2012-05-02

自然の音色












 寝たきりの病人や意識障害の人に聴かせてあげるとよい。

◎海の音、火の音、森の音を楽しむ

海の音、火の音、森の音を楽しむ






 都市部の喧騒は人工的で神経がささくれ立つ。大自然の心地よい音に耳を預けよ。不思議な落ち着きに包まれる。

自然の音色

杉良太郎の思い


◎小林幸子の騒動呼び掛けにマツコが一喝!杉良太郎「原発の中に入りたかった」

2012-05-01

映画『ZEITGEIST(ツァイトガイスト) 時代精神』2007年


 ・映画『ZEITGEIST(ツァイトガイスト) 時代精神』2007年

映画『ZEITGEIST : ADDENDUM 』(ツァイトガイスト・アデンダム)2008年
映画『ZEITGEIST : MOVING FORWARD』2011年


 キリスト教の起源、9.11テロの真実、金融システムの欺瞞を探ったドキュメンタリー作品。オープニンぐのスピーチはジョーダン・マクスウェル

サンタ=サタン そしてどのように全てが異教徒化されたのか

世界の構造は一人の男によって変わった/『「私たちの世界」がキリスト教になったとき コンスタンティヌスという男』ポール・ヴェーヌ
イエス・キリストの言葉は存在しない
聖書はオリジナルも複製も存在しない
『仏教とキリスト教 イエスは釈迦である』堀堅士

為末大

1冊読了。

 26冊目『インベストメントハードラー』為末大〈ためすえ・だい〉(講談社、2006年)/先週読了。投資入門の好著。為末はtwitterでも秀逸なメッセージを発信している。おとなしい語り口からは窺い知ることのできない炎が燃えている。修羅といっていいだろう。マネーと人生を考える上で格好のヒントを与えてくれる。考えてみればハードルそのものがリスクである。リスクとは避けるものではなくコントロールすべきものだ。為末は陸上以外の世界でも頭角を現すことだろう。

英雄的人物の共通点/『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー


『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ

 ・災害に直面すると人々の動きは緩慢になる
 ・避難を拒む人々
 ・9.11テロ以降、アメリカ人は飛行機事故を恐れて自動車事故で死んだ
 ・英雄的人物の共通点

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム

 人は極限状況に置かれると生理的な現象が変化する。

「時間と空間が完全に支離滅裂になった」と、彼は後に書いている。「わたしのまわりの動きが、最初はスピードを上げているように思えたのに、今度はスローモーションになった。現場はグロテスクな動きをする、混乱した悪夢さながらの幻影のようだった。目にするものはすべて歪んでいるように思えた。どの人も、どの物も、違って見えた」(ディエゴ・アセンシオ、米国大使)

【『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー:岡真知子訳(光文社、2009年/ちくま文庫2019年)以下同】

 脳神経が超並列で機能することで認知機能がフル回転するのだろう。生命が危険に及んだ時、過去の映像が走馬灯のように駆け巡ったというエピソードは多い。ただし、この後で紹介されているが実験では確認できなかったようだ。

 生死にかかわる状況においては、人は何らかの能力を得る代わりにほかの能力を失う。アセンシオは突然、非常にはっきりと目が見えるようになったことに気づいた(実際、テロリストたちに包囲されたあとの数ヵ月間は、視力がそれまでよりよくなったままで、一時的にメガネの度数を下げてもらうことになった)。一方、多くの調査によると、大多数は視野狭窄(きょうさく)になっている。視野が70パーセントほど狭くなるので、場合によっては、鍵穴から覗いているように思えることもあり、周囲で起こっていることを見失ってしまう。たいていの人はまた一種の聴覚狭窄に陥る。不思議なことにある音が消え、ほかの音が実際よりも大きくなるのだ。
 ストレス・ホルモンは、幻覚誘発薬に似ている。

 これは何に対してストレス(≒緊張)を感じるかで変わってくる次元の話であろう。ストレス耐性の低い人は「逃避」のメカニズムが働く。そうすることが本人にとっては進化的に優位であるからだ。グッピーの実験でも明らかな通り、リスクの高い環境で勇気を示せば死ぬ羽目となる。

「準備をすればするほど、制御できるという気持ちが強くなり、恐怖を覚えることが少なくなる」(『破壊的な力の衝突』アートウォール、ローレン・W・クリステンセン)

 確かに「慣れて」いれば対処の仕様がある。恐怖が判断力を奪う。それゆえいかなる状況であろうとも判断できる余地を残しておくことが次の行動につながる。

 彼(ブルース・シッドル、セントルイスの警察学校指導教官)は、心拍数が毎分115回から145回のあいだに、人は最高の動きをすることを発見した(休んでいるときの心拍数はふつう約75回である)。【それ以上になると機能は低下する】

 人間は適度なストレスがある時に最大の能力を発揮する。スポーツをしている人なら実感できよう。才能は練習よりも試合で開花することが多い。

 もっとも意外な戦術の一つは呼吸である。(中略)どうすれば恐怖に打ち勝つことができるのかを戦闘トレーナーに尋ねると、繰り返し彼らが語ってくれたのが呼吸法だった。(中略)警察官に教える一つの型は次のようになっている。四つ数える間に息を吸い込み、四つ数える間息を止め、四つ数える間にそれを吐き出し、四つ数える間息を止める。また最初から始める。それだけだ。

 人体の内部は自律神経によって制御されているが、自律神経系の中で唯一、意識的にコントロールできるのが呼吸である。

歩く瞑想/『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール

 緊張すると呼吸は浅くなり、スピードを増す。その動作がフィードバックされて脳を恐怖で支配する。ヘビに睨(にら)まれたカエルも同然だ。

 黙想をしている人たちは、黙想をしているときに使われる前頭葉前部の皮質の一部で、脳組織が5パーセント分厚くなっていたのである。そこは、そのどれもがストレスの制御を助ける、感情の統制や注意や作動記憶をつかさどる部位である。

 なぜ瞑想ではなく黙想と翻訳したのかは不明だ。原語は「meditation」ではなかったのだろうか? いずれにせよ、瞑想が脳を鍛えているという指摘が興味深い。欲望から離れ、本能から離れる行為が全く新しい刺激を生んでいるのだろう。脳のインナーマッスルみたいなものか。

 ここから本書の白眉となる。大きな事故や災害で英雄的な行動をした人々の共通点を探る。

 オリナー(社会学者サミュエル・オリナーと妻パール・オリナー。400人以上の英雄にインタビュー調査)が発見したことは、いわく言いがたいものだった。「なぜ人々が英雄的行為をするのかについて説明することはできません。遺伝的なものでも文化的なものでも絶対にないのです」。だがまず、何が問題に【ならなかった】かについて考えてみよう。信仰は違いをもたらしていないように見えた。

 まずこのような英雄・勇者を私は「人格者」と定義付けておきたい。人格とは「人間の格」を意味する。また、「格」には段階の他に「法則」「流儀」の意味もある。人格は言動と行動によって発揮される。口先だけの人格者は存在しない。

