・『危機の構造 日本社会崩壊のモデル』小室直樹
・戦争は文明である
・戦争は制度である
・『悪の戦争学 国際政治のもう一つの読み方』倉前盛通
・『日本教の社会学』小室直樹、山本七平
・『封印の昭和史 戦後50年自虐の終焉』小室直樹、渡部昇一
・『日本国民に告ぐ 誇りなき国家は滅亡する』小室直樹
・『世紀末・戦争の構造 国際法知らずの日本人へ』小室直樹
・『日本の敗因 歴史は勝つために学ぶ』小室直樹
・『新世紀への英知 われわれは、何を考え何をなすべきか』渡部昇一、谷沢永一、小室直樹
・『戦争と平和の世界史 日本人が学ぶべきリアリズム』茂木誠
それゆえ“野蛮な戦争はもうごめんだ”という主張は、自己矛盾をはらんでいる。戦争は野蛮な行為ではないからである。
第一次大戦と第二次大戦の戦間期に、パシフィズムといわれる運動が、ヨーロッパを席巻(せっけん)したことがあった。パシフィズムとは「平和主義」という意味だ。学生も労働者も野蛮な戦争はもういやだ、絶対に銃はとらないと叫んだ。(中略)
それでは平和がもたらされたか。歴史は皮肉なことになった。パシフィズムは、世界史上、もっとも悲惨な、もっとも大きな戦争をもたらした。彼らの平和運動は、ヒットラーの揺籃(ようらん/ゆりかご)となったのだ。なぜ、そんな馬鹿なことになったのか。それは、一(いつ)にかかって、全員が、戦争を野蛮な行為と誤解した点にある。
本質を誤った運動は、たいへんな副作用をもたらす。平和をとなえ、願えば、平和がくるという、心情的な「念力主義」は、役にたたないだけでなく、危険だ。戦争を、人類が生みだした最高の文明として、とらえ直し、論理をそこから再出発させる必要がある。
【『新戦争論 “平和主義者”が戦争を起こす』小室直樹(カッパ・ビジネス、1981年/光文社文庫、1990年/ビジネス社、2018年『国民のための戦争と平和』改題)】
迂闊(うかつ)であった。読書日記に記していなかった。昨年の8月に読了している。小室作品における戦争もの・国家論の筆頭に位置すると考えてよい。
ひとつ言いわけをさせてもらうと、一方でクリシュナムルティやブッダの初期教典を読みながら、他方で歴史認識の再構築やリアリズムを追求することは離れ業といってよい。クリシュナムルティ流にいえば「分離の過程」そのものである。理想と現実の狭間(はざま)で時折、混乱気味になることもあると思われるが、ご了承願いたい。
複数の国家が連合する大きな戦争の原因は地球の寒冷化にあると私は考える。この環境史に基づくスケールを超える視点はまだ出てきていない。具体的には食糧とエネルギーを巡る争いであると見なすことができよう。21世紀になった今日においても尚、アメリカの国防戦略は原油を中心に構築されている。中東はその犠牲者である。
小室の場合は文明史的かつ社会科学的な視点である。ヒトの脳は宇宙を思わせる領域で膨大な情報と精密なシステムから成る。エリック・J・チェイソンは、ヒトの脳よりもはるかに複雑なシステムが「文明化した社会」であると指摘する。これは複雑系科学の創発・自己組織化・相転移などを踏まえると納得できる(『通貨戦争 崩壊への最悪シナリオが動き出した!』ジェームズ・リカーズ、2012年)。
・<パシフィズム(平和主義)は、臆病・『卑劣』を意味する>:チャンネル桜・瓦版、朝日廃刊が日本を救う
日本における平和主義は「文学」といってよい。心情的な物語が合理性を無視する。歴史を振り返れば一目瞭然だが、平和的な国家・民族は必ず侵略され、後に滅んだ。白人の奴隷にされたアフリカ人、突然やってきたヨーロッパ人に虐殺されたインディアン、ユダヤ人を受け入れたパレスチナを見よ。
江戸時代のミラクルピース(世界史的にも稀な長期的な平和時代)を可能にしたのは鎖国であった。しかし帝国主義の大波が押し寄せ、日本は内を守るため外に向かって打って出ざるを得なくなった。これが日清・日露戦争である。
「戦争は文明である」という事実は少し冷静になれば理解できよう。社会や組織が一つの目的に向かって進む時、集団は必ず軍隊性を帯びる。つまり意思決定に始まり計画立案~目的遂行というシステムが戦争に集約されている。日本が大東亜戦争に敗れたのは最初から最後まで合理性を欠いていたためだ。日清戦争における三国干渉(1895年)が国民の間に強いストレスとなって不満が溜まりに溜まっていた。尊王の精神も裏目に出たと言わざるを得ない。
戦争が文明であるならば、負ける戦争を絶対にしてはならないし、万が一戦争になっても最小限の戦闘で最大限の効果を得る戦略が求められる。相手が攻めてきた時に平和主義は通用しないのだ。
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・人種差別というバイアス/『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム