2022-01-11

嚥下機能が衰えると喉仏が下がってくる/『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎


『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
『舌(べろ)トレ 免疫力を上げ自律神経を整える』今井一彰
『舌をみれば病気がわかる 中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック』幸井俊高
『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武

 ・嚥下機能が衰えると喉仏が下がってくる

『誤嚥性肺炎で死にたくなければのど筋トレしなさい』西山耕一郎

身体革命

 突然ですが、みなさんに質問です。
 みなさんは、健康長寿を実現するために、もっとも衰えさせてはいけない体の機能は何だと思いますか?

 足腰の筋肉? たしかにそれも重要ですね。筋肉が衰えて歩行がままならなくなれば、寝たきりになる可能性が大きく高まります。
 血管の健康? もちろんこれも重要です。高血圧や高血糖で血管の機能が衰えれば、脳や心臓が重大な病気に見舞われるリスクが高まります。
 しかしみなさん、じつは、筋肉よりも血管よりも、「決して衰えさせてはいけない機能」があるのです。
 それは、【食べ物を飲み込む力】。すなわち【嚥下(えんげ)機能】です。

【『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎〈にしやま・こういちろう〉(飛鳥新社、2017年/文庫版、2019年)以下同】

 嚥下の読みは本来「えんか」である。「えんげ」は同音異語を回避するために医療・介護でまかり通った慣用読みだろう。嚥下とは飲み込む行為のこと。

 死はあらかじめプログラムされている。無性生殖の時代は自分のクローンを次々と作ったわけだから、死はなかったと考えることも可能だ。有性生殖は世代交代を通して進化する。その事実を踏まえれば、嚥下機能が衰えるのは「死の準備段階」なのだろう。ただし日本の場合、死ぬのに時間がかかり過ぎるのだ。ヨーロッパには寝たきり老人がいない。寝たきりになるくらいなら死を選ぶのだ。日本だと本人と社会がそれを認めていない現状がある。もちろん背景にあるのは病院の利益である。

 しかも、これは決して高齢者だけの問題ではありません。
 じつは、飲み込む力は、40代、50代あたりから徐々に低下しています。実際に、30代から誤嚥がはじまっているという報告もあります。嚥下機能は、高齢になってから急に衰えるわけではないのです。

 御意。50代半ば頃から実感できる。誤嚥とは飲み下したものが誤って肺に入ることだ。これが肺炎の原因となる。

 みなさんは、“そういえば、最近、食事中にムセることが多くなったな”と感じてはいませんか? もし心当たりがあるならば、それは、のどの力が衰えて「飲み込み力」が低下してきたという証拠。【「ムセ」は、のどの老化のもっともわかりやすいサインなのです】。

 人は喉から死んでゆくのだろう。

 なお、肺炎で死亡する人のほとんどが75歳以上の高齢者。そして、じつはこうした高齢者の肺炎の【70%以上に誤嚥が関係している】とされているのです。

 ヒトは言葉を発するために誤嚥という犠牲を払った。嚥下と呼吸が紙一重で行われているので明らかに機能としては劣っている。

 ところで、飲み込み力が落ちてくると「見た目」にも明らかなサインが現われることをみなさんはご存じでしたか?
 じつは、【「のど仏」の位置が下がってくるのです】。(中略)
 どうして、のど仏が下がってくるのか。それは、【のど仏を吊り下げている筋肉や腱が衰えてくる】からなのです。

 そいつあ知らなかった。確かに年寄りの喉仏は下がっている。だったらこれを上げればいいわけだな。というわけで簡単な運動が紹介されている。

 嚥下機能を鍛える器具を作れば一儲けできるんじゃないか? あるいは「虎の穴」的な介護施設とか。

マラソンで成功するのは「計算ができる」ランナー/『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー


『56歳でフルマラソン、62歳で100キロマラソン』江上剛
『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
『走れ!マンガ家 ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』みやすのんき
『最速で身につく 最新ミッドフットランメソッド』高岡尚司、金城みどり
『ランニング・サイエンス』ジョン・ブルーワー

