2014-11-18

国益を貫き独自の情報機関を作ったドイツ政府/『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年

 ・国益を貫き独自の情報機関を作ったドイツ政府
 ・アメリカからの情報に依存する日本

『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 私がドイツにいた頃、BND関係者からは、情報機関が国家にとっていかに重要なのか、よく聞かされた。
 かつてドイツは第一世界大戦(ママ)に敗れたことで、連合国によって、軍の情報機関はすべて廃止に追い込まれた。ドイツが再び立ち上がることを阻止するためだ。
 しかし、ドイツ海軍は、その後ドイツ国防軍の情報長官になった、ヴィルヘルム・カナリス提督が若き士官だった頃、情報士官を集めて民間会社を作った。連合国から禁止されていたため、公式に情報機関は作れなかったが、民間会社を作って、そこで密かに情報活動を行った。
 ナチスが政権を握った後は、民間会社を隠れ蓑にすることもなく、堂々と情報機関が設立された。ドイツ陸軍で対ソ情報活動を行っていた部隊は、第二次世界大戦中、バルト海南岸の東プロイセンの辺りに駐在していた。その部隊の司令官が、後にBND初代長官に就いたゲーレン将軍である。
 敗戦間近になると、ゲーレン将軍らは要員とともに、資料を全部持って、スイスの山中に逃げ込んだ。なぜそういう行動に出たかというと、「我々はもう負ける。しかしいずれ我々の持てる情報を、アメリカが必要とするだろう」という読みがあったからだ。
 第一次世界大戦後に情報聞かを壊滅させられた経験があったから、「何が何でも情報機関を残さなければならない」というただ一心だったという。
 その後、CIAの前身組織であるOSS(戦略事務局)のヨーロッパ本部責任者だったアレン・ウェルシュ・ダレス氏と掛け合った。その甲斐あって、CIAの全面的な支援の下で、対ソ情報活動を専門的に行う「ゲーレン機関」が設立され、独立後に連邦の情報機関であるBNDへと発展していったのだ。
 ドイツには、国が自立するためには、情報機関が必要不可欠だという認識がある。また占領下において、つまり主権のない時期に作られた法律は、独立後はすべて見直すという強い意思があったから、日本のように改正が難しい憲法は作らなかった。ドイツ連邦共和国基本法は、必要とあらばいつでも改正できる基本法であって、憲法と呼ばれるものではない。
 日本は占領期間中に、帝国憲法の改正という形だ。日本国憲法を作ったから、60年以上も改正できないまま今日に至っている。同じ敗戦国にして、これだけの違いがある。
 憲法制定の経緯についてはいろいろなことが言われているが、つまりはアメリカが日本の自立を認めなかったということだ。逆に言うと、独自の情報を集めるシステムがないと、独立自尊の国家としての政策は展開できない。

【『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘(青志社、2012年/旧版、2009年)】

 菅沼光弘がどの書籍においても必ず触れている歴史で、日本独自の情報機関をつくることがアメリカ支配という戦後レジームを変革する第一歩であるとの主張である。

 カナリス提督やゲーレン将軍はドイツを舞台とした冒険小説やミステリで馴染みが深い。菅沼は東大法学部を卒業し公安調査庁に入庁。その後直ちにドイツのマインツ大学へ留学させられているが、これはゲーレン機関で訓練を受けるためであった。菅沼が「最後のスパイ」と呼ばれる所以(ゆえん)である。


 カナリスはアプヴェーアの責任者も務めた。知性と良心を眠らせない人物が皆そうであるように、彼もまた複雑な人物であった。カナリスはSS(ナチス親衛隊)と反目し合っていた。そして最後は部下たちが企てたヒトラー暗殺に協力する。絞首刑にされたのはナチス・ドイツが降伏する1ヶ月前であった。


 ドイツは白人国家であるがゆえに当然、日本とは占領政策が異なった。それでも尚、なぜドイツにはゲーレンがいて、日本にはいなかったかを考える必要があるだろう。小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の生きざま(『たった一人の30年戦争』小野田寛郎)を見れば、陸軍中野学校がそう易々(やすやす)とGHQに屈するとは思えない。


 逆に言えばゲーレンのような先見の明をもつ者が存在しなかったがゆえに日本は戦争に敗れたのだろう。ゲーレン機関は正式にBND(連邦情報局)となる。ゲーレン機関の諜報員はソ連・東欧の各地に配置され、米ソ冷戦下で活躍する。

