2019-07-13

雨の牧馬峠


牧馬峠に挨拶
牧馬峠(道志みち側)を制覇
地獄の牧馬峠(相模湖側)

 ・雨の牧馬峠

 土山峠~宮ヶ瀬湖~道志みち~県道76号~雨の牧馬峠。二度目だが苦しさは相変わらずだ。ほんの少しも楽になっていない。そもそも幾度となく登っている土山峠すら苦しいのだ。自動車の多い道路が厭(いや)なので国道412号から牧馬(まきめ)峠を登るのは避けた。で、少しばかり距離を伸ばして県道76号からアクセスすれば主要な登坂は行える。


【湯口沢橋から荒井沢を見下ろす】

 曇りの天気予報がまんまと外れた。小雨だったのでそのまま進む。


【道志ダムの下流側】


【道志ダムの上流側は霞(かす)んでいた】



【道志ダムの少し先にあった小さな滝】

 道志村(どうしむら)は山梨県だがここはギリギリ神奈川県である。


 素晴らしい県道だ。私の誕生日を記念して作られたのだろうか? きっとそうに違いない。県道76号は緩やかなアップダウンが続き、温厚で優しい私の性格を示しているかのようであった。藤野南小学校の丁字路を右折すれば牧馬峠に出る。ゴルフ場付近の道が少しわかりにくいが、とにかくどんどん左側に進めばよい。

 雨が強くなってきた。前輪の弾く水しぶきが顔に当たる。ペダルを強く踏みすぎると後輪がスリップする。そして既に見慣れた感のある真空コンクリートが現れた。「親の仇!」と声に出して輪っかを踏みつける。雨が煙(けぶ)る。ハンドルを握る手が時々滑る。ダンシングを休める唯一のカーブに差し掛かった時少し意識が薄れた。後ろから来たクルマが私を追い越した。そして停車した。クルマの脇にギフチョウの看板が見えた。親の仇は討(う)った。

 降りしきる雨が止むことはなかった。帰りも通ったことのない道を走った。今日の走行距離は91km。

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2019-07-10

レッドからグリーンへ/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男


『人類史のなかの定住革命』西田正規
『砂糖の世界史』川北稔
『砂の文明・石の文明・泥の文明』松本健一

 ・動物文明と植物文明という世界史の構図
 ・黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった
 ・中東が砂漠になった理由
 ・レッドからグリーンへ

『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博
『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲
『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一、小原克博
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之

必読書リスト その四

石●「レッドからグリーンへ」というのが、最近の皮肉をこめたスローガンとなっているぐらいです。つまりマルキシズムの居城を失った思想家たちの一部が、環境に生きる道を見出したわけです。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之〈いし・ひろゆき〉、安田喜憲〈やすだ・よしのり〉、湯浅赳男〈ゆあさ・たけお〉(洋泉社新書y、2001年/新版、2013年)】

 第二次世界大戦中におけるマルキストの浸透については以下の書評に書いた。

大衆運動という接点/『折伏 創価学会の思想と行動』鶴見俊輔、森秀人、柳田邦夫、しまねきよし

 ソビエトスパイの暗号解読文書「ヴェノナ」(Wikipedia/『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア)は公開されたものの歴史を修正するところにまでは至っていないのが現状だ。

 学生運動や安保闘争が高まる昭和30年代、左翼は公害病にもコミットしていた。石牟礼道子〈いしむれ・みちこ〉の言葉はあまりにも有名だ。「極端な言い方かもしれませんが、水俣を体験することによって、私たちがいままで知っていた宗教はすべて滅びたという感じを受けました」(水俣病事件と「もうひとつのこの世」:萩原修子)。

 左翼勢力は更に空港(三里塚闘争)やダム建設の反対運動にも関わる。

 公害問題は環境意識への芽生えではあったが、企業vs.被害者というレベルの意識に留(とど)まっていた。1962年(昭和37年)にレイチェル・カーソンの『沈黙の春』が、そして1972年(昭和47年)にドネラ・H・メドウズの『成長の限界 ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』が刊行された。日本では1974年(昭和49年)から有吉佐和子が朝日新聞に『複合汚染』の連載を開始した。

 人々の概念が少しずつ変化する中でオゾン層破壊が明らかとなる(1974年)。1985年にオゾン層の保護のためのウィーン条約が採択され、日本も1988年に加わった。これが環境問題のハシリだろう。その後1990年代から家庭ゴミの分別が始まる(「環境問題の歴史」を参照した)。

 環境問題は左翼にとっては渡りに舟であった。「地球に優しい」という標語には誰一人逆らえない。「レッドからグリーンへ」運動表現を変えた赤組はその後、人権~性差解消~ポリティカル・コレクトネスと看板を掛け替える。

 この間、進歩的文化人は良心的勢力・リベラルと仮面を付け替えた(進歩的文化人については谷沢永一著『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』が詳しい)。



金儲けのための策略/『正義で地球は救えない』池田清彦、養老孟司

中東が砂漠になった理由/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男


『人類史のなかの定住革命』西田正規
『砂糖の世界史』川北稔
『砂の文明・石の文明・泥の文明』松本健一

 ・動物文明と植物文明という世界史の構図
 ・黒船ペリーが開国を迫ったのは捕鯨船の補給地を確保するためだった
 ・中東が砂漠になった理由
 ・レッドからグリーンへ

『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき』山極寿一、小原克博
『一神教の闇 アニミズムの復権』安田喜憲
『石田英一郎対談集 文化とヒューマニズム』石田英一郎
『人類の起源、宗教の誕生 ホモ・サピエンスの「信じる心」がうまれたとき』山極寿一、小原克博
『人類と感染症の歴史 未知なる恐怖を超えて』加藤茂孝
『感染症の世界史』石弘之

