2014-12-29

映画『ミュンヘン』を見て/『標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録』ジョージ・ジョナス


 ・読後の覚え書き
 ・映画『ミュンヘン』を見て

『暗殺者』ロバート・ラドラム
『子供たちは森に消えた』ロバート・カレン

 スティーヴン・スピルバーグ監督に関しては特に思い入れもなければ、さしたる偏見もない。映画そのものの出来は悪くないと思う。確か封切りを観たはずなのだが、殆ど憶えていなかった。ただしジョージ・ジョナスの原作を100点とすれば、映画は65点程度と言わざるを得ない。つまり及第点以下だ。

 致命的なのは「父と子の物語」が欠落している点である。アフナー(映画ではアブナー)の父親もまたモサド・エージェントであった。かつては英雄と称賛されながらも、不遇な晩年を過ごし、廃人同然になってゆく。

 映画では冒頭にミッション(特命)を伝えるシーンがあり、ゴルダ・メイア首相役のリン・コーエンが本物そのままの雰囲気を漂わせていて、鬼気迫るものがあった。それだけにこれ以降、どうしても原作との違いに目が向いてしまう。

 次にアフナーも父親も自分の仕事の内容を家族には教えていない。後は推して知るべしである。観客に「わかりやすく」伝える手法が仇となり、原作の香気が失われている。

 とはいうものの私が2回以上見る映画作品は極めて数が限られているので、それなりに評価すべき作品なのだろう。

 原作は細部が際立っており、その辺に転がっているスパイスリラーが逆立ちしてもかなわないほどの臨場感に溢れている。アフナーがジェイソン・ボーン(『暗殺者』ロバート・ラドラム)と化せば完璧だった。

 

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