 仏教における「菩薩」、キリスト教における「善きサマリア人」が人格者を象徴している。彼らは困っている人を見て放置することができない。反射的に寄り添い、自動的に手を差し伸べる。

 では話を戻そう。英雄的人物=人格者の要素は遺伝的なものでも、文化的なものでも、宗教的なものでもなかった。何が凄いかって、ここに挙げられたものは全て「差別の要素」として機能しているものだ。つまり人格が差別的要素と無縁であるならば、人格こそは人間に共通する要素と言い切ってよい。そして差別主義者どもは当然ここから抜け落ちるわけだ。

「善なるものは私どもの専売特許です」――宗教者は皆、そういう顔つきをしている。奴等は自分たちの善を強要し、押し売りする。自分たちだけが真人間で、他の連中は人間もどきだと言わんばかりだ。そんな彼らにとっては深刻な実験結果だ。信仰と人格を関連付ける確証がないのだから。

 政治も行動を予測する要素にはならない、ということがオリナーの研究でわかった。救助者も被救助者もそれほど政治に関心を持っているわけではなかった。しかしながら、救助者たちは概して民主的で多元的なイデオロギーを支持する傾向があった。

 次に熱烈な政党支持者も脱落する(笑)。「民主的で多元的なイデオロギーを支持する傾向」とは「他人の意見を傾聴する者」と考えてよかろう。特定のドグマに染まった人物は「耳」を持たない。彼らは「党の決定に従う」存在である。スターリンの支配下にあってソ連では“「何が正しい文化や思想であるかは共産党が決める」という体制”になっていた。

中国-大躍進政策の失敗と文化大革命/『そうだったのか! 現代史』池上彰

 そして英雄的人物の共通点が浮かび上がる。

 しかし両者の間には重要な違いがあった。救助者のほうが両親との関係がより健全で密接である傾向があり、そしてまたさまざまな宗教や階級の友人を持っている傾向も強かった。救助者のもっとも重要な特質は共感であるように思われた。どこから共感が生じるのかを言うのはむずかしいが、救助者は両親から平等主義や正義を学んだとオリナーは考えている。

他者の苦痛に対するラットの情動的反応/『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール
チンパンジーの利益分配/『共感の時代へ 動物行動学が教えてくれること』フランス・ドゥ・ヴァール

 結局、人格を陶冶する最大の要因は親子関係にあったのだ。驚天動地の指摘である。意外な気もするが、よく考えると腑に落ちる。

 認知機能はバイアス(歪み)を回避することができないが、人格者には「文化」や「宗教」に基づく差別的なバイアスが少ないのだろう。そもそも我々は最初の価値観を親から学んでいるのだ。その価値観を根拠にしてあらゆる事柄を判断するのだから、親子関係から築いた価値観は人生のバックボーン(背骨)と化す。より具体的には親というよりも、「よき大人」というモデルが重要なのだろう。更にこのデータは教育の限界をも示している。

 英雄的行為をとる人々は、日常生活においても「助ける人」であることが非常に多い。

 自分の周囲を見渡せば一目瞭然だ。英雄的素養のある人物は直ぐわかる。

 一方、傍観者は、制御できない力にもてあそばれているように感じがちである。

 主体性の喪失が人生を他罰的な色彩に染めてゆく。これまた親子関係が基調になっているのだろう。人は自分が大切にされることで、他人を大切にする行為を学んでゆくのだ。

 英雄たちは幾度となく自分がとった行動を「もしそうしなかったら、自分自身に我慢できなかったでしょう」という言い方で説明している。

 英雄は「内なる良心の声」に従って行動する。神仏のお告げではない。他人の視線も関係ない。ただ、「自分がどうあるべきか」という一点で瞬時に判断を下す。「それでいいのか?」という問いかけが鞭のように振るわれ、英雄はサラブレッドのように走り出すのだ。

 ここで終わっていれば、めでたしめでたしなのだが、著者はヘビに足を描くような真似をしている。

「利他主義も一皮むけば、快楽主義者なのだ」とギャラップは言う。

 別に異論はない。我々利他主義者は利他的行為に快感を覚えているのだから。たとえ自分が犠牲になったとしても、人の役に立てれば本望だ。

 九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)くとはこのことだ。せっかくの著作を台無しにしたところに、アマンダ・リプリーのパーソナリティ障害傾向が見て取れる。彼女は何の悪意も抱いていないことだろう。そこに問題がある。

 同様の不満を覚えた人は、『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン:上原裕美子訳(英治出版、2010年)を参照せよ。


「リーダーは作られるものではなく生まれつくもの」、トゲウオ研究
脳神経科学本の傑作/『確信する脳 「知っている」とはどういうことか』ロバート・A・バートン
REAL LIFE HEROES
進化における平均の優位性/『病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解』ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ
平時の勇気、戦時の臆病/『病気はなぜ、あるのか 進化医学による新しい理解』ランドルフ・M・ネシー&ジョージ・C・ウィリアムズ

2012-04-30

異常な鼎談 町山智浩













映画の見方がわかる本―『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで (映画秘宝COLLECTION) 〈映画の見方〉がわかる本80年代アメリカ映画カルトムービー篇 ブレードランナーの未来世紀 (映画秘宝コレクション) アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない (Bunshun Paperbacks) キャプテン・アメリカはなぜ死んだか (文春文庫)

蒙古族ホーミー


Music of Mongolia : winter session

 これほどの番組はそうそうお目にかかれるものではない。異なる世界が音楽を通してコミュニケイトし、同じ人間の顔が浮かび上がってくる。理解という英知が悟りに通じる。

ニーナ・シモン / Nina Simone

2012-04-29

クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ、ジョン・ガイガー、J・クリシュナムルティ


 2冊挫折、1冊読了。

錯覚の科学』クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ:木村博江訳(文藝春秋、2011年)/二人の著者は「見えないゴリラ」の実験を考案した心理学者だ。認知科学入門といっていいだろう。値段も良心的だ。文章の構成が悪く、もったいぶった論調となっているのが難点。成毛眞〈なるけ・まこと〉の解説も余計だ。各所に後味の悪さを覚えた。

奇跡の生還へ導く人 極限状況の「サードマン現象」』ジョン・ガイガー:伊豆原弓〈いずはら・ゆみ〉訳(新潮社、2010年)/絶体絶命の極限状況で正体不明の味方が現れ、困難を打開する力を与えてくれる現象があるという。これが「サードマン現象」だ。あまり興味が湧かなかった。いてもいいし、いなくてもよい。ただ、「いる」と信じた場合、サードマンを求める気持ちが生じるところに問題があると思う。幼い頃から守護天使を刷り込まれた影響もあるに違いない。とてもじゃないがクリシュナムルティと併読でき得ず。

 25冊目『真理の種子 クリシュナムルティ対話集』J・クリシュナムルティ:五十嵐美克〈いがらし・よしかつ〉、武田威一郎〈たけだ・いいちろう〉、大野純一訳(めるくまーる、1984年)/原題は「Truth and Actuality」。デヴィッド・ボームとの対談、講話、質疑応答の三部構成。『自我の終焉』か『恐怖なしに生きる』あたりと内容が重複しているような気がした。調べてはいないが。読みやすく、しかもわかりやすい内容であった。大野純一による40ページ近い「あとがき」は読む必要なし。クリシュナムルティ本はこれで51冊読了。

