2021-10-22

動脈指圧/『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎

 ・動脈指圧

身体革命
必読書リスト その二

 指圧で動脈を軽く刺激すると、それだけで血管を取り巻く血管拡張神経が反応して血流が促されます。結果、すみやかに全身にエネルギーチャーチが行われ、同時に痛みや疲れの「もと」が排除されます。
 一般的なマッサージは静脈やリンパ管を刺激するものが主流ですが、心臓から直接血液を運ぶ動脈を刺激する動脈指圧のほうが、末端の静脈や心臓とつながっていないリンパ管を刺激するより、はるかに効率がよく確実です。(中略)
 また、全身をめぐる動脈は、数本の大きな血管から次第に枝分かれしているので、大きな血管を刺激すれば、末端への血流も自然に促されます。

【『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝〈なみこし・たかし〉(さくら舎、2016年)以下同】

 指圧は「心臓に近い位置から末端へ向けて」行う。この「遠心性」に指圧の特徴がある。一般的なマッサージとは逆方向なので注意する必要がある。やや微妙なのはエビデンスが全く示されていないことだ。上記テキストには「刺激できる」としか書かれていない。

 私たちは、身体のどこかが痛かったり、しびれたりすると、自然にその部位に手を当てて、なでたり、おしたり、さすったりして自分で症状を緩和しようとします。いわゆる「手当て」という癒やしの方法を、本能的に知っているのです。
 その「手当て」が、中国では「あん摩」に、ヨーロッパでは「マッサージ」に、日本では「指圧」にと、治療技術として発展し、確立されていったのです。

 知らなかった。しかも、

 指圧の創始者は私の祖父の浪越徳治郎〈なみこし・とくじろう〉です(※大正14年、北海道室蘭市で指圧治療所を開業)。

 吃驚仰天である。「指圧の心は母心、押せば命の泉湧く」の浪越徳治郎だ。私の世代であればテレビでお馴染みの人物である。指圧が近代の産物であるとは驚きだ。病弱な母親の体をさする中で徳治郎は指圧の手技を編み出したという。泣かせるエピソードだ。徳治郎は新婚旅行で来日したマリリン・モンローが胃痙攣を起こした際に指圧を行ったことで名を馳せた。

 基本のおし方は、バイタルポイント1点につき3秒3回が目安です。ただし、おす時間や回数などは、バイタルポイントや症状によって変わります。
 力の強さは「快圧」です。いわゆる「イタ気持ちいい」と感じる状態では、力の入れすぎ。痛みを感じると、交感神経が緊張して血管が収縮してしまい、逆効果です。
 また、初めから圧をかけすぎないこと。おすときはゆっくりと息を吐きながら、柔らかくじんわりと指先に圧をかけ、深部までほぐしていくよう心がけてください。

 私は血管マッサージに指圧を盛り込んでいる。この辺りは好みというか、体の声に耳を傾けるのがいいだろう。

 何となく日本指圧専門学校のサイトを見て驚いた。近頃は驚くことが多くて驚いている。初年度の学費が182万円もするのだ。卒業には3年間を要するので総額は500万円近くなることだろう。国立大学の2倍、私立の理系大学と変わらぬ料金だ。たぶん鍼灸専門学校の学費に準じた考え方なのだろうが、完全なボッタクリだと思う。

 独立して飯を食っていけるという前提があったとしても適正価格とは考えにくい。母親思いの子供の手が生んだ技は金儲けの道具に出した模様である。学費を見る限り「いたわりと思いやりの心」は感じられない。しかも問題なのは、日本指圧専門学校が増えていない事実だ。徳治郎の子が理事長・校長を兼務しているのもどうかと思う。一族郎党が繁栄するための法人であれば株式会社と変わらない。

 指圧の効果が確かなものであったとしても、指圧師によって大きな差があることだろう。医師と同じである。否、それが技術であれば医師よりも大きな違いがあると考えられる。芸術やスポーツと一緒で素質やセンスが物を言う世界だ。既に老いつつある私は、幼い徳治郎に想いを馳せながら、自分なりに研究してゆくつもりである。

 本日で血管マッサージを開始して4日目であるが、昨日からブルブル体操~血管マッサージ~倒立という順番で行っている。目がよく見えるようになり、頭は冴え渡っているのだが、耳鳴りが酷い。好転反応だと思い込むようにしている。