 ・マラソンで成功するのは「計算ができる」ランナー

『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

 芝生に座り、森から出てきた見知らぬランナーたちが野原を蛇行しながら走り、再び森に戻っていくのを眺める。二人一組で走る者もいれば、15人以上の集団で1列になって走る者もいる。一人で走る者はいない。「たくさんのランナーがいるね」とつぶやくと、メセレットがうなずいて言った。「アディスアベバには少なくとも5000人のランナーがいる。島の大群ほどの数の選手がランニングに挑戦するが、その群は最後にはほとんど消える。成功するのはごくわずかさ。今朝君が見ている数百人のランナーのうち、成功するのは両手で数えるくらいしかいない」。メセレットは完璧に足並みを揃えながら野原を走る集団の選手たちを眺めている。「誰が成功するかは、どうやって見分ける?」と尋ねると、「成功するのは、足を動かす前に、目で見て、頭で考えるランナーだ。感情だけで走る者は成功しない」という思いがけない答えが返ってきて、ふいを突かれた。「努力」とか「110%の力で走る」とかいう、よくあるランニングの決まり文句が返ってくると思っていたからだ。私はこの言葉を、エチオピア滞在中に12冊書き溜めることになるノートの最初の1冊に書き留めた。

【『ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと』マイケル・クローリー:児島修〈こじま・おさむ〉訳(青土社、2021年)】

 読み始めたばかりである。昨日、「五感もまた計算するために働いているが、美しい絵画を見たり、好きな音楽を聴く時、我々の感覚は明らかに計算から外れている。統合された情報が生み出す創発現象か」と書いた(偶然の一致が人生を開く扉/『ゆだねるということ あなたの人生に奇跡を起こす法』ディーパック・チョプラ)。運動やスポーツの原点は狩猟である。ここで求められるのは「計算する力」だ。

 アディスアベバはエチオピアの首都で標高2400mに位置する。高地トレーニングのメッカのようで3500mの丘が出てくる。富士山の山頂(3776m)とほぼ同じ高さだ。

「感情だけで走る者は成功しない」――私は大東亜戦争を思った。大日本帝国は計算ができなかった。孫子の兵法は「計篇」から始まる。ABCD包囲網を経てハル・ノートを突きつけられた日本はほとばしる感情の虜(とりこ)となった。そして最後はその感情の赴くままに若きエリートを特攻隊に仕立てる。生き残った者を国民は「死に損ない」と愚弄した。結局、国体は護持し得たが国は亡んだ感がある。GHQ占領期間は歴史の真空状態となり、戦前と戦後は完全に断絶してしまった。果たして今、国体を思う人がどこにいるか?

 翻訳は悪くないのだが、「ふいを突かれた」は感心しない。編集者の眼も節穴のようだ。

2022-01-10

交通事故の死亡者よりも多い窒息事故/『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武


『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』槻木恵一
『免疫力を上げ自律神経を整える 舌(べろ)トレ』今井一彰
『舌をみれば病気がわかる 中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック』幸井俊高

 ・交通事故の死亡者よりも多い窒息事故

『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎
『誤嚥性肺炎で死にたくなければのど筋トレしなさい』西山耕一郎
『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修

身体革命

 歯周病は世界で一番多い病気としてギネスブックにも認定されていて、歯周病にかかっている成人は、約80%ともいわれています。(中略)
 歯周病は、不治の病ともいわれています。進行を止めることはできますが、残念ながら完治はできません。しかも初期段階では自覚症状がほとんどないため、自分が歯周病だと気づいていない人も少なくありません。
 歯周病は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や認知症などの原因になります。さらに、重度の歯周病は、心疾患や糖尿病などのリスクも高めてしまうこともある恐ろしい病気です。

【『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武〈きくたに・たけし〉(NHK出版、2018年)以下同】

 ゲゲッ、私が通っていたところの歯科医はそんなことを言ってなかったけどな(泣)。歯周病の治療を終えてから私は本気で歯を磨くようになった。斜め45度で歯ブラシを歯茎に当て、少し食い込み気味に細かく振動させるようにブラッシングを行う。これが基本だ。

 あとは唾液勝負である。意外と知られていないが唾液が豊富であれば虫歯にはならない。それが証拠に虫歯になるのは大体歯の外側である。下の前歯の裏側が虫歯にならないのは唾液が溜まっているからだ。

 また、歯の欠損によって噛み合わせが失われると、全身のバランスをとることが難しくなります。結果、転びやすくなり、骨折から車椅子、寝たきりにつながりやすくなるのです。65歳以上の健康な人で歯が20本以上ある人と、19本以下で義歯未使用の人をくらべると、後者は転倒のリスクが2.5倍になるという調査結果もあります。
 歯を喪って年に何度も転んでいたお年寄りが入れ歯を入れたら、翌年は一度も転ばなかったという例もあるほどです。
 転ばないためには、入れ歯を使うことも重要です。

