2014-10-18

アメリカの穀物輸出戦略/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年

 ・教科書問題が謝罪外交の原因
 ・アメリカの穀物輸出戦略
 ・中国の経済成長率が鈍化
 ・安倍首相辞任の真相

『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 TPPによって日本が受ける打撃のなかでも、とりわけ農業は深刻な状況に直面することになります。ブッシュ前大統領はいみじくも「主食をよその国に依存しているような国家は独立国家とはいえない」と言いましたが、アメリカがターゲットにしている一つは、まさに日本の主食の自給率をゼロに持っていくことです。
 いま日本人の主食である米の自給率は95%以上を確保していますが、小麦は十数パーセント(ママ)の自給率でしかなく、トウモロコシは100%輸入に頼っています。そして小麦の50%以上、トウモロコシの90%以上をアメリカから輸入しています。こうした構図になったのには理由があって、これまたアメリカの食糧戦略の結果なのです。
 戦後間もない1950年代、アメリカは大量の小麦をかかえて、これをどうさばくか頭を悩ませていました。そこで目をつけたのが、まだ復興途上の敗戦国日本です。そのために何をしたかというと、まずアメリカは余剰農産物処理法という法律をつくり、アメリカの余剰農産物はドル決済ではなくて輸入国の通貨で購入できるとしたのです。当時の日本にドルの蓄えなどありませんから、円で決済できるとなればこれはありがたいと、余剰小麦の輸入に飛びつきました。しかし、アメリカの戦略のすごいところはそれからです。
 余剰農産物処理法には、売却した代金の一部を輸入国内にプールし、アメリカ農産物の宣伝および市場開拓のために使用できる、また余剰農産物の一部は無償で学校給食に供与できるとあって、本来、日本政府から支払われた輸入代金を使って、アメリカは小麦のPR活動を展開するとともに、学校給食はパン食にするというシステムをつくりあげます。当時、小学生だった人はよく憶えているでしょうが、コッペパンに脱脂粉乳というのが学校給食になったのです。もちろん脱脂粉乳もアメリカから提供されたものです。
 一方、厚生省はアメリカの意を受けて、食生活改善運動としょうして日本食生活改善協会という外郭団体を立ち上げ、キッチンカーというものを全国に巡回させて、パンを食べましょう、卵を摂(と)りましょうと小麦粉料理の講習事業を展開しました。さらにマスメディアを使って、日本人の主食である米については、「米ばかり食べていると頭が悪くなる」「脚気(かっけ)や高血圧になる」「背骨が萎縮(いしゅく)する」などとネガティブキャンペーンもやっています。もちろんこれらの活動資金はアメリカが日本国内にプールした円から支出されました。
 その結果どうなったか。1960年頃を境に日本人の食生活ががらりと変わっていきました。それまで一人辺り年間120キロ近くの米を食べていたのが、1960年以降は年々減り続け、いまや半分の60キロまで落ち込んでいます。日本人の主食が完全に様変わりしてしまったのです。国民の主食がこれほど劇的に変化した国は他にありません。
 アメリカの戦略はつねにこうなのです。決して焦らない。時間と金をかけて根底から変革していく。そしてその国の国民が気がついたときには、もはや取り返しがつかないという状態まで追い込んでいくのです。

【『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘(徳間書店、2012年)】

 アメリカの余剰小麦が給食になったのは知っていたが、円で決済ができたとは知らなかった。これこそソフトパワーだ。当時の日本政府は「アメリカの善意」を信じて疑わなかったことだろう。戦略とは物語でもある。食べることを目的にしている国家が、売ることを目的としている国家にかなうわけがない。

 私は菅沼は信用できるが、佐藤優はどうも信用できない。佐藤は鈴木宗男との人間関係を通して信義を貫いたような印象を巧みに演出しているが、該博な知識で何かを隠蔽(いんぺい)しているような疑惑を払拭することができない。きっとイスラエルのスパイだろうと私は睨(にら)んでいる。佐藤はTPP賛成で、同じく官僚上がりの江田憲司もTPPに賛成している。しかも理由が同じなのだ。「日本がアメリカブロックを選ぶか、中国ブロックを選ぶかという選択肢だ」と。

 菅沼によれば、田中角栄がロッキード事件で失脚したことによって、日本の政治家はアメリカを恐れ、尻尾を振るようになったという。ロッキード事件は日中国交回復に激怒したキッシンジャーが仕掛けたものだ。日本の首相は誰が務めようとアメリカのコントロール下にある。そもそも国家の安全保障をアメリカに委ねているのだからアメリカに頭が上がらないのも当然だ。

