2019-01-20

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2019-01-18

人生の目的/『中国古典名言事典』諸橋轍次


『中国古典 リーダーの心得帖 名著から選んだ一〇〇の至言』守屋洋

 ・狂者と狷者
 ・人生の目的
 ・「武」の意義

『身体感覚で『論語』を読みなおす。 古代中国の文字から』安田登

必読書リスト その五

 朝(あした)に道を聞(き)けば、夕(ゆう)べに死すとも可なり。(『論語』「里仁」〈りじん〉)

 もしも、朝、真実の人の道を聞き、これを体得しえたならば、その夕べに死んだとしても、それで悔いはないのだ。
 人間のあり方、生き方を知ることは、それほどにも重大事なのである。

【『中国古典名言事典』諸橋轍次〈もろはし・てつじ〉(新装版、2001年/座右版、1993年講談社、1972年講談社学術文庫、1979年)】

 漢字の力が文語体を通して十全に発揮される。中国古典の名言が胸に迫ってくる理由はここにある。寺子屋の素読に四書(『大学』『中庸』『論語』『孟子』)五経(『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』)が採用されたのもひとえに文語体の雄勁(ゆうけい)によるものと考える。

 孔子の言葉は雪山童子(せっせんどうじ)の精神そのものである(雪山堂~店名由来物語)。普通、道は目的地までの経路と考えられる。ところが東洋思想は道そのものを目的に変えた。日本では技を極めることよりも人としての格を錬成するところに価値を見出した。仏道に始まり武士道・柔道・茶道に至るまで生き方を問う世界となっており、道は自(おの)ずから法(真理)へと向かう。

「今何が欲しいか?」と尋ねられて即答する内容にその人の真価が現れる。男の場合、往々にしてクルマ・美女・不動産の類いを欲し、年を重ねると地位・名誉・資産を求める。努力する人は才能を、戦う人は力を、抑圧されている人は解放を望む。幸福とは自由の度合いであろう。やがては自らの自由よりも人々を自由に扱える政治力・権力へと欲望は向かう。

 私が「夕べに死す」ことを覚悟できないのはなぜか? そこに私の課題と行き詰まりがあるのだろう。欲望に衝き動かされる人生は決して満たされることがない。全てを手に入れた暁に訪れるのは虚(むな)しさである。やがては得た物を失う恐怖に取りつかれ、静かに迎えつつある死にたじろぐことは避けようがない。悩みは欲望から生まれるのだ。

 この世で絶対なるものは光の速度と生きとし生けるものの死である。死は真理である。ただしそれを解き明かすことは至難である。

 

2019-01-16

加藤清隆×須田慎一郎


 虎ノ門ニュースより遥かに面白い。30人以上の逮捕者が出てもマスコミが報じない関西生コン事件、ファーウェイ問題は米中の覇権争い、日本人から資金を集め中国で商売をするソフトバンク、基軸通貨にならない人民元、日産内紛の下請け会社となった東京地検特捜部~朝日新聞を使った世論工作の失敗、英仏では2040年以降ガソリン車・ディーゼル車・ハイブリット車が販売禁止など。







創価学会の墓地ビジネス/『週刊東洋経済 2018年9/1号 宗教 カネと権力』


『創価学会秘史』高橋篤史
『ジャーナリズムの現場から』大鹿靖明

 ・創価学会の墓地ビジネス

 当初、学会は運動公園なども併設しようと、ゴルフ場全体を買収する方針だった。が、交渉の最終段階で半分に絞り込んだ。それでも買収価格が引き下げられることはなかった。「牧口さんの出身地だからどうしても欲しかったんでしょう」と前出の役員は振り返る。
 もっとも、ここでも地元の反対がネックだった。12年11月、久米地区が住民投票を実施したところ、反対が6割に達したのである。
 それでも利害が一致していた学会側と柏崎黒姫観光は断念しなかった。当初は集落に近い海側のアウトコースを墓地に充てる計画だったが、山側のインコースに変更。さらに地元へのアメも用意した。集会施設の駐車場拡張など4000万円の整備費と、年120万円の町内会費を10年間納め続けることを約束したのだ。関係者は70戸余りの集落を1軒1軒回り同意書を取っていった。
 前出の役員によると、話がほぼまとまると、学会御用達で知られる不動産会社「東京昇栄」が交渉に加わった。学会関係者が初めて顔を見せたのは、市内の学会施設で行われた契約調印の場だった。(高橋篤史)