 これまた驚きの事実だ。体のバランスはわずかな狂いで失われることがわかる。噛み合わせと転倒は中々結びつかない。ナースやヘルパーはよく覚えておくべきだ。

 入れ歯はブラシで磨いてから洗浄液に浸け、最後は水けを拭き取り、しっかり乾燥させる。これが入れ歯の正しい手入れ法です。乾燥させることは、見落とされがちですが、菌の繁殖を防ぐには重要です。
 私たちは、通常、歯ブラシは立てて置き、乾燥させていますよね。入れ歯も同じように扱うと、覚えておきましょう。

 ウッヒョー! 一度も乾燥させたことがないよ(涙)。本書を読んでから早速実践している。実は上の左奥歯2本の入れ歯を持っている。長らく使っていなかったのだが歯科医から「食べる時と寝る時だけでも装着せよ」と言われた。他の差し歯にダメージが及ぶらしい。

「事故で亡くなる」と聞いて、みなさんはどんな事故を思い浮かべますか?
 多くの人が想像するのが、やはり交通事故ではないでしょうか。しかし、実は交通事故よりも死亡者の多い事故があるのです。それが、窒息事故です。
 不慮の事故による年間の死亡者数を見てみると、交通事故が5278件、窒息事故が9485件です(2016年「人口動態統計」厚生労働省)。
 不慮の事故による死亡者数が一番多いのは、窒息事故。しかも、その数は交通事故死の約1.8倍です。

 2006年に窒息事故の死亡者数が交通事故死を上回ったそうだ。悲惨な事故に目が向きがちなのは認知バイアスによるもの。しっかり咀嚼をする、汁物を先に飲まないことを心掛けるだけで防げる事故も多い。またお年寄りの同居家族はハイムリック法などを学んでおくべきだろう。


 余談であるが風呂場で亡くなる人はもっと多い。「厚生労働省の研究班の発表によると、風呂場での推定死亡者数は年間約1万9000人。全国の交通事故の死亡者数が2839人(2020年警察庁発表による)なので、およそ6倍になる。大半が65歳以上で、毎年12~4月に多く発生している」(ダイヤモンド・オンライン)。備えあれば憂いなしである。

中医学の舌診/『舌をみれば病気がわかる 中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック』幸井俊高


『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』槻木恵一
『免疫力を上げ自律神経を整える 舌(べろ)トレ』今井一彰

 ・中医学の舌診

『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武
『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎
『誤嚥性肺炎で死にたくなければのど筋トレしなさい』西山耕一郎
『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修

身体革命

 中医学とは中国の医学のことです。中医学の医師は、ほぼこれと似たスタイルで診察をします。舌の観察に加えて脈診(脈をとって診察する)を重視する医師もいます。
 では、どうしてこれだけの診察で、的確な処方が出せるのでしょう。
 その理由のひとつは、舌の観察にあります。
 舌には、さまざまな情報が隠されています。色や形、苔の状態などを観察すると、体内の状態がみえてくるのです。
 中医学では、からだをひとつのつながった有機体としてとらえています。体内の状況は、何らかのかたちで体表にあらわれてきます。とくに舌は、表面の粘膜の新陳代謝が盛んで、3日ほどで新しいものと入れ替わります。ですから、舌には病気のサインが迅速に出ます。また、粘膜が薄いので、粘膜の舌の血管を流れる豊富な血液の状態がよくみえます。血液の色が、舌の色に反映されるのです。レントゲンも血液検査もない時代に、からだの中の様子を客観的に正確にとらえるために驚異的に発達した技術が、“舌診”(ぜっしん)です。

【『舌をみれば病気がわかる 中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック』幸井俊高〈こうい・としたか〉(河出書房新社、2011年/ハンディ版、2016年)】

 様々な舌の状態と体の症状が紹介されている。口臭の原因とされる舌苔(ぜったい)についてはさほど問題視していない。「目は心の窓」と言われるが、「舌は体の鏡」なのだろう。

 一筋縄ではいかない。なぜなら多くの人々の舌を見る機会がないためだ。ま、親しい人から始めるしかあるまい。まずは自分の舌から始めよう。

堀江貴文「民主主義ではイノベーションのスピードに対応できない」