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2018-10-01

李承晩の反日政策はアメリカによる分割統治/『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 ・李承晩の反日政策はアメリカによる分断統治

『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘 2015年

 李承晩がアメリカの承認を得て大統領になった1948年当時は、当然のことながら韓国国民はみな日本統治時代のことを知っていたわけで、それゆえ過去を懐かしむということも多々あったわけですが、そうした親日的な人々が次々に投獄されることなった。李承晩が大統領に就任してからの2年間に、こうした政治的弾圧によって投獄された人々の数は、日本統治時代を通じて投獄された人々の総数を超えるほどだったといわれています。
 もちろん学校教育においては反日教育が徹底的に行われました。日本の出版物やテレビドラマ、歌謡曲などの大衆文化も「公序良俗に反する」として輸入や放送が規制されました。こうした規制は延々半世紀にわたって続き、部分的ながら開放されるようになったのはつい最近のことにすぎないのです。

【『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘(徳間書店、2014年)以下同】

 韓国の民主化・自由化が実現したのは金大中〈キム・デジュン〉大統領の時代で1997年のことである。李承晩の後を継いだ朴正熙〈パク・チョンヒ〉~全斗煥〈チョン・ドゥファン〉は軍事クーデター政権で、盧泰愚〈ノ・テウ〉も軍出身者だった。続く金泳三〈キム・ヨサンム〉は文民だが旧軍事政権と選挙協力をしていた。

 義務教育で反日教育を施しているのは中国と韓国であり、戦争を前提とした準備行動であると考えるのが妥当だ。反日デモや反日行動が報じられるようになり日本人の反中・反韓感情が一気に高まった。フリー・チベット運動によって眼(まなこ)を開いた人も多いことだろう。私もその一人だ。

 東アジアを不安定なまま維持するのがアメリカの防衛戦略である。自らの覇権のために他国を混乱させるのがアングロサクソン流だ。

 反共はともかく、なぜ李承晩はこれほどまで徹底して反日政策をとったのかといえば、それが取りも直さずアメリカの政策にほかならなかったからです。アメリカは朝鮮半島が日本の領土であることを認識していました。それゆえ日本と韓国を分割統治する上で、韓国における日本の残滓(ざんし)を一掃しなければならないと考えました。とりわけ韓国国民に染みついた過去の日本式教育をアメリカの意思にかなったものに改革しなければならない。そうでなければ日本と韓国を切り離すことができないからです。それにはまず徹底的に反日感情を植えつけて両国を離反させる、というのが当時のトルーマン大統領によるアメリカの韓国占領政策であり、それはまたディバイド・アンド・ルール(分割統治)の原則でした。そしてそれを忠実に実践したのが李承晩という傀儡だったわけです。

 分割統治は大英帝国のお家芸である。相手国の少数派を特権階級化して植民地経営を行うのを基本とする。反英感情を防ぐ盾(たて)のようなものだ。ルワンダで同じ民族の人々をツチ族とフツ族に分けたのもベルギーによる分割統治であった。それがあのルワンダ大虐殺にまで発展するのだ。

 韓国の建国が1948年(昭和23年)である。アメリカの反日政策はキッシンジャーの米中外交(1971年)にまで脈々と引き継がれた。周恩来に魅了されたキッシンジャーは在日米軍を「ビンの蓋(ふた)」に例え、飽くまでも日本の軍事的膨張を防ぐところに目的があると言明した。文化大革命を生き延びた周恩来からすればキッシンジャーなど青二才同然であったことだろう(『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘)。

 キッシンジャーはいまだ健在である。トランプ政権を陰で支えているのだ。現在アメリカでは軍産複合体を支配するユダヤ人旧勢力とユダヤ人新勢力の綱引きが激化している。米国内の主導権が変わったところでキッシンジャーが絵を描いている以上、東アジア戦略は変わることがないだろう。今後、韓国が北朝鮮に飲み込まれる形で統一されれば、日本の立ち位置はかなり危うくなる。台湾・フィリピン・ASEAN諸国と連携するしか道はない。

 韓国が埋め込まれた反日感情に自ら気づくことは難しいだろう。とすれば日清戦争と同じ状況が再びやって来るに違いない。

2018-08-04

戦前の高度なインテリジェンス/『秘境 西域八年の潜行』西川一三


『たった一人の30年戦争』小野田寛郎
『F機関 アジア解放を夢みた特務機関長の手記』藤原岩市

 ・戦前の高度なインテリジェンス

・『チベット潜行十年 』木村肥佐生
・『チベット旅行記』河口慧海
・『城下の人 新編・石光真清の手記 西南戦争・日清戦争』石光真人編
『サハラに死す 上温湯隆の一生』長尾三郎編

「あなたは親切心で言ってくれるのでしょうが、私は、ヒマラヤを、この体でこの二本の足で七度も越えて鍛え上げているのだ。私がこんな姿をしているのは、あなたのそんな親切なめぐみを、待ち望んでしているのとは、まったく意味が違う。私達は戦争には負けた。しかし、私は、精神的には負けてはいないのだ」
 日本人と同じ顔をした、栄養状態のよいこの米人は、顔色ひとつ変えずに私のはげしい言葉を聞くと、その軍服を片づけた。
 私とこの通訳とは、さらにその後半年、この個室で同じ毎日をつづけた。私が、自分の足跡の一切を、相手の質問の尽きるまで語りつくしたときは、完全に一年間が経過していた。通訳がこの間に、私から調べ上げた調書の原稿は数千枚にも及ぶうず高いものだった。彼は、この功によって二階級特進した。
 八年間死地をくぐり、日本政府から一顧にも付せられなかった私は、この間、日当一千円を米軍から受取っていた。当時、私にはかなり高額の金である。私は貴重な情報を、アメリカに売るのかという、心のとがめを感じないわけではなかった。が、それならば何故、外務省が私んしかるべき態度をとらなかったのかという反撥の心があった。すべて、敗戦のしからしめるところであったと思う。しかし私は、通訳と向き合う生活をはじめて間もなく、すすめてくれる旧師もあって私なりのひそなか決心を固めていた。なんのためという具体的な目標があったわけではないが、決してGHQには売らない八年間の自分の足跡というものを、自分のものとして真実の記録として残すことを思い立ったのである。

【『秘境 西域八年の潜行』西川一三〈にしかわ・かずみ〉(芙蓉書房、1967年/中公文庫、1990年)】

 西川一三は戦前の情報部員である。チベットに巡礼に行くモンゴル僧「ロブサン・サンボー」(チベット語で「美しい心」)を名乗り、チベット・ブータン・ネパール・インドなど西域秘境の地図を作成し地誌を調べ上げた。その活動はなんと敗戦後の1949年まで続いた(敗戦は1945年)。帰国後、直ちに外務省に報告をするべく訪ねたが、全く相手にされなかったという。直後にGHQから出頭せよとの命令があり、西川の情報を引き出すべく1年にも及ぶ取り調べが行われた。

 小野田寛郎〈おのだ・ひろお〉のように敗戦後も戦い続けた日本軍兵士や諜報員は数多くいた。たぶん数千人規模でひょっとすると万を超えていた。大半の兵士はアジア諸国独立のために加勢した。そのまま現地で生活をし続け、骨となった人々もまた少なくない。大東亜会議で掲げた理想の旗は日本が敗れても尚、アジアの地で高々と翻(ひるがえ)った。そんな彼らに国家は報いることがなかった。否、見捨てたといってもよい。こうしたところに真の敗因があったと思われてならない。

 日本人は個々人の志操は高いのだが組織になると「村」レベルの惨状を露呈する。武士はいたものの貴族が存在しなかったゆえであろうか。社会学の大きなテーマになると個人的には考えているのだが、小室直樹が触れている程度で手つかずのような気がする。厳しい階級制度がなかったことも遠因の一つだろうし、天皇陛下の存在が悪い意味での安心感を生んでいることも見逃せない点である。長らく外敵の不在が続いたことも体制がシステマティックにならなかった要因だ。そして体制が変わると閥(ばつ)がはびこるのも我が国の悪癖であろう(戦後、組織化に成功した日本共産党や創価学会においても同様である)。優秀な人材がいながらも江戸時代に総合的な学問が発展しなかったのも同じ理由と思われる。

 時代は変わっても日本人には職人肌なところがあるように思う。オタクなどが好例だ。現代にあっても国際的な舞台で活躍する個人は多い(中村哲〈なかむら・てつ〉やビルマの内戦を止めた井本勝幸など)。スポーツ、芸術、音楽、美術においても白人と伍し、漫画に至っては世界を牽引(けんいん)している。我々のDNAは個人や小集団で発揮するようにできているのかもしれない。

