2020-04-06

武漢ウイルス予言の書か?/『闇の眼』ディーン・R・クーンツ


・『ミッドナイト』ディーン・R・クーンツ

 ・武漢ウイルス予言の書か?

ビル・ゲイツと新型コロナウイルス

「僕はね、個人のほうが組織よりも責任を持って道徳的に行動するって信じているんだ」

【『闇の眼』ディーン・R・クーンツ:松本みどり訳(光文社文庫、1990年/原書、1981年)以下同】

「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」(ジョン・アクトン卿)。その権力を与えるのが組織だとすれば「組織は腐敗する、絶対的組織は絶対に腐敗する」と言い換えることができそうだ。組織は不祥事を隠蔽する(『ザ・レポート』スコット・Z・バーンズ監督・脚本・製作)。組織力が強大になればなるほどその傾向は顕著になる。大企業・省庁・マンモス教団・軍隊など。たぶん上層部の報酬と関連性があるのだろう。

「この病気には免疫ってものがありません。敗血症喉頭炎とかありふれた風邪とか――がんのように。運がよければ――それとも、不幸にしてか――一回撃退すると、何度でもかかります」

「ちょうどそのころ、イリヤ・ポパロボフというソ連の科学者が合衆国に亡命してきたんです。この10年間ソ連で一番重要で危険な細菌兵器のマイクロフィルムのファイルを持って。ロシア人はこれを“ゴーリキー400”と呼んでいます。開発されたところがゴーリキー市の近郊のRDNAの実験室だったものですから。これはその研究所で作られた400番めの人口微生物の生存種なのです。ゴーリキー400は完璧な兵器です。感染するのは人間だけ、他の生物はキャリアーにはなれません。梅毒と同じでゴーリキー400も人体の外では1分以上生存できません。ということは、炭疽熱や他の有毒なバクテリアのように物や場所を永久に汚染することはできないのです。保菌者が死ぬと、体内にいるゴーリキー400も体温が30度以下になるやすぐに消滅してしまいます。こういう兵器の利点はおわかりでしょう?」

 元々は「ゴーリキー400」と記されていたのだが後に「武漢-400」と書き換えられたらしい。

40年前のアメリカの小説『闇の眼』に出てきた史上最強の創造上の生物兵器は中国武漢の研究室で作られた。その兵器の名前は「武漢 - 400」 - In Deep
武漢ウイルスを予測した小説の変更は考えていたのと《逆》だという衝撃の事実を知る。そして現在流行しているウイルスの漏洩源が武漢疾病予防センターである可能性を中国の科学者が発表(その後行方不明に) - In Deep


 秘密の研究所で指揮を執っていたのが「タマグチ博士」だった。登場しないのだが、いかにも日本人を想わせる名前である。

 果たして本書は武漢ウイルス予言の書なのだろうか? 違うね。本書をシナリオに採用したということなのだろう。中国政府は突然、「アメリカがウイルスを持ち込んだ」と言い出した。いかにも中国らしい横紙破りだ。私自身、そう思っていた。だが偽りの中に真実が隠されている。昨年の10月18日に武漢で第7回世界軍人運動会(ミリタリーワールドゲームズ)が行われているのだ。このタイミングでウイルスを仕込んだとすればタイミングはぴったり合う。

 我々は何が真実かわからない世界で生きている。多くの情報が真実を覆い隠し、目を逸(そ)らさせ、テレビ画面以外を見えなくする。

 最後に校正を。「機を見てせざるは勇気なり」(314ページ)は「義を見てせざるは勇無きなり」(『論語』)の誤植だろう。クーンツ作品を読んだのは『ミッドナイト』以来のことだが、そこそこ面白かった。

国家は必ず国民を欺く/『ザ・レポート』スコット・Z・バーンズ監督・脚本・製作


・『ゼロ・ダーク・サーティ』キャスリン・ビグロー監督

 ・国家は必ず国民を欺く

『闇の眼』ディーン・R・クーンツ


 9.11テロの容疑者に対してCIAが行ってきた拷問の実態を調査する委員会がオバマ政権下のアメリカ上院で立ち上げられた。CIAが関係者との面談を禁じたため共和党は直ぐに撤退した。ブッシュ政権の罪を暴くことに後ろ暗い気持ちもあったことだろう。主人公は調査スタッフのリーダーに指名されたダニエル・J・ジョーンズだ。アクセスできる情報は文書・Eメールのみ。しかもコピーの持ち出しが許されていない。5年間に渡る調査を経てCIAの蛮行が明らかになった。二人の心理学者が説くEIT(強化尋問テクニック)という手法を用いて容疑者を尋問するのだ。その理論はやすやすと拷問を正当化した。

 逮捕されたのは容疑者とすら言えない人々だった。自白を強要するために水責めが行われる。顔面をタオルで覆って水を掛けるだけだが水中で溺れるのと同じ効果がある。結果的にCIAは科学的根拠もなく、尋問の経験すらない心理学者に8000万ドル以上を支払った。

 5年間かけて作った報告書は公開されることがなかった。ダニエル・J・ジョーンズは様々な圧力に屈することなく情報公開への道を探る。

 この作品は実話に基づいている。

CIAの拷問は「成果なし」 実態調査で分かったポイント

 ワシントン(CNN) 米上院情報特別委員会は9日、米中央情報局(CIA)が2001年の同時多発テロ以降、ブッシュ前政権下でテロ容疑者らに過酷な尋問を行っていた問題についての報告書を公表した。報告書は拷問が横行していたことを指摘し、その実態を明かしたうえで、CIAが主張してきた成果を否定している。

同委員会は「強化尋問」と呼ばれた手法を検証するため、5年間かけて630万ページ以上に及ぶCIA文書を分析し、約6000ページの報告書をまとめた。今回公表されたのは、その内容を要約した525ページの文書。この中で明かされた事実や結論のうち、重要なポイント8点を整理する。

1.「強化尋問」には拷問が含まれていた

同委員会のダイアン・ファインスタイン委員長は報告書の中で、CIAに拘束されたテロ容疑者らが02年以降、強化尋問と称する「拷問」を受けていたことが確認されたと述べ、その手法は「残酷、非人間的、屈辱的」だったと指摘。こうした事実は「議論の余地のない、圧倒的な証拠」によって裏付けられたとの見方を示した。

ベトナム戦争で拷問された経験を持つマケイン上院議員も9日の議会で、報告書の内容は拷問に相当すると言明した。

CIAは厳しい尋問手法が「命を救った」と主張してきたが、報告書はこれを真っ向から否定している。

2.拷問はあまり効果がなかった

「CIAの強化尋問は正確な情報を入手するうえで有効ではなかった」と報告書は指摘する。

CIAは強化尋問が効果を挙げたとする20件の例を掲げているが、報告書はそれぞれの例について「根本的な誤り」が見つかったと主張。こうした手法で得られた虚偽の供述をたどった結果、テロ捜査が行き詰まることもあった。CIAが拷問などによって入手した情報は容疑者らの作り話か、すでに他方面から入っていた内容ばかりだったという。

これに対してCIAは9日、当時入手した情報は「敵への戦略的、戦術的な理解」を深めるのに役立ち、現在に至るまでテロ対策に活用されていると反論した。

3.ビンラディン容疑者の発見は拷問の成果ではない

国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者を捕らえた作戦に、強制的な手法は不可欠だったというのがCIAの主張だ。

これに対して報告書は、同容疑者の発見につながった最も正確な手掛かりは、04年にイラクで拘束されたハッサン・グルという人物が拷問を受ける前の段階で明かしていたと指摘。拷問がなくても必要な情報は得られたとの見方を示す。

4.拷問の末、低体温症で死亡したとみられる拘束者もいた

CIAは拘束者らを消耗させるために、眠らせないという手法を取った。最長180時間も立たせたまま、あるいは手を頭の上で縛るなど無理な姿勢を維持させて睡眠を妨害した。

