・『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』トール・ノーレットランダーシュ
・誤った信念は合理性の欠如から生まれる
・迷信・誤信を許せば、“操作されやすい社会”となる
・人間は偶然を物語化する
・回帰効果と回帰の誤謬
・視覚的錯誤は見直すことでは解消されない
・物語に添った恣意的なデータ選択
・『脳はいかにして〈神〉を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス』アンドリュー・ニューバーグ、ユージーン・ダギリ、ヴィンス・ロース
・『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
・『ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル
・宗教とは何か?
・必読書リスト その五
迷信・誤信のメカニズムを微に入り細を穿(うが)って解き明かしている。思考回路に何らかの変化が訪れることは確実だ。情報化社会における迷信・誤信は、人生の舵取りを誤る可能性がある。人間心理を鋭く洞察した本格的な一冊である。
以上から明らかなように、多くの誤った考えはもっぱら認知的な原因によって生じてくる。つまり、情報を処理したり結論を引き出したりする能力の不完全さによると考えられる。言い替えれば、「そう思いたい」というような心理的欲求を満足させるために誤った考えを持つのではなく、得られた事実に最もうまくあてはまる結論として導き出されたものが、結果的に誤った考えとなってしまうのである。ロバート・マートンの言葉を借りれば、人々がそうした信念を持つのは「自分自身の体験からこう結論せざるを得ない」と考えるからである。誤った信念は決して非合理性が生じるのではなく、合理性の欠陥から生じるのである。
【『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ:守一雄〈もり・かずお〉、守秀子〈もり・ひでお〉訳(新曜社、1993年)】
全体的に訳文がよくないが、それを補ってあまりある内容。3分の1ほど進めば後は一気読みだ。このテキストのポイントは、「人間は合理性を求めるがゆえに、異形のジグソーピースであっても無理矢理はめ込む」ことである。つまり、“知識”という名の世界地図に余白があればあるほど、違う形のジグソーピースが紛れ込む可能性が高くなる。
更に、情報の可塑性(かそせい)についても考えざるを得ない。同じ情報であっても受け手次第で変質することがよくある。人は、自分にとって都合のいい情報、都合のいい解釈、都合のいい関連づけをするからだ。
悪質商法まがいの情報が氾濫する現在、我が身を守るためにも本書を精読すべきである。
・人間は不完全な情報システムである/『なぜ、脳は神を創ったのか?』苫米地英人
・自我と反応に関する覚え書き/『カミとヒトの解剖学』 養老孟司、『無責任の構造 モラル・ハザードへの知的戦略』 岡本浩一、他
・物語の本質〜青木勇気『「物語」とは何であるか』への応答
・真のコミュニケーション/『集合知の力、衆愚の罠 人と組織にとって最もすばらしいことは何か』アラン・ブリスキン、シェリル・エリクソン、ジョン・オット、トム・キャラナン
・脳は宇宙であり、宇宙は脳である/『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイヴィッド・イーグルマン
・合理性を阻む宗教的信念/『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳
・人間は世界を幻のように見る/『歴史的意識について』竹山道雄
・「わかった」というのは感情/『「わかる」とはどういうことか 認識の脳科学』山鳥重
・カーゴカルト=積荷崇拝/『「偶然」の統計学』デイヴィッド・J・ハンド