 官僚が支配する息苦しい日本で出世競争に血道を上げるよりは、若者であれば単独者として世界を目指せと言いたい。

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2018-06-17

覇権を取り戻そうとする欧州/『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯

 ・覇権を取り戻そうとする欧州

『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯

菅沼光弘

 考えてみましょう。
 1500年~1900年代初めまで、欧州は世界の政治・経済・文化の中心でした。
 覇権国家も、全部欧州から出ていた。
 スペイン→オランダ→イギリス。
 覇権国家のライバルも、全部欧州の国。
 ポルトガル→フランス→ドイツ。
 しかし欧州は、第一次・第二次世界大戦によって没落していきます。
 代わって覇権国家になったのが、アメリカとソ連。
 欧州はどうなったか? 西欧はアメリカが支配し、東欧はソ連が支配する。
 これは、誇り高き西欧のエリートたちにとって、たいへん屈辱的な状態だったのです。しかし、アメリカに逆らうことはできません。
 なぜなら、東にソ連という巨大な脅威があったから。西欧がアメリカと縁を切れば、まちがいなく「共産化」されることでしょう。
 ところが、1991年12月にソ連は崩壊した。
 これは、西欧にとって二つのことを意味していました。
 一つ目は、【「全世界に、もはや西欧にとっての脅威は存在していない」】。
 もうひとつは、【「脅威がないのだから、アメリカに支配され続ける理由はない」】。
 欧州エリートたちは、「もう一度、【アメリカから覇権を取り戻そう!】」と大きな野望を抱くようになりました。
 しかし、欧州の、たとえばドイツ、フランス、イタリア、スペインなどが一国で覇権を取るというのは、あまりにも現実離れしています。では、どうするか?
 そう、【欧州を統合し、巨大な一つの国家にしてしまえば、アメリカから覇権をうばえるだろうと】。
 フランスの著名な経済学者で、1981年~1991年まで大統領補佐官をつとめたジャック・アタリはいいます。
「通貨統合・政治の統一・東欧やトルコへのEC(欧州共同体)拡大。これらが実現できれば、欧州は21世紀【アメリカをしのぐ大国になれるだろう】」
 反対に、「【アメリカをしのぐ大国になるために、EU(欧州連合)を東欧に拡大し、共通通貨をつくるのだ】」ともいえますね。
 そして、1999年1月1日。欧州通貨統合がスタートしました。
【ユーロの誕生です】。
 当時参加11ヶ国の人口は2億9000万人、GDPは6兆3000億ドル。アメリカは2億7000万人の7兆8000億ドル。
 ついに、【ドル体制を崩壊させる可能性のある通貨が登場したのです】。

【『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2012年)】

 スペインは無敵艦隊でイギリスを降(くだ)した(英西戦争)。クリストファー・コロンブス(1451年頃-1506年)はイタリア出身だが、西回り航路によるインド・ジパング(日本)への航海を支援したのはスペインのイサベラ女王であった。既に多くの人々が住んでいる大陸を「新発見」するというメンタリティが白人の思い上がりを雄弁に物語る。南米に多いヒスパニックとはスペイン人の末裔(まつえい)と考えてよい(最近はラティーノと称することも多い)。

 オランダは銃を活用する戦闘を世界に先駆けた。その後、オランダ東インド会社を設立しアジアを侵略した。そして三度にわたる英蘭戦争(17世紀後半)で没落してゆく。イギリスは18世紀に産業革命を成し遂げ、七つの海を制覇する。

 まあ何が凄いかというと、内においては魔女狩りを行いながら近隣国と戦争を繰り返し、同時進行で世界各地を侵略するというその獰猛(どうもう)さである。モンゴル帝国がイギリスまで制覇してくれれば、世界はもっと穏やかな形になっていたことだろう。

 しかも白人は彼らの歴史を反省することがない。サイコパスそのものである。本来であれば日中印が手を結んで白人が共倒れするような戦略を練るべきだと思うが、中国共産党が存在する限りは無理な話だろう。

 覇権を取り戻そうとする欧州と、太平洋に進出しようとする中国の関係が気になるところだ。それからユーロに加わっていないイギリスの動向も。

 北野幸伯〈きたの・よしのり〉の著作は今のところ外れがないが、ネット文体のせいか改行が多すぎてイライラさせられる。ま、本の値段が安いから我慢するよ。

プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?
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アメリカに「対外貿易」は存在しない/『ボーダレス・ワールド』大前研一

2018-04-28

安倍首相辞任の真相/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年

 ・教科書問題が謝罪外交の原因
 ・アメリカの穀物輸出戦略
 ・中国の経済成長率が鈍化
 ・安倍首相辞任の真相

『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 最近、ブッシュ政権の国務長官だったコンドリーザ・ライスが回顧録を出しましたが、そのかで北朝鮮に対する日本政府の対応を痛烈に非難しています。ライス国務長官は、当時のチェイニー副大統領などの強硬派の意見を退けて、ブッシュ大統領に北朝鮮との話し合い路線を進めていたからです。アメリカは「テロ支援国家」の名簿に入れていた北朝鮮を、名簿から外す方向で考えていたのです。
 しかし安倍さんは、日本人を拉致するというのはまさしくテロではないか。北朝鮮はテロ支援国家どころかテロ国家そのものだと主張しつづけてきた。それで2007年9月9日にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)がオーストラリアのシドニーで開催されたとき、「北朝鮮をテロ支援国家から外さないように」とブッシュ大統領に懇願したのです。それに対してブッシュ大統領は「考えましょう」と返事をした。
 ところが帰国した翌日、安倍さんは午後の衆院本会議で施政方針演説をやる予定でしたが、その午前中に、アメリカ大使館から「ノー」という返事がきた。「大統領は北朝鮮のテロ支援国家指定解除をやります」と。安倍さんはいわばアメリカから梯子(はしご)を外されてしまったのです。これで完全にギブアップした安倍さんは、2日後の9月12日に「健康上の理由」で突如、辞任を表明することになってしまったのです。

【『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘(徳間書店、2012年)】

田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った」の続きを。この事実をどう捉えるか? 中には「そんなことぐらいで……」と思う人もいるだろう。安倍首相は拉致問題に政治生命を懸けていたに違いない。小泉首相訪朝後、拉致被害者5人が日本に帰国したが、小泉は彼らを北朝鮮に帰すつもりだった。これに猛反対したのが安倍晋三官房副長官と中山恭子拉致担当内閣官房参与だった。

「戦後レジームからの脱却」とは史実に基づく日本近代史の見直しと、自立した国家すなわち自分の国は自分で守るという当たり前の姿を目指すものだ。アメリカに国家の安全保障を委ね、左翼政党や進歩的文化人に配慮する中で拉致被害が発生した。当初は政府はおろかどの政党もその事実を認めようとはしなかった。シベリア抑留の二の舞を踏んだといってよかろう。

「戦利品」の一つとして、日本人捕虜のシベリヤ強制労働の道は開かれていた/『内なるシベリア抑留体験 石原吉郎・鹿野武一・菅季治の戦後史』多田茂治

 そして今再び北朝鮮を巡って世界が揺れている。アメリカは二度にわたって日朝国交正常化を阻んできた(『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘)。もう一つ重要な歴史として米中国交回復のためにアメリカは沖縄を返還した(『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘)事実を忘れてはならない。

 トランプ大統領が安倍晋三を信頼しているのは確かだが、アメリカ・ファーストのためとあらばまたしても梯子を外す可能性を考えておく必要がある。もしもアメリカがアジアから一歩退くとなればそこに中国が攻め込んでくる。アメリカ頼みの防衛は極めて危険である。インド・ロシアそしてASEAN諸国・台湾との連携を模索すべきだ。今直ぐに。

この国の不都合な真実―日本はなぜここまで劣化したのか?
菅沼 光弘
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2018-04-27

田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った/『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年

