2014-11-26

小室直樹、菅沼光弘、野口三千三、他


 9冊挫折、2冊読了。

読書は1冊のノートにまとめなさい 完全版』(ダイヤモンド社、2013年/旧版、ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2008年)、『情報は1冊のノートにまとめなさい 完全版』(ダイヤモンド社、2013年/旧版、ナナ・コーポレート・コミュニケーション、2008年)、『人生は1冊のノートにまとめなさい 体験を自分化する「100円ノート」ライフログ』(ダイヤモンド社、2010年)奥野宣之〈おくの・のぶゆき〉/同工異曲といえば褒めすぎだろう。しかも旧版が絶版になっていない。たらい回しの感あり。来年から書くことを決意したので参考までに開いてみたが飛ばし読みがやっと。10代、20代の若者には『読書は』を勧めておく。

ヴァチカン物語』塩野七生〈しおの・ななみ〉、石鍋真澄、ほか(新潮社、2011年)/塩野の文章はほんの一部であった。散漫な印象あり。中途半端な代物だ。

身体感覚をひらく 野口体操に学ぶ』羽鳥操、松尾哲矢(岩波ジュニア新書、2007年)/期待外れ。

新版 魔術師たちの心理学 トレードで生計を立てる秘訣と心構え』バン・K・タープ:長尾慎太郎監修、山下恵美子訳(パンローリング、2008年/旧版、2002年)/もったいぶった文章が鼻につく。『タープ博士のトレード学校 ポジションサイジング入門』の方がずっとよい。時間があれば再読するかもしれない。

デュブーシェ詩集 1950-1979』アンドレ・デュブーシェ:吉田加南子〈よしだ・かなこ〉訳(思潮社、1988年)/『回思九十年』で吉田の紹介が興味を惹いた。いざ読んでみるとチンプンカンプンだ。私に読解力がないだけに詩は当たり外れが多い。

戦争中毒 アメリカが軍国主義を脱け出せない本当の理由』ジョエル・アンドレアス:きくちゆみ、グローバルピースキャンペーン有志訳(合同出版、2002年)/レイアウトが悪すぎる。いかに内容がよくても読む気になれない。

原初生命体としての人間 野口体操の理論』野口三千三〈のぐち・みちぞう〉(岩波現代文庫、2003年/三笠選書、1975年)/これはオススメ。『ことばが劈かれるとき』竹内敏晴、『大野一雄 稽古の言葉』と同じ匂いが漂う。直観による悟りだ。ただし私の興味は具体的な体の動かし方にあり、体操理論に目を通す時間はないため飛ばし読み。

 94冊目『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は、滅亡する』小室直樹(ワック、2005年/クレスト社、1996年)/必読書入り。小室の文体は奔放すぎてとっつきにくいのだが、一度「あ!」と思うと一気に引きずり込まれる。「いわゆる慰安婦問題」については本書を中心に議論されるべきだ。やはり小室御大は凄い。今から18年も前にロジカルな裁断を下していた。慰安婦問題にとどまらず日本の近代史、天皇制、教育問題にまで目が行き届いている。更に挙証責任を通して「法のあり方」まで勉強できる。何と言ってもアノミー(無規範、無規則)を「無連帯」としたところに小室直樹の天才性がある。

 95冊目『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘(徳間書店、2014年)/これは小室本と併読するのが望ましい。近代裏面史ともいうべき内容だ。菅沼本の中でも一番手堅くまとまっている。アメリカの卑劣、英独の裏切りがアジアで唯一の独立国であった日本を追い詰めてゆく様子がよくわかる。それにしても菅沼の該博な知識に驚かされる。私は最近になって根本博陸軍中将のことを知ったのだが本書で触れている。根本以外にも蒋介石率いる台湾を支援した旧日本軍将校は20名近く存在したという。GHQの監視が厳しかったため彼らは密航で台湾へ渡った。

5分で知るクリシュナムルティの教え(「変化への挑戦」より)


 クリシュナムルティは講話をしながら瞳を閉じることが多い。だが実は違う。彼は内側を見つめているのだ。つまり聴き手と同時に自分自身とも対話をしているのである。


日本語初のDVDブック/『変化への挑戦 クリシュナムルティの生涯と教え』J・クリシュナムルティ

2014-11-23

IAEA(国際原子力機関)はアメリカの下部組織/『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年

 ・IAEA(国際原子力機関)はアメリカの下部組織
 ・日米経済戦争の宣戦布告
 ・田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った

