2018-07-26

自己治癒コンクリート/『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク


『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

 ・自己治癒コンクリート
 ・人生を変える発見

『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』スティーブン・ジョンソン

必読書リスト その三

 自己治癒コンクリートには、このバクテリアとその餌になるデンプンの一形態が混ぜ込まれている。バクテリアは普通の環境下ではケイ酸カルシウム水和物フィブリルに閉じ込められて休眠状態を続ける。だがひびが入るとバクテリアがフィブリルの結合から解放され、水の存在によって目を覚まして餌を探しはじめる。そしてコンクリートに加えられていたデンプンを見つけると、それを食べて成長し、増殖する。その過程で炭酸カルシウムの一形態である方解石を排泄する。この方解石がコンクリートと結合し、ひびをつなぐような鉱物構造をつくりはじめ、ひびのさらなる成長を止めてふさぐのである。

【『人類を変えた素晴らしき10の材料 その内なる宇宙を探険する』マーク・ミーオドヴニク:松井信彦訳(インターシフト、2015年)】

生物でひび割れを直すコンクリートが日本上陸(前編) | 日経 xTECH(クロステック)
生物でひび割れを直すコンクリートが日本上陸(後編) | 日経 xTECH(クロステック)
ひび割れを自ら修復!自己治癒・自己修復コンクリートへのバイオ技術の活用 | コンクリートメディカルセンター

 一種の創発技術と言えそうだ。生命の不思議を利用して人工物を長く活かす発想がユニークだ。

 人体が老化する原因は二つ考えられており、一つは遺伝情報で、もう一つは細胞のコピーミスである。しかしながら今の段階ではまだ特定するに至っていない。ひょっとすると体にバクテリアを投与する医学が出てくるかもしれない。ま、もともと人体はバクテリアだらけだし、DNAにもウイルスの影響が色濃く残っている。


【右下の左側にある「字幕」をクリック】

 自分が合成物であるとはにわかに理解し難いが、それは意識によって統合されていると錯覚しているためだろう。内蔵を移植した人は食べ物の好みが臓器提供者のそれに変わることが報告されている。

 傷や骨折などに対しては治癒メカニズムが働くが、精神や価値観の治癒は難しい。ま、病の自覚症状がないのだから致し方ないとも言えるが(笑)。

2018-07-25

はかることと分けること/『〈はかる〉科学 計・測・量・謀……はかるをめぐる12話』阪上孝、後藤武


『なんでも測定団が行く はかれるものはなんでもはかろう』武蔵工業大学編

 ・はかることと分けること

「はかる」ことは分けること(分類)とともに、人間が外界に適応し、働きかけて生きていくうえでもっとも基本的な営みの一つである。

【『〈はかる〉科学 計・測・量・謀……はかるをめぐる12話』阪上孝〈さかがみ・たかし〉、後藤武(中公新書、2007年)】

 そして科学の基本でもある。「はかる」能力が緻密であったからこそ道具を作ることができた。「分ける」能力はリンネ、ダーウィンを経て量子論にまで至った。

 ふと気づいたのだが政治もまた「はかる」ことと「分ける」ことが基礎となっている。徴税や公共事業など。司法も同様か。目隠しをした正義の女神テミスは剣と秤(はかり)を持っている。

 19世紀の科学的心理学を形づくったどの説でも、われわれが世界から得ているセンスデータは不十分であるということが前提にあり、この刺激という単位を採用したおかげで心理学は刺激の貧しさを克服しなければならなかった。どうやらそのときにある種の「心」の働きが構想された。ギブソンは、この手の知覚論を関節知覚論と呼んでいる。

 これはアフォーダンス理論を解説した箇所である。ギブソンは直接知覚論を説いた。アフォーダンスについては勉強不足のためよく理解していない。大体私が理解しにくいのは西洋の伝統的な思考を知らないためだ。

ギブソンの生態学的知覚論とは何でしょうか。 感覚と知覚について、遠くギリシャのアリストレテスからギブソンに至るまでの経緯の中で、 生態学的知覚論の特徴を検討してみました。

 ま、要は環境からの働きかけを情報として読み取る行為を指しているのだが、仏教だと依報(えほう/環境)・正報(しょうほう/主体)の相互性が説かれているので我々にとっては親和性の高い考え方なのだが、ギブソンはもう一歩具体的な次元に踏み込む。

 多分、「つかまりやすい枝」あたりから始まっているような気がするよ。我々のご先祖様がまだ猿だった時代の話だ。

“はかる”科学―計・測・量・謀…はかるをめぐる12話 (中公新書)
阪上 孝 後藤 武
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辛淑玉がDHCテレビと司会者の長谷川幸洋を提訴




 動画は2週間限定公開。琉球新報・沖縄タイムスが赤旗化・聖教新聞化している模様である。特筆すべきは沖縄二紙が反日左翼のプラットフォームとして言論の場を提供している事実である。佐藤優はレギュラー出演しているラジオ番組で民主党政権を援護射撃し、更に本土主要紙を批判する際に「沖縄の論調は違います」と沖縄二紙の社説や記事を紹介してきた人物である。ひょっとすると辛淑玉〈シン・スゴ〉に対して入れ知恵をしている可能性もある。

 佐藤は「中間層が重要だ」と語っている(佐藤優は現代の尾崎秀実)が、一定のファン層をもつ人物に次々と接近し、対談を行ってきた。その矛先は右翼にまで向かった。刊行された対談も多い。彼は相手よりも、中間層としてのファンに向けてメッセージを放ったのだろう。

 敗戦後の歴史的な汚点はシベリア抑留、沖縄占領、北朝鮮による日本人拉致の三つである。そう考えると日本人にとって沖縄に巣食う問題は無視できるものではない。

2018-07-24

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2018-07-23

「はかる」という漢字の多さ/『なんでも測定団が行く はかれるものはなんでもはかろう』武蔵工業大学編


 ・「はかる」という漢字の多さ

『〈はかる〉科学 計・測・量・謀……はかるをめぐる12話』阪上孝、後藤武

 そうした世界統一単位の構想の実現に向けて、まず動き出したのは革命さなかのフランスだった。1790年、政治家で外交官であったタレーランは、統一単位の必要性を説き、パリ科学学士院がこれに取り組むこととなった。新しい単位は、ギリシャ語【原語略】(測定)から「メートル」とした。(中略)
 1792年から1799年にかけて、天文学者のメシェンとドゥランブルが子午線の測定をし、地球子午線全周の4000万分の1の長さを1メートルとした。これをもとに1メートルの長さをもつ白金でできた幅25.2ミリ、厚さ4ミリのメートル原器がつくられた。総裁政府は、この原器に基づくメートル法を含む法律を公布したがなかなか一般には普及せず、メートル法が強制実施されたのは、1840年以降である。

【『なんでも測定団が行く はかれるものはなんでもはかろう』武蔵工業大学編(講談社ブルーバックス、2004年)以下同】

 ウム、やはりフランス革命(1789-99年)は時代を画(かく)す大事件であったことが窺える。ヨーロッパが教会の束縛から自由になったのも多分この頃だろう。1760年代にはイギリスで産業革命が起こった。アメリカ独立戦争が1775年のこと。近代の幕開けだ。因みに明治元年が1868年である。

「はかる」という言葉はたくさんの漢字で表されることでよく知られている。「測・量・計・図・謀・諮」が代表的なところで、そのほかにも「忖・画・度・称・秤・料・評・詢・衡……」など、数多い。要するに、大昔から使っていた「はかる」という言葉に、輸入された漢字を適当に当てているわけだが、この適当ぶりを見てみるとなかなか興味深い。(清水由美子)

「所体のなかにおいて、軽重を権(はか)る。これを権という」(墨子/『孟嘗君』宮城谷昌光)。はかるという訓読みの漢字は34もある(みんなの名前辞典)。

 脳を情報処理装置と考えれば、生きるとは「はかる」ことを意味する。情報処理とは【計】算(≒演算)である。我々の行動は必ず予【測】に基づく。一寸先は闇であるが五感を駆使して測っているのだ。手探りしながら未来を手繰り寄せているようなものだろう。

 図・謀・諮は集団内におけるコミュニケーションである。「謀る」には悪巧みのイメージが強いが、実際は騙す側に生存の優位性がある。ただし集団規範を崩壊させるゆえに課罰のリスクが伴う。

 また、「慮(おもんぱか)る」とは思いをはかる謂(いい)である。情けの深さが人の心を動かす。

 工業と科学技術は計算能力を格段に進歩させ、文明の力は時空を圧縮する。そして我々は現在性を見失った。「はかる」行為をやめて、現在というゼロ地点にとどまるのが瞑想である。止まって観るがゆえに止観と名づける。