 ・IAEA(国際原子力機関)はアメリカの下部組織
 ・日米経済戦争の宣戦布告
 ・田中角栄の失脚から日本の中枢はアメリカのコントロール下に入った

『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 アメリカのFBIは日本との関わりのなかで、どこにどれだけのお金が流れたかなど、あらゆる情報を把握しています。ロッキード事件では、それがたまたまロッキード・丸紅ルートとして表面化したけれど、アメリカが叩こうとしたのは日本の首相であって、それ以外はどうでもよかったのです。
 アメリカには罪を認めて当局の捜査に協力すれば刑を軽減したり不起訴にするという司法取引精度がある。アメリカの刑事裁判は大部分が司法取引で行われているから、事件の証拠などいくらでも出てきます。だから贈賄側であるロッキードの副会長コーチャンも司法取引に応じて、不起訴を条件にぺらぺらとしゃべる。その証拠をアメリカ政府はポンと出して、あとは日本の検察が好きなようにおやりなさいよとやる。その証拠を東京地検特捜部がアメリカまでもらいに行った。その中心にいて田中角栄に論告求刑したのが、現在「さわやか福祉財団」で理事長をつとめている堀田力さんです。
 しかし、いまもいろいろと問題を起こしていますが、当時から検察のやり方というのは実に卑劣です。一国の総理だった人物を外為法違反などということで捕まえる。そんなことが許されていいのかどうか。結局、これもまたアメリカの意向にそって検察が動いているからです。田中角栄を見せしめに締め上げて、「今後一切、アメリカに逆らうようなことは許さない」というアメリカのお先棒をかつぐ、日本の検察はまったく地に堕(お)ちてしまいました。
 地に堕ちたのは検察ばかりではありません。アメリカに逆らえば潰されるということを身にしみて知らされた日本の総理大臣もまた、このときから地に堕ちてしまった。とりわけ中曽根康弘から竹下登へとつづく内閣はアメリカの要求を100パーセント飲みつづけ、その後の自民党政権はことごとくアメリカの言いなりという状態になりました。海部俊樹しかり、宮澤喜一しかり、橋本龍太郎しかり、小泉純一郎しかりです。

【『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘(徳間書店、2011年)】

 ロッキード事件はアメリカに先んじて中国と国交回復を成し遂げた田中角栄首相に対するキッシンジャーの報復だった。ジャーナリストの文明子〈ムン・ミョンジャ〉が菅沼に語った。「角栄さんがクビになった最大の原因は何か知ってますか。それは日中国交正常化ですよ。もっといえば台湾問題なんですよ」と。キッシンジャーは田中角栄を「アンプレディクタブル・ガイ(何をやらかすかわからない野郎)」だと罵倒し、「あんな田舎者はもう徹底的にやっつける」と言った。エアフォースワンに同乗を許された彼女が直接聞いた話である。

 大東亜戦争以来、アメリカはずっと蒋介石政権を援助してきた。夫人の宋美齢もアメリカでは大変な人気があった。アメリカが台湾の存在に苦慮する中で突然日本が中国に手を出したわけだ。キッシンジャーの目には「身の程知らずな属国」と映ったのだろう。

 橋本龍太郎もまた日歯連闇献金事件(2004年)で失脚し、2年後に亡くなった。橋本はコロンビア大学で行った講演後の質疑で「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは、幾度かあります」と発言し、翌日のニューヨーク市場は1987年のブラックマンデー以来最大の192ドルの下げ幅を記録した。これに対する意趣返しだと囁かれた。

 我々は大東亜戦争に敗れても尚、アングロサクソンの本当の恐ろしさを理解していないのだろう。国際社会にあって人の好(よ)さは致命的なマイナスとなる。第一次安倍政権もまたアメリカによって潰された

 田中角栄が葬られた後で堀田力や立花隆がメディアや出版界で活躍したのもアメリカからのご褒美に違いない。

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2016-08-07

嘘で滅びゆくアメリカ/『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
・『プーチン 最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯

 ・嘘で滅びゆくアメリカ

菅沼光弘

〈「ブッシュ大統領は世界の脅威2位 英紙の世論調査
[ロンドン=本間圭一]ブッシュ米大統領が、北朝鮮の金正日総書記やイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界平和の脅威だ――。
 3日付の英紙ガーディアンは、世界の指導者で誰が平和への脅威になっているかに関して聞いた世論調査でこうした結果が出たと1面トップで報じた。
 調査は、英国、カナダ、イスラエル、メキシコの4か国でそれぞれ約1000人を対象に世論調査機関が実施した。
 英国民を対象とした調査によると、最大の脅威とされたのは国際テロ組織アル・カーイダ指導者、ウサマ・ビンラーディンで87%。これに続いてブッシュ大統領が75%で2位につけ、金総書記69%、アフマディネジャド大統領62%を上回った。ビンラーディンは他の3国でもトップとなった。〉(読売新聞2006年11月4日)

「イラク戦争の開戦理由は全部大ウソ」であることを証明した、アメリカ上院報告書は、2006年9月に出されています。そして、2006年11月の世論調査がこれ。
 イギリス、カナダ、イスラエル、メキシコ、つまり親米国家で、75%が「ブッシュは平和の脅威だ!」と認識していた。
 その他の国々では、もっとひどかったことでしょう。
 実際、ブッシュが、「ウソの理由」で、イラク戦争をはじめたことで、アメリカの権威は失墜しました。いえ、「ウソがバレたことで」というべきですね。

【『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2014年)以下同】

 新聞記事冒頭の【「】が閉じていないが原文通りである。記事内のゴシック表記についても脚註がない。そして相変わらず改行が多い。文章の問題はコミュニケーション能力の問題でもある。膨大な余白の量を思えば価格は1500円以下が望ましいと思う。ネット文体で片づけるわけにはいかない。

 ブッシュ大統領やチェイニー副大統領が「イラクは大量破壊兵器を保有している」と繰り返しメディアで訴え、アメリカはイラク攻撃(2003年)に踏み切った。小泉首相が真っ先に手を上げ、「アメリカ支持」を表明したことも記憶に新しい。だがそれは嘘だった。

 イラク戦争の真の目的はドル基軸通貨体制を守るためで、フセイン大統領が始めた石油のユーロ決済を阻止することにあった。本書で初めて知ったのだが、プーチン大統領はロシア産資源の決済通貨をドルからルーブルに変えたという。ジョージ・ソロスの財団がNPO法人を通してカラー革命を支援する理由もこのあたりにあるのだろう。外交の舞台裏で行われている「小さな戦争」を日本人は知らなさすぎる。

 みなさん、以下の事実をご存知でしょうか?

(1)イランは核兵器を開発する意向を一度も示したことがない。
(2)アメリカも数年前まで、イランには「核兵器を開発する意図がない」ことを認めていた
(3)核兵器開発が「戦争」の理由であるなら、真っ先に攻撃されるべきはイランではない。

 イランのアフマディネジャド大統領を最も危険視した人物に佐藤優がいる。ラジオ番組での解説を聴いて、「やはりイスラエルの代弁者か」と落胆した覚えがある。日本という米英情報ピラミッドの中で犬のように振る舞う学者や専門家だけがテレビ出演を許される。民主政が成熟しないのは、新聞・テレビが多様な意見を伝えないことが大きい。

 少しでも世界情勢を知っている人であれば、以下の二つの「絶対的定説」をご存知でしょう?

(1)アメリカがシリア攻撃を検討したのは、アサド大統領の軍が、「化学兵器を使ったから」である。
(2)アサド大統領は、「独裁者で悪」である。反アサド派は、「民主主義社で善」である。

 どうでしょう?
 ほとんどすべての人が、「そのとおりじゃないか!」と思っていることでしょう。
 しかし、この二つの「ウソ」が暴露された。
 少なくとも、「反アサド派」に関する「大ウソ」が世界に明らかにされた。
 それで、アメリカはシリア攻撃できなくなったのです。

 その後、「シリア反体制派がサリンガスを使用した可能性がある」と国連調査委員会が指摘した。更に反アサド派が殺害した政府側軍人の内蔵を食べる映像を公表した。

18禁:動画

 プーチン大統領はアサド政権を支持する。そして反アサド派はイスラム国(ISIS)となって今日に至るまで世界各地でテロを実行している。

 嘘で滅びゆくアメリカを日本は他山の石とすることができるだろうか? 難しいと言わざるを得ない。安全保障に関する情報をアメリカに依存している以上、アメリカが日本をコントロールするのは容易だ。まずは愛国心が否定されない程度の「普通の国家」になることが求められよう。

日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理
北野 幸伯
集英社インターナショナル
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2016-08-06

日英同盟を軽んじて日本は孤立/『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯
『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯

 ・日英同盟を軽んじて日本は孤立

『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯

菅沼光弘

 第一次世界大戦が始まる時、日本とイギリスは同盟国、イギリスとアメリカは同盟国ではありません。
 つまり、日本とイギリスのほうが、米英よりも近い関係にあった。
 しかし、第一次世界大戦の態度の違いにより、日英関係は冷え込み、米英は「もっとも重要な同盟国」になってしまいます。
「味方が苦しんでいるのを見捨てた」日本の「武士」らしからぬ行動は、すぐに悪い結果となって現れてきました。
 米英は、日本を強く警戒するようになり、以後「日本の力を削ぐ」ことが重要な目標になっていきます。
【1921年、日英同盟破棄が決定】されました。
 1922年に締結された「ワシントン海軍軍縮条約」で、日本の戦艦保有は、米英の6割と定められました。
 日本は7割を主張しましたが、米英は一体化して、これを拒否しています。
【1923年、日英同盟が失効。】
 このように、【日本の孤立は、第一次世界大戦時、日英同盟を軽んじたところから始まった】のです。

【『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(集英社インターナショナル、2013年)】

 改行まみれである(笑)。女子中学生の日記みたいだ。ロシアで失脚したプーチンが日本に柔道留学する。日本の無能な政治家がプーチンにアドバイスを求める。つまりプーチンであればどのような日本の舵取りをするか、とのテーマで国家としての自立を示す内容となっている。

 ヨーロッパ列強の中で「栄光ある孤立」を貫いてきた大英帝国が翳(かげ)りを帯びた。日英同盟は大英帝国の覇権が弱まったことを意味した。

 同盟の直接的なきっかけとなったのは義和団の乱(1900年)であり、柴五郎とジョージ・アーネスト・モリソンの邂逅(かいこう)が両国を結ぶに至った(『ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書』石光真人、『北京燃ゆ 義和団事変とモリソン』ウッドハウス瑛子)。そしてモリソンは日本とロシアを戦争にまで誘導する(『日露戦争を演出した男 モリソン』ウッドハウス瑛子)。

 日英同盟破棄には伏線があった。第一次世界大戦後にパリ講和会議で日本による人種的差別撤廃提案が否決されたことである(1919年)。

白人による人種差別/『国民の歴史』西尾幹二

 19世紀末から日本が歩んだ半世紀を振り返ってみよう。

(1868年 明治元年
 1894-95年 日清戦争
 1896年- 欧米豪で黄禍論が台頭  1900年 義和団の乱
 1902年 第一次日英同盟
 1904-05 日露戦争
 1905年 第二次日英同盟
 1911年 第三次日英同盟
 1921-22年 ワシントン海軍軍縮条約  1921年 四カ国条約  1931年 満州事変
 1933年 日本が国際連盟を脱退
 1937年 支那事変
 1941-45年 太平洋戦争(日本は支那事変を含めて大東亜戦争と称した)

 武士が刀を置き、チョンマゲを落として(散髪脱刀令 明治4年/1871年)からわずか23年で戦争に突入した。日本の近代化は文字通り戦争の歴史であった。

 幕末の知識人は阿片戦争(1840-42年)に衝撃を受けた。幕府は外国船に対して宥和政策を執らざるを得なくなった。そこに黒船が来航(1853年)する。迫りくる帝国主義に対する国家改造が明治維新であった。日本が遅れて帝国主義の波に乗ろうとした。だが当時の世界はそれを許さなかった。

 戦後の日本は安全保障を米軍に肩代わりさせて、まんまと経済発展を遂げた。辛うじて国体は護持したものの国家観を見失った。GHQの占領期間が終わっても尚、自国の歴史を教えることがなかった。日教組の教員は堂々と国旗掲揚を非難し、君が代斉唱を拒んだ。義務教育では戦前を暗黒史として教えた。マルクス史観を貫く進歩というテーマのために古い時代は悲惨と位置づけられた。


 日本の領土問題は北方領土竹島尖閣諸島の三つである。GHQが意図的に島嶼(とうしょ)部の扱いを曖昧にして混乱要因を残したという説もある。そして中国・ロシアが領空・領海を日常的に侵犯している。こうした状況にありながら平和憲法にしがみつくのは一種の教条主義であろう。日本の安全を保障してきたのは憲法第9条ではなくアメリカの核の傘であった。理想を見つめるあまり脅威を無視できる人々が多いことに暗澹(あんたん)たる思いがする。彼らにとってはチベットやパレスチナは他人事なのだろう。

 1990年代にようやく自虐史観を乗り越える動きが始まり、東日本大震災を通して尊皇の気風が回復しつつある。

 しかし、被災地で、また避難先で、今日もなお多くの人が苦難の生活を続けています。特に、年々高齢化していく被災者を始めとし、私どもの関心の届かぬ所で、いまだ人知れず苦しんでいる人も多くいるのではないかと心に掛かります。
 困難の中にいる人々一人ひとりが取り残されることなく、一日も早く普通の生活を取り戻すことができるよう、これからも国民が心を一つにして寄り添っていくことが大切と思います。

東日本大震災5年 追悼式の天皇陛下お言葉全文 2016年3月11日

 このお言葉を政治家は真剣に受け止めているだろうか? 右も左も関係ない。幕末にあって攘夷派も開国派も尊皇という一点は共通していた。日本が世界最古の国(【ギネス認定】日本は世界最古の国)たり得たのは天皇陛下の存在があったからだ。天皇という国家の軸を失えば「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(「果たし得ていない約束」三島由紀夫/サンケイ新聞 昭和45年7月7日付夕刊)という三島の予言が現実のものとなる。

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北野 幸伯
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2016-08-03

世界は「アメリカ幕末時代」に突入した/『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯


 ・世界は「アメリカ幕末時代」に突入した

『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯
『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

「世界は【アメリカ幕末時代】に突入した」

【『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(草思社、2007年)以下同】

 電子書籍配信サイトの連載を単行本化した作品である。書き手にとっては巧いやり方だと思う。一粒で二度おいしいわけだ。文化を支えるのは活字と音楽だ。不況の波が恐ろしいのは文化発信者の数を激減させることである。ミュージシャンもこうした手法を取り入れるべきだろう。文筆家はフリーの編集者を確保するのが賢明だと思う。

 北野幸伯〈きたの・よしのり〉の著作はインテリジェンス入門としてうってつけである。文章がわかりやすく、話題も広い。引用文献もあまり知られていない好著が多い。内容の重複が目立つが、きちんとバージョンアップしている。今のところハズレなし。

 インターネット社会の作法としてインテリジェンス能力は欠かせない。情報を読み解く力が弱いとデマを信じ込んでしまう。安倍政権に対する批判が広がりを持てないのは、左翼の古ぼけた眼鏡を通した価値観に基づくためだ。日本の近代史を上書き更新した上で、利権構造や官僚システム、天下りの放置などに斬り込む必要があるだろう。

「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」(テレビ演説 2013年9月10日)という歴史的なひと言が「アメリカ幕末時代」の幕を開いた。これから訪れるのは「混乱」である。日本における明治維新は「尊皇」の精神で一つにまとまることができた。しかし世界に天皇陛下は存在しない。ということは際限のない三国志のような時代が来る可能性もある。

 世界情勢をじっくり観察してみると、【アメリカの影響力は衰退の一途をたどっている】ことがわかるのです。

 特にオバマ政権下での国防予算削減が大きい。沖縄から米軍が撤収する時期もそう遠くはないことだろう。憲法改正の動きにはそうした背景がある。

 世界情勢を理解するためにはいくつかのファクターを知る必要があると書きました。それはいったい何でしょうか?
【第一に「国家のライフサイクル」】
 これは、ある国が今上向きなのか下向きなのかを知る方法。これは人的要素と関係ない変えられない流れです。
【第二に「国際関係の主役と準主役の動き」】
 世界情勢を理解するためには、全部の国の動向を知る必要はありません。数カ国の動きだけで十分です。
【第三に「ある国の動きを決める国益」】
【第四に「指導者」】
【第五に「通貨と資源」】
 これだけわかれば世界のことは手にとるようにわかるようになります。

 これは一貫して北野が著作で主張している。一つだけ付言しておくと、「国家のライフサイクル」とは仏教語でいうところの生老病死・成住壊空(じょうじゅうえくう)である。永遠に発展する国家はない。アレクサンドロス大王(紀元前356-紀元前323年)の栄華は1代で終わった。モンゴル帝国は200年足らずで衰退を免れなかった。ナポレオン・ボナパルト(1769-1821年)は10年で失脚した。栄枯盛衰は摂理のように見える。

