2018-10-16

コレステロールは「安全」/『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁


『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル

 ・コレステロールは「安全」

『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」』三石巌
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

「栄養」を考えるうえでの基本――人間にとって、昔は入手できなかったものは不要である。
 この基本さえ覚えておけば、あとはすべて自分で判断できる。実に簡単だ。大昔「食べていなかった」もの、それは、栄養学的には「要らないもの」なのである。
 たとえば植物油。太古の昔にコーン油、オリーブ油、ゴマ油などの植物油があっただろうか? もちろん、なかった。だから食べなくても大丈夫なのだ。
(中略)
 なぜ、大昔に食べていないものは不要といいきれるのだろう。
 古来、人間は、「その土地で入手できるもの」だけを食べて生きてきた。生活するために必要なものが得られない場所では、人は死に絶えていた。たとえば、飲料水が毎日入手できないような場所には人は住んでいない。逆に、昔から人が住んでいた土地で入手できるものだけあれば、人は生きていけるのだ。

【『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁〈はまざき・ともひと〉(講談社+α新書、2011年)以下同】

『コレステロール 嘘とプロパガンダ』より端的にエビデンスが示されていて理解しやすい。浜崎は翻訳を手掛けた人物で医学博士。植物油を批判した上記テキストは不思議にも地産地消を示していて興味深い。海外の大規模農業や低賃金が輸送コストを加えても安価な農産品となって市場に出回っている。消費者が注目するのは価格で、たとえ内容を吟味としたとしても買う買わないは価格で判断する。しかも食品は毎日のように買う必要があるため消費者のコスト意識は極めて高い。よく言われることだが数円安い卵を買うために数キロ先のスーパーへゆくことも主婦はよしとする。

 日本動脈硬化学会が発表している「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」は総コレステロール値を重視していたが、総死亡率との関係で不都合が生じてきたため、悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)を重要視になる。だが総死亡率との関連性は明らかになっていないという。大体「日本動脈硬化学会」なんて名称自体が利益団体にしか見えない。

 2007年度版の「ガイドライン」では、「LDL-コレステロール値が高いと心筋梗塞になる」という疫学(えきがく)調査がないどころか、いくつかの疫学調査により「LDL-コレステロールは高くても、総死亡率から見れば問題ない」ことが判明してしまっている。(中略)
 せっかく乗り換えた「悪玉」LDL-コレステロールも、こうして情けない結末を迎えることになり、早くも次の「悪玉」を出す準備をしないといけないわけだ。

 これに乗じた健康食品の広告もツイッターのタイムラインで最近よく見掛ける。宗教と製薬会社は不安産業といってよい。「不安を解消したければカネを払え」というのが彼らの論法である。

 結論からいおう。もともとコレステロールは【安全】なのだ。動物に【必要】な、細胞膜の構成成分なのだから、どこまでいってもきりがない。
「コレステロール悪玉説」を唱える人たちが、こうして次から次へと方針を変えることになるのは、いったいなぜなのだろう。
 その理由は、恐ろしいことに、コレステロール=悪玉としておいたほうが、圧倒的に経済効果が高いからだ。コレステロール値を低下させる「スタチン」という薬だけで、日本では年に2500億円も使用されている。全世界だとその金額は3兆円に上る。
 そうなると、スタチンの関係者にとって「コレステロール【無害】説」など許せるはずがない。大量の「情報」を発信して、反対派の声をかき消さなければならないことになる。コレステロールの是非に関して何十年も決着がつかないのは、間違った理論を守るために巨大な金銭的バックがついているからである。

 非科学的といえば真っ先に浮かぶのが栄養学であるが、2位には医学を推薦したい。私は55年生きてきたが頭のよい医者は一人しかお目にかかったことがない。他は見るからに不勉強で本業は「金儲け専門」といった印象を受けた。

 医学は裁判と似ていて、ただ単に過去の判例に基づいて判断を下しているだけだ。患者や体そのものを直接見ようとはしない。医師は薬を処方するだけの小役人に成り下がってしまった。

