2018-11-12

三橋貴明氏に教わる「お金とは何か?」



日本人が本当は知らないお金の話 (Knock‐the‐knowing)
三橋 貴明
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無意識に届かぬ言葉/『精神のあとをたずねて』竹山道雄


『昭和の精神史』竹山道雄
『竹山道雄と昭和の時代』平川祐弘
『見て,感じて,考える』竹山道雄
『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
『剣と十字架 ドイツの旅より』竹山道雄
『ビルマの竪琴』竹山道雄
『竹山道雄評論集 乱世の中から』竹山道雄
『歴史的意識について』竹山道雄
『主役としての近代 竹山道雄セレクションIV』竹山道雄:平川祐弘

 ・無意識に届かぬ言葉

『時流に反して』竹山道雄
『みじかい命』竹山道雄

竹山道雄著作リスト

     目 次

 あしおと
 思い出
 抵抗と妥協
 誘われたがっている女
「ビルマの竪琴」ができるまで
 二十歳のエチュード
 文章と言葉
 砧
 ベナレスのほとり
 印度の仏跡をたずねて

  あとがき



 どういうわけか、われわれの記憶の中では、生活の中のふとした瑣末(さまつ)なことが静かな印象になって刻みこまれて、それが年を経ると共にますますはっきりとしてきます。それが生涯のあちらこちらに散らばって、モザイクの石のように浮きだしています。あるとき見た、とくに何ということのない風景のたたずまい、人が立っている様子、話している相手の顔にちらとさした翳(かげ)、「ああ、この人は自分を愛している」とか「裏切っている」とか思いながらそのままに消えてしまう感情のもつれ……。こんなものがわれわれの心の底に沈んで巣くっているのですが、それを他人につたえようはありません。他人に話すことができるのは、もっとまとまった筋のたった事件ですが、それは理屈をまぜて整理し構成したものです。そういうものでないと、われわれは言いたいことも言えないのです。

【『精神のあとをたずねて』竹山道雄(実業之日本社、1955年)】

「無意識」の一言をかくも豊かに綴る文学性がしなやかな動きで心に迫ってくる。難しい言葉は一つもない。押しつけや説得も見当たらない。ただ淡々と心の中に流れる川を見つめているような文章である。

 言葉は無意識領域に届かないのだ。ここに近代合理性の陥穽(かんせい)がある。人間には「理窟ではわかるが心がそれを認めない」といった情況が珍しくない。特に我々日本人は理窟を軽んじて事実や現状に引っ張られる傾向が強い。形而上学(哲学)が発達しなかったのもそのためだろう。大人が若者に対して「理窟を言うな」と叱ることが昔はよくあった。

「構成」というキーワードが光を放っている。睡眠中に見る夢はことごとく断片情報に過ぎないが、これらを目が覚めてから構成して一つの物語を形成する。ところが竹山の指摘は我々の日常や人生全般が「印象に基づいた構成である」ことを示すものだ。記憶は歪み、自分を偽る。感情は細部に宿り、一つの事実が人の数だけ異なるストーリーを生んでゆくのだ。

 ここで私の持論が頭をもたげる。「悟りを言葉にすることは可能だろうか?」と。「それは理屈をまぜて整理し構成したものです」――教義もまた。だとすれば宗教という宗教がテキストに縛られている姿がいささか滑稽(こっけい)に見えてくる。

 言葉は人類が理解し合うための道具であろう。道具を真理と位置づけて理解し合うことを忘れれば言葉は人々を分断する方向へと走り出すに違いない。宗派性・党派性に基づく言葉を見よ。彼らは相手を貶め、支持者を奪い合うことしか考えていない。かくも言葉は無残になり得る。

精神のあとをたずねて (1955年)
竹山 道雄
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2018-11-10