 そして日本のライフサイクルは下降しつつある。アメリカの軍事力を頼ることができなければ自前で調達するしかない。今まで米軍に与え続けてきた思いやり予算と、これからの防衛費がバランスできるのかどうか? 「日米安保は安かったな」と自覚するような日が来れば、社会保障はとっくに切り捨てられていることだろう。

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2016-08-01

情報ピラミッド/『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯


『中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義 vs 多極主義』北野幸伯

 ・情報ピラミッド

『プーチン最後の聖戦  ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?』北野幸伯
『日本自立のためのプーチン最強講義 もし、あの絶対リーダーが日本の首相になったら』北野幸伯
『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」 世界を動かす11の原理』北野幸伯
菅沼光弘

 実はこの世界には、いくつかの情報ピラミッドがあります。
 米英ピラミッド・欧州ピラミッド・中国ピラミッド・イスラムピラミッド・ロシアピラミッド等々。ピラミッドが違うと、同じ事件に対する見解が全く異なるのです。
 皆さんご存知ないかもしれませんが、日本は米英情報ピラミッドの下流にあります。
 日本にはもちろん報道の自由があります。しかし、その解釈はどうしても、米英ピラミッドの外に出ることはないのです。これは、いくらCNNを見ても、英字新聞を熟読しても同じこと。
 ロシアピラミッドの否定的な面は、あまりどっぷりつかりすぎると、クレムリンに洗脳されてしまうこと。肯定的な面は、ロシアピラミッドには、世界を支配する米英のネガティブ面について報道規制が全くないということです。
 これらの要因で、私は自然と多角的に物事を見るようになりました。そしてわかったことは、「政治経済というのは、【案外因果関係がはっきりしている】」ということでした。

【『隷属国家 日本の岐路 今度は中国の天領になるのか?』北野幸伯〈きたの・よしのり〉(ダイヤモンド社、2008年)】

「イスラムが行うとテロで、アメリカが行えばテロと呼ばれないのはおかしい」と武田邦彦が指摘するのも、米英ピラミッドを疑えというメッセージなのだろう。所属・帰属が情報を大幅に制限する。

 特に政治性や宗教性は人間の脳を束縛する。洗脳とは「ブレイン・ウォッシュ」の訳語であるが、洗われ、漂白された脳が特定の色に「染め上げられる」。完璧な洗脳は他人からの支配を自分の意志と錯覚させる。

 監禁・睡眠不足・暴力を伴う洗脳をソフトにしたものがマインドコントロールである。マインドコントロールはカルト宗教やマルチ商法の専売特許ではない。操作性という意図がマインドコントロールの本質である。教育は親子であろうと学校であろうと子供を自由にするためではなく、隷従させるために行われる。大人の指示・命令に子供が従う時、我々は「お利口だね」と言う。聞き分けのよいことが賢いこととされるのだ。褒められるという報酬によって子供は更なる隷従へ向かう。

 古来から伝わる神話には健全な社会秩序形成という目的があったと考えられるが、メディアのマス化(新聞・ラジオ・テレビ)以降は操作性が強くなる。社会主義国ではプロパガンダに進化し、資本主義国では広告に発展する。情報は加工・修正・粉飾を施され、人々を惑わす。

 なぜ日本は米英ピラミッドの下流にあるのか? それは情報(諜報)機関を持たないゆえである。

アメリカからの情報に依存する日本/『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘
瀬島龍三はソ連のスパイ/『インテリジェンスのない国家は亡びる 国家中央情報局を設置せよ!』佐々淳行

 この国は同胞が北朝鮮に拉致されても目を覚ますことがない。戦後、国家の安全保障をアメリカに委ね、日本はのうのうと経済発展を遂げた。豊かさと引き換えに自国の歴史を見失い、確かな国家観を持つことを忌避し、漫然と平和を強調してきた。「ああ、平和は雄志を蝕む」(『三国志』吉川英治)。

 外側の視点に立たなければ閉ざされた世界を知ることができない。まずは新聞とテレビの情報を疑うことだ。

隷属国家 日本の岐路―今度は中国の天領になるのか?
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2016-06-29

核廃絶を訴えるアメリカの裏事情/『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年

 ・沖縄普天間基地は不動産の問題
 ・核廃絶を訴えるアメリカの裏事情

『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年
『沈むな!浮上せよ! この底なしの闇の国NIPPONで覚悟を磨いて生きなさい!』池田整治、中丸薫

 北朝鮮も、小なりといえども核兵器を持つことによって、政治的な独立あるいは自主性、民族の尊厳を中国からも守れる。だから、そういう政治的な意味を込めて核実験をやったということは間違いない。
 しかし、これまた不思議な話で、当時、一般的に北朝鮮の最初の核実験は失敗だったと言われた。我々日本人は核兵器についての知識があまりないものだから、それを信じてきたが、どうもそれは的はずれではないかと考えられます。というのは、北朝鮮はプルトニウム爆弾をつくっているが、これは10年くらいたつと、劣化して処理しなくちゃいけない。今、「核の廃絶」とかみんな言っている。アメリカのオバマ大統領もこの前言いました。あれも、我々はただ単純に、これはいいことだと言っているが、あの裏を見ますと、もうそろそろアメリカの兵器もみんな劣化し始めているんです。これを廃棄するとものすごく金がかかるわけです。したがって、大義名分がないと金が使えない。ロシアも同じことです。だから、「世界から核をなくそう」という名目でどんどん減らしていくことになる。
 最近になって、北朝鮮はもっと早い段階で既に核兵器を持っていたんじゃないか、それが劣化してきた。この第1回の核実験というのは、劣化した核兵器処理ではなかったか。だから、あの実験の本質は何かということをもっと究明する必要がある。それから、第2回の核実験は何か。これは恐らく核弾頭を小型化する実験に成功したんじゃないのかとも言われているんです。

【『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘(ヒカルランド、2010年)】

 本書は第20回日本トンデモ本大賞(2011年)の候補作品となった。

 宇宙人や地底人と交信している中丸薫さんが、北朝鮮に招かれ、北朝鮮は素晴らしい国だと絶賛します。対談相手の菅沼光弘氏もそれに同調し、北朝鮮を批判する日本人を非難したりしています。こういう人が、元公安調査庁調査第二部長だったというのが、いちばんトンデモないことかも……。

山本弘

 ま、無責任な嘲笑目的の賞なので力を込めて反論するだけ無駄だろう。個人的にはやはり中丸薫の人脈は侮れないと思う。例えば池田大作の場合は創価学会というマンモス教団の組織力・財力・政治力が背景にあるが、中丸の場合は完全に一個人である。それでいて池田を凌駕するほどの国際的な人脈を持っているのだ。

 菅沼も中丸やベンジャミン・フルフォードが相手だと、かなり踏み込んだ発言をしている。自らトンデモ系に近づくことで読者に与える衝撃を和(やわ)らげようとしているのだろう。

 オバマ大統領はプラハ演説(2009年)で核廃絶を訴え、同年のノーベル平和賞を受賞した。


 これが世紀のペテンであったとすればハリウッド映画さながらの演出である。あるいは産業廃棄物をお花畑に変えるようなマジックか。

 オバマよ、あんたは核爆弾の中古品を処分する目的で広島を訪れたのか? 平和を売り言葉にして軍産複合体への利益誘導を図ったのか? 利用できると見込んで広島の被爆者をも利用したのか?

