2021-11-07

メディカル・ジェノサイド


「人間が堕ちていく邪悪の形態に制限はありません」

股関節で地面をとらえる/『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴

 ・「すべての身体表現の源は、胴体にあり」
 ・股関節で地面をとらえる

『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編
『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史

身体革命

 私は「胴体の動きを磨き続ければ、60代で動きのピークを迎える」とつねづね言ってきた。これは理想論ではない。これまで私が出会った武道の名人たちには、その年齢で若い者たちを寄せつけない動きが確かにあった。胴体を使った動きは、意識して創り上げていくもので、さまざまな経験が蓄積されていく。中途半端に“ナマの体力”(磨いていないもともとの力)があると、胴体で動こうという意識が薄くなってしまうという面があるのだ。(中略)
 そして、胴体の動きの土台となるのが、「股関節で地面をとらえる」([股関節のとらえ])ことである。もちろん、これは私の感覚に基づいた造語だが、これは動く前の、「究極のニュートラル・ポジション」である。簡単に言ってしまえば、「股関節と脚の骨(大腿骨など)が正しい角度にある状態」となるのだが、“正しい角度”は万人にとって同じではない。これについては後で説明するが、立ったとき、座ったときにかかわらず、股関節でとらえることができれば、全身は解放され自由な動きが可能に楽になる。意識的に股関節でとらえられるかどうかは、レベルの高い動きかどうかを見分けるキーポイントであり、股関節でとらえた状態で胴体のトレーニングをすれば上達も早い。

【『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇(マガジンハウス、1998年/改訂版、2011年)】

 あれこれと運動を試行錯誤してゆく中で肩甲骨と骨盤の意識が芽生えてきた。日常生活でも「肩甲骨を動かす」ことと「骨盤を起こす」ことを心掛けている。最初に骨盤を意識したのは大転子ウォーキングを行った時である(みやすのんき)。 「60代で動きのピークを迎える」とは俄(にわか)には信じがたいが、甲野善紀が50代の時に「今までで一番体が動く」と語った言葉が蘇る。

「子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして或(くぎ)らず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)ふ。七十にして心の欲する所に従へども、矩(のり)を踰(こ)えず」(『論語』「為政」)の金言を思えば、60代は反発することがなくなるわけだ。つまり体内の力が環境と完全に適応した状態と言えようか。何かを倒す、何かを克服するといった状態から、水が流れるようなバランス感覚が開花するのだろう。スピードやパワーが衰えても、平衡感覚や判断力が研ぎ澄まされることは十分あり得る。

 で、股関節の位置である。

「股関節(こかんせつ)がどこにあるのか、知っていますか? 股(また)という言葉から、いわゆる股間のあたりを連想する人が多いようです。実際にはもう少し奥のお尻に近いあたりで、太ももの骨が骨盤と接する部分の関節が、股関節です」(股関節(こかんせつ)を鍛えてスムーズな歩きを | オムロン ヘルスケア)。


 想像以上に上である。長時間坐ったままの生活をしているため我々の股関節は眠ったままだ。まずは股関節の感覚を覚醒めさせる必要がある。今ここに心を砕いて、様々な運動を試しているところである。

「股関節で地面をとらえる」ためには、骨を積み木のように意識すればよい。筋肉を脱力して骨の位置を確認する。なかなか自覚することが難しいのだが、立ち上がってから踵を持ち上げてストンと落とすと股関節に衝撃が伝わる。坐位や臥位(がい)で股関節を動かすのも有効である。何でもそうだが最終的には自分なりに工夫するしかない。

 この箇所については読んだ時はそれほどピンと来なかった。それがどうだ。少しばかり意識が高まると全く別の意味が現れてくるのだ。まるで炙り出しだ。この味わい深さは経典のレベルに近い。

