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2011-12-22

宇宙が3次元になった仕組みを説明


 現在の宇宙空間が「タテ・ヨコ・高さ」の三つの次元からなる姿になった仕組みを、日本の研究グループが、世界で初めて、スーパーコンピューターによる計算で説明することに成功し、どこかに存在する可能性が指摘されている「別の宇宙」の研究にもつながるものとして注目されています。

 私たちの宇宙の姿は「タテ・ヨコ・高さ」の三つの次元から出来ていますが、現代物理学の理論では、137億年前にビッグバンによって宇宙が誕生する前の極めて微小な空間には、ほかに六つの次元があったとされ、なぜ三つの次元になったのかが謎になっています。茨城県つくば市にある高エネルギー加速器研究機構などのグループは、ビックバンが起きる前に、九つあった次元がどのように変化したのか調べるため、独自の計算式によって、ことし2月から京都大学にあるスーパーコンピューターで分析を進めてきました。その結果、九つの次元のうち、「タテ・ヨコ・高さ」の三つだけが急速に膨張して、残りの六つの次元は膨張せずに小さいままとどまったことを、世界で初めて計算によって説明することに成功したということです。

 次元は宇宙空間の広がり方を決める基本的な材料とも言える存在で、さまざまな次元の実態が解明できれば、私たちの宇宙以外にも「別の宇宙」が存在するのかという謎にも迫れる可能性があります。研究グループは、今回の計算方法を発展させると残りの六つの次元の解明につながる可能性もあるとして、研究を進めることにしています。この研究成果は、来年1月4日にアメリカの科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」のオンライン版に掲載されます。

NHKニュース 2011-12-22

光は年をとらない/『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン

2011-12-10

観測史上最大のブラックホール二つ発見、太陽の100億倍


 米カリフォルニア大学などの研究チームが観測史上最大のブラックホールを二つ発見したとして、科学誌「ネイチャー」に発表した。

 二つのブラックホールはそれぞれ太陽の約100億倍の質量を持ち、あらゆる物質が重力から抜け出せなくなる「外縁」の大きさは、太陽と冥王星との距離の約5倍に達していた。これまでの観測では1977年に見つかった太陽の60億倍のブラックホールが最大とされていた。

 研究チームはハワイにあるケック天文台やジェミニ天文台、マクドナルド天文台を使って地球から比較的近い距離にある銀河を観測。その結果、地球から3億2000万光年離れた獅子座の方向にあるブラックホールと、同3億3600万光年離れたかみのけ座の方向にあるブラックホールを発見した。

 今回の発見についてカリフォルニア大学バークリー校の研究者は「われわれは最大のブラックホールに近付いているかもしれない」「この二つのブラックホールが最大なのか、それとも氷山の一角なのかを見極めるために観測を続ける必要がある。現時点では分かっていない」と話している。

CNN 2011-12-06

ブラックホール

2011-10-06

地球外文明(ETC)は存在しない/『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット
・『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司

 ・地球外文明(ETC)は存在しない

『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド

 神と宇宙人と幽霊はたぶん同一人物だ。いずれも自我の延長線上に位置するもので、人類共通の願望が浮かび上がってくる。で、少なからず見たことのある人はいるのだが、連れてきた人は一人もいない。

霊界は「もちろんある」/『カミとヒトの解剖学』養老孟司

 すなわち神と宇宙人と幽霊は情報次元において存在するのだ。ま、ドラえもんと似たようなものと思えばいい。ドラえもんは存在するが、やはり連れてくることは不可能だ。

「地球外文明(エクストラテレストリアル・シヴィリゼーション/略してETC)〈※原文表記は Extra-Terrestrial Civilization か〉」は、厳密にいえば宇宙人というよりも、高度な文明をもつ知的生命体という意味合いだ。

