2011-12-19

バッハをキリスト教に閉じ込めてはならない/『J・S・バッハ』礒山雅


 私は、バッハにおけるキリスト教の役割を軽視する考えには、絶対に反対である。バッハにとってこれほど大切だったものを尊重し、その内容を知り、その影響を考えることは、正しいバッハ理解のための不可欠の条件であると思う。その意味では、聖書の勉強がたいへん役に立つ。
 だが、だからといってバッハを、キリスト教に閉じ込めてはならない。バッハを教会で聴くのはいいものだが、演奏の場を教会に限るべきではないだろう。それと同じように、バッハのメッセージも、当時の教会の教えにすべて還元されるべきではない。むしろわれわれは、バッハがその教えの上に立ちながら、いかに国境と時代を超えた作品を作り出したかに、目を注ぐべきである。
 バッハの人間理解に深さが感じられるのは、彼が人間の概念を、いつも人間を超えたものとの関係においてとらえているからではないだろうか。

【『J・S・バッハ』礒山雅〈いそやま・ただし〉(講談社現代新書、1990年)】

 我が音楽の嗜好は20代でロックからブラックミュージックへと進み、ワールドミュージックを経て沖縄ポップスに辿り着いた。そして40代の後半になってTha Blue HerbとSIONの歌声に耳を委ねている。そんな私だが「一曲だけ選べ」と言われたら、迷わず『マタイ受難曲』と答える。バッハと出会ったのは丸山健二の小説でのこと。

丸山健二と『マタイ受難曲』/『虹よ、冒涜の虹よ』丸山健二

 直ちに名演との誉れ高いカール・リヒター指揮の1958年盤を取り寄せた。丸山の形容は決して大袈裟なものではなかった。

 礒山のリベラルな精神が見事にバッハを捉える。リベラルとは中途半端を意味しない。常に別の可能性を模索し得る柔軟な精神性を指すのだ。

 世界はイデオロギーという絵の具で色分けされている。つまり「所属」を通して人間を判別するのだ。どの国家、どの宗教、どの政党、どの学校、どの企業、どの地域に所属しているのか? 氏素性(うじすじょう)というのも一緒である。

 我々はありのままの人間を見つめる前に敵か味方かを問うのだ。これは多分本能に基づいているのだろう。石器時代であれば、「騙(だま)される」ことは死を意味する。

 それゆえ世界の挨拶は「味方であること」を示すサインとなっている。握手は利き腕に武器を持っていない証拠であるし、日本のお辞儀は人間の急所である頭部を相手に差し出す行為だ。ハグも攻撃され得る距離に身を委ねる営みである。

 例えば礒山とは反対にクリスチャンとしてのバッハを論じることも可能だろう。しかしバッハという人物の幅を狭めることで、多くの共感を獲得することは困難であろう。

 礒山が見つめるのは「人間バッハ」である。視点の高さがバッハという地平を豊かに広げる。

J・S・バッハ (講談社現代新書)バッハ:マタイ受難曲

バッハはリズム、モーツァルトはメロディ、ワーグナーはハーモニー/『J・S・バッハ』礒山雅
バッハ「マタイ受難曲」カール・リヒター指揮
「ヨハネ受難曲」「マタイ受難曲」バッハ

名作のタイトルに一文字足すとよく分からなくなる

パコ・ラバンヌ(Paco Rabanne) 2012年春より


 後ろ姿、ではない。帽子から目が覗(のぞ)いている。メタリックカラーがぴったりと身体にフィットする。近未来というスタイル。機能を兼ね備えた美しさが性的なメッセージを斥(しりぞ)けている。足元を軽くしたセンスがまた憎い。

pac

Paco Rabanne - Paris Fashion Week: Spring 2012

「シリア政権打倒への西洋諸国の戦略」ティエリ・メサン


 シリアではイスラエル安定のための現政権打倒計画が進んでいる。2011年6月13日。

「9.11米同時多発テロ 知られざる事実」エリック・ローラン



戦争好きブッシュとアメリカブッシュの「聖戦」―宗教、ビジネス、闇のネットワーク石油の隠された貌終りなき狂牛病―フランスからの警鐘

9.11テロ、ペンタゴン攻撃はミサイル「トマホ-ク」か



9.11 ~N.Y.同時多発テロの衝撃の真実~ [DVD]

2011-12-18

過去65年で未成年者数万人が性的虐待被害、オランダ教会


 オランダの独立調査委員会は16日、国内のカトリック教会で1945年から2010年までの間に数万人の未成年者が神父、修道士らの教会関係者から性的虐待を受けていたことが判明したとの報告書を発表した。子どもの被害者は数千人。

 加害者約800人の身元も確認し、うち少なくとも105人は生存していると述べた。聖職の座に依然就く人数は不明。

 悪質なものから軽微なものまでの虐待の被害者は後遺症に数十年悩み、専門的なカウンセリングが必要な場合もあると指摘した。オランダ人の信仰宗教では3割を占めるカトリックが最大宗派。

 今回調査は教会関係者による性的虐待問題が増大していることを受けて開始された。独立調査委によると、1795件の虐待情報を入手し、加害者の身元に関する手がかりも得た。発表した報告書は昨年3月から同10月までの間に得た具体的なデータに加え、教会の公文書分析からの情報などを基に作成した。

 性的虐待が広がった背景について、教会側は1950年代までにもさかのぼるこの問題の存在を知らなかったわけではないと指摘。ただ、多くの場合、教会は防止のための適切な措置や被害者への配慮に欠けていたと主張している。未成年者の性的虐待がオランダ社会で広範に起きていることも作用したとし、教会の公文書の分析では聖職者が若い時に虐待の犠牲者だった例もあったと指摘した。

 虐待の被害者の救済方法については金銭的な賠償が必要と強調、教会側の真剣な対応を求めた。加害者と犠牲者の会合もここ数年設けられ、多くの場合、加害者や教会責任者が遺憾の意を表明していると説明。謝罪や賠償の表明は2000年以降に増えているという。

CNN 2011-12-17