必読書リスト その四

石●結局イスラムは、ブタを捨ててヤギとヒツジに頼ったわけです。ヤギとヒツジは、ある意味でいちばん自然を破壊する家畜ですよ。イスラム文化の支配したところが砂漠化していったのは理解できます。アラビア半島から始まってインド亜大陸、中央アジア、北アフリカ、スペイン南部まで、イスラムの支配した地域はほとんど砂漠です。ヤギとヒツジのせいだといってもいい。

湯浅●根まで食べちゃうわけですからね。

安田●インドがなぜ肉食をやめたのかということは、いずれにしても21世紀の大きなテーマになる。いずれ人類はそんなに肉を食えない時代を迎えるはずです。インドの紀元前5世紀における肉食の放棄は、結局、放棄するしかなかったということかもしれません。

【『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之〈いし・ひろゆき〉、安田喜憲〈やすだ・よしのり〉、湯浅赳男〈ゆあさ・たけお〉(洋泉社新書y、2001年)/新版、2013年)以下同】

 するってえとヤギとヒツジこそは一神教の父というわけだな。ユダヤ教からキリスト教が生まれ、キリスト教からイスラム教が生まれた。この三つを総称してアブラハムの宗教という。

 一神教は砂漠の宗教(『離散するユダヤ人 イスラエルへの旅から』小岸昭)で、多神教は森の宗教と考えられている。砂漠に存在するのは砂と風だけだ。呆気(あっけ)なく死んでしまうことも多かったことだろう。人々は救いを求めて天を仰ぐ。これが「信仰」の謂(いわ)れだ(東洋は信心)。

「砂漠では、心を動かされる何もないので、人の思考は自然に天に向かう。そして唯一の神を崇拝する宗教が誕生したわけだ」(長谷川良、2015年)。

「砂漠の中では砂か風しかない。そういうものでは人間の無力さを克服できない。だからこそ、もう「絶対的なもの」を求めないと、砂漠風土ではやっていけないと。こうなると、もう強大な力を持った一つの神様しか選択できない。こういう心理状況が働いたと考えたほうが理解し易いんじゃないでしょうか。だから砂漠の神が一神教。自然の豊かなものがあるところでは多神教が普通になる。そんな風土が生み出したものでもあるんです」(安岡譽)。

 新約聖書ではイエスを「善き羊飼い」に、そして信徒を「迷える羊」に喩(たと)える。ま、どっちにしてもあんたたちは中東を砂漠化したわけだよ。

 彼らが希(こいねが)った天国は水が豊富で滴り落ちるような緑に溢れていたことだろう。そう。我々にとっては見慣れた風景だ。砂漠と比べれば日本はまさに天国といってよい。

 奴隷は家畜文化から生まれた。日本に奴隷制度はなかった(『日本人と「日本病」について』岸田秀、山本七平)。現代においても先進国が発展途上国の資源を搾取し、労働や兵役を国民に押しつける形でソフトな奴隷制は温存されている。

2019-07-09

馬渡大坂~半原越


 馬渡大坂(まわたりおおさか)から半原越(はんばらごえ)にアタック。本当は牧馬峠(まきめとうげ)までも行くつもりだったのだが思った以上にきつくて帰ってきた。行きは愛川の水道みち地図)から。


 急斜面を駆け下りると里山に囲まれた田んぼが広がる。長閑(のどか)で心休まる場所だ。

 馬渡大坂は大したことがなかった。ところが半原越まで行くとなると話が変わる。最初はナメてかかっていた。「半原越よ、スピンバイクで鍛えた私の足元にひざまずくがいい」くらいに思ってたんだよね。56歳になった私の前に半原越は傲然と立ち塞がった。


【半原越入口付近で】

 牧馬峠(相模湖側)に次ぐ苦しさであった。ペダルを踏みながら神仏に罰せられているような気分になってくる。ま、私としては70~80代で行うはずのリハビリを先んじて行っている自覚があるから苦しいのは望むところだ。

 空気が湿っぽくなってきたので帰ることに。途中で前々から気になっていた道を確認する。Googleマップには載っていない(「Googleマップが劣化した」不満の声が相次ぐ ゼンリンとの契約解除で日本地図データを自社製に変更か - ITmedia NEWS)のだが航空写真だとはっきりわかる。ズザ沢湧水の脇にある道だ。


 ゲートの向こうの林道は舗装されていなかった。



 いつものようにJA県央愛川荒茶工場前を滑るように走り抜ける。時速57kmだ。そのまま来た道を戻る。スピンバイクの効果は平地でわかった。驚くほど足が回る。登坂で発揮できないのはどうしたことか? 筋力ではなく心肺能力の問題なのだろうか?

 今月でロードバイクに乗り始めてからちょうど1年を迎える。ヤビツ峠に挑む前にもう少しトレーニングが必要だ。

 日野晃の本を読んで思ったのだが、「背中を丸める」とか「肩甲骨を開く」というのは「胸骨を下げる」意識にすると、かなり楽になる。