 ロシアの天体物理学者ニコライ・カルダシェフは、そのような分類について、役に立つ考え方を提案した。ETCの技術水準は三つあるのではないかという。カルダシェフ・タイプ1、つまりK1文明は、われわれの文明と同等で、惑星のエネルギー資源を利用することができる文明である。K2文明になると、地球の文明を超え、恒星のエネルギー資源を利用できる。K3文明ともなると、銀河全体のエネルギー資源を利用できる。さて、(スティーヴン・)ジレットによれば、銀河にあるETCの大半はK2かK3ではないかという。地球上の生命についてわかっていることからすると、生命には利用可能な空間を見つけて、そこへ広がっていくという、生得の傾向があるらしい。地球外生命は別だと考える理由はない。きっとETCは、生まれた星系から銀河へ進出しようとしているだろう。ここで大事なのは、技術的に進んだETCなら、数百万年で銀河系を植民地にできるという点である。それならすでに地球にも来ていていいはずだ。銀河は生命であふれかえっているはずだ。ところがETCが存在する証拠は見つかっていない。ジレットはこれをフェルミ・パラドックスと呼んだ。ジレットにとって、このパラドックスはそっけない結論を示していた。この宇宙にいるのは、人類だけということである。

【『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ:松浦俊輔訳(青土社、2004年/新版『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』、2018年)以下同】

カルダシェフの定義
フェルミのパラドックス

 科学者の想像力は凄いもんだ。「あ!」と頭の中に電気が灯(とも)る。「ってなわけで、やっぱりいないのよ」以上、で終わってもよさそうなものだが、スティーヴン・ウェッブはここから50の理由を挙証してゆく。

Black Hole Pumps Iron (NASA, Chandra, 09/14/09)

 まずはエンリコ・フェルミの人となりを紹介しよう。

 その後まもなく、ベータ崩壊(大質量の原子核にある、電子を放出するタイプの放射能)に関するフェルミの理論で、その国際的な名声は定まった。その理論は、電子とともに、幽霊のような正体不明の粒子が放出されることを求めていた。この粒子をフェルミは中性微子(ニュートリノ)――「小さな中性のもの」と呼んだ。このような仮説的なフェルミ粒子の存在を誰もが信じた訳ではないが、結局、フェルミは正しかった。物理学者は1956年、とうとう、ニュートリノを検出したのである。

 何と「ニュートリノ」を命名した人物であった。しかも生まれるずっと前の名付け親ときたもんだ。偉大なるオジイサンとしか言いようがない。

 フェルミの同業者たちは、物理学の問題についてその核心をまっすぐ見通し、それを簡単な言葉で述べるフェルミの恐ろしいほどの能力を讃えていた。みんなフェルミのことを法王と呼んでいた。間違うことがないように見えたからだ。それと同様に印象的だったのが、答えの大きさを推定する方法だった(複雑な計算を暗算することも多かった)。フェルミはこの能力を学生に教え込もうとした。いきなり、一見すると答えようのない問題に答えろと命じることがよくあった。世界中の海岸にある砂粒の数はいくらかとか、カラスは止まらないでどのくらいの距離飛べるかとか、人が呼吸するたびに、ジュリアス・シーザーが最後に吐いた息の中にある原子のうち何個を呼吸していることになるかとかの問題である。このような「フェルミ推定」(今ではそう呼ばれている)を考えるには、学生は世界や日常の経験についての理解に基づいて、おおざっぱな近似をする必要がある。教科書やすでにある知識に基づいてはいられないのだ。

 科学は合理性をもって世界を捉える。ここに科学の魅力がある。例えば人体は60兆個の細胞から成る。そして毎日15兆個(20%)が死ぬ。1秒間で5000万の細胞が生まれ変わる。血管全部をつなぐと10万km(地球2周半に相当)になり、肺を広げるとテニスコート半分ほどとなる(「からだの不思議 素晴らしい人体」を参照した)。