 美しい言葉は感情を揺さぶる。そして我々は考えることをやめるのだ。オバマ万歳、広島万歳。めでたしめでたしである。

 政治は富の分配という本来の仕事を放棄して、明らかに富の誘導へとシフトしている。そもそも世界各国で莫大な量の金融緩和を行っているにもかかわらず、目に見えるバブルが発生していない。緩和マネーはどこへ行ったのか? 企業の内部留保の納まるような金額ではないと思うのだが。格差が拡大するとマネーは流動化を失い、持てる者に富が蓄積されてゆく。消費も低迷し、いつまで経ってもデフレを克服できない。

 情報公開と情報判断によって民主政は作動する。奇しくも核兵器廃絶と原発事故を通して我々は情報が秘匿されている事実を知った。そして我々にはロクな判断力がない。討論番組と称する言論プロレスを見て気勢を上げたり溜飲を下げる程度のレベルである。政府の予算を読み解くこともできなければ、法改正の意味も理解できない。本来であればそこにエリート(選良)が求められるわけだが、この国のエリートは官僚となっている(笑)。

 結局のところいい意味でも悪い意味でも、なるようにしかならないのだろう。安倍首相が真珠湾を訪問すれば、「アメリカと共に血を流す」覚悟を披瀝せざるを得なくなる。アメリカの軍産複合体にとっては一石二鳥というわけだ。

2016-05-27

ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ/『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年

 ・日本共産党はコミンテルンの日本支部
 ・ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ

『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

菅沼●たとえば、北朝鮮やイランの核開発の問題。オバマ大統領は核廃絶を訴えてノーベル平和賞を貰いましたが、もちろんこの発言には裏がある。冷静に考えれば、ロシアも中国も北朝鮮もどんどん開発をしていて、現実的に核廃絶なんてできるわけがないというか、単なる寝言です。
 廃絶は寝言でも、不拡散と言って、アメリカがイランや北朝鮮の核開発に異常に神経質になるのは、イラン・北朝鮮が核を持つと、再び日本とドイツが核兵器を開発するという誘惑にかられることを心配しているからです。第二次世界大戦のトラウマがあるから、これはなんとしても阻止しないといけない。

【『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎(扶桑社、2010年)以下同】

 オバマ大統領が今日、広島を訪問した。原爆資料館を見学し、原爆慰霊碑に献花。アメリカの国家元首としては初めてのことである。ま、安倍首相に対するご褒美なのだろう。2014年のオバマ来日以降、安倍政権が行ってきたことといえば、特定秘密保護法の制定・施行と安全保障関連法案の改正(集団的自衛権の行使)である。

 1959年に原爆資料館を訪れたチェ・ゲバラは言った。「きみたち日本人は、アメリカにこれほど残虐な目にあわされて、腹が立たないのか」と(『チェ・ゲバラ伝』三好徹)。米軍による原爆投下は人体実験だった(『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人)。戦後、アメリカから広島・長崎に派遣された医療団は一切治療を行うことなくデータ収集に専念した。それは現在も尚続いているのである。

菅沼●北朝鮮の核ミサイルは、核大国である中国とロシアにとっても何の脅威でもありません。また、韓国の場合は、基本的に同胞だから核は撃ってこない。すると、本当に脅威なのは日本だけです。だから、「日本も核武装すべき」という議論が日本に出てくることがアメリカはショックなのです。
 日本の技術力からすれば、あっという間に核大国になってしまう。もし、そうなったら、必ずやニューヨークとワシントンに報復攻撃をしてくる……。

須田●アメリカはそう思っているのでしょう。

菅沼●ヒロシマとナガサキの報復をされると確信しているのです。なぜなら、アメリカ人は目には目を、歯に歯を、というのが基本的な考え方であり、アメリカが日本に原爆を落としたのは神も許した正義なのです。

須田●日本は毎年毎年、ヒロシマ、ナガサキで大々的な慰霊集会を行なって、大日本帝国の英霊を祀る靖国神社に総理大臣が毎年参列するくらいだから、アメリカ人は「日本人は原爆投下を絶対に許していない」と思っています。

菅沼●「それは考えすぎだろう」と日本人は思うかもしれないが、そうではありません。アメリカ人は「絶対に許さない」と考えるのが自然というか、当たり前だと思っている。日本人のセンスとは、ちょっと違うわけです。

 アメリカの歴史は「リメンバー」(忘れるな)というスローガンが端的に示している。「リメンバー・アラモ砦」でメキシコ戦争、「リメンバー・サムター砦」で南北戦争、「リメンバー・メイン号」でスペイン戦争、「リメンバー・ルキタニア号」で第一次世界大戦参戦、「リメンバー・パールハーバー」で第二次世界大戦参戦、そして「リメンバー・トンキン湾」でベトナム戦争、「リメンバー9.11」で対テロ・アフガン・イラク戦争へと突入してきた。

 人間も国家も相手の中に自分の似姿を見出す。「やられたらやり返す」のがアメリカの流儀だ。日本を恐れるのは当然であった。だが当の日本は平和という病に冒されていた。しかもその平和を担保していたのは駐日米軍の存在であり、アメリカの核の傘であった。ブラック・ユーモアにしては黒すぎる。

菅沼●アメリカ人には、どうしても日本的なメンタリティーが理解できない。だから、日本人が怖くて仕方ないのです。それで、常に経済的にも技術的にも軍事的にも、独り立ちできないようにしてくるわけです。

 アメリカが世界で行ってきたことはジョン・パーキンス著『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』、ナオミ・クライン著『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』やウィリアム・ブルム著『アメリカの国家犯罪全書』が詳細に渡って論じている。アメリカこそは世界最大のテロ国家である(『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー)。

 アメリカの疑心暗鬼は自らの悪逆非道から生まれる。世界の警察官は世界の犯罪者でもあった。

 日本人はお人好しである。もちろん戦後教育が歴史から目を逸(そ)らさせてきた事実を見逃すことはできない。だが歴史に学んだところで今直ぐアメリカと手を切るわけにはいかない。そもそも自衛隊が単独で戦闘できる体制になっていないのだ。日本としては時間をかけてでもアジア諸国との信頼関係を培い、ロシアおよびインドとの関係を強化するしかない。

 中国では民主化の動きが圧力となって、中国共産党は民主化を封じ込める形で日本との戦端を開くことだろう。恐らく2020年前後には動き出すに違いない。これがアメリカの方針であり、共和党政権になっても維持されることだろう。米軍は日本から撤収する可能性が高い。

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2015-11-09

ルーズベルトの周辺には500人に及ぶ共産党員とシンパがいた/『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫


 ・ルーズベルトの周辺には500人に及ぶ共産党員とシンパがいた

『国難の正体 世界最終戦争へのカウントダウン』馬渕睦夫
『世界を操る支配者の正体』馬渕睦夫
『自由と民主主義をもうやめる』佐伯啓思

渡部●ルーズベルトは社会主義的なものに惹(ひ)かれ、共産主義とソ連に寛容でした。大恐慌後の不況対策として打ち出したニューディール政策には財産権を侵害するものも含まれ、最高裁で無効とされたものもあります。また、夫人のエレノアとともに社会運動に熱心なあまり、コミンテルンの工作員や共産党同調者の影響を受けてしまい、国務省や大統領周辺には、500人に及ぶ共産党員とシンパがいたと言われています。

馬渕●ですから、歴史の真実は、まだまだ明らかになっていない。アメリカで公文書が公開されるにつれ、ルーズベルトの政策を再検討する動きが出ています。有名なチャールズ・ビーアドさんという歴史学会の会長が書いた本(『ルーズベルトの責任 日米戦争はなぜ始まったか』藤原書店)も、ようやく日の目を見るようになりました。ルーズベルトは一体何をしたのか。今までは英雄でしたけれども、現にアメリカの中から、それを見なおそうという機運が熟し、英雄像にほころびが出てきた。
 アメリカ人はあれほどの犠牲を払いながら、いまだに戦争の本当の理由を知らされていないと言えるでしょう。

【『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉、馬渕睦夫〈まぶち・むつお〉(飛鳥新社、2014年)】

 アメリカは世論の国である。いかに権限のある大統領といえども世論には逆らうことができない。ゆえに「世論をつくり上げる」。

 やり方は至って簡単だ。自国民をわざと犠牲にした上で国民感情を復讐に誘導するのだ。

アラモの戦い」(1836年)では当時メキシコ領であったテキサス州でアメリカ義勇軍が独立運動を起こした。義勇軍は何度も援軍を頼んだが合衆国軍はこれを無視。200人の義勇軍は全滅した。アメリカは惨殺の模様を誇大に宣伝し、「アラモを忘れるな!(リメンバー・アラモ)」を合言葉にテキサス独立戦争(1835-36年)に突入した。メキシコ合衆国は半分の領土を失った。テキサス共和国はアメリカに併合される。

 19世紀後半になるとスペイン帝国が弱体化した。フィリピンではホセ・リサール(1861-96年)が立ち上がり、キューバではホセ・マルティ(1853-95年)がゲリラ戦争を展開。この頃アメリカの新聞は読者層を伸ばそうと激しい競争を繰り広げていた。「1897年の『アメリカ婦人を裸にするスペイン警察』という新聞記者による捏造記事をきっかけに、各紙はスペインのキューバ人に対する残虐行為を誇大に報道し、アメリカ国民の人道的感情を刺激した」(Wikipedia)。「ピュリッツアーは、『このときは戦争になってほしかった。大規模な戦争ではなくて、新聞社の経営に利益をもたらすほどのものを』と公然と語っている」(「死の商人」と化した新聞)。嘘にまみれた新聞の演出によって参戦の機運が国民の間で高まる。アメリカ海軍は最新鋭戦艦メイン号をキューバに派遣。ハバナ湾でメイン号は原因不明の爆発を起こし、260人余りのアメリカ人が死亡した。アメリカの新聞は「メイン号を忘れるな!」と連呼し米西戦争(アメリカ=スペイン戦争)に至る。アメリカはキューバ、フィリピン、グアム、プエルトリコを手中にし、世界史の表舞台に登場する。