2021-11-05

骨盤の細分化/『天才・伊藤昇の「胴体力」 伊藤式胴体トレーニング入門』月刊「秘伝」編集部編


『究極の身体(からだ)』高岡英夫
『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス
『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄著、大野一雄舞踏研究所編
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『スーパーボディを読む ジョーダン、ウッズ、玉三郎の「胴体力」』伊藤昇
『気分爽快!身体革命 だれもが身体のプロフェッショナルになれる!』伊藤昇、飛龍会編
『棗田式 胴体トレーニング』棗田三奈子

 ・柔軟性よりも胴体力
 ・動きの「細分化」
 ・骨盤の細分化

『火の呼吸!』小山一夫、安田拡了構成
『身体構造力 日本人のからだと思考の関係論』伊東義晃
『ストレス、パニックを消す! 最強の呼吸法システマ・ブリージング』北川貴英
・『新正体法入門 一瞬でゆがみが取れる矯正の方程式』佐々木繁光監修、橋本馨
・『仙骨姿勢講座 仙骨の“コツ”はすべてに通ず』吉田始史
『誰にでもわかる操体法』稲田稔、加藤平八郎、舘秀典、細川雅美、渡邉勝久

身体革命
必読書リスト その二

【『天才・伊藤昇の「胴体力」 伊藤式胴体トレーニング入門』月刊「秘伝」編集部編(BABジャパン出版局、2006年/新装改訂版、2021年)】

 運動はしているがスポーツをしていないことにはたと気づいた。バドミントンはもう2~3年やっていない。本当は近接格闘術をやりたいのだが、58歳のオヤジを受け入れてくれる道場があるのかどうかわからない。

 何が問題かというと、運動は単調な動きの反復となりやすい。決まりきった単純な動きなのだ。極めて狭い範囲の動きは鍛えられるが、それが逆に体の自由度を失わせる場合がある。更に全身の筋肉の連係を考えるとバランスが悪くなりそうな気がする。

 ウォーキングも単調だ。本来であればインターバル速歩が望ましいが時計やタイマーを持つのが面倒だ。自転車に乗っていたこともあって身軽にする癖がついてしまった。私は外出する際、小銭も持たないように心掛けている。例えばサイドステップや後ろ向き歩行、立ち幅跳びやフロントランジ・バックランジ、腿上げなどを加えれば体全体が連動する。

 そこで伊藤式胴体トレーニングをしようと思いついた。で、「骨盤の細分化」をやってみた。全くできなかった。いやあ本当に泣きそうになったよ。まず前に出した足を伸ばすことができない。その状態で丸める・反るをやろうとしたところ胴体が全く動かないのだ。「あれ?」と思った。何度やっても首しか動かない。「われ泣きぬれて蟹とたはむる」という気分になった。一応探したが蟹はいなかった。

柔軟性よりも胴体力」だと都合のいいように解釈してきたが、やはり最低限の柔軟性は必要だ。しばらくの間、ストレッチを重点的に行うことを決意した。


 新装改訂版の動画を見つけたのだが実に参考になる。画像だけだと動きがつかみにくい。これをつまらない体操だと思ったら大間違いだ。天才伊藤が辿り着いたエッセンスが凝縮しているのだ。還暦までは肩甲骨と骨盤を集中的に行うつもりである。ここには指の届かない動脈が走っている。

野菜の栄養素が激減している/『その調理、9割の栄養捨ててます!』東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修


『火の賜物 ヒトは料理で進化した』リチャード・ランガム

 ・その食べ方、間違ってます
 ・野菜の栄養素が激減している

・『その調理、まだまだ9割の栄養捨ててます!』京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修
・『栄養まるごと10割レシピ!』料理・レシピ小田真規子、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
・『蘇るおいしい野菜 逆発想・永田農法の奇跡』飯田辰彦
・『永田農法・驚異の野菜づくり』飯田辰彦
・『永田農法でコンテナ野菜』永田照喜治監修
・『永田農法はじめてでもできるおいしい野菜づくり』諏訪雄一監修
『食は土にあり 永田農法の原点』永田照喜治
・『DVD だれでもつくれる永田野菜 全10枚