 これは単なる数量の計測ではない。人体を小宇宙と開く偉大な発見なのだ。

 パラドックスという言葉は二つのギリシア語に由来する。「~に反する」という意味の「パラ」と、「見解・判断」を意味する「ドクサ」である。それはある見解や解釈とともに、別の、互いに排除し合う見解があることを述べている。この言葉はいろいろな細かい意味をまとうようになったが、どの使い方にも、中心には矛盾という観念がある。ただ、パラドックスはつじつまが合わないだけのことではない。「雨が降っている。雨は降っていない」と言えば、それは自己矛盾で、パラドックスはそれだけのことではない。パラドックスが生じるのは、一群の自明の前提から始めて、その前提を危うくする結論が導かれるときである。外ではきっと雨が降っているに違いないとする鉄壁の論拠があったとして、それでも窓の外を見ると雨は降っていない。この場合、解決すべきパラドックスがあるということになる。
 弱いパラドックスあるいは「誤謬(ファラシー)」は、少し考えれば解決がつくことが多い。矛盾が生じるのは、たいてい、ただ前提から結論に至る論理のつながりを間違えているだけだからだ。これに対して強いパラドックスでは、矛盾の元はすぐには明らかにならない。解決がつくまで何世紀もかかることもある。強いパラドックスには、われわれが後生大事に抱えている理論や信仰を問い直すという力がある。

 パラドックスというテーマにも強弱があるという指摘が面白い。小疑は小悟に、大疑は大悟に通じるということなのだろう。宗教って、こういうところが曖昧なんだよね。彼らはバイブルや経典に束縛されて合理性を見失うのだ。だから、どの宗教でも間違い探しみたいな研鑚ばかりしているのが現状だ。

Black Holes Have Simple Feeding Habits (NASA, Chandra, 6/18/08)

 では、フェルミ・パラドックスが誕生した瞬間を見てみよう。

 4人は腰をおろして昼食をとり、話はもっと現世的なことに転じた。すると、まだほかのこと話しているさなか、だしぬけにフェルミが聞いた。「みんなどこにいるんだろうね」。昼食をともにしていたテラー、ヨーク、コノピンスキーは、フェルミが地球外からの来訪者のことを言っているのだとすぐに理解した。それがフェルミだったので、みな、それが最初思われていたよりも厄介で根本にかかわる問題であることに気づいた。ヨークの記憶では、フェルミは次々と解散して、地球はとっくに誰かが、何度も来ているはずだという結論を出した。(1950年、ロスアラモスにて)

 ロスアラモスの昼食から生まれたというのが示唆的だ。ロスアラモスは核爆弾の総本山である。

 言い換えれば、われわれと通信しようとする文明が、今現在、100万あってもおかしくないということだ。すると、なぜ、向こうからの声が聞こえてこないのだろう。それに、どうしてこちらへ来ていないのだろう。(中略)みんなどこにいるのか。【彼らはどこにいるのだろう】。これがフェルミ・パラドックスである。
 パラドックスは知的生命が存在しないということではないことに気をつけておこう。パラドックスは、知的生命が存在すると予想されるのに、その兆しが見あたらないということである。

 つまり文明が発達していれば当然放射されるはずの電磁波が観測されていないのだ。もちろん宇宙は広大であるがゆえに、たまたま地球の上を通過していないと考えることはできる。

 このパラドックスが別個に四度発見されたことを知れば、このパラドックスの力がわかるだろう。このパラドックスは、正確にはツィオルコフスキー=フェルミ=ヴューイング=ハート・パラドックスと呼ぶべきかもしれない。

 知のシンクロニシティといってよい。一握りの人が先鞭(せんべん)をつける格好で脳内のネットワークシステムは進化し続ける。

Kepler's Supernova Has Fast-Moving Shell (NASA, Chandra, Hubble, Spitzer,10/06/04)

 しかし今のところ何も見つかっていない。探査機は熱を放出しているだろうが、異常な赤外線も観測されていない。

 高度な技術をもつ知的生命体が存在する可能性は極めて低い。

 しかしわれわれは自信をもって、エイリアンの存在を示す証拠はまだ見つかっていないと言うことはできる。それを観測していないのに、なぜいるかもしれないと想定するのだろう(さらに、探査機が太陽系にいるのなら、どうして地球だけ放っておくのかという問題も残る)