 エネルギーと食糧は戦略物資なのだ。しかも穀物を始めとする農産物は生産に一定期間を要する。そして市場を席巻するF1種には種がならない。一代限りの野菜なのだ。またモンサント社を始めとする巨大アグリ産業は農業を完全支配しつつある(『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子)。そしてビル・ゲイツはスヴァールバル世界種子貯蔵庫に3000万ドルを投資している。

 そろそろアングロサクソンの誇大妄想と被害妄想が世界を混乱させている事実に我々は気づくべきだろう。



戦後アメリカの小麦戦略/『味噌をまいにち使って健康になる』渡邊敦光
赤い季節/『北朝鮮利権の真相 「コメ支援」「戦後補償」から「媚朝派報道」まで!』野村旗守編
現代の小麦は諸病の源/『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
余ったトウモロコシのために清涼飲料水が発明された/『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二

2014-10-17

教科書問題が謝罪外交の原因/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年

 ・教科書問題が謝罪外交の原因
 ・アメリカの穀物輸出戦略
 ・中国の経済成長率が鈍化
 ・安倍首相辞任の真相

『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 いまは日中関係も日韓関係も北朝鮮との関係もガタガタになっているけれど、その根源はどこにあるのかといえば、第一の要因は、1982年の教科書問題に発しています。これは高等学校の歴史教科書の記述において文部省が日本の中国華北への「侵略」を「進出」と書き改めさせたという報道がマスコミによって一斉になされ、この報道を受けて中国が猛然と反発抗議してきた事件です。
 しかし調べてみると、どの教科書にもそんな事実はなく、マスコミの明らかな誤報だったのですが、いろいろすったもんだしたあげく、あろうことか当時の宮沢喜一官房長官が「今後、教科書検定については国際理解と国際協調の見地から、アジア近隣諸国の感情を害さないように配慮する」と発言しました。いわゆる「近隣諸国条項」というものです。
 そもそも「侵略→進出」の誤報も、一部のマスコミが意図的にミスリードしたふしがあるのですが、そうした流れのなかで日本政府はこのときからひたすら「謝罪外交」の道を歩み始めることになりました。

【『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘(徳間書店、2012年)以下同】

 菅沼光弘はかつて公安調査庁で第二部長を務めた人物だ。公安警察国家公安委員会と混同しやすいので要注意。公安調査庁は情報機関である。

 一読してその見識と憂国の情に胸を打たれる。菅沼は入庁直後、ドイツのゲーレン機関に送られ訓練を受けている。ラインハルト・ゲーレンも健在であった。小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉と同じ精神の光を感じてならなかった。すなわちこの二人は国士といってよい。

陸軍中野学校の勝利と敗北を体現した男/『たった一人の30年戦争』小野田寛郎

 私は本書を開くまで教科書問題が誤報だと知らなかった。つまり30年以上にわたって「右傾化する日本に反発する中国」という構図を信じ込んできたわけだ。ものを知らないことは本当に恐ろしい。

教科書誤報事件
教科書問題の発端「世紀の大誤報」の真実

 しかも事実無根の誤報である。誰かが情報を与え、マスコミが意図的にリークしたわけだ。東アジア諸国の友好関係を阻む動きと理解していいだろう。

 最近、またぞろ韓国は「従軍慰安婦」の問題を持ち出していますが、中国も韓国も北朝鮮も、何か事あるごとに過去のことを引っ張りだしてきては日本を非難する。それに対して日本はひたすら謝罪、謝罪を繰り返してきました。宮沢発言以来、そればかりです。
 ではそれで日中関係がよくなってきたかといったら、少しもよくならない。韓国・北朝鮮ともだんだん悪くなる一方で、謝れば謝るほど相手を外交的に優位に立たせるだけのことです。世界中でこんな稚拙な外交をやっているのは日本だけです。たとえばイギリスはインドをはじめビルマ(ミャンマー)、マレーシア、シンガポールなど東南アジア諸国を植民地にしたけれど、何一つ謝罪などしていません。そんな過去の話など関係ないよと、まったく相手にしないのです。それが普通のことです。