 野菜の栄養素が昔より激減しているって知っていましたか?
 実は、今の日本人の7割は野菜不足だといわれています。その上、例えば一般に販売されているほうれん草のビタミンCは、50年前に比べてほぼ1/3、鉄分は1/6以下にまで低下しています。ビタミンやミネラルが減少した原因のひとつには大量生産による土壌のミネラルが減っていることも影響しています。また野菜だけでなく、精製技術が上がったことで、米などの穀類の栄養も減っています。
 野菜不足にくわえ、食材の栄養価が下がりつつあるため、これは例えば、ほうれん草でいえば、50年前は1わでOKだったものを、昔と同じ栄養価を摂取するためには、今では3わ必要ということになるのです。
 食材の栄養価も変わっている今だからこそ、食材の栄養を逃が(ママ)さず、効率よく食べることが大きな意味を持ちます。

【『その調理、9割の栄養捨ててます!』東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修(世界文化社、2017年)】

 ちょっと調べてみた。


 読んでいると頭がおかしくなりそうな文章だ。「支離滅裂」という名の教科書があれば巻頭カラーページに載せてやりたい。「原因について、様々なことが言われています」。以下、引用。

 1. 測定の仕方が、今と昔とでは違うとか。
→測定の違いを示していない。

 2.旬がなくなり、旬でないとき、つまりその作物にとって適期でない時期に栽培されているから栄養価が上らないとか。
→適期と栄養価に因果関係があると断定している。

 3.品種改良によって、現在の品種は、病気に強いが、栄養価は低いとか。
→品種改良と栄養価の相関性が全品種に及ぶかどうかが判然としない。

 しかもこう書いておいて、「野菜の栄養価不足の原因は地力低下にある」と断言しておきながら、「堆肥を積極的に活用すれば、50年前のような栄養価の高い野菜ができるはずだったのですが、実際には、そう簡単にはいきませんでした」と敗北宣言をしている。

「ポイントは硝酸イオンを低く抑える技術」という一言だけが参考になった。農業が科学とは無縁なことがよく理解できた。

 硝酸イオンについても検索したのだが、これといった情報が見つからなかった。「硝酸イオンは、自然界のどこにでも存在する窒素化合物です」(なぜ、硝酸イオン(NO3-)を測るのでしょう?:商品について:栽培ガイド 『園芸ネット』本店 通販 engei.net)。「窒素施用量の削減」(野菜に含まれる硝酸イオンの問題 | 播州農機販売株式会社・兵庫農機販売株式会社 | 中古農機 クボタ 農業機械)、つまり施肥の問題らしい。

 私は農業についてはズブの素人である。少し前から永田農法を学んだ程度だ。「日本の野菜は水と肥料が多すぎる」と永田照喜治〈ながた・てるきち〉は指摘する。水とは雨のことだ。そこで永田農法ではビニールハウスやマルチシートで雨を防ぐ。無肥料栽培を提唱する岡本よりたかも水分量の多さを指摘している。

本物の野菜は腐らずに枯れる/『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか

「トマト、ジャガイモ、カボチャ、サツマイモ、唐辛子、トウモロコシ、ピーナッツ、パッションフルーツ、キノア、タバコなど、アンデス原産とされる植物は多く、現在世界で常食されている食物の約20%が、アンデス原産であるという」(日本人だけが知らない美食国ペルー 野菜・果物・魚の美味に圧倒される | マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」)。アンデスは南米大陸の西側を貫く山脈である。もちろん高地だ。長大な山脈ゆえ様々な気候条件が入り乱れているが、日本のような温暖湿潤気候でないのは確かだ。やはり原産地の環境を再現するのが望ましいだろう。

 本書には目から鱗が落ちる情報が満載で、さほど料理をしない人が読んでも蒙(もう)が啓(ひら)けることを私が請け合おう。焼いたり、茹(ゆ)でたりすることで増える栄養素もある。