フランスのサルコジ大統領がリビアのカダフィ大統領から政治資金5千万ユーロ〔約53億円〕を受け取っていた



◎サルコジ

2012-04-28

Wayra - Voices of the Wind



Voices of the Wind

インディアンの戒律

9.11テロ以降、アメリカ人は航空機事故を恐れて自動車事故で死んだ/『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー


『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ

 ・災害に直面すると人々の動きは緩慢になる
 ・避難を拒む人々
 ・9.11テロ以降、アメリカ人は飛行機事故を恐れて自動車事故で死んだ
 ・英雄的人物の共通点

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム

 人間の認知回路は常に歪(ゆが)んでいる。そして強い印象を受けるとバイアス(歪み)は強化される。

 1980年代から1990年代にかけて少年犯罪がメディアを賑わした。繰り返される報道が不要な詳細にまで迫り、加害者や被害者のプライバシーをも晒(さら)す。コメンテーターは一様に少年犯罪の増加を憂(うれ)えた。ところが実際は少年による凶悪犯罪は減少していた。

少年犯罪-少年犯罪は増加しているのか
病む社会と少年犯罪を考える

 9.11テロの目的は航空機の乗客を殺害することが目的ではなかった。アメリカの繁栄を象徴するツインタワーに衝突させることで強烈な物語を構成した。アメリカの世論は一気に戦争へと傾き、26日後の10月7日に「対テロ戦争」の御旗(みはた)を掲げてアフガニスタンを攻撃した。

 9.11のあと、アメリカ人の多くは、飛行機の代わりに車で移動しようと決心した。車のほうが安全だと感じられたのだ。さらに空港での、突発的に設定された新しいセキュリティチェックのわずらわしさを考えれば、車のほうが楽なことは確かだった。9.11以後の数ヵ月間に、攻撃以前の同じ時期に比べると、飛行機の乗客数は約17パーセント減少した。一方、政府の概算によると、車の走行距離は約5パーセント増えた。

 だが常識を覆(くつがえ)す恐ろしいことが起こった。9.11以降の2年間に、飛行機の代わりに車で移動していたために、2302人によけいに亡くなったと考えられるのだ。これはコーネル大学の3人の教授が2006年に行なったアメリカの自動車事故についての調査結果である。

【『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー:岡真知子訳(光文社、2009年/ちくま文庫2019年)以下同】

 日航ジャンボ機墜落事故(1985年)の時もそうだった。1984年の国内線旅客の対前年度比は9%増であったが、事故が起こった1985年は2.1%減となり、新幹線を利用する人々が増加した(Wikipedia)。

 それにしても何という運命のいたずらであろうか。安全を求めて車を選んだにもかかわらず、死亡リスクが高まるとは。認知-判断という脳のメカニズムは生死にかかわることが理解できよう。

「アメリカン・サイエンティスト」誌に掲載された2003年の分析によると、1992年から2001年にかけて主要な民間の国内線飛行機で死ぬ可能性は、おおよそ1億分の8だった。それに比べて車で平均的なフライト区間で同じ距離を走れば、約65倍もの危険を伴うのである。

 65倍と聞けば危険の度合いはわかりやすい。しかし1億分の8と1億分の520を比較すると、我々の認知はどうしても分母(1億)に集中する。数値の表現法ひとつで受け止め方は180度異なる。

「狼が出た!」と羊飼いの少年が叫び、大人たちは武器を持って集まってきた。面白がった少年は何度となく嘘をつく。本当に狼が現れた時、大人たちは耳を貸さなかった。そして村の羊をすべて食べられてしまうのだ。


 現代において「狼が出た!」と叫んでいるのは国家であり、メディアであり、専門家であり、大人たちである。原発安全神話はその最たるものだ。嘘や偽りの情報が認知を歪め、誤った判断へと導く。人間は感情の動物である。だからこそ理性を働かせ、正しく「勘定する」ことが重要だ。

2012-04-27

震災後の過酷な生活を示す震災関連死数は福島県がトップ

ユダヤ人に襲われてアラブ人が死亡した場合は国全体が無関心

パレスチナ「土地の日」にもイスラエル軍は群集に発砲

私の名はイスラエル

平安から近世にかけては火葬が主流だった


 わが国最初の火葬例は、公式記録によれば、文武4年(700)に死んだ元興寺(がんこうじ)の僧道昭(どうしょう)である。

【『隠された十字架 法隆寺論』梅原猛(新潮社、1972年/新潮文庫、1981年)】
隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)

2012-04-26

岸田秀、山本七平

1冊読了。

24冊目『日本人と「日本病」について』岸田秀〈きしだ・しゅう〉、山本七平〈やまもと・しちへい〉(文藝春秋、1980年/青土社、1992年/文春文庫、1996年)/一度読んでいる。しかし全く理解できていなかったようだ。繰り広げられる知の饗宴。間髪を入れぬ応酬。解体される日本人の姿。骨太の知性は30年を経ても色褪せることがない。日本文化の伝統として、徳川時代の町人学者から連綿と続く断章取義を挙げている。そして日本社会を構成する原理は「擬制の血縁」である、と。唸(うなり)り続けているうちに読み終えていた。

2012-04-25

【MAD】岡本太郎の言葉



自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫) 芸術は爆発だ!―岡本太郎痛快語録 (小学館文庫) 今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫) 強く生きる言葉

◎『芸術は爆発だ! 岡本太郎痛快語録』、『自分の中に毒を持て』岡本太郎

映画『スライブ いったい何が必要になるのか』


◎生々流転

ミステリー・サークルを持ち出した時点で「ユニークなドラマ」と認識すべきだろう。もちろん宇宙人も。

◎地球外文明(ETC)は存在しない/『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ

飯嶋和一


 1冊読了。

 23冊目『神無き月十番目の夜』飯嶋和一〈いいじま・かずいち〉(河出書房新社、1997年/河出文庫、1999年/小学館文庫、2005年)/昨夜読み終えた。今朝、吐き気を催しながら目が覚めた。アルコール以外の二日酔いは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』以来のことだ。15年前に新刊を購入。本はきれいなままだった。飯嶋和一は寡作なので、アスリートがオリンピックに照準を合わせるように読むタイミングを測る必要がある。常陸国(現在の茨城県)小生瀬(こなませ)村で三百数十人の村民全員が虐殺された。徳川家康の時代のこと。物語は死屍が累々と連なる場面から始まる。果たしてこの村で何が起こったのか? 小生瀬(こなませ)を含む保内(ほだい)は特殊な地域であった。伊達政宗の脅威にさらされる要衝の地ゆえに、半農半士の土豪による自治が長らく認められていた。彼らは月居騎馬衆(つきおれきばしゅ)と呼ばれた。そこは「日本のアフガニスタン」であった。年貢を納めるために打ちひしがれた人生を選んだ百姓とは趣を異にしていた。水戸藩の正史には一行も記されていないという。飯嶋は聖地「火(か)の畑(はた)」に横たわる遺体を指さし、人々の人生に光を当てた。ルビが少なくて読むのが難儀であるが得るものは大きい。