 第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけてアメリカはモンロー主義(孤立主義)を貫いた。1915年、米客船ルシタニア号がドイツ軍のUボートによる魚雷で攻撃され沈没した。乗客1200名に128名のアメリカ人が含まれていた。アメリカ世論の反独感情は沸騰し第一次世界大戦に参戦する。後にルシタニア号が173トンの弾薬を積載していることが判明。当時の国際法に違反しており、ドイツ軍の攻撃は正当なものと考えられている。

 フランクリン・ルーズベルトはそれまでの慣例を破り3期目の大統領選に出馬。「アメリカの青少年をいかなる外国の戦争にも送り込むことはない」と公約した。ルーズベルトは日本に先制攻撃をさせるべく、ありとあらゆる手を尽くした。大東亜戦争における日本軍の紫暗号は当初から米軍に解読されていた。日本はその事実も知らないまま真珠湾攻撃を行う。この時不可解なことが起こる。日米交渉打ち切りの最後通牒である「対米覚書」をコーデル・ハル国務長官に渡すのが遅れたのである。攻撃開始の30分前に渡す予定だったのが、実際は攻撃から55分後となってしまった。本来なら責任があった駐ワシントンD.C.日本大使館の井口貞夫元事官や奥村勝蔵一等書記官は切腹ものだが、何と敗戦後、吉田茂によって外務省で事務次官に任命され、キャリアを永らえている。ルーズベルトは議会で「対日宣戦布告要請演説」を行う。「日本は太平洋の全域にわたって奇襲攻撃」「計画的な侵略行為」「卑劣な攻撃」との言辞を弄してアメリカ国民を欺いた。米軍は真珠湾から空母2隻と新鋭艦19隻は攻撃前に避難させていたのだ。「真珠湾を忘れるな!(リメンバー・パールハーバー)」を合言葉にアメリカは第二次世界大戦に加わる。ルーズベルトは日本に対する最後通牒ともいうべきハル・ノートの存在を国民に知らせなかった。


 1964年、トンキン湾事件によってアメリカはベトナム戦争(1960-75年)に介入する。1971年6月ニューヨーク・タイムズのニール・シーハン記者がペンタゴンの機密文書を入手し、トンキン湾事件はアメリカが仕組んだものだったことを暴露した。

 こうして振り返ると自作自演こそアメリカという国家の本性であり、「マニフェスト・デスティニー」(明白なる使命)に基づくハリウッド国家、ブロードウェイ体制と考えてよい。

 そのアメリカがソ連にコントロールされていたというのだから、やはり歴史というのは一筋縄ではゆかない。マッカーシズムの嵐が起こるのは1950年のことである。

  

建国の精神に基づくアメリカの不干渉主義/『日米・開戦の悲劇 誰が第二次大戦を招いたのか』ハミルトン・フィッシュ
マッカーサーが恐れた一書/『アメリカの鏡・日本 完全版』ヘレン・ミアーズ
大衆運動という接点/『折伏 創価学会の思想と行動』鶴見俊輔、森秀人、柳田邦夫、しまねきよし

2015-11-07

マッカーシズムは正しかったのか?/『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア


『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫
『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫
『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男
・『ハリウッドとマッカーシズム』陸井三郎

 ・マッカーシズムは正しかったのか?

『日本の敵 グローバリズムの正体』渡部昇一、馬渕睦夫
・『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ 「日米近現代史」から戦争と革命の20世紀を総括する』馬渕睦夫

 さらに重大なのは、驚くほど多くの数のアメリカ政府高官がソ連とつながっていたことが、「ヴェノナ」解読文によって判明したことだった。彼らは、そうと知りつつソ連情報機関と秘密の関係をもち、アメリカの国益をひどく損なう極秘情報をソ連に渡していたのである。アメリカ財務省におけるナンバー2の実力者で、連邦政府の中でも最も影響力のある官僚の一人であり、国際連合創立のときのアメリカ代表団にも参加していたハリー・デクスター・ホワイトが、どのようにすればアメリカの外交をねじまげられるかをKGBに助言していたこともわかってきた。
 また、フランクリン・ルーズベルトの信任厚い大統領補佐官だったラフリン・カリーは、ソ連のアメリカ人エージェントとして重要な地位にあったグレゴリー・シルバーマスターをFBIが調べ始めたとき、そのことをKGBに通報していた。このため、米政府内の大変有益なスパイ一団を指揮していたシルバーマスターは、捜査を逃れてスパイ活動を続けることができた。当時のアメリカの主要なインテリジェンス機関であったOSS(戦略事務局)で調査部長の地位についていたモーリス・ハルパリンは、数百ページものアメリカの秘密外交通信をKGBに渡していたのであった。
 アメリカ政府のすぐれた若手航空科学者だったウィリアム・パールは、アメリカのジェット・エンジンやジェット機についての極秘の設計試験結果をソ連に知らせており、彼の裏切りのおかげで、ソ連はジェット機開発でアメリカが技術的にリードしていた大きな格差を克服し、早期に追いつくことができた。朝鮮戦争で、米軍指導部は自分たちの空軍力なら戦闘空域で敵を制圧できると考えていたが、これは北朝鮮や共産中国の用いるソ連製航空機がアメリカのものにはとうてい太刀打ちできない、と考えていたからである。しかし、ソ連のミグ15ジェット戦闘機はアメリカのプロペラ機よりはるかに速く飛行できただけでなく、第一世代のアメリカのジェット機と比べても明らかに優っていたため、米空軍は大きな衝撃を受けた。その後、アメリカの最新ジェット機のF-86セイバーの開発を急ぐことででやっと、アメリカはミグ15の技術的能力に対抗することができた。アメリカ空軍はようやく優位を得たが、それはアメリカ航空機の設計よりも大部分、米軍パイロットの技量によるものであった。

【『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア:中西輝政監訳、山添博史〈やまぞえ・ひろし〉、佐々木太郎、金自成〈キム・ジャソン〉訳(PHP研究所、2010年/扶桑社、2019年)以下同】

 ほぼ学術書である。中西輝政は自著で「ヴェノナ文書によってマッカーシズムが正しかったことが証明された」と言い切っているが、私にその確信はない。ただ明らかなのは米国首脳部にまでKGB(カーゲーベー)の手が及んでいた事実である。はたまたルーズヴェルト本人が左翼であったという説もある(『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ 「日米近現代史」から戦争と革命の20世紀を総括する』馬渕睦夫、2015年)。

 日本の読者がこの本の中でとくに関心をもつのは、ソ連がアメリカの原爆開発「マンハッタン・プロジェクト」に多くのスパイを送り込んでいたため、アメリカの原爆開発の実態を非常によく知っていた、という部分だと思います。事実、1945年の7月にポツダムでトルーマン大統領はスターリンに会い、アメリカは非常に強力な新兵器をすぐに日本に対して使用することができる、と話しましたが、そのときスターリンには驚いた様子は全くありませんでした。おそらくスターリンは原爆について、トルーマンよりも早く、そしてより多くのことを知っていたのでしょう。(日本語版に寄せて)

 また、今日読み終えた『ひと目でわかる「GHQの日本人洗脳計画」の真実』(水間政憲、2015年)によれば、実は長崎に原爆は2発落とされていて、もう1発の不発弾はソ連に渡った可能性があるという。証拠として瀬島龍三元中佐が署名した「原子爆弾保管ノ件」という機密文書を掲載している(ロシア国防省中央公文書館所蔵)。

 冷戦前夜の第二次世界大戦は米ソのスパイが暗躍する時代であった。日本だとソ連の手先としてはリヒャルト・ゾルゲ尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉が知られる(いずれも死刑)。

 ひょっとすると帝国主義を葬ったのはコミンテルンの指示を受けた工作員の活躍によるところが大きいのかもしれない。彼らに下された使命は国家転覆を狙った破壊と混乱であった。