 確かにそうだ。アフリカの黒人を誘拐同然で輸入したアメリカも謝罪している様子はない。そもそもあいつらはインディアン虐殺すら反省していないことだろう。イギリス、フランスはアフリカのほぼすべてを植民地化したが謝ったという話は聞いたことがない。

 宮沢喜一の謝罪は政治判断であったのか、それとも官僚の入れ知恵であったのかを明らかにする必要があるだろう。

 日本の外交がなぜこんなにも弱腰になってしまったのかといえば、戦後日本を占領したアメリカ(GHQ=連合軍総司令部)の対日戦略に始まることであって、ひと言で言ってそれは精神的な日本解体のシナリオだということです。戦後65年あまり、アメリカの対日政策は一貫して日本解体にあったといっていいのです。

 やや飛躍しているように感じるが、本書はその「不都合な真実」を次々と暴き出す。基本となるのは憲法、自虐史観そして日米安保である。

 本書を読めば、GHQによる占領の意味と占領後の日本がどのように変えられたかを知ることができる。また菅沼はTPPについても警鐘を乱打しているのでどんどん紹介する予定だ。

この国の不都合な真実―日本はなぜここまで劣化したのか?
菅沼 光弘
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日本を凋落させた宮沢喜一/『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一

集団化した正義の嘘を見抜け/『「正義」を叫ぶ者こそ疑え』宮崎学


 つまり「正義」とは、ある共同体における支配的な論理のうち、「人の命」を奪うことが正当化される原理を指す言葉と考えてもいい。

【『「正義」を叫ぶ者こそ疑え』宮崎学(ダイヤモンド社、2002年)以下同】

 宮崎学の自伝『突破者 戦後史の陰を駆け抜けた五十年』(南風社、1996年)を読んだ時の衝撃を忘れることができない。バブル景気崩壊後の澱(よど)んだ空気を吹き払う風のようにすら思えた。私がインターネットを始めた頃(1999年)には通信傍受法廃止を目的に政治団体「電脳突破党」を結党した。

 好きな人物ではないが、かといって嫌いになることもできない男である。体を張って生きてきた者には嘘がない。だが全共闘世代に顕著な理論をこねくり回す姿勢が肌に合わない。

 昔の正義はわかりやすかった。その質が変わり始めたのはテレビ版「デビルマン」(1972年)あたりからだと思う。その後「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975年)によって、それまで単独であった正義の味方が集団(組織)となった。きっと正義を一人で担うことができなくなったのだろう。

 ポイントその一「正義は人を裁く」。

 ロシアの革命家トロツキーは「悪魔でさえ聖書の引用で自分の言葉を飾ることができる」と言った。

 ポイントその二「盗っ人には盗っ人の正義がある」。先の言葉と併せれば集団(共同体)内部の正義は利害へと概念が変質していることに気づく。

 いったん正義という名の原則を立てると、その原則に反するもの、すなわち「不正義」を排除する。どんな原則であれ、その原則をめぐる集団においてであれ、必ずこの「排除の構造」が現れる。そして「排除の構造」のもとに「人殺し」が正当化され、殺人は正義と化すのである。

 教団とは禁忌(タブー)を共有するコミュニティであり、共同体は罰を共有する集団と考えられる。これが「法」(掟)である。宮崎の言葉が浅いのは科学的な視点を欠くためだ。文学レベルにとどまっている。

 原理が集団に共有されるように働きかける者がいつの時代にもいる。宗教でも人権でも民主主義でも民族の優秀性でもどんな原理でもいい。旗を振り、正義を唱える者たちだ。正義という名の原理こそ、そしてその旗を振る人間こそ「殺人を正当化する」ものとして、一番疑わなくてはいけない存在であることが、これで解るだろう。

 わからない。「魔女狩りは悪しき歴史だ」という言説にさしたる意味はない。なぜそれが起こったかが重要なのだ。英雄とは脳の構造が一段階進んだ人物のことだ。英雄の言葉と振る舞いが人々のシナプス結合を一変させる。その瞬間に時代は変わるのだ。宮崎の言いたいことは理解できるが、親や経営者、はたまた裁判官にまで当てはまってしまう。

