・『ローリング・サンダー メディスン・パワーの探究』ダグ・ボイド
・『人類の知的遺産 53 ラーマクリシュナ』奈良康明
・神通力のオンパレード
・『クリシュナムルティの神秘体験』J・クリシュナムルティ
・悟りとは
(1)魂の進化を霊的に指導する師をグル(guru)という。サンスクリットの語源は「やみ(gu)を追放するもの(ru)]
(2)「ヨガ」を行ずる者を「ヨギ」という。「ヨガ」はサンスクリットの“一体になる”の意で、神との意識的合一を得るための、インド古来の瞑想の科学である。(※脚註より)
【『あるヨギの自叙伝』パラマハンサ・ヨガナンダ:SRF日本会員訳(森北出版、1983年)以下同】
原書が刊行されたのは1946年。パラマハンサ・ヨガナンダ(1893年1月5日-1952年3月7日)はアメリカでクリヤ・ヨガを広めた人物である。数年前に一度挫折しているのだが今回は読了できた。人によっては受け入れることが難しい本である。神通力のオンパレードで、クリシュナムルティと正反対に位置するといってよかろう。ヴァガバット・ギーターとスッタニパータ、ヨガナンダとクリシュナムルティという構図だ。迷いに迷った挙げ句、「必読書」に入れた。これにまさるスピリチュアリズムはない。ヨガナンダが創設したSRF(セルフ・リアリゼーション・フェローシップ)の目的の一つに「イエス・キリストの教えとバガヴァン・クリシュナが教えたヨガの根本的な一致を明らかにする」とある。八百万(やおよろず)の神のモデルはヒンドゥー教にあるのかもしれない。いずれにしても悟りを開いたと思われる人物が陸続と登場する。彼らの言葉に耳を傾けることは決して無駄ではない。(読書日記より)
本書はスティーブ・ジョブズがこよなく愛した一書として広く知られるようになった。10代の時に出会い、毎年読み返していたという。エルヴィス・プレスリーやビートルズにも強い影響を与えた。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のアルバムジャケットにはヨガナンダと師匠のスリ・ユクテスワ・ギリが描かれている。
(上段左端がスリ・ユクテスワ・ギリ)
(ボブ・ディランの左下がヨガナンダ)
スリ・ユクテスワが謎めいた言い方をされることはめったになかった。私が先生の意中をはかりかねていると、先生は、私の心臓のあたりを軽くたたかれた。
とたんに、私のからだは根が生えたように動かなくなってしまった。そして、肺の中の空気が、何か巨大な磁石にでも吸い寄せられるようにすっかり抜き取られたかと思うと、魂と心はたちまち肉体の監禁から解き放されて、透過性の光の流れとなって全身の気孔から外に流れ出てしまった。肉体は生気を失って抜けがらのようになってしまったが、私の意識は逆にはっきりとして、生きているという実感がかつてないほど強く感じられた。今まで肉体という小さな殻に限定されていた感覚の領域が拡大されて、周囲のいっさいの原子までも自分のからだとして感じられるようになった。遠くの道を行く人々も、私自身の中でゆっくり移動しているように見えた。そして、地中の草や木の根が薄暗い透かし絵のように透けて見え、その樹液の流れまでが見分けられた。
近くのものは、すべてあらわに見ることができた。ふつう前方のみに限られている視野が、今や広大な全方位的視野に変わって、上下左右前後のいっさいのものが同時に知覚された。頭の後ろの方には、ライ・ガート小路(レーン)を散歩する人々の姿がはるかに見下ろせ、一頭の白い牛がゆっくりとこちらへ近づいて来るのが見えた。牛が僧院のあけ放たれた門の前まで来たとき、私には、それが肉眼で見るのと同じように観察された。そして、それが門の前を通り過ぎて、れんが塀の向こう側へ行ったあともなおはっきりと見るこができた。
私が見つめているパノラマのような光景は、映画の画像のように、たえず小刻みに振動していた。私のからだ、先生のからだ、柱に囲まれた中庭、家具と床、樹木と陽光――これらはときおり激しく動揺したが、やがてすべてが一つの光の海に溶け込んでいった。それはちょうど、コップの水に砂糖を入れてかきまぜたときしだいに溶けてゆく結晶のありさまに似ていた。一方また光の海からは、同じ光の素材によって次々と新しいものが形成された。そして移り行くそれらの変化は、創造活動における因果の法則を示していた。
突然、大海のうねりのような歓びが、私の魂の静かな岸辺に押し寄せて来た。『神の霊は尽きることのない至福だ!』私は悟った。『そしてそのみからだは、無数の光の織物だ!』。内なる栄光はしだいに膨張して私の町を包み、大陸をおおい、さらに地球、太陽系、銀河系、希薄な星雲、浮遊する島宇宙をも包含しはじめた。全宇宙はやわらかな光を放ち、無限に広がった私自身の中で、遠い町の灯のようにちかちかとあちこちで明滅している。そしてその外周を、明瞭な球形の輪廓を描いて、まばゆい光の層が取り巻いていた。さらにその外側のやや輝きの衰えたところに、一つのやわらかな美しい光が見えた。その光は、終始落ち着いたえも言われぬ霊妙な光で、これに比べると、星座を織りなしている光は、はるかに質の粗い光であった。
永遠なるものの源から放射される聖なる光が燃えあがって星座を形成すると、それはたえなる霊光(オーラ)に変貌していった。私は何度も見た――創造の光が凝縮して星座をつくり出し、そしてそれがやがて透明な炎の広がりの中に溶け込んでゆくのを――。幾億兆とも知れぬ無数の世界が、律動的な周期とともに、透明な炎の輝きの中に溶け込むと、その炎の広がりは大空となった。
私は、その大空の中心が、自分の心の奥底にある直覚の先端であることを認識した。壮麗な光は、私自身の中心から宇宙組織のあらゆる部分に放射されていた。永遠の至福の甘露が、私の体内を水銀のように流れながら脈打っている。そして、神の創造のみ声が、宇宙原動機の振動音オームとなって鳴りひびくのが聞こえた。
突然、息が肺に戻って来た。私は、自分の無限の広大さが失われてしまったことを知って、耐えがたいほどの大きな失望に襲われた。
宗教的スーパービジョンといっていいだろう(※本来、スーパービジョンは教育方法を指す用語だが、敢えて「超視覚」の意味で使った)。ただし自力ではないのが気になるところだ(最初は「悟りの光景」という記事タイトルにしていた)。まだ天人五衰(てんにんのごすい)の域を脱していないようにも見える。
「見てみたい」と望むことも執着であるし、「再び見たい」と願うこともまた執着なのだ。不可思議を経験するよりも、ありのままを見つめることが正しい。
上記リンクを私は「悟り四部作」と名づけたが、ラーマクリシュナやヨガナンダはヒンドゥー色が濃くて苦手である。単なる超能力者としか思えない(笑)。ま、ローリング・サンダーも超能力者だわな。
ヨガナンダは胸が厚く堂々たる体躯の持ち主だが元々は痩せており、ある朝目覚めると体重が20kgも増えていたという。西洋世界に打って出るための変身であったと書かれている。
2014年にはドキュメンタリー映画『永遠のヨギー ヨガをめぐる奇跡の旅』が公開された。
高価な本であるにもかかわらずamazonでは89件のレビューが寄せられ、その殆どが星五つの評価をつけている。
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