肛門から水を注入したり、氷水の風呂につからせたりする手法や、母親への性的暴行などを予告する脅迫手段も使われた。

排せつ用のバケツだけを置いた真っ暗な部屋に拘束者を閉じ込め、大音量の音楽を流す拷問もあった。

02年11月には、コンクリートの床に鎖でつながれ、半裸の状態で放置されていた拘束者が死亡した。死因は低体温症だったとみられる。

こうした尋問を経験した拘束者たちはその後、幻覚や妄想、不眠症、自傷行為などの症状を示したという。

同時多発テロの首謀者、ハリド・シェイク・モハメド容疑者は少なくとも183回、水責めの拷問を受けた。

アルカイダ幹部のアブ・ズバイダ容疑者が水責めで一時、意識不明の状態に陥ったとの報告もある。同容疑者に対する水責めを撮影した映像は、CIAの記録から消えていた。

5.CIAはホワイトハウスや議会を欺いていた

CIAの記録によれば、ブッシュ前大統領は06年4月まで強化尋問の具体的な内容を知らされていなかった。強化尋問の対象とされた39人のうち、前大統領が説明を受けた時点で、38人がすでに尋問を受けていたとみられる。CIAに残された記録はなく、これよりさらに多くの拘束者が対象となっていた可能性もある。

報告書によると、CIAはホワイトハウスや国家安全保障チームに対し、強化尋問の成果を誇張、ねつ造するなど「不正確かつ不完全な大量の情報」を流していた。司法省が強化尋問を認めた覚書も、虚偽の証拠に基づいて出されたという。

6.担当者は十分な監督や訓練を受けていなかった

収容施設の監督は経験のない若手に任され、尋問は正式な訓練を受けていないCIA職員が監視役もいない状態で行っていた。

報告書によれば、CIA本部の許可なしで強化尋問を受けた拘束者は少なくとも17人に上った。腹部を平手打ちしたり、冷たい水を浴びせたりする手法は司法省の承認を受けていなかった。ある収容施設で少なくとも2回行なわれた「処刑ごっこ」について、CIA本部は認識さえしていなかった。

7.同時テロ首謀者への水責めは効果がなかった

CIAは同時テロを首謀したモハメド容疑者から、水責めによって情報を引き出したと主張する。しかし当時の尋問担当者によれば、同容疑者は水責めに動じる様子をみせなかった。水責めを終わらせるために作り話の供述をしたこともあるという。

8.尋問手法を立案した心理学者らは大きな利益をあげた

強化尋問の手法開発に協力した2人の心理学者は05年、尋問プロジェクトを運営する企業を設立し、09年までに政府から8100万ドル(現在のレートで約97億円)の報酬を受け取った。

2人ともアルカイダやテロ対策の背景、関連する文化、言語などの知識については素人だったという。

CNN 2014.12.10 Wed posted at 12:38 JST

 びっくりしたのだがダイアン・ファインスタイン役の女優がそっくりである。実際のダニエル・J・ジョーンズ(Daniel J. Jones)は元上院議員のようだ。


 アメリカの実態は中国と遜色がない。かつてのソ連を思わせるほどだ。CIAはブッシュ大統領に知らせることなく拷問を繰り返していた。強大な権力は自分たちの過ちを隠蔽し、平然と偽りの大義を主張する。その意味から国家は必ず国民を欺くと言ってよい。共産主義も資本主義も成れの果てが全体主義に至るのは人類の業病(ごうびょう)か。オーウェルが描いた『一九八四年』は決して他人事ではない。

 何と言ってもキャスティングが素晴らしい。カットバックもユニークで脚本も秀逸だ。エンドロールでニヤリとさせられることは請け合いだ。地味ではあるが映画作品としては『ボーン・シリーズ』より上だ。

2020-04-05

マスク2枚の真相






なぜ政府は「布マスク2枚」を配るのか - ITmedia NEWS

2020-03-30

勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵す/『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹


『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹
『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹
『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦

 ・勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵す

『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 勝者敗因を秘め、敗者勝因を蔵(ぞう)す。
 勝った戦争にも敗(ま)けたかもしれない敗因が秘められている。敗けた戦争にも再思三考(さいしさんこう)すれば勝てたとの可能性もある。
 これを探求して発見することにこそ勝利の秘訣(ひけつ)がある。成功の鍵(かぎ)がある。行き詰まり打開の解答がある。これが歴史の要諦(ようてい)である。(まえがき)

