2021-09-14

自動化(オートマチック)、手順自動化(オートメーション)、自律(オートノミー)


 ・自動化(オートマチック)、手順自動化(オートメーション)、自律(オートノミー)
 ・自律型兵器の特徴は知能ではなく自由であること

 機械の知能の変動範囲(スペクトル)をいい表すのに、“自動化”(オートマチック)、“手順自動化”(オートメーション)、“自律”(オートノミー)という言葉がよく使われる。
 自動システムは、“意思決定”の面ではあまり能力を示さない単純な機械だ。環境を感知し、行動するだけだ。感知と行動が、直線的にじかに結び付いている。人間ユーザーにとっては、予想しやすい。古い機械式サーモスタットは、自動システムの典型だ。ユーザーが望む温度に設定すると、温度がそれよりも高くなるか低くなったときに、サーモスタットは暖房やエアコンを作動させる。
 オートメーション・システムはもっと複雑で、行動を起こす前に複数の入力情報を検討し、実行可能な選択肢を比較考量する。それにもかかわらず、基本的には、機械内部の認識プロセスを人間ユーザーが追跡しやすい。現在のデジタル・プログラミングが可能なサーモスタットは、オートメーション・システムの典型だ。暖房やエアコンを、屋内の気温だけではなく日にちや時間に応じて作動させることができる。システムに入力された情報やプログラミングされたデータがわかっていれば、練度の高いユーザーはシステムの挙動(ビヘイヴィア)を予測できるはずだ。
“自律”はしばしば、システムが精巧で、内部の認識プロセスがユーザーに理解できないシステムに言及するときに使われる。システムがやることになっているタスクについては理解していても、そのタスクをシステムがどう行なうかを理解しているとは限らない。研究者はしばしば自律システムは“目標重視”であるという。つまり、人間ユーザーは目標を指定するが、自律システムは目標を達成するやり方については柔軟なのだ。
 その一例が自動運転車だ。ユーザーは目的地や、事故を避けるといったその他の目標を具体的に示すが、自動運転車がやらなければならない行動をすべて示すことは不可能だ。道路状況や障害物があるかどうかを、ユーザーは知らない。信号がいつ変わるか、他の車や歩行者がなにをするかということは、予測できない。したがって、目標を達成するために、いつ停止し、発信し、車線を変えるかを決める柔軟性を備えるように、プログラミングされている。
 現実には、自動、オートメーション、自律の境界線は、いまなおはっきりしない。“自律”はまだ創られていない未来のシステムを指すことも多いが、実現したらそれも“オートメーション”システムと呼ばれるかもしれない。これはAIを取り巻く流れとよく似ている。いまの機械にはできないようなタスクをひっくるめて、AIと見なされることが多い。機械がタスクを克服すると、それは単なる“ソフトウェア”になる。
 自律は、システムが自由意志を発揮したり、プログラミングに従わなかったりすることではない。自律は、オートマチック・システムが感知から行動へと単純に直線的に結び付いているのとはことなり、いかなる状況でも最善の行動を編み出せるように、幅広い変化を考慮する。制御できない環境に置かれた自律システムには、目標重視の姿勢が不可欠なのだ。

【『無人の兵団 AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』ポール・シャーレ:伏見威蕃〈ふしみ・いわん〉訳(早川書房、2019年)】

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