2012-04-24

シリア ディルエルゾル(プロパガンダ創作チャンネル)の撮影現場

動画の最後に写っているマイクにこの衛星テレビ局の名前が読める。ディルエルゾル=プロパガンダの殿堂。このテレビ局は偽情報を作りアルジャジーラなどの偏向チャンネルに送­る役割を果たしている。後方の人々は“民間人”を演じ一斉に叫ぶために撮影監督の指示を待っている。カメラの前では幻の敵に向かって発砲する“叛徒”と指示を与える“上官”。


◎シリア危機 アルジャジーラ情報捏造の現場

シリア情勢 アルジャジーラ特派員はテロリストだった

イスラエル軍で宗教の影響力が拡大

レオポルド・ストコフスキーとの対談/『私は何も信じない クリシュナムルティ対談集』J・クリシュナムルティ


 ・クリシュナムルティとの出会いは衝撃というよりも事故そのもの
 ・あなたは「過去のコピー」にすぎない
 ・レオポルド・ストコフスキーとの対談

ジドゥ・クリシュナムルティ(Jiddu Krishnamurti)著作リスト

 真の対話は化学反応を起こす。著名人による対談は互いに太鼓を抱えて予定調和の音頭を奏でるものが多い。対話の中身よりも、むしろ名前が重要なのだろう。あるいは肩書き。ま、形を変えて引き伸ばした営業や挨拶みたいな代物だ。

 私はクラッシクをほとんど聴かないのでレオポルド・ストコフスキーの名前を知らなかった。フィラデルフィア・オーケストラの著名な指揮者だそうだ(当時)。クリシュナムルティ33歳、レオポルド・ストコフスキー46歳の時の対談が収められている。

 まずはレオポルド・ストコフスキーの指揮を紹介しよう。




 レオポルド・ストコフスキーの戸惑う様子が各ページから伝わってくる。クリシュナムルティ特有の文脈を異次元のもののように感じたはずだ。ストコフスキーは戸惑うたびに注意を払い、問いを深めている。

クリシュナムルティ●直観は、英知の極致、頂点、精髄なのです。

【『私は何も信じない クリシュナムルティ対談集』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(コスモス・ライブラリー、2000年)以下同】

 直感、ではない。直感は「感じる」ことで、直観は「捉える」ことだ。第六感のような感覚的なものではなく、英知の閃(ひらめ)きによって物事をありのままに見通す所作(しょさ)である。

 直観という瞬間性に時間的感覚はない。主体と客体の差異も消失する。そこに存在するのは閃光(せんこう)の如き視線のみだ。

 我々は普段見ているようで見ていない。ただ漫然と眺めているだけだ。あるいは概念やイメージというフィルター越しに見てしまう。つまり、ありのままを見るのではなくして、過去を見ているのだ。これはクリシュナムルティが一貫して指摘していることだ。

ストコフスキー●私はかねがね、芸術作品は無名であるべきだと思ってきました。私が気にかけていた問いはこうです。詩、ドラマ、絵あるいは交響曲は、その創造者の表現だろうか、それとも彼は、想像力の流れの通路となる媒介だろうか?

 本物の芸術は作り手の意図を超えて、天から降ってくるように現れる。意思を超越した領域に真理や法則性が垣間見えることがある。ストコフスキーが只者でないことがわかる。

 無名性は永遠性に通じる。作者の名前を付与したものは自我の延長にすぎないからだ。何であれ世に残すことを意図したものは死を忌避していると考えてよい。

 私は大乗仏教の政治性に激しい嫌悪感を抱いているが、その無名性には注目せざるを得ない。

 クリシュナムルティは次のように応じた。

「創造的なものを解放するためには、正しく考えることが重要です。正しく考えるには、自分自身のことを知らなければなりません。自分自身を知るためには、無執着であること、絶対的に正直で、判断から自由でなければなりません。それは、自分自身の映画を見守るように、日中、受け入れも拒みもせずに、自分の思考と感情に連続的に気づくことを意味するのです」

「無執着≒判断から自由」という指摘が鋭い。我々は何をもって判断しているのか? 本能レベルでは敵か味方かを判断し、コミュニティレベル(社会レベル)では損得で判断している。判断を基底部で支えているのは所属や帰属と考えてよさそうだ。

 社会人として、大人として、親として、日本人として、「それはおかしい、間違っている」と我々は言う。相手を断罪する時、私は「社会を代表する人物」みたいな顔つきをしているはずだ。集団には必ず不文律があるものだが、結局のところ「村の掟」と同質だ。

「判断から自由」――これこそが真のリベラリズムといえよう。せめて判断を留保する勇気を持ちたい。

「いったんはじめられ、正しい環境を与えられると、気づきは炎のようなものです」 クリシュナムルティの顔は生気と精神的活力で輝いた。「それは果てしなく育っていくことでしょう。困難は、その機能を活性化させることです」

「正しい環境」とは脳の環境のことであろう。すなわち思考を脇へ置くことを意味する。思考から離れ、判断から離れることが、自我から離れる=自我からの自由を示す。

「自由な思考」という言葉は罠だ。思考は過去への鎖であり、自我への束縛であり、最終的に牢獄と化すからだ。哲学の限界がここにある。

2012-04-23

ヴェルナー・ゾンバルト、村松恒平


 1冊挫折、1冊読了。

戦争と資本主義』ヴェルナー・ゾンバルト:金森誠也〈かなもり・しげなり〉訳(論創社、1996年/講談社学術文庫、2010年)/原著刊行は1913年。第一次世界大戦が翌年のこと。「戦争がなければ、そもそも資本主義は存在しなかった」との指摘が重い。詳細を極める内容についてゆけなかった。

 22冊目『達磨 dharma』村松恒平(メタ・ブレーン、2009年)/やられた。文章道場は本書の販促が目的だったのだろう。巧みなマーケティングといえる。つまり村松はメールマガジンをソーシャル・ネットワーキングとして活用したのだ。B5判の薄い本で、本文は左ページのみ。短篇というよりは掌編である。ページの余白部分に言葉の響きが広がる。小説自体は「フーン」といった程度ではあるが、味わい深いのは確かだ。

2012-04-22

本当の戦争の話をしよう




本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

米兵は拷問、惨殺、虐殺の限りを尽くした/『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン
ティック・クアン・ドック
画像検索:ベトナム戦争
罪もない少年を殺害し、笑顔で記念撮影をする米兵(アフガニスタン)
米兵、上半身吹き飛んだ遺体と笑顔で記念撮影(アフガニスタン)