【『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹〈こむろ・なおき〉(講談社、2000年/講談社+α文庫、2001年)以下同】

 21世紀の日中戦争はもはや時間の問題である。マーケットはチャイナウイルス・ショックの惨状を呈しており、4月に底を打ったとしても実体経済に及ぼす影響は計り知れない。既にアメリカでは資金ショートした企業が出た模様。既に東京オリンピックの延期が決定されたが、国民全員が納得せざるを得なくなるほど株価は下落することだろう。そして追い込まれた格好の中国が国内の民主化を抑え込む形で外に向かって暴発するに違いない。

 小室直樹は学問の人であった。自分の知識を惜し気(げ)もなく若い学生に与え、後進の育成に努めた。赤貧洗うが如き生活が長く続いた。あまりの不如意に胸を痛めた編集者が小室に本を書かせた。こうしてやっと人並みの生活を送れるようになった。日本という国には昔から有為な人材を活用できない欠点がある。小室がもっと長生きしたならば中国が目をつけたことと私は想像する。

 日本はアメリカの物量に敗(ま)けたのではない。たとえば、ミッドウェー海戦において、日本は物量的に圧倒的に優勢だった。それでも日本は敗けた。ソロモン消耗戦においても、アメリカの物量に圧倒されないで、勝つチャンスはいくらでもあった。
「勝機(しょうき/勝つチャンス)あれども飛機(ひき/飛行機)なし」などと、日本軍部は、勝てない理由を飛行機不足のせいにしたが、この当時、ソロモン海域(ウォーターズ)における日本の飛行機数はアメリカに比べて、必ずしもそれほど不足してはいなかった。
 アメリカの物量に敗けた。これは、敗戦責任を逃れるための軍部の口実にすぎない。
 あの戦争は、無謀な戦争だったのか、それとも無謀な戦争ではなかったのか。答えをひとことでいうと、やはり、あの戦争は無謀きわまりない戦争だった。
 しかし、無謀とは、小さな日本が巨大なアメリカに立ち向かったということではない。腐朽官僚(ロトン・ビューロクラシー)に支配されたまま、戦争という生死の冒険に突入したこと。それが無謀だったのである。
 明治に始まった日本の官僚制度は、時とともに制度疲労が進み、ついに腐朽(ふきゅう)して、機能しなくなった。軍事官僚制も例外ではない。いや、軍事官僚制こそが、腐朽して動きがとれなくなった。典型的なロトン・ビューロクラシーであった。
 そんな軍部のままに戦争に突入したのは、たしかに無謀だった。その意味で、あの戦争は「無謀」だったのである。

 大東亜戦争の敗因が腐朽官僚にあったとすれば、戦後の日本は「敗者敗因を重ねる」有り様になってはいないだろうか。特に税の不平等が極めつけである。官僚は省益のために働き、天下りを目指して働いている。巨大な白蟻といってよい。日本のエリートがエゴイズムに傾くのは教育に問題があるのだろう。やはり東大が癌だ。

 侍(さむらい)は官僚であった。語源の「侍(さぶら)ふ」は服従する意だ。責任を問われれば切腹を命じられた。個人的には主従の関係性を重んじるところに武士道の限界があると思う。主君が道に背けば大いに諌め、時に斬り捨てることがあってもいいだろう。

 日本は談合社会であり腐敗しやすい体質を抱えている。特に戦後長く続いた自民党の一党支配は政治家を堕落させた。金券腐敗は田中角栄の時代に極まった。そんな政治家に仕えている官僚が腐敗せずにいることは難しい。政官の後を追うように業も落ちぶれたのはバブル崩壊後のこと。日本からノブレス・オブリージュは消えた。

 国防を真剣に考えることのない国民によって国家は脆弱の度を増す。この国の国民は隣国からミサイルが飛んできても平和憲法にしがみついて安閑と過ごしている。日中戦争は必至と考えるが、負けるような気がしてきた。