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2018-11-09

翻訳と解釈/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー


 ・アメリカ食肉業界の恐るべき実態
 ・翻訳と解釈

『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

必読書リスト その二

 一世代前のアメリカでは、食費の4分の3が、家庭で用意される食事にあてられていた。今日では、食費の半分にあたる額が、外食店に――それも、主としてファストフード店に――支払われている。
 マクドナルド社は、現在アメリカ国内の新規雇用の90パーセントを担うサービス業の、大きな象徴となっている。1968年に、同社の店舗数は約1000だった。現在、世界じゅうに約2万8000店舗あり、毎年新に約2000店が開店している。推計によると、アメリカの労働者の8人にひとりが、いずれかの時期にマクドナルドで働いたことになる。同社が毎年新規に雇う約100万人という数は、アメリカの公営・私営を合わせたどんな組織の新規雇用数よりも多い。マクドナルドはわが国最大の牛肉、豚肉、じゃがいも購入者であり、2番めに大きい鶏肉購入者でもある。また、世界一多くの店舗用不動産を所有している。実のところ、利益の大半を、食品の販売からではなく家賃収入から得ているのだ。マクドナルドは、ほかのどんなブランドよりも多額の広告宣伝負を投じている。その結果、コカコーラの座を奪って、世界一有名なブランドになった。同社はアメリカのどんな私企業よりも、数多くの遊び場(プレイランド)を運営している。そして、わが国有数の玩具販売業者でもある。アメリカの小学生を対象に調査したところ、じつに96パーセントが、ロナルド・マクドナルド(日本では、ドナルド・マクドナルド)を知っていた。これよりも知名度の高い架空の人物は、サンタクロースぐらいのものだろう。マクドナルが今日のわれわれの生活に及ぼす影響の大きさは、誇張したくてもできないほどだ。黄金のアーチは、今やキリスト教の十字架よりも広く知られている。

【『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー:楡井浩一〈にれい・こういち〉訳(草思社、2001年/草思社文庫、2013年)】

 少し前にジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』のあとがきで東江一紀〈あがりえ・かずき/ノンフィクションでは楡井浩一名義〉の逝去を知った。私は大体30~50冊ほどの本を併読するため、つまらない本が続くと楡井浩一、阪本芳久、水谷淳、林大〈はやし・まさる〉、太田直子らの翻訳本を探す羽目になる。

 翻訳は解釈であり、解釈は翻訳である。

読む=情報処理/『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随訳
読書は「世の中を読む」行為/『社会認識の歩み』内田義彦

 エリック・シュローサーがアメリカ社会を読み解き、シュローサーの文章を楡井浩一が翻訳する。それを読者が解釈し新たな言葉を紡いでゆく。仏教伝播(でんぱ)の歴史で時折天才が登場するが彼らが行ったのは翻訳ではなく翻案であった。独創性が加えられているのだ。

 わざわざショウペンハウエルや内田義彦を引っ張り出したわけだが、二つのテキストを紹介している間に何を書こうとしていたのか忘れてしまった。ま、よくあることだ。

 本書のようなノンフィクションを読むと「やはり白人には敵(かな)わんな」との思いを強くする。構造をダイナミックに把握する能力が抜きん出ているのだ。仕組みや仕掛けといった発想が豊かなのは、全知全能の神がこの世界を創造したことと関係があるのかもしれぬ。

 マクドナルドが不動産事業で儲けている事実を明らかにしたのはロバート・キヨサキである(『金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』)。つまりハンバーガー屋に見せかけた不動産屋ってわけだ。ボロい商売だ。購入した不動産の支払いをフランチャイズオーナーや客に支払わせているのだから。

 これをあこぎな真似だと思う多くの日本人は金持ちになることができない。「別にいいよ。カネよりも大切なものがあるから」と思うあなたは正しい。江戸時代の日本はヨーロッパのような階級社会ではなかったが身分は存在した。私はこの年になって思うのだが士農工商という序列は案外健全ではないだろうか。ビジネスなどと抜かしても所詮商人である。商人風情(←差別発言)がでかい顔をしているところに資本主義の過ちがあるのだ。現代だと武士に該当するのは官僚であるが彼らは一身の栄誉栄達しか考えていないので武士道にもとる。残された道としては速やかに憲法を改正して、軍人の身分を確立し、新たな武士階級として育成することだ。日本人は日本人らしく情緒とモラルで勝負すればよい。

2018-11-08

読書は「世の中を読む」行為/『社会認識の歩み』内田義彦


 ・学問は目的であっても手段であってもならない
 ・読書は「世の中を読む」行為

『読書について』ショウペンハウエル:斎藤忍随訳

 本が面白く読めたというのは、本を読んだのではなく、本で世の中が、世の中を見る自分が読めたということです。逆にいえば、世の中を読むという操作のなかで始めて本は読めるわけですね。

【『社会認識の歩み』内田義彦(岩波新書、1971年)】

 実に含蓄深い一言である。「目が変わった」といってもよい。やはり、「知は力」(フランシス・ベーコン)なのだ。人は学び続ける限り若さを保つことができる。

 世の中を単なる政治や経済の機構と勘違いしてしまえば人間を見る瞳が曇ってゆく。一番大事なのは「人の心」を読み、察することだ。その人の痛みや悲しさを自分の心にありありと浮かべることだ。読むことは感じることにつながる。

 私はブッダやクリシュナムルティを読んできたが、読めるかどうかは全くの別問題である。



翻訳と解釈/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
孫子の兵法 その二/『湖底の城 呉越春秋』宮城谷昌光