 幼い子供がいる家庭では大変かもしれないが、マーガリンではなくバターを、植物油ではなくラードを使った方がいいだろう。

百田尚樹著『日本国紀』が予約開始でベストセラー1位に


 11月15日発売。西尾幹二著『国民の歴史』を超えるかどうか。空前のベストセラーになりそうな予感。西尾や中西輝政、伊藤隆といった大御所はもちろんだが、私が幻冬舎の社長であれば佐藤優、小林よしのり、宮台真司に書評を依頼する。

日本国紀
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百田 尚樹
幻冬舎 (2018-11-12)
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2018-10-15

現実の虚構化/『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル


『精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の化学と虚構』エリオット・S・ヴァレンスタイン
『〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告』アレン・フランセス
『クレイジー・ライク・アメリカ 心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美

 ・現実の虚構化

『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁

 コレステロールとスタチン(訳注:世界中でもっとも売られているコレステロール低下薬、総称名)の問題は、どう見ても、途方もない医学的・科学的詐欺である。しかも現代社会、ポストモダン社会で前例のない詐欺である。これが私の結論だ。
 大多数の専門家や一般大衆に非常識な考えを認めさせるために、恐ろしく手の込んだプロパガンダと情報操作が行われたのである。(序文)

【『コレステロール 嘘とプロパガンダ』ミッシェル・ド・ロルジュリル:浜崎智仁〈はまざき・ともひと〉訳(篠原出版新社、2009年)以下同】

 コレステロール値が低ければ低いほどよいとする考えを支持する科学的データはないという。つまりコレステロールという名の悪魔を作り出すことに製薬会社は成功したわけだ。当たり前のことだが薬はもともと毒である。健康な人が服用することはない。毒をもって毒を制すのが薬の役割だ。著者の指摘が正しければ副作用を避けられないことだろう。

 20世紀末には、もっと手の込んだプロパガンダが登場した。これはコレステロール学説の不合理な成功を理解するうえでも興味深い。このプロパガンダのテクニックを用いた新たなマーケティングは【ストーリーテリング】と呼ばれる。この悪夢を理論的に解明しているクリスティアン・サーモンは以下のように説明している。
「人間の想像力に対してピストルを突きつけることであり、合理的理性に取って代わるしゃべる機械である…この新たな『語りの秩序』は、思考を罠にかけるメディア的ニュースピーク(訳注:新語法ともいう。ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』に描かれた架空の言語。作中の全体主義体制国家が英語を基に作っている新しい英語である。その目的は、国民の語彙や思考を制限し、党のイデオロギーに反する思想を抱かないようにして、支配を盤石なものにすることである)の創造以上のものとなるだろう。つまり、この『語りの秩序』が画一化しようとする個人とは、架空の世界に呪いをかけられ、そこに埋没した人たちなのだ。その世界では知覚は検閲され、感情は刺激され、行動や思考は枠に嵌められている」
 コレステロールの問題、およびその問題が消費者ばかりか医師の側にも引き起こした行動は――私たちの社会で今日観察される行動――この「現実の虚構化」に対する顕著な反応である。「現実の虚構化」は私たちの日常のいたるところで、日々発生している事態だ。ホワイト・ハウスの【スピン・ドクター】たちは戦争を正当化するためにイラクの大量破壊兵器をでっち上げた。一方、製薬業界の【スピン・ドクター】たちも彼らの戦争を正当化するためにコレステロールを不倶戴天の敵としてでっち上げた。バーチャル・リアリティを創り上げ、疑う能力を停止させること、これが【ストーリーテリング】によるプロパガンダの真骨頂である。

 製薬会社は「患者を消費者」に変えるマシンだ。そのために「投薬=治療」という物語を編み出す。更には病気という不安をこれでもかと煽り立て、溺れる者に藁(わら)を示すのだ。患者が望むのは治癒であるが消費者が求めるのは購入に過ぎない。しかも薬には一定のプラシーボ(偽薬)効果が認められる。恐ろしいことに高価な薬になればなるほどプラシーボ効果は高まる。つまり効果は高価というわけだ。

