・『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
・『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
・『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
・『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
・『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
・『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
・『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
・『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
・『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
・『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
・『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
・米中国交回復のためにアメリカは沖縄を返還した
・『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
・『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年
・『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘:2014年
・『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘 2015年
ところが、ここには隠されている問題があるのです。尖閣諸島に関しての論争は、実は沖縄全体の問題でもあるのです。キッシンジャー元国務長官は、沖縄が変換になった1972年の前から、中国へ密かに行って、米中関係を構築しようとしていたのです。当時、国際社会で何が大きな問題だったか。アメリカは当時、ベトナム戦争を戦っており、米ソの関係が悪化していたことが問題でした。ソ連と中国の関係も芳しくありませんでした。中ソで国境紛争が起こっていたのです。1969年3月にアムール川の支流、ウスリー川の中洲で、その領有権を巡って大規模な軍事衝突が発生したのです。また同じ年、新疆ウイグル自治区で軍事衝突が起こって、中ソの全面戦争や核戦争にエスカレートしそうだったのです。
同じ共産党独裁政権で、かつては仲のよかった中ソが対立するようになった。時代を変える事件が起こったわけです。ベトナム戦争も泥沼化。そういう状況のなかで、キッシンジャーは何とかして中国と手を結び、ソ連に対抗しようとしたのです。要するに米ソ代理戦争となっていたベトナム戦争を解決しようとしたというわけです。
そのときは国家安全保障担当補佐官だったはずですが、当時のキッシンジャーの相手は中国の周恩来です。彼は名うての戦略家です。そして毛沢東がいる。彼らは簡単に交渉をまとめられるような相手ではありません。キッシンジャー氏と、ニクソン大統領も加わって、いろいろな形で交渉します。当時そのときに中国に対して、交渉をまとめるためのお土産、外交カードを持っていくわけですが、それが実は沖縄だったのです。
沖縄の米軍基地は、かねてから中国に対するアメリカの抑止力でした。地理的にももちろんそうですが、ソ連というよりは中国に対する軍事力なのです。当然ながら、中国にとっては沖縄の米軍基地は大変な脅威です。外交カードは「その脅威を削減します」というものだったのです。その前提として、我々アメリカは日本に沖縄を返しましょう、というお土産だったのです。
そして、米軍は徐々に撤退していきましょうということを言ったのです。このときに残したのが尖閣の問題でした。
【『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2013年)以下同】
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』(中丸薫、菅沼光弘)で菅沼は周恩来のことを「スパイマスター」とも表現している。最高の賛辞といっていいだろう。
ヘンリー・キッシンジャーは元々ハーバード大学の政治学教授で、ニクソン政権誕生とともに国家安全保障問題担当大統領補佐官として政権中枢に入り、国務長官・国防長官も務めた。ただし学者だからと侮ってはならない。1970年代において中ソにはデタント政策(対話中心で和平を探る)で臨みながらも、チリではCIA主導のクーデターでサルバドール・アジェンダ政権を転覆させてピノチェト政権が誕生した。またカンボジアでは米軍の爆撃によって大量殺戮を行ない、更にバングラデシュでも大量虐殺に手を染めている。いずれもキッシンジャーが関与しているとされる。ま、「20世紀の巨悪」ともいうべき人物だ。
それ以前、アメリカは中国と秘密会議でどのようなやり取りをしていたのか。日本軍国主義脅威論をネタにしていたのです。かねてから、「日本の軍国主義はけしからん、日米安保条約はけしからん」と周恩来は言っていた。その周恩来が手の平を返すように、日本と国交正常化します。周恩来とキッシンジャーでは器が全然違っていました。周恩来首相の方が二枚も三枚も上手だったのです。本当のところを言えば、キッシンジャーは周恩来にしてやられたということです。アメリカと交渉しながら、実は日本と組むことでアメリカを牽制する構図を固めたのです。アメリカにとっては、日中国交正常化によって、アジアに新しい形の脅威が立ちはだかるということになったわけです。
ちなみに、キッシンジャーは中国に対して沖縄を外交カードにする際、沖縄を日本に返還すること、基地の規模を縮小していくことのほかに、沖縄の米軍基地は日本が軍国化しないように嵌めた「ビンのふた」でもあるのですよ、などと言っています。実際、アメリカ自身が日本による報復を恐れていますから、本音でもあるわけです。
そして、紛争の種を残すのです。日本に尖閣を含む沖縄の施政権は返還したけれども、資源があることなどをほのめかして、領有権についてはどうぞ日本と紛争してくださいと言っているようなものなのです。日本はいま、資源の問題だけで中国が領有権の主張を始めたと言っていますが、それは表面的なことで、その裏にはアメリカがアジアに紛争の種を残したという事実があることを認識しておかなければならないのです。もっと言えば、アメリカは自分のために、日本が本来持つ利益を中国に差し出す形で紛争の種を残し、中国もまた中国で、しばらくは日本からなるべく多くの援助を引き出したいと考えていましたから、尖閣の領土問題には言及しなかったのです。鄧小平〈トウ・ショウヘイ〉も、尖閣諸島に絡む論争は延ばしましょうと言いました。日中関係が領有権問題で混乱することは避け、その解決を次の世代ではなく、三代先まで延ばすとしたのです。いまはこの鄧小平の発言は非難されています。
考えてもみれば、元々日本の領土なのに、「領土問題」となって紛争の種と化していること自体がおかしいのです。台湾の領土になったことすら一度もないのですから。先駆諸島は南西諸島と同じで、澎湖列島ではありません。ちなみに日本はサンフランシスコ講和条約で台湾と澎湖列島は放棄しています。
キッシンジャーと周恩来の器が違うのは当然である。周恩来は文化大革命を生き延びた人物だ。その渦中で毛沢東夫人の江青に養女・孫維世〈ソン・イセイ〉を殺されている。しかも、「江青が刑事犯たちに孫維世の衣服を剥ぎ取らせて輪姦させ、輪姦に参加した受刑者は減刑を受けたと言う。また、遺体の頭頂部には一本の長い釘が打ち込まれていたのが見つかった」(Wikipedia)という凄惨極まるものだった。稀有(けう)な政治的才覚がなければ凌(しの)ぐことは難しかったはずだ。私みたいに単純な男であったならば、直ちに報復行動に出て殺されていたことだろう。
キッシンジャーという一人のアメリカ人に沖縄を自由に扱うことができる権力が与えられている事実に驚愕する。国家のパワーバランスは人間を無視したところで成り立っているのだろう。あのユダヤ人なら「殺されないだけマシだろう」くらいのことを言いかねない。
そろそろ「ビンのふた」を外してもいい時期ではないだろうか? 日本を他国に売るような国に安全保障を委ねるのは泥棒に警備を頼むような真似だ。ただし安倍首相ではちょっと心許ない。もっと肚(はら)の据わった大物役者が必要だ。
・安倍首相辞任の真相/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