 日本共産党の機関紙・赤旗のキャッチフレーズは「正義の味方、真実の報道」である。昔の子供たちの素朴な倫理観に訴えた、かなり安易なドラマ「月光仮面」並みのキャッチフレーズではないか。大の大人が口にするのは相当恥ずかしい言葉であり、かなり崩れてしまったとはいえ、我々の世代にはまだまだ根強く残っている「恥の文化」に反するものだ。普通は恥ずかしくてこんなことは言えない。臆面もなく「正義の味方、真実の報道」と口にできる精神に、通常の神経では「ついてはいけない」と思うものだ。
 しかし、共産党幹部、支持者はそう思わない。それが正義の怖さだろう。正義を体現していると信じた瞬間から、この言葉が恥ずかしくなくなる。臆面もないとは思わない。自分を疑うことを忘れる。客観性を喪失して、自分が世界の中心になってしまう。幼児的自我の中に埋没する。そして、その正義に従わない者こそ悪と断じてしまうのである。
 正義を信じてしまう恐ろしさが、ここにある。しかも従わない者を悪と断ずるだけでなく、罰して矯正しなければならないとまで考え始める。倫理の独占者と化す。つまり、人であることをやめて神の位置に昇ってしまうのである。革命政党が宗教組織になぞらえられ、その論争を神学論争に喩えるのは、正義を信じた瞬間から、それは人間にとって宗教と同じく倫理観に裏打ちされるからだ。
 神の位置に昇ることは、正義の体現者となったときから、革命政党が「無謬(むびゅう)性」を打ち出すことでも解る。「党は間違えない」のである。
 なんという厚顔無恥。わたしも、よくその一員でいられたものだと、つくづく思う。

 赤旗のキャッチフレーズはいみじくもプロパガンダの本質を言い当てている。正確さよりも正しさ。正しさとは「正しいと人々に思わせること」でもある。「私は正しい」。その後に何がくるだろうか? 当然「私に従え」だ。1+1=2くらいわかりやすい公式だ。

 縮小を願う組織はあり得ない。常に拡大発展を目的として動くのが組織である。これはやくざであれ、株式会社であれ、党派であれ、同じである。創価学会でいえば、戦前の弾圧による殉教や平和志向などの「信仰の原理」よりも、政治的判断・数値目標・保身などの「組織の論理」を優先するようになるのである。
 官僚は、その組織の上に乗ることで自分の立場を成立させている。組織が維持発展することと官僚の利害は一致する。そこで、組織(この場合創価学会の官僚)は、組織の維持すなわち自分たちの存立基盤の強化拡大という路線を選択することになる。教理、宗派の理念に沿い、それを時代とともに進化させる方向は、組織維持の原則と官僚の利害の前に二次、三次の選択肢となっていく。かくして壇上に並んだ幹部は「裏切り者」の集団となる。

 政治は宗教を目指し、宗教は政治に向かう。正義とは教条(ドグマ)なのだ。創価学会の機関紙・聖教新聞には「正義」の文字が極太ゴシック体でこれでもかといわんばかりに印刷されている。あたかも嘘をついているようにすら見えるほどだ。共産党の創価学会化と創価学会の共産党化は研究に値すると思われる。なぜなら二つの団体はメカニズムがほぼ一致しているためだ。党の無謬性と指導者の絶対性やオルグと折伏(しゃくぶく)など。

 宮崎は「集団化した正義の嘘を見抜け」と言いたいのだろう。アウトローだからこそ見えるものがある。インサイダーは見ざる聞かざる言わざるで臭いのもに蓋(ふた)をする。

 本物の正義は他人を説得しない。自(おの)ずから従わざるを得ない光のような性質をはらんでいる。太陽はしゃべらない。ただ暖かさを与えるだけだ。

 自分自身の問題でも、また組織の側の問題でも、どんな問題が起こったら、あるいはどんな環境下で自分のどこに抵触したら組織を離れるか、身を退くか。要するにやめる理由を整理整頓しておくべきではないか。

 これは千鈞の重みがある言葉だ。自分で自分にルールを課す。身の処し方とはそういうものだ。毒に気づかなければ皿まで食べる羽目となる。離れる。そして離れた後で、離れることからも離れる。そこに自由がある。

「正義」を叫ぶ者こそ疑え
宮崎 学
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2014-10-15

