2020-06-29

税務調査を恐れる必要はない/『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎


『お坊さんはなぜ領収書を出さないのか』大村大次郎
・『あらゆる領収書は経費で落とせる』大村大次郎

 ・税務調査を恐れる必要はない

『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
『税金を払わない奴ら なぜトヨタは税金を払っていなかったのか?』大村大次郎
・『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
・『起業のためのお金の教科書』大村大次郎
『お金の流れで読む日本の歴史 元国税調査官が古代~現代にガサ入れ』大村大次郎
『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
『お金で読み解く明治維新 薩摩、長州の倒幕資金のひみつ』大村大次郎
『ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 日本人はなぜお金持ちになれないのか』大村大次郎
『知ってはいけない 金持ち悪の法則』大村大次郎
・『知らないと損する給与明細』大村大次郎

 所得控除の中には、雑損控除というものもあります。
 雑損控除というのは、災害、盗難、横領で、生活上の資産の被害を受けた場合に受けられる控除のことです。
 この雑損控除、一般の人はあまりご存知ないですよね? サラリーマンの方などもほとんど知らないのではないでしょうか?
 でもサラリーマンの方もちゃんと使えるのです。
 災害や盗難などの被害に遭った場合、その損失額が5万円以上だったら、控除の対象となるのです。スリに財布を盗まれたような場合も該当します。
 王女できる額は(被害額-5万円)です。
 たとえば、盗難に遭って50万円の被害に遭ったとします。この場合は、
 50万円-5万円=45万円
 この45万円を、所得から控除できるのです。税額にすれば、だいたい5万円から数十万円の還付になります。ただ詐欺による被害はダメです。詐欺の場合には自己責任の部分もあるということでしょうか。

【『税務署員だけのヒミツの節税術 あらゆる領収書は経費で落とせる【確定申告編】』大村大次郎〈おおむら・おおじろう〉(中公新書ラクレ、2012年)】

「税金は国家と国民の最大のコミュニケーション」(小室直樹)である。国家は道路を始めとするインフラや安全保障を提供し、国民は税と兵役を提供する。この交換関係・契約関係に国家-国民の基盤がある。元税務調査員の大村(仮名)がなぜ節税を勧めるのだろうか? それは日本が税を支払うに値しない国家であるからだ。メディアが情報の取捨選択をすることで大衆は目隠しをされている現状がある。昨年、消費税が10%に増税されたが、新聞・テレビはこれを推進し、国民は「やむなし」と判断した。大規模な反対運動やデモは起こっていないゆえ国民は合意したと判断できる。私はこれが日本を崩壊に導く楔(くさび)になったと考える。

 税務調査員には扶養家族が多いという。なぜなら別居でも扶養家族に入れることができるからだ。初耳だ。別居している親が年金収入一人約120万円以下であれば不要家族にすることができる。仕送り額の明確なルールは存在しない。また当然ではあるががフリーターやニートの子供も扶養家族にできる。大体、38~63万円の扶養控除が受けられる。更に夫が失業した場合、パートタイマーであっても妻の扶養家族にすることができる。

 領収書というのは、経費を証明する、重要な証票類ではあります。しかし、これがなくては絶対に経費として認められないのか、というとそうではないのです。実際に支払いがあるのなら、領収書がなくても経費として認められるのです。(中略)
 ですから、ちょっとした支払いや買い物ならば、レシートで十分なのです。レシートには、その支払内容と金額、日付などが明記されていますから、証票類として立派にその役目を果たすのです。
 何かの支払いをしたときに、必ず領収書をもらわなくてはならない、と思っている方も多いようですが、決してそうではありません。コンビニなどでも、わざわざ領収書をもらっている方をときどき見かけますが、あれはまったく無駄なことです。

 これは知っていた。レシートもない場合はメモ書きで十分だ。領収書の法的規定はない。要は事業に必要な経費として「いつ」「いくら」「何に」使ったかを証明できればいいわけだ。

 そして税金の申告は、原則として申告通りに認められます。つまり、納税者が申告した内容は、原則として認められるということです。税務当局は、申告内容に間違いがあるときに限って、それを修正させたり追徴したりできるわけです。
 つまり、納税者が「自分の申告が正しい」という証明をしなければ申告が認められないのではなく、税務当局がその申告が正しくないという証明をしない限り、申告は認められるのです。
 ということは、概算での申告であっても、一旦、申告は認められます。そしてその申告に誤りがあったときに初めて修正されたり、追徴されたりするわけです。

