市之■の意気は凄じく、曲なかばに到(いた)るや、精根を尽くして打込む気合で、遂に相手の六郎兵衛の鼓を割らせてしまった。
 打込む気合だけで、相手の打っている鼓の皮を割ったのである。一座はその神技に驚嘆して、「友割りの鼓」といまに語り伝えている。

 鼓打ちの間では広く知られた出来事であったが、老人はその後のエピソードを語った。

 老人は息を休めてから云った。「……市之■〈いちのじょう〉はある夜自分で、鼓を持つ方の腕を折り、生きている限り鼓は持たぬと誓って、何処ともなく去ったと申します。……わたくしはその話を聞いたときに斯(こ)う思いました。すべて芸術は人の心をたのしませ、清くし、高めるために役立つべきもので、そのために誰かを負かそうとしたり、人を押し退(の)けて自分だけの欲を満足させたりする道具にすべきではない。鼓を打つにも、絵を描くにも、清浄(しょうじょう)な温かい心がない限りなんの値打ちもない。……お嬢さま、あなたはすぐれた鼓の打ち手だと存じます。お城の鼓くらべなどにお上りなさらずとも、そのお手並は立派なものでございます。おやめなさいまし、人と優劣を争うことなどはおやめなさいまし、音楽はもっと美しいものでございます。人の世で最も美しいものでございます」

 これから世に出てゆこうとする少女の胸に老人の言葉が響いたとは思えない。浅い経験は深い言葉に思いが届かない。老人が黙っていられなかったのは、お留伊が打つ鼓の音に何かを感じたためだろう。

 鼓くらべに臨んだお留伊は雷に打たれたように悟る。老人の悟りがお留伊の悟りとして花開く。私が知るどの仏典の譬(たと)え話よりもストレートに心を打った。小説を作り話だと侮ってはならない。現実社会も小説も脳が生み出すのだから。我々に求められるのは本書を読んだ後でどのような言葉を紡(つむ)ぎ出すのかということに尽きる。

2018-04-29

壮烈な心と凄絶な生き方/『松風の門』山本周五郎


『一人ならじ』山本周五郎
『日日平安』山本周五郎

 ・壮烈な心と凄絶な生き方
 ・すべてのミュージシャンが必読すべき珠玉の短篇

必読書リスト その一

 二人は馬を繋(つな)いで歩きだした。松風が蕭々(しょうしょう)と鳴っていた。前も後も、右も左も、耳の届くかぎり松風の音だった。宗利は黙って歩いていった。石段を登って、高い山門をくぐると、寺の境内も松林であった。そして其処もまた潮騒(しおさい)のような松風の音で溢れていた。(「松風の門」/「現代」昭和15年10月号)

【『松風の門』山本周五郎(新潮文庫、1973年)】

 池藤小次郎〈いけふじ・こじろう〉は伊達宗利〈だて・むねとし〉の右目を失明させた。10歳の宗利は小次郎に口外を禁じた。20年以上を経て宗利は江戸から帰郷する。神童と呼ばれ武芸にも学問にも秀でた小次郎は八郎兵衛〈はちろべえ〉と名を改め、見る影もなく落ちぶれていた。幼い頃、彼に対して捻(ねじ)れた感情を抱いていた宗利も鼻で笑った。

 農民たちの一揆に八郎兵衛が厳しい対処をした。穏便に収めようと考えていた宗利は八郎兵衛に謹慎を言い渡す。ここから物語は急展開を見せる。

 壮烈な心と凄絶な生き方を描いて周五郎の右に出る者はあるまい。この作品を発表した2年後には天下分け目のミッドウェー海戦があり日本軍の敗色が濃くなる。八郎兵衛夫婦のやり取りと比べれば、宗利と相談役の朽木大学の会話は宗利の底の浅さが露呈している。江戸300年の安定した歴史は主従の関係を絶対化したものだ。士農工商という身分はさほど厳格ではなかった(『お江戸でござる』杉浦日向子監修)が、武士の生き方は様式化され道にまで格上げされた。「君君たらずとも臣臣たらざるべからず」(『古文孝経』)との忠誠心は美徳であった。