【『週刊東洋経済 2018年9/1号 宗教 カネと権力』(東洋経済新報社、2018年)】

 2019年11月に完成予定の「牧口記念墓地公園」である。牧口常三郎〈まきぐち・つねさぶろう〉は創価学会の初代会長で柏崎(新潟県)出身だ。ま、カジュアルな聖地主義といってよい。ネット上に東京昇栄の企業情報は見当たらず。隠密企業というわけだ。

 5000万円もの余計なカネを支払うのは先行投資に決まっている。金額に見合うだけのリターンがあるのだ。それを負担するのはもちろん創価学会員である。教団とは信者からカネを毟(むし)り取るシステムのことだ。自ら喜んで騙される人々を信者とは申すなり。

 それに対してつべこべ言うのはお門違いだ。むしろ経済活動に貢献していることを称(たた)えるべきだろう。創価学会以外の新宗教も取り上げられているのだが、書き手に依存した誌面作りとなっていて底が浅い。電車で読むにはうってつけの内容だ。

 宗教ネタを扱う時点で東洋経済新報社に知恵のないことがわかる。他人の財布の中身を心配するのが彼らの仕事なのだろう。


政党が藩閥から奪った権力を今度は軍に奪われてしまった/『重光・東郷とその時代』岡崎久彦


『日米・開戦の悲劇 誰が第二次大戦を招いたのか』ハミルトン・フィッシュ
『繁栄と衰退と オランダ史に日本が見える』岡崎久彦
『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『陸奥宗光』岡崎久彦
『小村寿太郎とその時代』岡崎久彦
『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦

 ・政党が藩閥から奪った権力を今度は軍に奪われてしまった
 ・溥儀の評価
 ・二・二六事件前夜の正確な情況

『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦
『村田良平回想録』村田良平
『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 陸奥(むつ)は、伊藤博文の知遇と土佐の自由党の力を背景に、小村は、桂太郎に代表される志を同じくする明治第二世代の強い国権主義潮流のうえに乗って、そして幣原(しではら)は、議会民主主義の大道(たいどう)のもとに、選挙で権力を掌握した民政党の多数の力をもって、それぞれの政策を実行した。
 しかし、昭和期の政治家、外交官は誰一人こういう強い政治力の背景をもたなかった。裏からいえば、誰も軍の独走を抑える政治力をもたなかったのである。
 政党が藩閥(はんばつ)から奪った権力を今度は軍に奪われてしまったのである。その理由はすでに見てきたように、大正デモクラシーが日本が達成した初めての政党政治であったために、「デモクラシーは最悪の政体であるが、他の政体よりもまし」という哲理を、まだ一般国民が当然のこととして受け入れるゆとりがなく、党争、腐敗などの政党政治の否定的な側面に国民が失望し、それに代る他(た)の勢力、とくに軍に国民が期待をもったことにある。

【『重光・東郷とその時代』岡崎久彦(PHP研究所、2001年/PHP文庫、2003年)以下同】

 岡崎の史観は政党政治を基軸に据え、大正デモクラシーを肯定的に捉えている。1890年(明治23年)に第1回衆議院議員総選挙が行なわれているので大東亜戦争敗北(1945年〈昭和20年〉)までの半世紀を政党政治の揺籃(ようらん)期といってよいだろう。傑出したリーダーは存在したものの国民的な政治意識の成熟には時間を要した。長い間、戦勝国のアメリカが日本に民主政をもたらしたという誤った歴史がまかり通ってきたが日本にはもともとその土壌があった。

「デモクラシーは最悪の政体であるが、他の政体よりもまし」と語ったのはチャーチルである。第二次世界大戦にあって独裁を許されることのなかった皮肉が込められている。つまり「権力者にとっては最悪」という諧謔(かいぎゃく)なのだ。

 個人的には民主政が集合知を発揮することは難しいと考える。衆は愚の異名である。賢(けん)は個によって発揮され後に続く人が出てくる。集合知は沈黙の中から生まれる(『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン)。大衆が沈黙の内に沈んで投票行動に及ぶことはまず考えられない。

