2021-01-31

話すことができないコメディアン(ブリテンズ・ゴット・タレント2018年)


 我々は日常の些末な苦労を、仕事を、人生を笑い飛ばすことができているだろうか? 彼の朗らかな笑い声が聴こえてくるような気がするのは私だけではないだろう。「障碍者」(しょうがいしゃ)の烙印を押す医師や社会が彼らの可能性を奪っている事実に気付かされる。

2021-01-28

世界最初の紙幣は北宋の「交子」/『経済は世界史から学べ!』茂木誠


 ・世界最初の紙幣は北宋の「交子」

『世界のしくみが見える 世界史講義』茂木誠
『「戦争と平和」の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
『「米中激突」の地政学』茂木誠
『世界史講師が語る 教科書が教えてくれない 「保守」って何?』茂木誠

【世界最初の紙幣は北宋の「交子」(こうし)】です。内陸の四川(しせん)で発行されました。
 当時、中国で広く流通していたのは銅銭ですが、銅の産出が少ない四川では鉄銭を使用していました。しかし鉄銭は重く、高額の取引には向きません。
 そこで金融業者は商人から鉄銭を預かり、引換券として紙幣を発行したのです。北宋政府は商人からこの権利をとり上げ、交子を発行します。政府が保有する銅銭を準備金(担保)として、発行額には上限が定められました。
 ところが、政府というのは無駄遣いに走りがちです。戦争や公共事業、宮廷の浪費を賄うため、上限を超えて紙幣を乱発し、信用が一気に失われます。【紙幣乱発による通貨価値の下落――すなわちインフレが起こる】わけです。
 北宋の交子、南宋会子(かいし)、交鈔(こうしょう)、すべて同じ経緯で紙くずになり、「インフレ→農民暴動→王朝崩壊」という経過をたどりました。」

【『経済は世界史から学べ!』茂木誠〈もぎ・まこと〉(ダイヤモンド社、2013年)】

 紙幣を発明したのはユダヤ人の金貸しだと思い込んでいる人が多い。私もその一人だった。羅針盤・火薬・紙・印刷は中国の四大発明とされるが、紙幣も加えて五大発明にすべきだろう。

 このテキストを読んで直ちに思ったことは「なぜドル基軸通貨体制が維持されているのか?」である。ま、有り体に言ってしまえば石油や武器をドル決済させることでアメリカ本国へドルが還流することを防いでいるためだろう。

 ニクソンショックから既に半世紀以上を経ている。ドルは360円から104.292円(現在値)まで価値を下げている。最終的には50円くらいまで下げると私は睨んでいるが、50円だと紙屑とは言わない。それほど遠い未来ではなく数年以内にドルは沈むことだろう。米国債を大量保有している中国と日本はどうするのだろうか?



マネーと国家が現代の宗教/『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎

アメリカ民主党の人種差別的土壌~アイデンティティ・リベラリズム/『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹


『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー
『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス
『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
・『コールダー・ウォー ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争』マリン・カツサ
『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー

 ・利益率97%というクリントン財団のビジネスモデル
 ・アメリカ民主党の人種差別的土壌~アイデンティティ・リベラリズム

・『クリントン・キャッシュ』ピーター・シュヴァイツァー

必読書リスト その五

ヒラリー・クリントン アイデンティティ・リベラリズムの象徴 その一

 2016年7月26日、民主党は同年11月の大統領選候補にヒラリー・クリントンを正式指名した。本書でこれまで明らかにした疑惑の数々を知っている読者にとっては、なぜ民主党が彼女を選択したのかいぶかしく思うに違いない。その原因は、メディアにあった。
 CNNを筆頭にした米国主要メディアは、ネオコン系資本の支配下にあり、リベラル国際主義(干渉主義)を絶対善とする論陣を張った。彼らは、ヒラリーの疑惑をほとんど報じないか、報じても矮小化(わいしょうか)した。クリントン財団を利用した利益誘導外交は、本来であれば政権を揺るがす大スキャンダルであった。しかし、メディアはこの問題を深追いせず、次期大統領はヒラリーになると報道した。メディアの偏向については後述するが、そもそも民主党はなぜスキャンダルを抱えるヒラリーを選出したのだろうか。
 民主党は、19世紀半ばの時代、人種差別的政党であった。民主党の基盤は、南部白人層つまりコットン・プランテーション経営(奴隷労働経営)者層にあった。1861年に始まった南北戦争は、北部の商工業者の支持を受けた共和党リンカーン政権に対して、南部民主党に率いられた南部連合が離脱したことから始まった。南部連合は戦いに敗れ奴隷解放に応じたが、ナブ諸州の政治は、民主党が牛耳ったままであった。彼らは、南部白人の結束を訴え(ソリッド・サウス政策)、黒人隔離政策を推進した(ここでは当時の空気を正確に記すために、政治的用語であるアフリカ系とせずあえて黒人と表記する)。交通機関、トイレ、食堂なども肌の色で隔離する法律を次々と導入した。黒人に対するリンチも止まらなかった。これらは州の独自の権限(州権)に基づく州法であったため、連邦政府は口出しできなかった。黒人隔離(差別)の諸法律はジム・クロウ法と総称され、第二次大戦後も続いた。これが廃止されたのは1964年のことである。
 戦後になると、民主党の主たる支持層であった南部白人層が相対的に豊かになった。豊かさが人種差別的意識を希釈した。支持基盤の喪失を恐れた民主党は、「弱者のための政党」へカメレオン的変身を企てた。かつて、黒人を激しく嫌悪し、隔離政策をリードした首謀者でありながら、当時は【国全体が人種差別的】であった、と言い逃れをし、責任を他者に押し付けた。民主党の責任については洞ヶ峠(ほらがとうげ)を決め込んだ。
 弱者はどこにでもいた。かつて自らが差別していた黒人層、西部開拓の過程で白人に姦計(かんけい)を弄(ろう)され居住地を追われた原住インディアン、遅れてアメリカにやってきて嫌われたアジア系・ラテン系・東欧系移民、宗教的に阻害されてきたユダヤ系移民、職場でパワハラやセクハラを感じている女性層、性的嗜好マイノリティ層(LGBT)。探せばどこにでもいた。
 相対的弱者とされる層が必ずしも弱者と自覚しているわけではない。したがって、彼らを「票の成る木」に変えるには、「弱者であることを能動的に意識」させなくてはならない。その上で、強者(国家あるいはエスタブリッシュメント白人層)への怒りを煽(あお)る。いかなる国にも誇れない過去がある。理不尽であった過去の振る舞いは、先人たちの努力で十分とはいえないまでも矯正がなされてきた。しかし権力を奪取したい、あるいは維持したい民主党にとっては、矯正の歴史はどうでもよいことであった。対立、いがみ合い、非妥協の継続。それが票になった。
 民主党は、ターゲットとした弱者層に、「失われた」権利を回復しなくてはならないと訴えた。弱者であることを意識させることは難しくない。ほとんどのケースで、外見だけで弱者に所属していると自認できた。所属するグループ(黒人、移民、少数民族、女性など)を見渡せば、容易にわかった。この思想ともいえない権力を摑(つか)むための主張(戦術)が、アイデンティティ・リベラリズム(IL:Idetity Liveralism)である。
 ILの考え方の延長が「多様化礼賛」だった。いわゆる「多文化共生思想」である。社会的弱者にも優しくすべきだという主張は美しい。社会的優位にあった白人エスタブリッシュメントも白人中間層もその訴えに同意した。こうして弱者救済に政治が積極的にかかわるべきだとする運動(アファーマティブ・アクション〈積極的差別撤廃措置〉)が始まった。この言葉を初めて使ったのはジョン・F・ケネディ大統領(民主党)だった。大統領令10925号(1961年3月)は、求職の際に、人種(肌の色)、宗教的信条、出身国などによって差別されてはならないと規定した。そうした行動を雇用者が【積極的】にとるよう勧告した。それがアファーマティブ・アクションであった。
 次のリンドン・ジョンソン大統領(民主党)もこの施策を引き継いだ。ただ二人の主張は、「競争は弱者を差別することなくフェアに行なわれるべきだ」と勧奨するにとどまっていた。
 この主張に、法的拘束力をもたせたのはジョンソンに続いたリチャード・ニクソン大統領(共和党)だった。ニクソンは悪い意味で人種を強く意識した政治家だった。彼は、人種間には自然科学的な違いがあると信じていた。ユダヤ人を創造力に富むが倫理観に欠ける、黒人は白人よりIQは低いが身体能力は高い、アジア人は勤勉でなかなか頭が良い、などという「科学的」な決めつけが得意だった。
 ニクソンが人種差別的信条をもっていたことは間違いなかったが、皮肉にも、その彼が、大統領令11478号を発し、アファーマティブ・アクションに法的強制力をもたせた(1969年8月)。これにより、雇用均等委員会(1965年設置)が、政府および連邦政府資金で運営される組織全体(大学や研究機関など)の職員採用に少数派(主として黒人)を積極的に採用させる監視機関となった。その結果、1970年代初めになると、黒人男子大卒者の57%、女子の72%が公務員となった。
 アファーマティブ・アクションは次第に拡大され、政府の下請け企業の受注においても、マイノリティの経営する会社が入札なしで優先的に選ばれる制度(Set-aside)も生まれた。こうしてマイノリティ利権が制度的に確立していった。マイノリティの定義は当初想定していた黒人層から、女性、原住インディアン、あるいは遅れてきた移民層にまで拡大された。マイノリティに属していることが採用に有利になった。これが少数派利権の始まりだった。
 人種差別主義者であったニクソンがアファーマティブ・アクションを促進したのには訳があった。黒人隔離(差別)のジム・クロウ法が廃止されたのは1964年だと書いた。60年代は黒人公民権運動が吹き荒れた時代だった。1969年に大統領に就任したニクソンは、外交に専念したかった。「騒いでいる」黒人活動家の憤りを「ガス抜き」することで内政を落ち着かせたかった。それが、強制力をもたせたアファーマティブ・アクション導入の背景だった。