 あまりにも深い心は人に知られることがない。ただ朽木大学のみが八郎兵衛の行為を理解した。

 風は変化の象徴である。風は何かを払い、そして飛ばす。読み手の心にも風が吹き渡る。



小善人になるな/『悪の論理 ゲオポリティク(地政学)とは何か』倉前盛通

2018-04-28

安倍首相辞任の真相/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年

 ・教科書問題が謝罪外交の原因
 ・アメリカの穀物輸出戦略
 ・中国の経済成長率が鈍化
 ・安倍首相辞任の真相

『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 最近、ブッシュ政権の国務長官だったコンドリーザ・ライスが回顧録を出しましたが、そのかで北朝鮮に対する日本政府の対応を痛烈に非難しています。ライス国務長官は、当時のチェイニー副大統領などの強硬派の意見を退けて、ブッシュ大統領に北朝鮮との話し合い路線を進めていたからです。アメリカは「テロ支援国家」の名簿に入れていた北朝鮮を、名簿から外す方向で考えていたのです。
 しかし安倍さんは、日本人を拉致するというのはまさしくテロではないか。北朝鮮はテロ支援国家どころかテロ国家そのものだと主張しつづけてきた。それで2007年9月9日にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)がオーストラリアのシドニーで開催されたとき、「北朝鮮をテロ支援国家から外さないように」とブッシュ大統領に懇願したのです。それに対してブッシュ大統領は「考えましょう」と返事をした。
 ところが帰国した翌日、安倍さんは午後の衆院本会議で施政方針演説をやる予定でしたが、その午前中に、アメリカ大使館から「ノー」という返事がきた。「大統領は北朝鮮のテロ支援国家指定解除をやります」と。安倍さんはいわばアメリカから梯子(はしご)を外されてしまったのです。これで完全にギブアップした安倍さんは、2日後の9月12日に「健康上の理由」で突如、辞任を表明することになってしまったのです。

【『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘(徳間書店、2012年)】

田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った」の続きを。この事実をどう捉えるか? 中には「そんなことぐらいで……」と思う人もいるだろう。安倍首相は拉致問題に政治生命を懸けていたに違いない。小泉首相訪朝後、拉致被害者5人が日本に帰国したが、小泉は彼らを北朝鮮に帰すつもりだった。これに猛反対したのが安倍晋三官房副長官と中山恭子拉致担当内閣官房参与だった。

「戦後レジームからの脱却」とは史実に基づく日本近代史の見直しと、自立した国家すなわち自分の国は自分で守るという当たり前の姿を目指すものだ。アメリカに国家の安全保障を委ね、左翼政党や進歩的文化人に配慮する中で拉致被害が発生した。当初は政府はおろかどの政党もその事実を認めようとはしなかった。シベリア抑留の二の舞を踏んだといってよかろう。

「戦利品」の一つとして、日本人捕虜のシベリヤ強制労働の道は開かれていた/『内なるシベリア抑留体験 石原吉郎・鹿野武一・菅季治の戦後史』多田茂治

 そして今再び北朝鮮を巡って世界が揺れている。アメリカは二度にわたって日朝国交正常化を阻んできた(『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘)。もう一つ重要な歴史として米中国交回復のためにアメリカは沖縄を返還した(『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘)事実を忘れてはならない。

 トランプ大統領が安倍晋三を信頼しているのは確かだが、アメリカ・ファーストのためとあらばまたしても梯子を外す可能性を考えておく必要がある。もしもアメリカがアジアから一歩退くとなればそこに中国が攻め込んでくる。アメリカ頼みの防衛は極めて危険である。インド・ロシアそしてASEAN諸国・台湾との連携を模索すべきだ。今直ぐに。

