2011-08-20

ユダヤ人少年「みなが、その共犯者さ」


 私に付いてきた入植地の男の子に聞いた。イェディディヤ・ベインツハック、10歳である。
 ――もっと静かな暮らしをしたいと思うかい。
「うん」
 ――それには、どうしたらいい?
「アラブ人をここからおっぽりだしてしまえばいいのさ」
 ――でも、ここに住んでいるユダヤ人は400人で、アラブ人は12万人なんだよ。どうやってアラブ人を追い出すつもりだい?
「やり方は、いろいろあるさ。例えば、みなが逃げて行くように、何人か殺してやるとか」
 ――でも、人を殺すのはいいことかい?
「人を殺す奴を殺すのは、いいことさ」
 ――でも、みなが人殺しというわけじゃないよ。
「みなが、その共犯者さ」

【『パレスチナ 新版』広河隆一〈ひろかわ・りゅういち〉(岩波新書、2002年)】

パレスチナ新版 (岩波新書)

i1

i2

パレスチナ人女性を中傷するイスラエルの若者たち

2011-08-19

副島隆彦、一ノ瀬正樹、ポール・ホーケン


 3冊挫折。尚、前回から挫折本の冊数をカウントするのをやめた。読了率を示すことに意味があるとは思えないため。五十の坂が近づいているので、とにかくムダな本を避けなくてはならない。

新たなる金融危機に向かう世界』副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉(徳間書店、2010年)/おっかなびっくり開いて飛ばし読み。言葉遣いが2ちゃんねらーと同じレベルだ。きっと小室直樹の負の部分だけを譲り受けてしまったのだろう。ものの考え方が極端を超えて破綻の領域に突入している。一部からカルト的人気を博しているようだが、ただのカルトだと思う。

原因と結果の迷宮』一ノ瀬正樹(勁草書房、2001年)/狙いはいいのだが文章がまどろっこしい。妙なわかりやすさを演出したのではあるまいか。そのため文章が迷宮のようになっている。

祝福を受けた不安 サステナビリティ革命の可能性』ポール・ホーケン:阪本啓一訳(バジリコ、2009年)/「レイチェル・カーソン『沈黙の春』の精神を受け継ぐベストセラー」と見返しに書いてあるのを見てやめた。多分イデオロギー宣揚が目的なのだろう。内容は決して悪くはないと思う。モンサント社に対する批判も書かれている。それから、わけのわからんカタカナ語をタイトルに使用するのは賢明ではない。

知の要塞「図書館」

Library of Celsus
Library of Celsus

Library of Parliament
The library of parliament, Ottawa. ON, CA

NYC: Brooklyn Public Library - Central Library
NYC: Brooklyn Public Library - Central Library

Library - Carmel Mission
Library - Carmel Mission

Library Parabola
Library Parabola

library

Library, University of Copenhagen
Library, University of Copenhagen

Mitchell Library, Sydney (#24)
Mitchell Library, Sydney

library
San Francisco Main Library

George Peabody Library
George Peabody Library

NYC Public Library (HDR)
NYC Public Library (HDR)

Ancient Library
Ancient Library

Suzzallo Library HDR - Explored #467
Suzzallo Library HDR - Explored

Philological Library, FU Berlin
Philological Library, FU Berlin

National Library
The National Library of Finland

Chişinău (Moldova) - National Library
Moldova - National Library

TRINITY-COLLEGE-LIBRARY-DUB
TRINITY-COLLEGE-LIBRARY-DUB

図書館 愛書家の楽園本と図書館の歴史-ラクダの移動図書館から電子書籍までー

図書館のプロが教える“調べるコツ”―誰でも使えるレファレンス・サービス事例集図書館に訊け! (ちくま新書)図書館を使い倒す!―ネットではできない資料探しの「技」と「コツ」 (新潮新書)

タリバンに鼻を削がれた18歳の女性

time
【『タイム』2010年8月7日号】

「タリバンに鼻を削がれたアフガン女性」の衝撃 米軍が撤退したらアフガン女性に何が起きるのか?:菅原出

地獄の炎の説教


 ジョン・ノックス教会を見つけて横道に車を入れ、ロシナンテ号を見えないところに停めた。チャーリーに番をするように命じ、目も眩むほど白い板壁の教会に向かって行儀よく歩いていった。しみ一つなく磨き抜かれた礼拝所の後ろの席に座った。
 祈りの文句は的を射ていた。全能の神は人間の弱さや不信心を見ておられると説いたのだ。まさに私のことだったし、ここに集まっている人たちも同じだと思うしかなさそうだった。
 この礼拝は私の心を動かした。私の魂も少しはよくなったと思いたい。あんな説教の仕方を聞いたのは久しぶりである。
 今の時代、少なくとも大都会では、礼拝は精神分析という聖職者によって行われている。「そんなの、ちっともあなたの罪じゃありません。不可抗力のアクシデントですよ」と言ってもらうわけだ。しかしこの教会ではそんなでたらめなど存在しなかった。
 厳格な牧師は、鋼鉄のような瞳とドリルのような舌鋒を持っていた。祈りの言葉を皮切りに、彼は我々が実に惨めな存在なんだと思い出させた。その通りである。我々は最初から大した者ではなかったし、安っぽい努力しかせず、道を誤ってばかりいる。
 こうして我々の気を楽にした時、彼は見事な説教へと進んだ。地獄の炎の説教だ。我々(いや私だけかもしれない)はろくでもない馬鹿者だと証明した後、性根を入れ替えないと将来どんなひどいことが起こるのか、牧師は冷徹な確信と共に語ってみせた。そのくせ性根を入れ替えることなんてちっとも期待していなかった。
 地獄について、彼は専門家として説明してくれた。軟弱な昨今のふにゃふにゃした地獄ではない。一流の技術者が働き、景気よく燃やされた業火が白熱している地獄についてである。この牧師は我々が分かりやすいように話をかみ砕いた。激しく燃え上がる石炭の炎、そこに風を送る無数の穴、命懸けで炉を燃やす悪魔の一団。そこで燃やされているのは私だった。
 私はすっかり気分がよくなってきた。ここ数年、神様を我々の友達みたいに思って共にあるよう祈っていたのだが、そのせいで父と息子でソフトボールをしているような虚しさを感じていた。ところがこのヴァーモントの神様ときたら、私を気づかうあまり数多くの困難を設け、私の中の罪悪を暴き出してくださった。新たな見地から私の罪を白日の下に晒してくれたのである。
 小さくて卑しい汚らわしい私の罪は、すぐに忘れ去られるようなものだった。しかし牧師は、その罪を大きく膨らまし、華やかで堂々たるものにしてくれた。ここ数年、私は自分を大した奴だとは思っていなかったが、私の罪がこれほど大したものだったのなら、ちょっとは誇ってもよさそうだ。私はいたずら小僧ではなく一流の罪人であり、その罪の報いを受けようとしているのだ。
 魂ごとたっぷりと元気づけてもらったように感じたので、教会の献金皿に5ドルほど入れさせてもらった。その後、教会の前で牧師やできるだけたくさんの会衆者たちと温かな握手を交わした。おかげで悪事を働いているのだという快感が味わえたし、そんな気分を火曜日までたっぷりと味わい続けることができた。
 チャーリーにもこんな満足感を味わわせるために、ぶん殴ってやろうかとまで思い立った。私ほど罪深くはないにせよ、チャーリーだって似たりよったりだからである。

【『チャーリーとの旅』ジョン・スタインベック:竹内真訳(ポプラ社、2007年/大前正臣訳、弘文堂、1964年)】

チャーリーとの旅

John Steinbeck