『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

(※GEによる増殖型の原子力エンジンの開発が上手くゆかず)結局、ウェスティングハウスの加圧水型軽水炉の採用が決まって、原子力潜水艦第1号ノーチラス号として結実することになりました。1955年のことです。
 この2年前の53年12月、アイゼンハワー大統領は「平和のための原子力(アトムズ・フォー・ピース)」という有名な演説を国連で行っています。この演説でアイゼンハワーは核物質の国際管理と核エネルギーの平和利用を強い調子で訴えました。それが後のIAEA(国際原子力機関)の設立へとつながっていくのですが、もちろんアメリカの真意は原子力の平和利用などというきれい事だけにあったわけではありません。
 演説のなかでアイゼンハワーは、再三にわたってソ連の核兵器開発のすさまじい勢いについてふれています。アメリカの核の独占体制がくずれ、敵対国であるソ連の無制限の核開発について脅威を感じていたのです。
 広島・長崎に原爆を投下したという「暗い背景」(アイゼンハワーの言葉)を持つアメリカが、いまや自分たちの頭上でいつ核爆弾が炸裂してもおかしくないという恐怖のもとにさらされている。かつての加害者は「報復の女神」の復讐によっていつ被害者となっても不思議ではない、と聖書は教えている。そんな事態だけはなんとしてでも回避しなければならない。それにはソ連の核開発をなんとか抑え込まなければならない。アイゼンハワーの狙いはまさにそこにありました。そもそも彼が提唱したIAEAという組織自体が、アメリカの意向にそって核の軍事利用を制限し、査察を行うための国際機関として考え出されたものなのです。

【『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘(徳間書店、2011年)】

 原爆はダモクレスの剣と化した。


 ドイツではなく日本に原爆を投下した理由は明らかになっていない。ま、黄色人種であったためと考えてよかろう。アメリカはキリスト教の論理に則って行動し、そのドグマによって怯(おび)えているのだ。宗教とは空想や妄想を現実化する力である。

 主要な国際機関の大半はアングロサクソンが作ったもので、背後でユダヤマネーが支えている。一種のソフトパワー戦略と見なしていいだろう。IMF世界銀行もアメリカの出先機関である。

「IAEAの査察も日独核武装封じ込めが出発点」(吉田康彦)であった。


 アメリカの都合に合わせる同盟関係はそろそろ見直すべきだろう。9.11テロがその警鐘であったと思われてならない。地政学的に考えても日本は韓国・北朝鮮・中国・ロシアと上手くやっていくしかない。とにかく日本には戦略がない。戦わずして敗れているのが現実だ。例えば中国の民主化運動を密かに側面から支援する。そうすればやがて中国は四つか五つくらいに分裂してしまうだろう。そこで友好関係を強化すればいい。

この国の権力中枢を握る者は誰か
菅沼光弘
徳間書店
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2014-11-22

沖縄普天間基地は不動産の問題/『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年

 ・沖縄普天間基地は不動産の問題
 ・核廃絶を訴えるアメリカの裏事情

『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年
『沈むな!浮上せよ! この底なしの闇の国NIPPONで覚悟を磨いて生きなさい!』池田整治、中丸薫

菅沼●普天間の関連で言えば、あんなものは不動産の問題なんです。みんな「安全保障」とか「抑止力」とかいろんな理屈言っていますが、とどのつまりアメリカは、本当はあんな基地は要らないんです。
 何であんなことになっているかと言うと、内外の不動産屋の利権がからんでいるからです。例えば、その中には沖縄の不動産屋もある、普天間基地の地主がいる。地代は、いろいろな問題が起こるものだから、どんどん上がっているんです。沖縄の人にとってみれば、今何が一番成長産業かというと不動産業です。地代は全部右肩上がりだから、そこへ投資すれば利益が出るわけです。なくなりゃ、みんなパーです。沖縄はそれがなくなれば、土地の値段は低い。

【『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘(ヒカルランド、2010年)】

 早速調べてみた。





 菅沼は日米双方の利権が絡んでいると指摘し、小泉純一郎もダミー会社を使って関与していると語る。ネット上では小沢の名前も上がっていた。

小沢氏、日米合意直後に沖縄で土地購入 普天間移設予定地から9キロ(産経新聞)
小沢氏、沖縄に別荘建築 老後に備え? 故郷・岩手から離れた真意は… zakzak2013.03.28