 税務調査と聞いただけで社長や個人事業主は震え上がってしまうものだが、実はそれほど恐れる必要はないことがわかった。ビクビクしてしまえば相手はそこに付け込んでくる。連中の仕事は「違反を見つてなんぼ」の世界である。思い上がったクズが多いようなので、一朝事が起こった場合は刺し違えてみせるほどの気概を見せておいた方がいいだろう。

 納税を年貢意識で支払っていれば国民が国家の主体となることはない。税務署の捕捉率は「トーゴーサン(10:5:3)」と言われる。サラリーマンは10割、自営業者は5割、農家が3割の所得を捕捉されているという意味だ。サラリーマンは源泉徴収で所得は完全にガラス張りだ。自営業者と農家は労働人口の1割ちょっとである。彼らが優遇されているのはどう考えてもおかしい。自民党が農家に甘いことはよく覚えておくべきだろう。

 大村は国民目線で税の不平等を指摘し続けている。高橋洋一でさえ言っていないような事実も多い。特に一貫して大企業や金持ち優遇のメカニズムを暴露している。立派な国をつくるためには国民が賢くなるしかない。なぜなら民主政で選ばれた政治家は国民の平均値を上回ることはないからだ。

TIMELAPSE OF THE FUTURE: A Journey to the End of Time (4K)


2020-06-28

アメリカに逆らうことができない日本/『戦後史の正体 1945-2012』孫崎享


 ・アメリカに逆らうことができない日本

日本の近代史を学ぶ

 しかしその後、発案者の高村(こうむら)大臣が内閣改造で外務省を去ります。ここで外務省内の風向きが変わりました。米国からの圧力によって、日本はハタミ大統領を招待するような親イラン政策をとるべきでないという空気がしだいに強くなったのです。
 けれども私も官僚として長年仕事をしてきましたので、物事を動かすためのそれなりのノウハウをもっています。そちらを総動員し、なんとかハタミ大統領の訪日にこぎつけました。このときハタミ大統領訪日の一環として、日本はイラクのアザデガン油田の開発権を得ることになったのです。この油田の推定埋蔵量は、260億バレルという世界最大規模を誇ります。非常に大きな経済上、外交上の成果でした。
 しかし、イランと敵対的な関係にあった米国は、
「日本がイランと関係を緊密にするのはけしからん、アザデガン油田の開発に協力するのはやめるべきだ」
 と、さらに圧力をかけてきました。日本側もなんとか圧力をかわそうと努力しましたが、結局最後は開発権を放棄することになりました。
 もし、日本がみずからの国益を中心に考えたとき、アザデガン油田の開発権を放棄するなどという選択は絶対にありえません。エネルギー政策上、のどから手がでるほどほしいものだからです。しかし米国からの圧力は強く、結局日本はこの貴重な権益を放棄させられてしまったのです。その後、日本が放棄したアザデガン油田の開発権は中国が手に入れました。
 私がかつてイランのラフサンジャニ元大統領と話をしたとき、彼が、
「米国は馬鹿だ。日本に圧力をかければ、漁夫の利を得るのは中国とロシアだ。米国と敵対する中国とロシアの立場を強くし、逆に同盟国である日本の立場を弱めてどうするのだ」
 といっていたことがありますが、まさにその予言どおりの展開です。アザデガン油田の開発権という外交上の成功は、結局、米国の圧力に屈したのです。
「なぜ日本はこうも米国の圧力に弱いのだろう」
 この問いは、私の外務省時代を通じて、つねにつきまとった疑問でもありました。

【『戦後史の正体 1945-2012』孫崎享〈まごさき・うける〉(創元社、2012年)】

 アメリカからの圧力は現場で働く官僚にまで及ぶという。もはや属国というレベルを超えている。市町村扱いだ。更にアメリカは圧力を掛けやすくするため首相周辺に権力が集中するよう仕向けているそうだ。

 アメリカに葬られた政治家といえば田中角栄が真っ先に浮かぶ。情報を寄せたアメリカの民間航空会社は司法取引で無罪放免だった。個人的にはロッキード事件を名を売った立花隆や堀田力〈ほった・つとむ〉はアメリカの犬だったと考える。小室直樹が孤軍奮闘して田中角栄を擁護したが刀の切っ先はどこにも届かなかった。