「日本のヤクザと裏社会」菅沼光弘 2006年10月19日

養老孟司、池田清彦、吉岡忍


 1冊読了。

 77冊目『バカにならない読書術』養老孟司、池田清彦、吉岡忍(朝日新書、2007年)/前半100ページが養老のエッセイ、後半が鼎談(ていだん)となっている。タイトルは『バカの壁』(新潮新書、2003年)に因(ちな)んだのだろうが、慣用句のため「(費用も)バカにならない」とも読めてしまう。どうせつけるのなら「バカにならないための読書術」にするべきであった。養老のわかりやすさを前面に出した軽い筆致があまり好きではないのだが、相変わらず着眼点が鋭く、特に「挨拶が苦手な自分」の原因が判明した件(くだり)は感動的だ。読み聞かせについても書かれているので若いお母さんの手引きとなろう。鼎談も面白い。ただ2回以上読める本ではない。3人の関係性について何も書かれていないのが不親切で、結局、養老におんぶに抱っこという企画のようだ。

2014-10-14

付加価値税(消費税)は物価/『あなたの知らない日本経済のカラクリ 対談 この人に聞きたい!日本経済の憂鬱と再生への道』岩本沙弓


『円高円安でわかる世界のお金の大原則』岩本沙弓
『新・マネー敗戦 ――ドル暴落後の日本』岩本沙弓

 ・湖東京至の消費税批判
 ・付加価値税(消費税)は物価

 富岡幸雄(中央大学名誉教授)は中曽根首相が売上税を導入しようと目論んだ時に、体を張って戦った人物。元国税実査官。月刊『文藝春秋』の1987年3月号に寄稿し、三菱商事を筆頭に利益がありながら1円も税金を支払っていない企業100社の名前を列挙し糾弾した。売上税は頓挫した。

岩本●結局8%、10%に消費税が上がると、スタグフレーション(不況でありながら物価上昇が続く状態)にもなりかねません。
 今、円安で物価は上がっているけれど、所得は上がっていません。上がったところで一時金、ボーナスだけで、固定給までは上げようとしていない。

富岡●そのことは、日本の大企業の経営姿勢に問題があると同時に、会社法との関係があります。【会社法は年次改革要望書、つまりアメリカの要求によってできた】もの。だから日本の経営者は会社法の施行後、経営のあり方をアメリカナイズした。短期利益、株主利益中心主義です。利益の配当という制度が剰余金の配当制度に変わり、利益がなくても株主には配当をすることができるのです。

岩本●そのしわ寄せが従業員に来ていますよね。付加価値の配分が歪んでしまって、配当がものすごく多くなる一方で労働への分配が減るという現象が起きています。

【『あなたの知らない日本経済のカラクリ 対談 この人に聞きたい!日本経済の憂鬱と再生への道』岩本沙弓(自由国民社、2014年)以下同】

 年次改革要望書については関岡英之著『拒否できない日本 アメリカの日本改造が進んでいる』が詳しい。

 流れとしては、日米構造協議(1989年)→年次改革要望書(1994年)→日米経済調和対話(2011年)と変遷しているが、日本改造プログラムであることに変わりはない。非関税障壁を取り除くために日本社会をアメリカナイズすることが目的だ。で、規制緩和をしてもアメリカ製品が日本で売れないため、遂にTPPへと舵を切ったわけだ。多国間の協定となれば拘束力が強くなる。

富岡●繰り返しますが、【付加価値税というのは税金じゃない。物価、物の値段】なの。
 人間は物を買わなければ生きていけないんですから、付加価値税は「生きていること」にかかる税金です。人間と家畜、生きとし生けるものにかかる「空気税」みたいなものです。生きることそれ自体を税の対象物とするのは、あってはならないことです。

岩本●しかし先生、私自身も最初にそう言われてもピンとこなかったように、消費税が物価であるということを一般の国民はなかなか理解できないのではないかと思うんですが。

富岡●単純に考えていいんですよ。だってお腹が空いたら駅の売店でパンを買うでしょう。それが本来1個100円だとしたら、それが105円になる。105円払わないとパンは食えない。それが物価というものです。だから消費税は、消費者を絶対に逃れられない鉄の鎖に縛りつける税金。悪魔の仕組みなんです。

 これはわかりやすい。消費税を間接税と意義づけるところに国税庁の欺瞞がある。

消費税は、たばこ税と同じ「間接税」なのか?法人税と同じ「直接税」なのか?
消費税は間接税なのか

富岡●トランスファープライシング。日本の親会社が海外関連企業と国際取引する価格を調整することで、所得を海外移転することです。
 移転価格操作とタックスヘイブンを結びつけて悪用すれば、税金なんてほとんどゼロにできてしまうテクニックがある。
 簡単に説明するとね、日本にAというメーカーがあるとします。A社は税金の安いカリブ海などのタックスヘイブンに海外子会社Bをつくって、そのB社に普通よりも安い値段――たとえば本来の卸価格が80円だとすれば、70円などで売る。そしてB社はアメリカにあるもうひとつの子会社である販売会社のC社に100円で売る。実際にアメリカで売るのはC社です。
 これをすることで、日本にあるA社は利益を減らすけれど、タックスヘイブンにあるB社に利益が集中する。要するに、会社を3つつくれば、税金なんてすぐなくなっちゃうの。