「知性とは何か」茂木健一郎



G1サミット2012 第10部分科会 知性とは何か

知性とは何か。太古から人は言語を生み、火を使い、森羅万象の中に法則性を見出すことによって進歩を遂げてきた。闇の深淵に何があるのかという畏怖と探求心は、宗教を生み
­出し、天文学をつくり、ロケットを発明した。見えないものを見ようとする知性は、新たな世界観を育み、世界を変革する力となって、人類をいまだ知らざる土地へと連れて行く­。宇宙を回遊し、インターネットでつながれた情報の海を泳ぎながら、現代における知性は、どのような世界を夢想するのだろうか。脳科学者の茂木健一郎氏が語る知性とは。(­文中敬称略。肩書は2012年2月12日登壇当時のもの)。

スピーカー:
茂木健一郎 脳科学者

聴き手:
國領二郎 慶應義塾大学 教授

2012年2月12日 於:青森

【みどころ】
・才能とは「非典型的な知性」であり、これこそがグローバル社会で求められている
・知性のあり方、学力観を問い直さないと、日本はあぶない
・自然科学者が英語、文系学者が日本語で研究することが相互交流を分断している
・TOEICという検定試験のようなもので英語力を図るのはおかしい
・英語を学ぶ真の意味は、世界の知のバトルや現場の息吹を知るため
・圧倒的な知性の持ち主は、ペーパーテストなしでも話して、書いたものを見ればわかる
・遺伝の相関係数は平均50-60%、あとは環境によって決まる
・スティーブ・ジョブズのように「欠落」が非典型的な知性をはぐくむこともある
・美人は収束進化、皆の顔を平均的にしたものが美人。一方天才は収束的でなく、脳の特定部位の部分最適による
・大事なのはソーシャル・センシティビティ、グループで互いに能力を補い合うことで素晴らしいものを生み出せる
・面倒くさいことを粘り強くすると、脳の回路が活動しジェネラル・インテリジェンスは上がる
・非典型的な知性の育み方はケース・バイ・ケースで脳科学的にも不明
・パッション(受難が語源)、苦しんだ人、欠落した人が持つもの
・天才は、意識が押さえている無意識をうまく「脱抑制」できる人
・何が起こるかわからない状況にも適応できる知性を、いかにはぐくむか

◎茂木健一郎

感動する脳 (PHP文庫) 生命と偶有性 生きて死ぬ私 (ちくま文庫) 空の智慧、科学のこころ (集英社新書)

2012-04-21

学校の先生が絶対に教えてくれないゴールドスミス物語


金銭に対する考え方は、17世紀になると大きく変化した
「Money As Debt」
信用創造のカラクリ
『モノポリー・マン 連邦準備銀行の手口』
大英帝国の没落と金本位制/『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓

避難を拒む人々/『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー


『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ

 ・災害に直面すると人々の動きは緩慢になる
 ・避難を拒む人々
 ・9.11テロ以降、アメリカ人は飛行機事故を恐れて自動車事故で死んだ
 ・英雄的人物の共通点

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム

 災害は被災者だけではなくメディアをも混乱に陥れる。報道陣が「より悲惨な情報」を探し回ることにも起因するのだろう。

 ハリケーン「カトリーナ」の犠牲者たちは、人口の割合からいって、貧しい人たちではなく高齢者だったことが後に判明した。「ナイト・リッダー・ニュースペーパーズ」紙の分析によると、死者の4分の3は60歳以上で、半数は75歳を越えていた。

【『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー:岡真知子訳(光文社、2009年/ちくま文庫2019年)以下同】

 これは知らなかった。念のためWikipediaを参照したところ、案の定「避難命令があったものの、移動手段をもたない低所得者が取り残され」と書かれている。つまり誤った情報が7年を経た今でもまだ生きているのだ。

 更に驚くべき事実が判明する。多くの高齢者が「避難することを拒んだ」のだ。家族の懸命な説得も彼らの心を動かすことはなかった。

 つまり、重要なのは移動手段よりも動機づけだったのだ。

 ここに落とし穴があった。通常の認知レベルでは「被災~避難」という連続性に我々は疑問を抱くことがない。ところが実際は客観的な被災状況がわからず、避難を迷う人々もいれば、避難を思いつかない人々もいるし、更には避難を拒む人々も存在するのだ。

 すなわち巨大ハリケーンは一人ひとりに対して「別な顔」で現れたと考えるべきなのだ。

 今日では、意思決定を研究しているほとんどの人々が、人間は理性的ではないということに同意している。

 そりゃそうだ。だいたい理性を司る大脳新皮質なんてえのあ、脳味噌の上っ面にすぎない。深部にあるのは情動を司る大脳辺縁系だ。実際に上司を殺害するサラリーマンは少ないが、密かに殺意を抱いている連中は山ほどいることだろう(笑)。

 生きるとは反応することだ。快不快を判断するのは理性ではない。極めて本能的な領域だ。つまり我々はまず本能で判断した後で「考える」のだ。理性は感情に基づいていると考えてよかろう。

 コーヒーとドーナツは合計で1ドル10セントである。コーヒーはドーナツより1ドル高い。ドーナツの値段はいくらか?


 最初に出した答えが10セントなら、答えているのはあなたの直観システムだ。それから考え直して正しい答え(5セント)に到達したら、それはあなたの分析システムが直観を支配下に置いたのである。

 個人的に直観という言葉は英知を意味するものと考えているので、ここは「直感」とすべきだろう。経験則に基づく直感的判断をヒューリスティクスという。

 五感による認知機能は膨大な外部世界の情報を網羅することよりも、むしろ大半を切り捨て特定の情報をピックアップしている。我々は「見える」「聞こえる」と実感しているが、実際は「見たいもの」しか見ていないことが認知科学によって判明している。

 固い信念や強い確信を抱く人物ほど世界を固定的に捉える傾向が強い。他人の意見に耳を傾けることができない人物は「死ぬ確率」が高いことを弁える必要がある。

アメリカではデモを行うことが犯罪になった


 
 
2012年3月19日、RT。

NATO軍 リビアで55人以上の民間人を殺害


 
 
アムネスティ・インターナショナルがリビアで無実の民間人を殺害したNATO軍を非難。犠牲者の賠償と調査の開始を求める。2012年3月19日放送。

暴動鎮圧用の電磁波兵器をアメリカ軍が公表


 
 
2012年3月11日放送。

女性は年をとると夫への関心が薄れる、携帯電話記録で立証

女性は年を重ねるにつれ夫や恋人との会話が減り、わが子や孫に関心を向ける傾向があることが携帯電話の通話・メール記録から立証されたとする研究論文が19日、英オンライン科学誌サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)に掲載された。

この研究は英国、フィンランド、米国、ハンガリーの国際研究チームが約320万人を対象に、携帯電話での通話やメール20億件余りを7か月にわたって追 跡調査したもの。データは欧州のある携帯電話事業会社が提供し、研究チームには対象者の年齢、性別、通話時間、送信メール数、郵便番号だけが明かされた。

その結果は、女性の遺伝子には子孫を残そうとする役割が備わっているとする進化論上の説を裏付けるものだった。

携帯電話の記録からは、男女それぞれの対人関係が時と共にどのように変化していくかが示された。研究に参加した英オックスフォード大学(University of Oxford)のロビン・ダンバー(Robin Dunbar)教授によれば、親密な人間関係は男性よりも、女性側の都合に左右される場合が多いという。