 田中が抹殺された理由は二つある。まず日中国交回復をアメリカに先んじて行ったこと。次にウラン取引に手を出したこと。一国の政治としては何もおかしなところはない。しかしアメリカは縄張りを侵されたと激怒した。我々が信じる資本主義における自由競争は全くの錯覚だ。

 読んでから7年ほど経つので記憶が曖昧だ。孫崎の政治的スタンスもよくわからない。刊行直後はネットやテレビによく登場していたが、その言動はやや思い込みが強く、老人特有の狷介(けんかい)さが滲(にじ)んでいた。ただし佐藤優がけちょんけちょんに貶(けな)していたので読む価値はあると考えてよい。

 まともな軍隊を持たない国は国家として一人前の扱いを受けない。もしも民主政が優れたシステムであれば中小国連合が覇権に対抗し得るはずだ。それが実現しないのは核兵器と金融によって世界がコントロールされているからだ。『沈黙の艦隊』は秀逸な軍事的なアイディアだが、もっと巧妙かつ静穏な長期的戦略でアメリカに対抗することが望ましい。

2020-06-27

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昆虫を入水(じゅすい)自殺させる寄生虫/『したたかな寄生 脳と体を乗っ取り巧みに操る生物たち』成田聡子


『脳はバカ、腸はかしこい』藤田紘一郎
『感染症の世界史』石弘之
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン
『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』キャスリン・マコーリフ

 ・昆虫を入水(じゅすい)自殺させる寄生虫

『失われてゆく、我々の内なる細菌』マーティン・J・ブレイザー

 共生現象のうち利害関係がわかりやすいものにはそれが示す名が与えられています。双方の生物が共生することで利益を得る関係を「相利(そうり)共生」、片方のみが利益を得る関係を「片利(へんり)共生」、片方のみが害を被る関係を「片害(へんがい)共生」、片方のみが利益を得て、相手方が害を被る関係を「寄生」と呼んでいます。

【『したたかな寄生 脳と体を乗っ取り巧みに操る生物たち』成田聡子〈なりた・さとこ〉(幻冬舎新書、2017年)以下同】

 そのまま人間関係にも当てはまりそうで笑った。

 水の中で泳げないはずのコオロギやカマキリ、カマドウマが水に飛び込んでいきます。それは、まるで入水自殺であり、水に飛び込んだ虫は溺れ死ぬか、魚に食べられるか、他に道はありません。これらの入水自殺する昆虫たちも体内にいる寄生虫に操られています。
 これらの昆虫の体内にいて宿主(しゅくしゅ)をマインドコントロールしているのは「ハリガネムシ」です。(中略)
 ハリガネムシは水中でのみ交尾と産卵をおこない、宿主を転々と移動して成長するという生活史を持ちます。
 簡単に概要を説明しますと、川で交尾・産卵→水生昆虫体内→陸生昆虫体内→再び川という流れです。(中略)
 ハリガネムシは宿主の脳を操り、奇妙な行動を起こさせるのです。宿主を水辺に誘導し、入水させるのです。そして、宿主が入水すると、大きく成長し成虫になったハリガネムシがゆっくりと宿主のお尻からにゅるにゅるとはい出てきます。その姿は時に全長30センチを超えます。そして、無事に川に戻ったハリガネムシは交尾をし、また産卵するのです。






 腹がモゾモゾしてくる。以下のページも参照のこと。

ウイルスとしての宗教/『解明される宗教 進化論的アプローチ』 ダニエル・C・デネット

 これだけでも驚くべき事実だが寄生虫の仕事はもっと大きな影響を及ぼしていた。

 日本では、このハリガネムシが生態系において重要な役割を果たしていることを実証した研究が2011年に発表されました。
 研究では川の周りをビニールで覆ってカマドウマが飛び込めないようにした区画と、自然なままの区画を2ケ月間比較しています。また、カマドウマが入る量と、カマドウマ以外の虫が入る量を分けて操作をして実験しました。
 なんとその結果、川の渓流魚が得る総エネルギー量の60パーセント程度が、寄生され川に飛び込んでいたカマドウマであることがわかったのです。(中略)
 このように、小さな寄生者であるハリガネムシが、昆虫を操り、入水させることは、河川の群集構造や生態系に、大きな影響をもたらすことが実証されました。

 実は寄生行為そのものが自然の摂理にかなっていたのだ。微生物が人間の性格をも変えることが判明しているが、果たしてそれだけなのだろうか? ひょっとすると戦争や虐殺にも関係しているかもしれない。人類が成し遂げた都市革命は寄生虫を恐れた結果のような気がする。