 タックスヘイブン(租税回避地)に関しては次の3冊がオススメ。

マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで』橘玲
タックス・ヘイブン 逃げていく税金』志賀櫻
タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』ニコラス・シャクソン

 ただしマネーロンダリングについてはアメリカが法的規制をしたため、ブラックマネーと判断されれば米国内の銀行口座は凍結され、彼らと取引のある金融機関も米国内での業務を停止させられる。こうなるとドル決済の取引がほぼ不可能となる。

 大局的な歴史観に立てば、やはりサブプライム・ショック(2007年)~リーマン・ショック(2008年)で金融をメインとする資本主義は衰亡へと向かいつつある。既に新自由主義は旗を下ろし、国家による保護主義が台頭している。

 不公平な税制が改善される見込みはない。どうせなら全部直接税にしてはどうか? 正しい税制が敷かれていれば、税金を支払うことに企業や国民は誇りを抱くはずだ。

 尚、湖東同様、富岡の近著『税金を払わない巨大企業』に対する批判も多いので一つだけ紹介しよう。

巨大企業も税金を払っています。 - すらすら日記。Ver2

あなたの知らない日本経済のカラクリ---〔対談〕この人に聞きたい! 日本経済の憂鬱と再生への道筋

サードマン現象は右脳で起こる/『サードマン 奇跡の生還へ導く人』ジョン・ガイガー


 どうやら極限状態で命と向き合った人びとに起こる共通の体験があるらしく、おかしな言い方かもしれないが、それまで耐えてきた艱難辛苦を思えば、その体験はおそろしくすばらしいことなのだ。人間の忍耐力の限界に達した人たちが成功したり生還したりした背景には見えない存在の力があったという、突飛とも思えるこの考えは、極限的な状況から生還した多数の人びとの驚くべき証言にもとづいている。彼らは口をそろえて、重大な局面で正体不明の味方があらわれ、きわめて緊迫した状況を克服する力を与えてくれたと話す。この現象には名前がある。「サードマン現象」というものだ。

【『サードマン 奇跡の生還へ導く人』ジョン・ガイガー:伊豆原弓(いずはら・ゆみ)訳(新潮文庫、2014年/新潮社、2010年『奇跡の生還へ導く人 極限状況の「サードマン現象」』改題)】

 別名は守護天使。ま、守護神と考えてよかろう。文庫本の改題は誤解を与える。「サードマン」が存在となっているためだ。飽くまでも「サードマン現象」と考えることが望ましい。

 山野井泰史の手記にもサードマンが現れる。しかし生還へと導いたわけではない。ただ現れただけだ。本書は「生還へと導かれた人々」の話を集めているが、必ずしもそうではないことを心に留めておく必要がある。

 これはたぶん右脳に起こる現象なのだろう。ジュリアン・ジェインズの理論(『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』)で解けそうな気がする。もっと強烈な体験をすると教祖になるのだ。現代社会は左脳に支えられているため我々には不可思議と映るが、言語の誕生以前は日常的にそのような出来事があったと想像する。

 例えとしてはよくないが幼児は夢と現実の区別がつかず、夜中に激しく泣き出すことがある。古代人であれば「夢のお告げ」と受け止めたことだろう。コンスタンティヌスもその一人だ(『「私たちの世界」がキリスト教になったとき コンスタンティヌスという男』ポール・ヴェーヌ)。

 あるいはサードマンが現れても生還できなかった人々もいるに違いない。8000メートル級の高所登山で幻覚・幻聴は頻繁に起こる。それが原因で山から飛び降りてしまう人もいる。たまたま幸運だったケースだけ取り上げるのはやはり問題がある。

 いずれにせよ右脳には知られざる豊かな世界が眠っている。ジル・ボルト・テイラー著『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』を読めば、人は瞬時に悟りに至ることが理解できる。

サードマン: 奇跡の生還へ導く人 (新潮文庫)

イエスの復活~夢で見ることと現実とは同格/『サバイバル宗教論』佐藤優