 戦後憲法が日本のよき伝統を破壊したと菅沼は言う。その一々に説得力がある。更にアメリカは日本に情報機関を持たせないことで完全に属国とした。日本のインテリジェンスはその殆どをアメリカからの情報に頼っているのだ。しかも自民党は1950年台から60年台にかけてCIA(中央情報局)から数百万ドルの資金提供を受けている。つまり日本共産党がソ連のスパイ(『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎)で、自民党がアメリカのスパイであった可能性が強い。

 同様に朝日新聞(慰安婦問題捏造記事)と読売新聞(原発導入のシナリオ 冷戦下の対日原子力戦略)を比較することもできるだろう。正力松太郎には「ポダム」というCIAのコードネームがあった。


 晩年のゲーレン将軍と思われるが、顔つきが菅沼とよく似ている。カナリスもゲーレンも菅沼も国家・国民のためにという国益志向が一致している。彼らこそ国士と呼ばれるのに相応(ふさわ)しい人物だ。

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菅沼 光弘
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2014-11-17

竹原ピストル












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2014-11-16

クリシュナムルティ書評一覧 刊行順


・『阿羅漢道』クリシナムルテ:今武平訳(文党社、1925年)
『ヘンリー・ミラー全集11 わが読書』ヘンリー・ミラー:田中西二郎訳(新潮社、1966年)
『自己変革の方法 経験を生かして自由を得る法』クリシュナムーティ著、メリー・ルーチェンス編:十菱珠樹訳(霞ケ関書房、1970年)
『自由への道 空かける鳳のように』クリシュナムーテイ:菊川忠夫訳(霞ケ関書房、1982年)
『大師のみ足のもとに/道の光』J・クリシュナムルティ、メイベル・コリンズ:田中恵美子訳(竜王文庫、1974年)
『道徳教育を超えて 教育と人生の意味』クリシュナムーティ:菊川忠夫、杉山秋雄訳(霞ケ関書房、1977年)
『英知の探求 人生問題の根源的知覚』J・クリシュナムーティー:勝又俊明訳(たま出版、1980年)
『自我の終焉 絶対自由への道』J・クリシュナムーティ:根木宏、山口圭三郎訳(篠崎書林、1980年)
・『暴力からの解放』J・クリシュナムーティー:勝又俊明訳(たま出版、1982年)
『クリシュナムルティの瞑想録 自由への飛翔』J・クリシュナムルティ/大野純一訳(平河出版社、1982年/サンマーク文庫、1998年)
『クリシュナムルティの日記』J・クリシュナムルティ:宮内勝典訳(めるくまーる、1983年)
・『真理の種子 クリシュナムルティ対話集』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(めるくまーる、1984年)
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 1』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年)
『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 2 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年)
『生と覚醒のコメンタリー 3 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年)
『生と覚醒のコメンタリー 4 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年)
『クリシュナムルティの神秘体験』J・クリシュナムルティ:おおえまさのり監訳、中田周作訳(めるくまーる、1985年)
『生の全体性』J・クリシュナムルティ、デヴィッド・ボーム、デヴィッド・シャインバーグ:大野純一、聖真一郎〈ひじり・しんいちろう〉訳(平河出版社、1986年)
『英知の教育』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1988年)
『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス:高橋重敏訳(めるくまーる、1988年)
『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス:高橋重敏訳(めるくまーる、1988年)
『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス:高橋重敏訳(めるくまーる、1990年)
『未来の生』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1989年)
『学びと英知の始まり』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1991年)
『子供たちとの対話 考えてごらん』J・クリシュナムルティ:藤仲孝司訳(平河出版社、1992年)
『最後の日記』J・クリシュナムルティ:高橋重敏訳(平河出版社、1992年)
『自己の変容 クリシュナムルティ対話録』クリシュナムルティ:松本恵一訳(めるくまーる、1992年)
『クリシュナムルティ 人と教え』クリシュナムルティ・センター編(めるくまーる、1992年)
『気づきの探究 クリシュナムルティとともに考える』ススナガ・ウェーラペルマ:大野純一訳(めるくまーる、1993年)
・『生の全変容』 J・クリシュナムルティ、アラン・W・アンダーソン:大野純一訳(春秋社、1993年)
『瞑想と自然』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1993年)
『人類の未来 クリシュナムルティVSデビッド・ボーム対話集』渡部充訳(JCA出版、1993年)
『ザーネンのクリシュナムルティ』J・クリシュナムルティ:ギーブル恭子訳(平河出版社、1994年)
『自由とは何か』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1994年)
『瞑想』J・クリシュナムルティ:中川吉晴訳(UNIO、1995年)
『私は何も信じない クリシュナムルティ対談集』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、1996年)
『恐怖なしに生きる』J・クリシュナムルティ:有為エンジェル訳(平河出版社、1997年)
『学校への手紙』J・クリシュナムルティ:古庄高訳(UNIO、1997年)
『あなたは世界だ』J・クリシュナムルティ:竹渕智子訳(UNIO、1998年)
『キッチン日記 J.クリシュナムルティとの1001回のランチ』マイケル・クローネン:高橋重敏訳(コスモス・ライブラリー、1999年)
『クリシュナムルティの教育・人生論 心理的アウトサイダーとしての新しい人間の可能性』大野純一著編訳(コスモス・ライブラリー、2000年)
『白い炎 クリシュナムルティ初期トーク集』J.クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2003年)
『リシバレーの日々 葛藤を超えた生活を求めて』菅野恭子(文芸社、2003年)
『知恵のめざめ 悲しみが花開いて終わるとき』J・クリシュナムルティ:小早川詔、藤仲孝司訳(UNIO、2003年)
『自由と反逆 クリシュナムルティ・トーク集』J・クリシュナムルティ:大野龍一訳(コスモス・ライブラリー、2004年)
『片隅からの自由 クリシュナムルティに学ぶ』大野純一著編訳(コスモス・ライブラリー、2004年)
『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール/尾関修、尾関沢人(講談社学術文庫、2005年)
『人生をどう生きますか?』J・クリシュナムルティ:大野龍一訳(コスモス・ライブラリー、2005年)
『しなやかに生きるために 若い女性への手紙』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2005年)
『いかにして神と出会うか』J・クリシュナムルティ:中川正生訳(めるくまーる、2007年)
『既知からの自由』J・クリシュナムルティ:大野龍一訳(コスモス・ライブラリー、2007年)
『智恵からの創造 条件付けの教育を超えて』J・クリシュナムルティ:藤仲孝司、横山信英、三木治子訳(UNIO、2007年)
『変化への挑戦 クリシュナムルティの生涯と教え』J・クリシュナムルティ:柳川晃緒訳、大野純一監訳(コスモス・ライブラリー、2008年)
『世界の「聖人」「魔人」がよくわかる本』一条真也監修、クリエイティブ・スイート編(PHP文庫、2008年)
『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル:小須田健、C・カンタン訳(紀伊國屋書店、2009年)
『わらの犬 地球に君臨する人間』ジョン・グレイ:池央耿訳(みすず書房、2009年)
『回想のクリシュナムルティ 第1部 最初の一歩……』イーブリン・ブロー:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2009年)
『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール:今枝由郎、富樫櫻子訳(トランスビュー、2010年)