 利権とは私益だ。私益に走る公僕が国益を守れるわけがない。日本の政治家がことごとくアメリカからの圧力に屈するのも当然であろう。我々国民もまたそうした政治家の存在を許し、米国の外圧を黙認してきた。自殺者数が3万人を超えても、格差社会が広がっても目を醒(さ)ますことはなかった。今日本人に必要なのは「特攻隊の精神」だ。自分の命をなげうっても国家・国民のために尽くす覚悟である。

 個人的な所感ではあるが、米軍基地問題に関してデモや選挙などの平和的手法で解決できるとは到底思えない。かつて10代の少女が米兵に強姦された事実を踏まえれば、沖縄県民は武装すべきだろう。

 尚、本書はトンデモ本大賞の候補作となっているが、山本弘の指摘は的外れである。ま、と学会の連中の常識を信じる方がどうかしていると思うが。

中丸薫、菅沼光弘


 1冊読了。

 93冊目『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2013年)/中丸の部分はすっ飛ばした。ヒカルランドのは二人の話が章立てとなっているが、こちらはもっと短くて対話っぽい雰囲気を出している。中丸は自慢話と霊言が多すぎて辟易させられる。菅沼は宗教についても詳しい。大統領候補であったロムニーがモルモン教徒であったことに触れ、モルモン教が教団として社会的地位を上げる目的で信者を米軍に送り込んでいるそうだ。矢吹一夫、児玉誉士夫、大西瀧治郎〈おおにし・たきじろう〉中将にまつわるエピソードが出てくる。松下政経塾がダメな理由。安部首相もダメだと切り捨てている。亀井静香も「CIAから命を狙われている」とビビりまくっているとのこと。命を捨てる覚悟の政治家は一人もいないようだ。

2014-11-20

ウィリアム・ブルム、菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄


 2冊読了。

 91冊目『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム:益岡賢〈ますおか・けん〉訳(作品社、2003年)/必読書入り。『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クラインを読んだ人は必読のこと。まだ読んでいない人はこちらから読むべし。これほど胸の悪くなる本を知らない。私は長らく世界の癌はイスラエルでその次にアメリカだと思い込んでいた。アメリカは病める大国にして世界最悪のテロリスト国家であった。その歴史的事実がこれでもかと羅列されている。因みに菅沼本では徹底してアメリカ批判が展開されているが菅沼は反米ではない。私は反米であり反イスラエルである。しかし反ユダヤではない。正確に言えば反シオニズムだ。安全保障をアメリカに委ねている我々日本人はアメリカの実態を知らねばならない。彼らはその矛先を既に国内のアメリカ人にまで向けている。TPPが実現する前に本書を一読することを強く勧める。

 92冊目『見えてきたぞワンワールド支配者の仕掛け罠 神国日本八つ裂きの超シナリオ 絶対に騙されるな! モンサントと手を組む日本企業はこれだ』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄〈あすか・あきお〉(ヒカルランド、2012年)/ベンジャミン・フルフォードといえば陰謀本である。菅沼はそれを逆手に取って言いにくい情報を語る場としたのであろう。トンデモ本と思わせておけば危険は少なくなる。あとは読み手の力量次第だ。