『一九八四年』は全体主義を戯画化した傑作だが、我々が生きる社会(群れ)は大なり小なり全体主義化を避けることができない。民主政は少数の犠牲の上に多数の幸福を築くシステムである。日本の安全保障のためには沖縄県民に我慢してもらう必要があるというわけだ。政治がわかりにくいのは政治家が「国民」を語りながら、特定の利益団体のために働いているからだ。彼らもまた「現実の虚構化」を試み、一部の問題があたかも全体の問題であるかのように絵を描き、言葉巧みに飾り立てた政策を喧伝する。財務省にとっては増税こそ正義であり、大企業にとっては安価な労働力としての移民政策が理想となる。

 政治・経済・学術・教育のありとあらゆる社会で「現実の虚構化」が繰り広げられる。最もわかりやすいのは宗教であろう。そして罪と罰を規定し幸福と恩寵を与える彼らが望むのもまたカネである。布施・寄付・賽銭・喜捨を不要とする宗教は存在しない。

 一切は経済化する。そこに流通する最大の情報は「マネー」である(『浪費をつくり出す人々 パッカード著作集3』ヴァンス・パッカード)。我々が普段考える情報はマネーにとっての付加価値でしかない。ここに「現実の虚構化」=プロパガンダの目的がある。我々は「カネがなければ生きてゆけない」と信じて疑うことがない。もはや完全なマネー教徒である。とすれば騙される度合いの問題であって、被害の大小が幸福のバロメーターと化すことだろう。

2018-10-13

東日本大震災~「自衛隊への御嘉賞」は戦後初めて/『ほんとに、彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行


『彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行

 ・東日本大震災~「自衛隊への御嘉賞」は戦後初めて

『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行
『私を通りすぎた政治家たち』佐々淳行
『私を通りすぎたマドンナたち』佐々淳行
『私を通りすぎたスパイたち』佐々淳行
『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行

 平成23年3月16日、天皇はすすんで東日本大震災に戦(おのの)く日本国民に向けて、御自分の言葉で、異例の呼びかけをビデオメッセージという形で行われた。
 しかも【「自分のメッセージの間に臨時ニュースが入ったら、メッセージを中断してニュースを優先するように」と指示】しておられたのだ。(中略)
 知る人ぞ知る、知らない人は知らない、民主党の人々、菅内閣の人々は多分誰も知らないだろうが、【戦後67年間、天皇の口から「自衛隊への御嘉賞」が出されたのはこれが初めて】である。
 しかも、順序が大きな問題なのだ。
 ふつう、総理や政府高官は、「警察、消防、自衛隊」と言う。長い間の自衛隊への複雑な感情を反映して、自衛隊は後回しにされる。
 警察と防衛庁で30余年を過ごした私は、真っ先に「自衛隊」とよびかけた天皇のお気持ちを忖度(そんたく)すると、日夜泥にまみれ、死臭、簡素な給食、風呂もシャワーもままならない中で汚れ仕事に愚痴ひとつ言わず国民に奉仕している自衛隊の姿をテレビでご覧になり、これは推測だが、菅内閣の仙谷前官房長官が昨年「暴力装置」などと貶(おとし)めたことに心を痛められ、その名誉回復のために意図的に「自衛隊」と真っ先によびかけられたものと拝察する。

【『ほんとに、彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行〈さっさ・あつゆき〉(幻冬舎、2011年)】

「嗚呼(ああ)――」と頭(こうべ)を垂れた。大御心(おおみごころ)という言葉の意味がやっとわかったような気がする。直ぐ下の弟が航空自衛隊にいることもあって陛下の御心が一入(ひとしお)身にしみる。

 私の中で尊皇の精神が芽生えたのは、メッセージの内容によるものではなかった。何の気負いもなく淡々と国民に呼びかけるあのお姿であった。「ああ、ありがたいな」と心の底から思った。「日本人でよかったな」とも思った。まったく新しい感情であった。

 天皇陛下には基本的人権がない。苗字もなければ一片の自由もない。常人ではないという意味において「神」と考えてよかろう。「ただ国民のために生きる人生」を強いられるのだ。様々な祭祀(さいし)を司っていることももっと広く知られるべきだ。

ほんとに、彼らが日本を滅ぼす
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