「責任を持たない大衆、集団の力は恐ろしいものです。集団は責任を取りませんから、自分が正しいといって、どこにでも押しかけます。そういう時の人間は恐ろしい。恐ろしいものが、集団的になった時に表に現れる」(『学生との対話』小林秀雄:国民文化研究会・新潮社編)。ネット上の掲示板で人の道が説かれるようになれば私も民主政を信じよう。

 統治形態が王政、貴族政、民主政と変化してきた(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)のは脳の内部世界に連動したものだろう。第二次世界大戦の渦中で民主政と僭主政(独裁制)が拮抗したのも一種の揺り戻しで、人類の思考回路が紆余曲折を経てきた形跡が窺える。つまり、こうだ。社会が巨大化(国家化)してゆく中で人々は単純な判断が許されなくなり、自分と異なる価値観を受け入れる必要が生じた。思索とは反対意見を設定することだ。西洋で哲学の花が咲いた後に民主政へと向かうのは必然であった。人類はこうして熟慮する存在となった。

 私は真に熟慮し得る政治家はその人自身が民主政を体現していると考える。現代の政党政治が利権で動いている以上、形を変えた藩閥政治といってよいだろう。

 国民はたしかに軍人に期待した。国民のイメージのなかでは、党争と利権にまみれた政治家に代って凛々しい軍人が国を指導する姿があったことは否定できない。しかし、国民は、出先の軍の独走や青年将校の下剋上(げこくじょう)まで期待したわけではなかった。
 こう考えると、張作霖爆殺事件(ちょうさくりんばくさつじけん)の犯人を処罰せず下剋上の風潮をつくったことが昭和政局全体の禍根(かこん)となった、という判断には否定しえない真実があるといえる。
「満州で止まっておけばよかった」というのが当時の国際情勢分析からくる国家戦略として――倫理的判断でなく――正しい判断だったとしても、軍の出先に歯止めが利(き)かない状況のもとでは、それは国家戦略の是非の問題ではなく、賭博場(とばくじょう)から負けて帰ってきて「いちばん勝っていたときに帰ってくればよかった」と悔むのと同じことになってしまう。そろそろ潮時だから賭場から帰れといくらいってもいうことを聞かないのだから、戦略も何もない。結局負けるまで――賭場全体を乗っとろうという空想的勝利の場合以外は――いつづけることになるわけである。
 そうなると、そもそも賭場(とば)に行ったこと自体が悪い、そもそも軍人なるものがいたから悪い、というだけの単純な史観になってしまう。
 げんに戦後の日本ではそういう史観が主流であった。もちろんその背後には、冷戦における共産側のプロパガンダもあった。共産側のプロパガンダは、表向きはいろいろな理屈は使っても、ひっきょうその究極の目的は日本の防衛力を弱めておいていざというときに取りやすくしておくことにあったのだから、反戦主義、反軍主義を煽ったのは当然である。
 こうして、第二次世界大戦の歴史の教訓とプロパガンダによる反軍思想の相乗効果で、こうした単純な史観が主流となったわけである。

 歴史の奇々怪々を教えるものとして「張作霖爆殺事件ソ連特務機関犯行説」がある。歴史には多くの嘘がまみれているが、大切なのは史観の陶冶(とうや)である。事実の書き換えによって史観までもが変わるようではダメだ。

 関東軍の動きは民の願いに応えたものだろう。日清・日露戦争に勝っても日本は帝国主義の甘い汁を吸うことが許されなかった。国民は臥薪嘗胆(がしんしょうたん)を唱えて憤激を堪(こら)えた。陸奥宗光、小村寿太郎、原敬〈はら・たかし〉を理解できる国民はいなかった。そして国民の積怨(せきえん)が関東軍という形になったのだ。日本人の脳が近代化できなかった様子がありありとわかる。

 インターネットによって人々は移動することなくつながることが可能となった。もはやつながっているのである。そして実は「つながる環境」があるにもかかわらずつながってはいない。SNSという新しい形は緩やかな関係性を構築させたが、まだ世の中を変えるほどの力にはなっていない。商品ではなく人間のレコメンド機能が出てくると面白い。

重光・東郷とその時代
岡崎 久彦
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