宮城谷昌光書評一覧 年代順


・『天空の舟 小説・伊尹伝』
・『太公望』
・『管仲』
『重耳』(講談社、1993年/講談社文庫、1996年)
『介子推』(講談社、1995年/講談社文庫、1998年)
・『孟夏の太陽』
・『沙中の回廊』
・『夏姫春秋』
『晏子』(新潮社、1994年/新潮文庫、1997年)
・『子産』
・『湖底の城』
『孟嘗君』(講談社、1995年/講談社文庫、1998年)
『楽毅』(新潮社、1997年/新潮文庫、2002年)
・『青雲はるかに』
『奇貨居くべし』(中央公論新社、1997年/中公文庫、2002年)
・『香乱記』
・『草原の風』
・『三国志』

2014-11-15

菅沼光弘


 1冊読了。

 90冊目『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘(KKベストセラーズ、2013年)/日本を取り巻くインテリジェンス戦後史。オウム事件については他でも触れられているが、特筆すべきはGRU(グルー/ロシア連邦軍参謀本部情報総局)に深く食い込んでいたのはオウム真理教と統一教会で、オウムに対する武器供与には統一教会が絡んでいると指摘。韓国に統一産業という外郭企業があり、ロシアの武器を転売するのみならず武器製造まで行っているという。