 宇宙人を信じる人々は願望を投影しているのだ。著者は物理学者であるが元々はETC肯定派だったという。科学者の間でさえ意見が分かれている。

 もしかしたら、われわれみながエイリアンなのかもしれないのだ。

 人体だって元を尋ねれば星屑に行き着くわけだから、別にエイリアンであっても構わんがね。特に地球という土地に束縛される必要はないだろう。

 地球外文明(ETC)は存在しない。今のところは。



偽りの記憶/『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー
宇宙人に誘拐されたアメリカ人は400万人もいる/『本当にあった嘘のような話 「偶然の一致」のミステリーを探る』マーティン・プリマー、ブライアン・キング

2011-09-17

宇宙図の悟り

宇宙図

宇宙図

 前にも書いたが、上記ページのアニメーションを見て私は悟りが閃(ひらめい)いた。直ちに科学技術広報財団に申し込んだのが画像の宇宙図である。

科学技術広報財団(サイズは2種類)

 見るたびに脳が活性化される。137億年を俯瞰するのだからそれも当然だ。最初の悟りを再掲しておく。

時間と空間に関する覚え書き

◆では、宇宙図を見て閃いた悟りを開陳しよう(笑)。視覚が捉えている世界は「光の反射」である。光には速度がある(秒速30万km)。つまり我々に見えているのは「過去の世界」であって「現在という瞬間」を見ることはできない。

◆更に人間の知覚は0.5秒遅れる。つまり「光の速度+0.5秒」前の世界を我々は認識しているわけだ。

人間が認識しているのは0.5秒前の世界/『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』池谷裕二

◆例えば北極星。地球上から見える北極星の光は431光年を経たものである。仮に北極星でサッカーの試合をしたとしよう。コイントスが終わっていよいよゲームが始まる。この場合、431年前のゲームを我々が見ていることになる。

諸行無常とは存在の本質を示した言葉であろう。「とどまることを知らない変化」こそが存在の存在たる所以であり、それが生命現象である。しかしながら我々の視覚に映じているのは過去の世界であるがゆえに、「存在の影(あるいは迹〈かげ〉)」しか認識できない。

◆「神」という視点は光に支えられた座標なのだろう。それは「見える世界」に限定される。そうでありながら光の源である太陽を人間は直視することができない。「見えるもの」には名が付与される。言葉は名詞から発生したと考えられている。神は光であるがゆえに「初めに言葉ありき」という構図ができる。

◆相対性理論は空間と時間が絶対ではないことを明かした。例えば光のスピードで走る車をあなたが道路で眺めたとしよう。車内の人達は全く動いておらず、彼らの周囲にある物は全て縮んで見える。車の中では普通に時間が進行しているにもかかわらずだ。

◆車を運転していたのは浦島太郎だった。首都「光速」道路で竜宮城へ行き、3年後に自宅へ帰ったところ、何と300年が経過していた。これを「ウラシマ効果」という。

◆実は我々の生活にもウラシマ効果は存在する。

相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

◆神が光であると仮定すれば、神的世界は光の届く範囲に限定される。そして光は必ず影をつくり出す。なぜなら物体が光をさえぎるからだ。こうして光は「表と裏」という世界を形成する。地球が太陽に照らされる時、光と同じ速度で地球の影は宇宙に伸びる。その先にも闇は広がっている。

◆宇宙全体に光が及ぶことはない。なぜなら宇宙は光速度を上回るスピードで膨張しているからだ。

宇宙にはてはあるのですか?