「男性にとっての社交とは気楽な付き合いだが、女性は自分の目的をはっきり把握しており、そのためなら迷わず真っすぐ進む」(ダンバー教授)

論文によれば、出産適齢期の女性は異性と交流する時間が長く、45歳を過ぎると女性の関心は娘や孫など若い世代に向く傾向がある。

一方、男性が携帯電話で最もコミュニケーションを取る相手は、生涯を通じて妻や恋人だった。ちなみに、電話やメールの回数は女性より少なかったという。

論文共著者のフィンランド・アアルト大学(Aalto University)のキモ・カスキ(Kimmo Kaski)教授はAFPの取材に、こうした結果は分かりきったことかもしれないが、実際にデータを用いて証明されたのは初めてだと説明した。

AFP 2012-04-20
利己的遺伝子の観点からすれば当然である。女性は妊娠の可能性がなくなった時点でコピー済みの遺伝子を保護するということなのだろう。一方男性はといえば、死ぬまで子をつくれる可能性がある。男は終生にわたってコピー機で、女は途中からファイルキャビネットに変わる。

ロビン・ダンバー教授は「ダンバー数」で知られる人物。人間にとって、平均約150人(100-230人)が「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」とする説だ。

友達の数は何人?―ダンバー数とつながりの進化心理学

2012-04-20

村松恒平、ブレット・N・スティーンバーガー

2冊挫折、1冊読了。

 『[プロ編集者による]文章上達〈秘伝〉スクール(壱) 秘伝』村松恒平(メタブレーン、2002年/増補改訂新装版、2005年)/メールマガジンを編んだ作品。実は私も一度文章を見てもらったことがある。目から鱗が落ちる卓見が随所に光る。それでも読むに堪(た)えなかった。まず質問の内容が薄気味悪い。「一発ビンタを張ってやった方がいいのでは?」と思ってしまう。当然ではあるが質問者は村松に教えを乞うわけだから、へりくだった態度となる。メールマガジンという閉鎖性の内側で醸し出される「サロン的な雰囲気」についてゆけなかったというのが本音だ。ただし、半分しか読まなかったとしても十分勉強になる。

 『[プロ編集者による]文章上達〈秘伝〉スクール(弐) 文章王』村松恒平(メタブレーン、2003年)/というわけで、こちらも挫折した。ウェブ上の文章のせいもあるのだろうが、一行置きに改行するのも疑問に感じた。改行が多いと文章が安っぽくなるというのが私の持論だ。

  21冊目『悩めるトレーダーのためのメンタルコーチ術』ブレット・N・スティーンバーガー:塩野未佳〈しおの・みか〉訳(パンローリング、2010年)/良書。744ページで4000円。これは勉強になった。ただ、8~10章はあまりピンとこなかったので飛ばし読み。「経営多角化」の例えはよくない。トレードスタイルを確立した人には有益な一冊。

STOP N.A.T.O.  NATOはアメリカ主導のテロ組織



シリア情勢 2012年3月16日 ティエリ・メサン



シリア アルジャジーラ偏向報道に批判の声 辞職相次ぐ

2012-04-19

牢獄産業とセキュリティ産業、軍事産業は三位一体





 私営の牢獄は「プライベート・プリズン」とでも言うのだろうか? プライベート・バンクを持っているような連中が経営しているような気がするよ。米ドラマ『プリズン・ブレイク』はガス抜きを目論んだのかもね。

米兵、上半身吹き飛んだ遺体と笑顔で記念撮影(アフガニスタン)


 米ロサンゼルス・タイムズ紙(18日付)は、アフガニスタンで自爆テロで死亡したアフガン人の遺体と記念撮影する米軍兵士の写真を掲載した。

 アフガンでは、国際治安支援部隊(ISAF)要員によるコーラン焼却問題などで米軍などへの反発が強まっており、新たな火種になる可能性がある。

 同紙は、一人の米兵から匿名を条件に写真18枚の提供を受けたという。掲載したのはそのうち2枚で、米兵が、上半身の吹き飛んだ遺体を逆さに持ち上げている地元警察官と一緒に笑顔で写真に収まっている様子などが写っている。

 この米兵は、第82空挺(くうてい)師団の兵士といい、自爆テロの現場を調査した後に撮影されたという。撮影されたのは2010年とみられる。

YOMIURI ONLINE 2012-04-19



アフガン駐留米兵、笑顔で遺体と記念撮影 米紙が写真掲載

 米紙ロサンゼルス・タイムズは18日、アフガニスタンに駐留する米兵が爆弾テロ容疑者とみられる遺体とともに笑顔で記念撮影した写真を紙面に掲載した。パネッタ米国防長官は同日、写真の行為は米国の法や価値観に反するとして強く非難。米軍も関係者の処罰に向けて調査に乗り出した。

 ロサンゼルス・タイムズによると、ある米兵が「指揮系統と規律の乱れによる安全上のリスクに注目してもらいたい」との理由で同紙に18枚の写真を提供。そのうちの2枚を紙面に掲載した。

 このうちの1枚は、テロ容疑者のものとみられる男性の遺体の前で、遺体の手を自分の肩に乗せて笑みを浮かべる米兵と、後ろで遺体に手を伸ばす別の米兵が写っていた写真には「米陸軍第82空挺(くうてい)師団の兵士と、路上爆弾を仕掛けようとして殺されたアフガンのテロ容疑者の遺体」との説明書きが付いている。

 もう1枚では数人の米兵やアフガンの警察官とみられる男たちが遺体の足を持ち上げて笑顔で記念写真に納まり、うち1人は両手で得意げに親指を立てていた。

 同紙はこの写真について、2010年に同師団が南部ザブール州の警察署を訪れて遺体を検分した際に撮影されたものだと伝えている。同紙の広報によれば、写真の信ぴょう性は提供者や国防総省、部隊の指揮官に取材して確認したという。

 武力紛争による傷病者や捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約では、遺体は尊厳を持って接するよう定めており、国際治安支援部隊(ISAF)のアレン司令官も写真の行為を強く非難。米国防総省報道官は、懲戒措置を含めて、事実関係を調べ、軍の制度に従って関係者の処分を行うと表明した。

 パネッタ長官は同紙に対し、敵に攻撃を仕掛ける口実を与えかねないとして写真の掲載を見合わせるよう申し入れたことも明らかにした。これに対してロサンゼルス・タイムズの編集者は「米国がアフガニスタンで行っている任務のすべての局面を読者に伝える義務があると判断した」と説明している。

 アフガニスタンでは今年に入り、米兵による問題行動が相次いで発覚している。1月には遺体に放尿する海兵隊員の動画がインターネットに投稿され、その1カ月後には米空軍基地でイスラム教の聖典コーランなどが燃やされた。3月には陸軍兵が南部カンダハル州の町で民家を襲って銃を乱射、17人を殺害した罪に問われている。

CNN 2012年4月19日

画像
流出時代。南アや中国の精神障害女性レイプ、米兵の死体撮影
罪もない少年を殺害し、笑顔で記念撮影をする米兵(アフガニスタン)
民間人虐殺の米兵に有罪 「戦争記念品」として指切り取る
本当の戦争の話をしよう

ならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰か Democracy Now !




