2019-09-03

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情報社会のテロと祭祀―その悪の解析 (1978年)
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共産主義批判の常識 (中公クラシックス)
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動物からの倫理学入門
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増税亡者を名指しで糺す!
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2019-09-01

諜報大国イギリス/『裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー


 ・諜報大国イギリス

・『ベルリン 二つの貌』ジョン・ガードナー
・『沈黙の犬たち』ジョン・ガードナー
・『マエストロ』ジョン・ガードナー

ミステリ&SF

 おそらくケンプは、最後の審判の当日になってもその懐疑的な性格を捨てず、それどころか、みんなの前に進み出て、大天使ガブリエルの職権を証明する書類を見せろと請求し、ガブリエルが自分の身分証明書と天国音楽学校の卒業証明書を提示しないかぎり、審判開始のラッパをたとえ1音符分でも吹き鳴らすことを許さないだろうとは、みんながかねがね噂し合っているところだった。

【『裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー:後藤安彦〈ごとう・やすひこ〉訳(創元推理文庫、1981年)】

 諜報大国といえば真っ先にイギリスの名が上がる。続くのはヴァチカン(市国)である。かつてのソ連は凄まじい深度で資本主義国に浸透したが政治運動の匂いが強い。またアメリカの場合は力を背景にした軍事的な色彩が濃い。

 血塗られたヨーロッパの歴史で生き延びるために権謀術数は欠かせない。昔の国王が国を超えて姻戚関係を結んだ事実を思えば近代ヨーロッパは中国春秋時代の趣がある。産業革命を成し遂げ、七つの海を制覇したイギリスは世界の情報を掌握した。

 余談になるが「大航海時代」というキーワードは日本人の造語らしい(増田義郎〈ますだ・よしお〉による命名)。欧米では「Age of Discovery」(発見の時代)、「Age of Exploration」(探検の時代)というそうだ(Saki T アメリカ在住翻訳家)。近代がヨーロッパ中心主義であったことは動かし難い事実である。とすればヨーロッパ人の思い上がりをはっきりさせるためにも「Age of Discovery」(発見の時代)と表記した方がいいように思う。

「発見の時代」(Age of Discovery/大航海時代)においてヴァチカンは世界中に宣教師を派遣した。宣教師は世界各地で貿易を生業(なりわい)としながら各国情勢をヴァチカンに報告した。宣教師は植民地の尖兵として機能しながら宗教的な侵略を繰り返した。こうした歴史の積み重ねがヴァチカンの重厚なインテリジェンスとして現在も生かされている。

 本書は第二次世界大戦と1970年代を行き来するエスピオナージュである。ジョン・ガードナーはイアン・フレミング亡き後、007シリーズを引き継いだことで知られるが本物のスパイはどこまでも官僚である。ただし日本の官僚と異なるのは工作活動における言葉の操り方である。私からすれば修辞学の粋を凝らしたような駆け引きで、「こいつらの頭の中は一体どうなってるんだ?」と溜め息をつくばかりである。

 実際にナチスはノストラダムスの予言を都合よく利用したようだ。

 1939年の冬に、ベルリンの宣伝相官邸でゲッベルスは婦人のマグダからいきなり起こされた。彼女はノストラダムスの予言詩集を手に、或る部分をゲッベルスに指し示した。

 英国の政策は七度変わりそして二百九十年間血に染まるだろう
 独の支配から自由ではあり得ず
 ポーランドは東方の焦点となる(3章57番)

 その詩を読んだゲッベルスは、ノストラダムスの大予言をナチスの宣伝に使うと思い至ったと言われている。

ノストラダムスの大予言とヒトラー | ハイパー道楽の戦場日記

 ハービー・クルーガー・シリーズは3部作で番外篇が1冊ある。いずれも500~700ページのボリュームで満腹感を味わえる。初めて読んだのは20年以上前のことだが二度目の方が面白く読めた。

裏切りのノストラダムス (創元推理文庫 204-1)
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2019-08-28

浸水被害~クルマの水抜き穴



2019-08-27

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予言がはずれるとき―この世の破滅を予知した現代のある集団を解明する (Keiso communication)
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2019-08-26

軍事費&GDP推移



2019-08-25

日本の家紋と西洋の紋章/『弱者の戦略』稲垣栄洋


 ・日本の家紋と西洋の紋章

『自然観と科学思想 文明の根底を成すもの』倉前盛通

 日本の家紋によく使われる十大紋は「鷹の羽、橘、柏、藤、おもだか、茗荷、桐、蔦、木瓜、かたばみ」であるとされている。
 このうち鷹の羽を除く九つは、すべて植物である。日本の家紋は植物をモチーフにしたものが多い。
 一方、ヨーロッパの紋章を見ると、獅子や鷲、ユニコーンなど、いかにも強そうな動物が居並んでいる。日本にも強そうな生き物はいそうなものなのに、日本人は、どういうわけか食物連鎖の底辺にある植物をシンボルとしているのである。
 見るからに強そうな生き物ではなく、何事にも動じず静かに凛と立つ植物に日本人は強さを感じた。そして、自らの紋章として選んだのである。
 不思議なことに、十大紋のうち、「おもだか紋」と「かたばみ紋」は雑草である。特に戦国時代に活躍した勇猛な武将は、雑草の家紋を好んだ。オモダカは田んぼに生えるしつこい雑草である。ところが武将は、この雑草を「勝ち草」と呼んで尊んだのである。また、カタバミも畑や道端に生える小さな雑草に過ぎない。どうして、戦国武将は、雑草を家紋に選んだのだろうか。
 田んぼや畑の雑草は、抜いても抜いても生えてきて、どんどん広がっていく。戦国武将はこのしぶとさに子孫繁栄の願いを重ねたのである。戦国武将にとって、もっとも大切なのは、生き残って家を存続させることである。百戦錬磨の猛者たちは、田畑の小さな雑草にそんな強さを見出していたのである。

【『弱者の戦略』稲垣栄洋〈いながき・ひでひろ〉(新潮選書、2014年)】



 明らかに日本の家紋の方がシンボル姓が高い。マンダラパワーのようなものが窺える。また西洋が特別なものに価値を感じるのに対し、日本はありふれたものに眼差しを注(そそ)いだ。

 現在の強弱よりも永続性に重きを置いた日本人の価値観は花鳥風月を愛でる心性から生まれたのだろう。そして美意識は、侘(わ)び・寂(さ)び・もののあわれに行き着く。華麗とは反対方向に進む心象が不思議である。

 紋章については倉前盛通〈くらまえ・もりみち〉が『自然観と科学思想 文明の根底を成すもの』(南窓社、1976年)において「世界で紋章を有する地域は西欧と日本のみである。これは正確な意味の封建社会の成立した地域であり、古代官僚制や古代帝王姓が最近まで続いてた地域には紋章は発生しなかった」と指摘している(「第二章 日本シャーマニズムの情報祭祀」)。

囚人のジレンマと利他性/『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー


『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー
『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性』高橋昌一郎

 ・利己的であることは道理にかなっている
 ・囚人のジレンマと利他性

『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『道徳性の起源 ボノボが教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール
『ママ、最後の抱擁 わたしたちに動物の情動がわかるのか』フランス・ドゥ・ヴァール
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
・『ゲノムが語る23の物語』マット・リドレー

必読書リスト その五

 ところが、ある一つの実験によってこの結論は覆されたのである。30年ものあいだ、囚人のジレンマからまったく誤った教訓がひきだされていたことがこの実験で示されたのである。結局のところ、利己的な行為は合理的ではないことがわかった。ゲームを2回以上プレイする場合には。

【『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー:岸由二〈きし・ゆうじ〉監修:古川奈々子〈ふるかわ・ななこ〉訳(翔泳社、2000年)】

「設定」を変えれば全く異なった結果が出る。設定に縛られてきた30年間は脳の癖を示してあまりあり、人間の思い込みや先入観の強さに驚く。現実をゲームに当てはめてしまえば単純な図式しか見えてこない。むしろゲームの方を現実に近づけるべきだ。

 メイナード・スミスのゲーム(※タカとハトの戦い)は生物学の世界の話だったため、経済学者には無視された。しかし、1970年代後半、人々を当惑させるような事態が起こった。コンピュータがその冷静で厳格かつ理性的な頭脳を使って囚人のジレンマゲームをプレイし始めたのである。そして、コンピュータもまた、あの愚かで無知な人間とまったく同じ振る舞いをしたのである。なんとも不合理なことに、協力しあったのだ。数学の世界に警報が鳴り響いた。1979年、若い政治学者、ロバート・アクセルロッドは、協力の理論を探求するためにトーナメントをおこなった。彼は人々にコンピュータ・プログラムを提出してもらい、プログラムどうしを200回対戦させた。同じプログラムどうし、そして他のプログラムともランダムに対戦させたのである。この巨大なコンテストの最後には、各プログラムは何点か得点しているはずである。
 14人の学者が単純なものから複雑なものまでさまざまなプログラムを提出した。そしてみんなを驚かせたことは、「いい子」のプログラムが高得点を獲得したのである。上位8個のプログラムは、自分から相手を裏切るプログラムではなかった。さらに、優勝者は一番いい子で一番単純なプログラムだったのだ。核の対立に興味を持ち、おそらく誰よりも囚人のジレンマについては詳しいはずのカナダの政治学者アナトール・ラパポート(彼はコンサート・ピアニストだったこともある)は、「お返し(Tit-for-tat:しっぺ返し戦略とも言う)」というプログラムを提出した。これは最初は相手に協力し、そのあとは相手が最後にしたのとまったく同じことをお返しする戦略である。「お返し戦略」は、現実にはメイナード・スミスの「報復者戦略」が名前を変えたものである。
 アクセルロッドは再度トーナメントを開催した。今度はこの「お返し戦略」をやっつけるプログラムを募集したのである。62個のプログラムが試された。そして、まんまと「お返し戦略」を倒すことができたのは…「お返し戦略」自身だったのである。またしても、1位は「お返し戦略」であった。

 貰い物があればお返しをする。痛い目に遭わされれば仕返しをする。これは我々が日常生活で実践している営みだ。つまり既に形骸化したと思われている冠婚葬祭や、失われてしまった仇討ち・果たし合い(西洋であれば決闘)といった歴史文化にはゲーム理論的な根拠が十分にあるのだ。すなわち、いじめやハラスメントを受けて泣き寝入りすることは自らの生存率を低くし、社会全体のモラルをも低下させてしまうことにつながる。

 そう考えると「目には目を、歯には歯を」(より正確な訳は「目には目で、歯には歯で」)というハムラビ法典の報復律も社会を維持するための重要な価値観であったことが見えてくる。

 社会を社会たらしめているのは相互扶助の精神であろう。「持ちつ持たれつ」が社会の本質であり、互いに支え合う心掛けを失えばそこに社会性はない。