【『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹〈わたなべ・そうき〉(PHP研究所、2019年)】

 これは『ニュース女子』#302「日米新外交関係で日本が取るべき進路は・牙を剥く中国の脅威」(1月26日)で武田邦彦や飯田泰之・江崎道朗〈えざき・みちお〉・門田隆将〈かどた・りゅうしょう〉らが指摘した発言を裏付けるテキストである。

「ポリティカル・コレクトネスは白人による人種差別を覆い隠すために編み出された概念」(『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン)という歴史を踏まえれば、差別の細分化~再生産を目的としているのだろう。

 ヒトは大脳新皮質を発達させて、200万年という長大な時間をかけて群れの領域を国家にまで拡大してきた。ザ・コーポレーションDVD)は国家を横断する経済規模に発展した。新型コロナウイルスは国家に強権の発動を許した。国民の移動を禁じる自粛要請や休業要請はたまた学校の休校措置はさながら「現代の空襲警報」といってよい。

 そして自由の象徴であったインターネット空間がビッグテックの完全支配下に降ろうとしている。twitterはトランプ大統領のツイートによってメインストリームメディアの嘘を明らかにした。にもかかわらず、twitter社はトランプ大統領を永久追放した。まるで中国共産党のような仕打ちである。シリコンバレーが民主党支持に傾いている事実を思えば、今後は共和党から大統領が選出されることはないだろう(『2025年の世界予測 歴史から読み解く日本人の未来』中原圭介)。

利益率97%というクリントン財団のビジネスモデル/『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹


『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー
『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス
『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム
・『コールダー・ウォー ドル覇権を崩壊させるプーチンの資源戦争』マリン・カツサ
『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』クリストファー・ワイリー

 ・利益率97%というクリントン財団のビジネスモデル
 ・アメリカ民主党の人種差別的土壌~アイデンティティ・リベラリズム

・『クリントン・キャッシュ』ピーター・シュヴァイツァー

必読書リスト その五

 ヒラリーが、個人サーバーの利用に拘(こだわ)ったのは、交信記録は国家財産として保存され、後に公開されるからである。彼女と夫のビルは、クリントン財団(1997年設立)なる「チャリティー」組織を設立して、多くの「支援者」から寄付を募っていた。運営は元大統領と娘のチェルシーが担っていた。表向きは、国際慈善事業の推進であったが、運営コストの割合が高く、関係者も異常な高給を貪(むさぼ)っていた。2014年度の数字は収入総額1億7780万ドルに対し、チャリティー事業に支出されたのはわずか516万ドルだった。1ドルの寄付に対して、真の事業には3セントの支出だったことになる。クリントン財団には外国の企業や要人から巨額の寄付があった。国務長官として(あるいはその前の上院議員)の外交方針が、彼らの利益になったからだった。

【『アメリカ民主党の崩壊2001-2020』渡辺惣樹〈わたなべ・そうき〉(PHP研究所、2019年)】

 1ドル=100セントである。クリントン夫妻は講演でも荒稼ぎをしており、45分間の講演で3000~5000万円が相場とされる(ITmedia ビジネスオンライン)。クリントン夫妻は大統領を退いてから15年間で270億円も稼いでいる(フォーブス ジャパン)。

 どう考えてもおかしい。人間としておかしいと思う。富の偏在は賃金の上昇を阻害し、人々の労働意欲を失わせる。使い切れない莫大なお金を思えば環境破壊といってもよさそうだ。

 トランプ大統領再選の予見は外れたが、共和・民主両党にまたがるネオコンの動向を見据えた一書で、アメリカの今後を占う重要テキストになるだろう。

 必ず『マインド・ハッキング あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア』の後に読むこと。