2014-11-18

国益を貫き独自の情報機関を作ったドイツ政府/『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年

 ・国益を貫き独自の情報機関を作ったドイツ政府
 ・アメリカからの情報に依存する日本

『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 私がドイツにいた頃、BND関係者からは、情報機関が国家にとっていかに重要なのか、よく聞かされた。
 かつてドイツは第一世界大戦(ママ)に敗れたことで、連合国によって、軍の情報機関はすべて廃止に追い込まれた。ドイツが再び立ち上がることを阻止するためだ。
 しかし、ドイツ海軍は、その後ドイツ国防軍の情報長官になった、ヴィルヘルム・カナリス提督が若き士官だった頃、情報士官を集めて民間会社を作った。連合国から禁止されていたため、公式に情報機関は作れなかったが、民間会社を作って、そこで密かに情報活動を行った。
 ナチスが政権を握った後は、民間会社を隠れ蓑にすることもなく、堂々と情報機関が設立された。ドイツ陸軍で対ソ情報活動を行っていた部隊は、第二次世界大戦中、バルト海南岸の東プロイセンの辺りに駐在していた。その部隊の司令官が、後にBND初代長官に就いたゲーレン将軍である。
 敗戦間近になると、ゲーレン将軍らは要員とともに、資料を全部持って、スイスの山中に逃げ込んだ。なぜそういう行動に出たかというと、「我々はもう負ける。しかしいずれ我々の持てる情報を、アメリカが必要とするだろう」という読みがあったからだ。
 第一次世界大戦後に情報聞かを壊滅させられた経験があったから、「何が何でも情報機関を残さなければならない」というただ一心だったという。
 その後、CIAの前身組織であるOSS(戦略事務局)のヨーロッパ本部責任者だったアレン・ウェルシュ・ダレス氏と掛け合った。その甲斐あって、CIAの全面的な支援の下で、対ソ情報活動を専門的に行う「ゲーレン機関」が設立され、独立後に連邦の情報機関であるBNDへと発展していったのだ。
 ドイツには、国が自立するためには、情報機関が必要不可欠だという認識がある。また占領下において、つまり主権のない時期に作られた法律は、独立後はすべて見直すという強い意思があったから、日本のように改正が難しい憲法は作らなかった。ドイツ連邦共和国基本法は、必要とあらばいつでも改正できる基本法であって、憲法と呼ばれるものではない。
 日本は占領期間中に、帝国憲法の改正という形だ。日本国憲法を作ったから、60年以上も改正できないまま今日に至っている。同じ敗戦国にして、これだけの違いがある。
 憲法制定の経緯についてはいろいろなことが言われているが、つまりはアメリカが日本の自立を認めなかったということだ。逆に言うと、独自の情報を集めるシステムがないと、独立自尊の国家としての政策は展開できない。

【『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘(青志社、2012年/旧版、2009年)】

 菅沼光弘がどの書籍においても必ず触れている歴史で、日本独自の情報機関をつくることがアメリカ支配という戦後レジームを変革する第一歩であるとの主張である。

 カナリス提督やゲーレン将軍はドイツを舞台とした冒険小説やミステリで馴染みが深い。菅沼は東大法学部を卒業し公安調査庁に入庁。その後直ちにドイツのマインツ大学へ留学させられているが、これはゲーレン機関で訓練を受けるためであった。菅沼が「最後のスパイ」と呼ばれる所以(ゆえん)である。


 カナリスはアプヴェーアの責任者も務めた。知性と良心を眠らせない人物が皆そうであるように、彼もまた複雑な人物であった。カナリスはSS(ナチス親衛隊)と反目し合っていた。そして最後は部下たちが企てたヒトラー暗殺に協力する。絞首刑にされたのはナチス・ドイツが降伏する1ヶ月前であった。


 ドイツは白人国家であるがゆえに当然、日本とは占領政策が異なった。それでも尚、なぜドイツにはゲーレンがいて、日本にはいなかったかを考える必要があるだろう。小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉の生きざま(『たった一人の30年戦争』小野田寛郎)を見れば、陸軍中野学校がそう易々(やすやす)とGHQに屈するとは思えない。


 逆に言えばゲーレンのような先見の明をもつ者が存在しなかったがゆえに日本は戦争に敗れたのだろう。ゲーレン機関は正式にBND(連邦情報局)となる。ゲーレン機関の諜報員はソ連・東欧の各地に配置され、米ソ冷戦下で活躍する。

 戦後憲法が日本のよき伝統を破壊したと菅沼は言う。その一々に説得力がある。更にアメリカは日本に情報機関を持たせないことで完全に属国とした。日本のインテリジェンスはその殆どをアメリカからの情報に頼っているのだ。しかも自民党は1950年台から60年台にかけてCIA(中央情報局)から数百万ドルの資金提供を受けている。つまり日本共産党がソ連のスパイ(『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎)で、自民党がアメリカのスパイであった可能性が強い。

 同様に朝日新聞(慰安婦問題捏造記事)と読売新聞(原発導入のシナリオ 冷戦下の対日原子力戦略)を比較することもできるだろう。正力松太郎には「ポダム」というCIAのコードネームがあった。


 晩年のゲーレン将軍と思われるが、顔つきが菅沼とよく似ている。カナリスもゲーレンも菅沼も国家・国民のためにという国益志向が一致している。彼らこそ国士と呼ばれるのに相応(ふさわ)しい人物だ。

守るべき日本の国益
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菅沼 光弘
青志社
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