◆光に支配されたキリスト教的時間観は直線的とならざるを得ない。生→死→復活→永遠、というのがそれだ。これでは系(システム)として閉じていないので必ず矛盾が生じる。

キリスト教と仏教の「永遠」は異なる/『死生観を問いなおす』広井良典

◆仏教は現在性を追求している。仏典においては「将来」ではなく「未来」という言葉が使われる。「将(まさ)に来たらん」とする時間ではなく、「未(いま)だ来たらざる」時間として捉える。厳密にいえば仏教は未来を認めていないのだ。

◆ブッダが説いた原始の教えはプラグマティズムと受け止められがちだが、むしろ現在性を重んじた智慧であったと考えるべきだろう。カースト制度を支える輪廻という物語を解体するには、前世・来世を一掃する必要があった。悟りとは修行の果てに得られるものではなく、ありのままの現在性を捉えることだ。

◆光の速度を超えると虚数の世界が現れる。2乗してマイナスとなるのが虚数だ。量子力学や電磁気学では実際に使われている。膨張する宇宙の果てが虚数の世界であれば、そこはネガとポジが反転する世界だ。生老病死も反転し、光速度を超えた時点で過去へと向かい、久遠元初に辿り着くかもしれない。

◆実際は光速度に近づくほど質量は無限に重量を増す。これがE=mc²。質量が無限大の世界といえばブラックホールだ。地球を2cmに圧縮すればブラックホールが出来上がる(※実際は質量不足で不可能)。そしてブラックホールを取り巻く空間は激しく歪む

◆物理世界における光速度を超えるのは、無意識の直観であり、これこそが悟りなのだろう。

敢えて“科学ミステリ”と言ってしまおう/『数学的にありえない』アダム・ファウアー
月並会第1回 「時間」その一
ブラックホールの画像と動画

2011-05-11

我々は闇を見ることができない/『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』谷口義明


 ・我々は闇を見ることができない

『ゼロからわかるブラックホール 時空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム』大須賀健
『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド

「宇宙」って時空という意味だったんだね。知らなかったよ。

 私たちは宇宙に住んでいる。「宇」は空間を意味し、「宙」は時間を意味する。宇宙はまさに私たちの住む時空だということになる。しかし、私たちは自分たちの住んでいる宇宙がどういうものであるか、完全には理解しているとは思えない。歯がゆいことである。

【『暗黒宇宙の謎 宇宙をあやつる暗黒の正体とは』谷口義明(講談社ブルーバックス、2005年)以下同】

 で、何が歯がゆいか? 宇宙の目方がわからないのだ。「質量ったって、星の数を勘定すればいい話だろ?」。私もそう思っていた。まず、ばらつきが多すぎる。太陽系9個の惑星の重さは、太陽の質量のたった0.13パーセントにしかならないそうだ。太陽って、そんなに大きかったのか。

太陽系の本当の大きさ/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 地球の直径(赤道)は1万2756kmである。太陽までの距離は何と1億4959万7870kmもある。つまり地球を1万1727個並べた距離だ。地球がサッカーボールの大きさ(70cm)であれば、太陽は821m離れていることになる。確かに遠いわな。一体全体どうやって惑星を引っ張っているんだろうね?

 星の距離は光年という単位で表されるが、これ自体が時空を示している。ちなみに1光秒は29万9792.458kmだ。宇宙は気が遠くなるほどの広がりをもつ。

 そして宇宙には目に見えないエネルギーが存在することがわかってきた。しかもこれが宇宙の大半を構成している。

 さらに驚くべき「ダーク」がある。ダークエネルギーである。宇宙全体の73パーセントの質量を担うものは、このダークエネルギーと呼ばれるものである。そしてさらに、ダークマターが23パーセントを占める。つまり、私たちが知っている物質の質量は、宇宙全体の質量のたった4パーセントでしかないことがわかってきたのである。

 ダークエネルギーという言葉はフリッツ・ツビッキーが1933年に提唱したもの。もちろんダークマター(暗黒物質)にちなんでいる。正体はいまだ不明であるが「真空のエネルギー」と考えられている。

 こうなると超ひも理論に近い。

 結局のところ、宇宙のダークマターの探求は、素粒子の世界と力の統一理論に深く関係していることになる。
 マクロの宇宙とミクロの素粒子の交差点にダークマターがいるかのごとくである。

 つまり宇宙を支配しているのは闇なのだ(笑)。

 このように星はその質量に応じてある有限の寿命を全うして死んでいく。では死んだあとはどうなるのだろう? 多くの場合、ダークな残骸を残すことになる。宇宙のダークサイドの一員になる。