 マッカーシズムを否定的に篤かった書籍に陸井三郎著『ハリウッドとマッカーシズム』(1990年)がある。個人的に読み物としてはどちらもあまり評価できない。

 これだけだと「ヴェナノ文書」を理解することはできないと思われるので動画と関連書を紹介する。








憲法9条に埋葬された日本人の誇り/『國破れて マッカーサー』西鋭夫

2015-09-20

60年安保闘争~樺美智子と右翼とヤクザ/『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年
『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘:2012年
『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄

 ・反日教育のきっかけとなった天安門事件
 ・60年安保~樺美智子と右翼とヤクザ

 この安保闘争を契機にソ連共産党も中国共産党もともに、この日本に革命を起こそうとした。当時、私も60年安保闘争に参加して、「これで日本もいよいよ革命だ」と思いました。毎日、毎日、国会議事堂の前に何十万という人が集まるのですから。当時、渋谷区南平台に岸信介首相の家があって、その岸さんの家まで、毎日渋谷を通って南平台までデモ、そしてアメリカ大使館に対してもデモです。
 あの当時の多くの国民はみんな安保反対だったのだけれども、しかし、よくよく考えてみると、前の日米安保条約というのは、サンフランシスコ講和条約調印のとき、吉田首相がただ一人、密室で調印した不平等条約でしたから、岸さんが変えようとしたのは無理もないのです。
 その条約では、アメリカには日本を守る義務がない。要するに、ただ「占領中の現状のまま米軍の基地を日本に置く」ということを約束した条約なのですから。そこで岸さんは、「これじゃ、いかん」というので、「日本を米軍が守る」ということを意味する条文を入れたわけです。だからこれは、本当は日本にとってはいい改定だったのです。反対する理由はない。
 では、当時なぜああいう反対運動になったのかというと、やはり反米感情です。あのころ一番若い、学生世代が、戦争中の体験をした最後の世代です。
 その上の世代で戦争に実際に参加した人たちは、戦争の悲惨さというのを身近に考えているものだから、安保条約が戦争につながるということを信じていたかもしれない。一番若い世代の学生は、もう単純な反米です。誰も安保条約そのものを読んではいないのですから。しかし、だからこそ、あれだけ盛り上がったのです。
 岸信介さんは、東条内閣の商工大臣をやったり、満州でいろいろ活動したりしていましたが、物凄い秀才でした。ちょうど我妻栄〈わがつま・さかえ/1897-1973〉という、東大の法学部の民法の大先生がいたのですが、私などもその最後に習った組ですけど、その我妻栄先生が言っていました。「岸君というのは物凄く頭がいいんだ。一高の時代には岸君は何も勉強しないで、義太夫とか歌舞伎とか、そんなものに凝っていた。私はずっと勉強ばかりして、やっと岸君と並んだ」と。60年安保のころの世論では、岸さんがどういう人かということをいっさい考えないで、単に、東条内閣の閣僚だった、戦争犯罪人だというのが先に立つものだから、大変だったのです。

【『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘(ベストセラーズ、2013年)以下同】

「あの当時、日米安保条約の条文なんか誰も読んでいなかった」とは当時、全学連の最高幹部で安保闘争を指導した西部邁〈にしべ・すすむ〉の発言である。大衆は往々にして愚かである。部分情報に基づいて感情的な反応をしがちだ。政治がエリートを必要とする理由もここにある。

樺美智子の死因と報道――樺美智子の遺体は慶応病院法医学教室で解剖され、「内臓器圧迫による出血のための急死。致命傷となる外傷はない」という結果が出た。ところが、解剖に立ち会った社会党参議院議員と代々木病院副院長は「扼殺の疑いが強い」と異なる発表をした。さらに社会党弾圧対策委員会は殺人罪で告発。「樺美智子さんは警棒で殴られたうえ、踏まれて死亡したのではないか」という報道も加勢した。しかし後日、東京地検は現場写真や参加者の証言などからその説を否定している。

60年安保闘争

 このページでは60年安保闘争の全容が簡明に描かれている。反米感情が高まるきっかけとなった「ジラード事件」というのも初めて知った。

 この樺美智子〈かんば・みちこ〉さんが亡くなった6月15日、私もあの南通用門にいました。60年安保の時代はまだ警察力が弱かった。デモ隊が国会の中へなだれ込む。国会内には、機動隊ができる前ですから、防護服もない警察官が並んでいた。デモ隊が警察官に石を投げるものだから警察官に当たる。血を流した警察官がばたばた倒れるわけです。
 それで、そのときに岸さんの周辺の人たちがいろいろ考えて、これはもう警察だけでは駄目だ。一方では自衛隊に治安出動を命じようとするのだけど、これもまた、当時の防衛庁長官などが反対してできなかったのです。そこで一策を講じて、当時の児玉誉士夫〈こだま・よしお/1911-1984〉に「全国の親分衆をみんな集めろ」と命じた。それで、親分たちが集まって、ヤクザを左翼の防波堤にしようとした。児玉が本当の右翼かどうかは知らないけれども、このときから右翼とヤクザがつながることになったのです。当時は、それほど警察力が脆弱(ぜいじゃく)でした。次の70年安保になってくると、警察にも機動隊ができ、装備が充実し、もうなんということなくなってきたのですが。


 樺美智子が死んだ日(6月15日)のストには全国で580万人もの人々が参加した。「6月15日と18日には、岸から自衛隊の治安出動を打診された防衛庁長官・赤城宗徳が拒否。安保反対のデモが続く中、一時は首相官邸で実弟の佐藤栄作と死を覚悟する所まで追いつめられたが、6月18日深夜、条約の自然成立」(Wikipedia)。アイゼンハワー大統領の訪日が中止。岸首相が辞意を表明。7月14日、岸は暴漢に刺され重傷を負う。

 古い日米安保は吉田ドクトリンに基づき、国防を米軍に丸投げし、経済復興を優先したものだった。日本経済はアメリカが戦争を行うたびに発展してきた。二度のオイルショックも省エネ技術で乗り越えた。だがバブル景気を迎えても尚、自国の防衛と真剣に取り組むことはなかった。これが安全保障のアウトソーシングかというと決してそうではない。米軍が動くには議会の承認が必要なのだ。アメリカの政治家は自国民が日本のために血を流すことを是とするだろうか? 防衛費が削減されている事実を踏まえれば困難極まりない。

 安保関連法案が成立した。紛糾する国会を見て落胆の度合いが深まった。この国では「安全保障を論じること」自体が忌み嫌われるのだ。チベット・ウイグルやパレスチナを他人事としか考えていないのだろう。国家には戦争をする権利があり、国民の生命と財産を守る義務がある。戦後教育によって国家観を奪われた体たらくがこのざまだ。

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敵前逃亡した東大全共闘/『彼らが日本を滅ぼす』佐々淳行

2015-08-05

アメリカの病巣と化すCIA/『HOMELAND シーズン3』


『HOMELAND』はシーズン1の設定が秀逸で、ダミアン・ルイスの飄々とした演技が魅力的であった。しかしながら妻の浮気という陳腐な要素が盛り込まれることでドラマ性が薄れた。これは『ザ・ユニット 米軍極秘部隊』と同じ構図でアメリカドラマの芸のなさを示す。

 キャストの演技力にストーリーが追いついていない。ま、俳優の力だけで引っ張るドラマといってよい。シーズン3で登場するナザニン・ボニアディがとても可愛らしい。


 キャリーは双極性障害、ブロディは洗脳、ソール(マンディ・パティンキン)は妻と別居など、設定自体が病んでいるのだが、最も病んでいるのはCIAの体質そのもので、インテリジェンスが極まるところには不毛な不信感しか生まれないことを見事に示す。

 まったくもって救いのないドラマである。ブロディが洗脳されたのもインテリジェンスのためであり、アルカイダからテロを命じられ、CIAからは暗殺を指示されたのもインテリジェンスのためであった。お互いが最初から手の内を明かしてしまえばスパイ活動のコストは不要となる。

 プロテスタント原理主義に基づく正義を標榜するアメリカが実は不安神経症なのだ。『24 -TWENTY FOUR-』ではまだ正義が辛うじて担保されていた。ジャック・バウアーは法や規則を無視することで正義を際立たせた。『HOMELAND』にはそれがない。ソールやダールといったCIAの官僚が自らの手を汚すことなくキャリーやブロディを酷使する。

 このドラマは9.11後のアメリカが転落する様相の象徴であろう。結果的には「テロリズムと闘う」ことでアメリカは滅びるのだ。

【追記】キャリーがブロディをファーストネームで呼ばないのはなぜなのだろう?

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