ならず者の経済学 世界を大恐慌にひきずり込んだのは誰か

2012-04-17

フランス人弁護士ジャック・ヴェルジェス「反ユダヤ主義を用いた脅迫を許さない」


 ジャック・ヴェルジェス氏はフランスの弁護士。父はレユニオン人、母はベトナム人。ナチスのクラウス・バルビーを弁護したことで有名。


 既にフランスではユダヤ主義がナチス化しつつある。

◎ジャック・ヴェルジェス

イスラエル人の死とパレスチナ人の死 アメリカメディアの世論操作



崩壊するリビア NATO傀儡政権、部族間紛争



三人の敬虔なる利己主義者/『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 1 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ


 ・ただひとりあること~単独性と孤独性
 ・三人の敬虔なる利己主義者
 ・僧侶、学者、運動家
 ・本覚思想とは時間論
 ・本覚思想とは時間的有限性の打破
 ・一体化への願望
 ・音楽を聴く行為は逃避である

『生と覚醒のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 2』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 3』J・クリシュナムルティ
『生と覚醒のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 4』J・クリシュナムルティ

 先日、三人の敬虔な利己主義者が私のところにやってきた。一人は、〈サンニャーシ〉、世俗を断念した人物であった。二番目は、東洋学者(オリエンタリスト)であり、同朋愛の熱烈な支持者であった。三番目は、すばらしいユートピアの実現を確信している活動家であった。三者はそれぞれ、各自の仕事を熱心に務めていたが、他の二人の心的傾向や行動を見下(くだ)しており、各自の確信によって身を固めていた。いずれもその特定の信念形態に激しく執着しており、三人とも奇妙な具合に他人に対する思いやりが欠けていた。

【『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 1 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ:大野純一訳(春秋社、1984年)以下同】

 サンニャーシとは出家者のことである。今時の日本人の感覚からすれば、剃髪(ていはつ)=出家と考えられがちだがそうではない。「家」の字が意味するのは相続権と財産権の放棄なのだ。それゆえ江戸時代までの「勘当」(かんどう)は文字通り社会的抹殺と同義であった。

 辛辣(しんらつ)、ではない。クリシュナムルティは三人の「ありのままの」姿を見つめているのだ。そして彼らは、聖人、学者、運動家といったモデルを示す。人格者、理論派、行動派と置き換えることも可能だ。また一人の人間の中にも知情意がバランスしている。

 確信を抱く人物は確信に執着し、成功を収めた人物は成功に固執する。彼らにとって確信や成功は自我そのものと化している。彼らは「自分がリーダーである」ことを疑わない。

「三人とも奇妙な具合に他人に対する思いやりが欠けていた」――この実相が重い。たまたま親切な人と出会い、色々と話を聞いているうちに「あれ?」と思ったら、健康食品や宗教の話になっていた、なんてことがあるものだ。彼らは販売や勢力拡張のために「人間を利用する」輩(やから)だ。

 かれら三人は――ユートピア主義者は殊にそうであったが――自分の信ずることのためであれば、自分自身だけでなく友愛をも犠牲にする覚悟がある、と私に言った。かれら三人は――同朋愛の士はとりわけそうであったが――温厚な様子であったが、そこには心の硬さと、優秀な人間特有の奇妙な偏狭さがあった。自分たちは選ばれた人間であり、他人に説明して聞かせる人間であった。かれらは知っており、確信を持っているのであった。

 知識は事物を分断する。「分かる」という言葉が示す通りだ。

「わかる」とは/『「分ける」こと「わかる」こと』坂本賢三

 更に知識は人間の関係を「教える人」と「教えられる人」とに分断するのだ。社会におけるヒエラルキーは「持てる者」と「持たざる者」の上下関係で構成されているが、「持てる者」は重要な情報にアクセスできる権限を付与されている。これも知識と考えてよかろう。

 ブッダは二乗(にじょう)を嫌った。声聞乗(しょうもんじょう/学者)と縁覚乗(えんがくじょう/部分的な悟りを得た人)は自分のものの見方に執着し、離れることがないためだ。彼らは自分の悟りを追求するあまり、不幸な人々を救うことを忘れ去った。

 ただし、これは大乗仏教の立場による小乗批判がベースになっていることを踏まえる必要がある。

「心の硬さ」と「奇妙な偏狭さ」が対話を阻む。一定の地位にある者は、心のどこかで他人をコントロールしようとする。真の思いやりは「善きサマリア人」のように道で擦れ違う場面で発揮される。そこには一片の利害も存在しないからだ。

 偉くなることよりも、単独であることが正しい生き方だ。

ただひとりあること~単独性と孤独性/『生と覚醒のコメンタリー 1 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ

生と覚醒のコメンタリー―クリシュナムルティの手帖より〈1〉生と覚醒のコメンタリー―クリシュナムルティの手帖より〈2〉生と覚醒のコメンタリー〈3〉クリシュナムルティの手帖より生と覚醒のコメンタリー〈4〉クリシュナムルティの手帖より

Jiddu Krishnamurti. 74

2012-04-16

学者が提供するのは「考える」材料であって、「信じる」対象ではない





災害に直面すると人々の動きは緩慢になる/『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー


『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ

 ・災害に直面すると人々の動きは緩慢になる
 ・避難を拒む人々
 ・9.11テロ以降、アメリカ人は飛行機事故を恐れて自動車事故で死んだ
 ・英雄的人物の共通点

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』マシュー・サイド
『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で“正しい決断”をする方法』アトゥール・ガワンデ
『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』 アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム

 いわゆる「サバイバーもの」である。9.11テロ以降に確立されたジャンルと考えていいだろう。「生死を分かった」情況や判断についての考究だ。優れた内容であるにもかかわらず、結論部分で九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)くような真似をしている。これについては後日触れる。

 1983年から2000年の間に起こった重大な事故に巻き込まれた乗客のうち、56パーセントが生き残った(「重大な」というのは、国家運輸安全委員会の定義によると、火災、重症、【そして】かなりの航空機の損傷を含む事故である)。

【『生き残る判断 生き残れない行動 大災害・テロの生存者たちの証言で判明』アマンダ・リプリー:岡真知子訳(光文社、2009年/ちくま文庫2019年)以下同】

 この文を読んで乗り物としての飛行機に不安を抱く人は、危機に際して冷静な判断をすることが難しい。航空機に乗って死亡事故に遭遇する確率は0.0009%である(アメリカの国家運輸安全委員会の調査による)。

いろんな確率

 ヒューリスティクス認知バイアスを避けることができない。

ひらめき=適応性無意識/『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』マルコム・グラッドウェル

「技術者が自分の設計しているもののことを知りたければ、それに強いストレスを与えてみればいい」と、米軍で20年あまり人間行動を研究してきたピーター・ハンコックは述べている。「それは人間についても同じである。普通の状況下で物事がどのように機能するのかを知りたいと思えば、わたしたちがストレス下でどう機能するのかをつまびらかにしてみると、興味深い結果が得られるだろう」。

 災害時における人々の研究は結構なスピードで進んでいる。現実問題と密接に関わっているのだから人々の関心も高い。では、災害に直面した人々の心理や行動にはどのような共通性があるのか?