 銀河系の中心には太陽の約300万倍のブラックホールがあると予想されている。標準的なブラックホールの質量は何と太陽の10億倍だってさ。「私って何て小さな人間なんだ!」と悩んでいるそこのあなた。あなたは正しい。

 我々は闇を見ることができない。闇は至るところにある。見えている物の裏側は闇なのだ。背後も闇と考えてよかろう。眠っている間も闇に包まれている。もっと凄いのはまばたきという小さな闇だ。映画のフィルムのつなぎ目のように闇が挿入されているのだ。

 結局、宇宙のダークが示しているのは「死のエネルギー」なのだろう。人類悠久の歴史を思えば、生よりも圧倒的に死の方が多い。目に見える生を支えているのもまた数多くの死(食料)である。

 そう考えると、「私」を成り立たせているのは「反私」なのかもしれない。何らかの量子ゆらぎが絶妙なバランスで存在たらしめているのだろう。これが「私」という場である。

 亡くなっていった人々を思う時、単なる思い出以上の不思議なエネルギーを感じる。


ブラックホールの画像
人間に自由意思はない/『脳はなにかと言い訳する 人は幸せになるようにできていた!?』池谷裕二

2009-02-05

光は年をとらない/『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン


『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング

 ・光は年をとらない

『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド
『物質のすべては光 現代物理学が明かす、力と質量の起源』フランク・ウィルチェック
『サイクリック宇宙論 ビッグバン・モデルを超える究極の理論』ポール・J・スタインハート、ニール・トゥロック

 ブライアン・グリーンは超ひも理論の権威。私と同い年である。後半は小難しくなるものの、これだけの読み物にしたお手前が見事。自分達の発見に関しても、実に控え目な表現となっている。

 物体が私たちにたいして動くときに時間の進み方が遅くなるのは、時間に沿った運動の一部が空間のなかでの運動に振り向けられるからだということがわかる。つまり、物体が空間のなかを進む速さは、時間に沿った運動がどれだけ他に振り向けられるかということの反映にすぎない。
 また、物体の空間的速度に限界があるという事実が、この枠組みですぐに説明がつくこともわかる。時間に沿った物体の運動がすべて、空間のなかでの運動に振り向けられれば、物体が空間のなかを進む速さは限界に達する。このとき、時間に沿った光の速さでの運動がすべて、空間のなかを光の速さでおこなう運動に振り向けられる。時間に沿った物体の運動がすべて使い果たされてしまったときのこの速さが、空間のなかを動く速さの限界だ。どんな物体も、これ以上速くは動けない。これは、先の車を南北方向に運転するのにたとえられる。ちょうど、この場合、東西の次元に動くための速さが車に残らないの(と)同じように、光の速さで空間を進むものには、時間に沿って動くための速さが残らない。したがって、光は年をとらない。ビッグバンで生じた光子は、今日でも当時と同じ年齢なのだ。光の速さでは時間は経過しないのである。

【『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン:林一〈はやし・はじめ〉、林大〈はやし・まさる〉訳(草思社、2001年)】

 相対性理論がすっきりと整理されている。光速度に達すると時間は止まる。だがそれは観測者である我々から見た話である。時間が経過する実感は全く変わらない。ここが面白いところ。

 科学の世界は想像力を駆使して宇宙の秘密を解き明かす領域にまで踏み込んだ。とすれば宗教は、科学的姿勢・実験的な態度で思想を再構築する必要が求められるだろう。

 浅川の緩やかな流れが反射する光や、城山湖が照らす光の波を見ていると、不思議なほど亡くなった友のことが思い出される。死者は亡くなった時点で光と化し、いつも変わらぬ姿でメッセージを送っていると思えてならない。



神は細部に宿り、宇宙はミクロに存在する/『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』佐藤勝彦監修
相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン
死の瞬間に脳は永遠を体験する/『スピリチュアリズム』苫米地英人
キリスト教と仏教の「永遠」は異なる/『死生観を問いなおす』広井良典