この国の不都合な真実―日本はなぜここまで劣化したのか?
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日本は誰と戦ったのか
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2018-04-27

田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った/『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年

 ・IAEA(国際原子力機関)はアメリカの下部組織
 ・日米経済戦争の宣戦布告
 ・田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った

『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 アメリカのFBIは日本との関わりのなかで、どこにどれだけのお金が流れたかなど、あらゆる情報を把握しています。ロッキード事件では、それがたまたまロッキード・丸紅ルートとして表面化したけれど、アメリカが叩こうとしたのは日本の首相であって、それ以外はどうでもよかったのです。
 アメリカには罪を認めて当局の捜査に協力すれば刑を軽減したり不起訴にするという司法取引精度がある。アメリカの刑事裁判は大部分が司法取引で行われているから、事件の証拠などいくらでも出てきます。だから贈賄側であるロッキードの副会長コーチャンも司法取引に応じて、不起訴を条件にぺらぺらとしゃべる。その証拠をアメリカ政府はポンと出して、あとは日本の検察が好きなようにおやりなさいよとやる。その証拠を東京地検特捜部がアメリカまでもらいに行った。その中心にいて田中角栄に論告求刑したのが、現在「さわやか福祉財団」で理事長をつとめている堀田力さんです。
 しかし、いまもいろいろと問題を起こしていますが、当時から検察のやり方というのは実に卑劣です。一国の総理だった人物を外為法違反などということで捕まえる。そんなことが許されていいのかどうか。結局、これもまたアメリカの意向にそって検察が動いているからです。田中角栄を見せしめに締め上げて、「今後一切、アメリカに逆らうようなことは許さない」というアメリカのお先棒をかつぐ、日本の検察はまったく地に堕(お)ちてしまいました。
 地に堕ちたのは検察ばかりではありません。アメリカに逆らえば潰されるということを身にしみて知らされた日本の総理大臣もまた、このときから地に堕ちてしまった。とりわけ中曽根康弘から竹下登へとつづく内閣はアメリカの要求を100パーセント飲みつづけ、その後の自民党政権はことごとくアメリカの言いなりという状態になりました。海部俊樹しかり、宮澤喜一しかり、橋本龍太郎しかり、小泉純一郎しかりです。

【『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘(徳間書店、2011年)】

 ロッキード事件はアメリカに先んじて中国と国交回復を成し遂げた田中角栄首相に対するキッシンジャーの報復だった。ジャーナリストの文明子〈ムン・ミョンジャ〉が菅沼に語った。「角栄さんがクビになった最大の原因は何か知ってますか。それは日中国交正常化ですよ。もっといえば台湾問題なんですよ」と。キッシンジャーは田中角栄を「アンプレディクタブル・ガイ(何をやらかすかわからない野郎)」だと罵倒し、「あんな田舎者はもう徹底的にやっつける」と言った。エアフォースワンに同乗を許された彼女が直接聞いた話である。

 大東亜戦争以来、アメリカはずっと蒋介石政権を援助してきた。夫人の宋美齢もアメリカでは大変な人気があった。アメリカが台湾の存在に苦慮する中で突然日本が中国に手を出したわけだ。キッシンジャーの目には「身の程知らずな属国」と映ったのだろう。

 橋本龍太郎もまた日歯連闇献金事件(2004年)で失脚し、2年後に亡くなった。橋本はコロンビア大学で行った講演後の質疑で「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります」と発言し、翌日のニューヨーク市場は1987年のブラックマンデー以来最大の192ドルの下げ幅を記録した。これに対する意趣返しだと囁かれた。

 我々は大東亜戦争に敗れても尚、アングロサクソンの本当の恐ろしさを理解していないのだろう。国際社会にあって人の好(よ)さは致命的なマイナスとなる。第一次安倍政権もまたアメリカによって潰された

 田中角栄が葬られた後で堀田力や立花隆がメディアや出版界で活躍したのもアメリカからのご褒美に違いない。

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2018-04-21

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