 いったん否認段階の最初のショックを通り抜けたら、生存への第2段階である「思考」に移ってゆく。何か異常事態が発生しているとわかっているのだが、それをどうしたらいいのかわからない。どのように決断を下すべきだろう? 最初に理解しておくべきことは、何一つとして正常ではないということだ。わたしたちは平時とは異なった考え方や受け取り方をする。

 我々は信じ難い場面に遭遇すると「現実から逃避」するのだ。見て見ぬ振りをし「何かの間違いであって欲しい」と願う。ただ、これ自体は健全な心理メカニズムであって本質的な問題ではない。

(※世界貿易センター爆破事件、1993年)人々は異常なほどのろのろと動いた。爆発から10時間たっても、まだオフィスから避難していない人たちを消防士は発見していた。

「動きが緩慢になる」という事実は重要な指摘で、しっかりと頭に叩き込んでおくべきだ。茫然自失の態(てい)で客観的な判断ができなくなる。「何が起こったのか」が把握できないから、「どうすればよいか」もわからない。

 そして過去の経験も役に立たない。同じような災害を経験した人物が、同じ行動を繰り返した様子が描かれている。

 カナダの国立研究協議会のギレーヌ・プルーは、1993年と2001年の両年に、世界貿易センターでの行動を広範囲にわたって分析した数少ない研究者の一人だ。彼女が目撃したものは、ゼデーニョの記憶と合致する。「火災時における実際の人間の行動は、“パニック”になるという筋書きとは、いくぶん異なっている。一様に見られるのは、のろい反応である」と、雑誌「火災予防工学」に掲載された2002年の論文に彼女は書いた。「人々は火事の間、よく無関心な態度をとり、知らないふりをしたり、なかなか反応しなかったりした」

 たぶん思考回路がセーフモードとなるのだろう。「触(さわ)らぬ神に祟(たた)りなし」的な心理が働くのだ。脳の情動機能には「わからないものは危険なもの」という古代からの刷り込みがあるはずだ。

 笑い――あるいは沈黙――は、立ち遅れと同様に、典型的な否認の徴候である。

 否認兆候としての笑いは意外と多く見受けられる。フジテレビで菊間アナウンサーの転落事故があったが、これをスタジオから見ていた同僚の女子アナは笑っていた。

動画検索

 なぜわたしたちは避難を先延ばしするのだろうか? 否認の段階では、現実を認めようとせず不信の念を抱いている。我が身の不運を受け入れるのにしばらく時間がかかる。ローリーはそれをこう表現している。「火事に遭うのは他人だけ」と。わたしたちはすべてが平穏無事だと信じがちなのだ。なぜなら、これまでほとんどいつもそうだったからである。心理学者はこの傾向を「正常性バイアス」と読んでいる。

「正常性バイアス」とは認知バイスのことである。「火事に遭うのは他人だけ」というのは名言だ。「振り込め詐欺に引っ掛かるのも他人だけ」と思っている人々がどれほど多いことか。いまだに被害者が後を絶たない。

 想像力を欠いてしまえば具体的な訓練に取りかかることは不可能だ。

(※9.11テロの)攻撃後の1444人の生存者に調査したところ、40パーセントが脱出する前に私物をまとめたと答えている。

 死が迫りゆく中で普段通りの行動をするのだ。何と恐ろしいことだろう。知覚の恒常性ならぬ、「世界の恒常性」が作用しているのだろう。

 実際に災害に直面すると群集は概してとても物静かで従順になる。

 それゆえ大声で明確な指示を与える人物が必要となる。羊の群れをけしかける犬のような人物が。

 次の文は、災難は自分のすぐそばでしか起きていないという強い思い込みについて、ゼデーニョが述べているものである。このような思い込みを、心理学者は「求心性の錯覚」と呼んでいる。

 それがこの文章だ。

 以下は人間の心がとてつもない危機をいかに処理するかについて述べたものである。

 わたしの足は動きが鈍くなっていた。というのも、自分が目にしているのは瓦礫だけではないことに気づきはじめたからだ。わたしの頭はこう言っている。「おかしな色だ」。それが最初に思ったことだった。それから口に出して言いはじめる。「おかしな形だ」。何度も何度も頭のなかで言う。「おかしな形だ」。まるでその情報を閉め出そうとしているかのようだった。わたしの目は理解することを拒んだ。そんな余裕はなかった。だからわたしは、「いや、そんなはずはない」と思うような状態だった。やがて、おかしな色やおかしな形を目にしたことの意味するところがついにわかったとき、そのとき、わたしが目にしているのは死体だと気づいたのだ。凍りついたのは、そのときだった。

 思考が減速し、知覚が歪んでいる状態がわかる。つまり「走馬灯状態」と正反対の動きだ。

 そのとき、ゼデーニョはまったく何も見えなくなった。「煙のせいだったの?」とわたしはゼデーニョに尋ねる。「いえ、いえ、そうじゃないわ。あそこには煙はなかった。でも、まったく何も見えなかったの」

 極度の緊張感が視覚をも狂わせる。初めて大勢の人の前で話す時、聴衆の顔を認識することは難しい。「何も見えない」という人が大半であろう。

 緩慢な動作、機能不全を起こした判断力、そして歪んだ知覚。それでも人々は「誤った希望」にしがみつく。死を経験した人物は存在しない。それゆえ「自分の死」は常に想定外だ。「諸君は永久に生きられるかのように生きている」というセネカの言葉が頭の中で反響する。


『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ
被虐少女の自殺未遂/『消えたい 虐待された人の生き方から知る心の幸せ』高橋和巳

2012-04-15

「写真の学校」第二回 写真から人を考える~『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』/竹内万里子&カンベンガ・マリールイズ















ルワンダ ジェノサイドから生まれて

「写真の学校」第二回 写真から人を考える 平成24年2月5日開催記録

主催:Child Pictures Bank

 一冊の写真集『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』をもとにルワンダの人々に想いをはせ人を共に生きることを語り合います。

・竹内万里子 (京都造形芸術大学准教授)
・カンベンガ・マリールイズ(「ルワンダの教育を考える会」理事長)
・村松英俊  (Child Pictures Bank代表)

第一部「写真と言葉がおりなす力」
第二部「写真を通して伝えたいこと」

会 場:大社文化プレイス・うらら館
後 援:BSS山陰放送、山陰中央新報社、島根日日新聞、FMいづも、出雲ケーブルビジョン
出雲市教育委員会、島根県人権推進センター、山陰中央テレビ
協 力:赤々舎、日本ルワンダ学生会議、宿禰餅本舗 坂根屋、大社門前いづも屋、(有)テレビジョンワークス

強姦から生まれた子供たち/『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』写真、インタビュー=ジョナサン・トーゴヴニク