2021-10-21

レシピ > オートミール


レシピ > オートミール

測り方計量カップを使ったオートミールの量の目安オートミール30gを米化オーバーナイトオーツオートミールを米化

オートミールの焼きおにぎりおかかとチーズのオートミールおにぎりオートミールと豆腐の梅みそ焼きおにぎりオートミールおにぎりレシピ6選

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「NO力」を高める/『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸
『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康

 ・「NO力」を高める

『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝
『別冊Newton 人体の取扱説明書』
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔

身体革命
必読書リスト その二

 両者(※血管年齢の老若)をよく調べてみると、心臓から全身に至る太い動脈(大動脈)はどちらも年齢相応で、【末端の動脈のしなやかさに大きな差がある】らしいのです。

【『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎〈いけたに・としろう〉(知的生きかた文庫、2014年)以下同】

 いい知らせだ。福音(ふくいん)と言ってよい。大動脈をマッサージすることは難しい。末端であればこそ触れることができる。たぶん凍傷と似たメカニズムなのだろう。人体は内蔵を守るために手足から死なせてゆく。手足がなくとも生きてゆけるが内蔵はそうはいかない。川を考えてもそうだ。氾濫(はんらん)し、堆積(たいせき)し、汚れるのは川下である。

 19世紀の内科医オスラーが【「人は血管とともに老いる」】の名言を残したように、血管の老化は全身の老化の根本的な原因となります。

 若いころは弾力があり、しなやかな血管も、年を重ねるほどに弾力が失われ、硬くなっていきます。残念ですが、これは、自然なことでどんな人も避けられません。
 おそろしいのは、血管が硬くなるだけでなく、血管の内側が盛り上がり、血液の通り道が狭くなって血流が滞るということです。
 これが、いわゆる【「動脈硬化」という血管の老化】です。

 体の内部は見えないからこそ怖い。意識もしにくい。老いは自ずと体に目を向けさせる。肩凝りや躓(つまづ)きに始まり、ビンの蓋を開けることができなくなり、プラスチック袋のノッチも切れなくなってくる。かつては持てた物が持てなくなり、歩けば息が切れ、やがては転んでも手が出なくなる。寝たきりの原因で多いのは転倒による骨折だ。体も心も使わなくなれば廃用症候群となる。

「血管内皮細胞」は血管にとって、とても大切なものです。血液が血管外に漏れ出さないようにしているだけでなく、血圧をコントロールしたり、血管についた傷の修復を促したりする機能も備わっています。
 それらを主に担っているのが「NO(エヌオー/一酸化窒素)です。
「NO」は必要に応じて「血管内皮細胞」から分泌され、【血流をよくしたり、しなやかで弾力のある血管を維持する】ために働いています。【動脈硬化や高血圧の予防】などにもひと役買っています。

 NOの機能がわかったのは1980年代だという。私も初耳だ。外部のNOは毒なのに、内部のNOが薬として働くのが不思議である。

「NO」のもっともわかりやすい働きは、【「動脈を拡張させて」「血液の流れをよくし」「血圧を安定させる」】ことです。

 文句なしだ。私の苗字にNOが含まれているので実に好ましい(笑)。

 確かに、リンパや静脈はもんだりマッサージしたりすることで流れがよくなりますが、動脈を拡張させて血液循環をよくするには、【「有酸素運動」による筋肉の収縮がより効果的】です。
 ウォーキングなどの「有酸素運動」は、動脈にとっては、やさしくもみほぐしてくれる【“リラックスマッサージ”】のようなものです。
 反対に、短時間で一気に筋肉に負荷をかける「無酸素運動」は力まかせにギュウギュウと押しつける“暴力的なマッサージ”のようなもので、血管にはむしろ負担がかかります。「NO力(エヌオーりょく)」を高めるにはおすすめできません。

 フム。これについては異論を挟みたい。血流だけで血管がきれいになるとは思えない。血管に付着したカルシウムなどを考えれば、やはり血管マッサージが最強だろう。池谷本人も最初はマッサージを否定しておきながら、結局「リラックスマッサージ」と書いているのがその証拠である。血管マッサージという浚渫(しゅんせつ)と有酸素運動による血流の組み合わせが私の血管強靭化政策である。

 歩くときにちょっとした工夫をすると、その効果をさらに高めることができます。
 まず、お腹と背中をくっつけるようなイメージで下腹をぐっと凹(へこ)ませます。そのまま背スジを伸ばした状態で歩きます。
 これは【「ドローイン」】というトレーニング法で、お腹を凹ますだけで、【体の奥にある筋肉(インナーマッスル)を鍛える】ことができます。
 インナーマッスルを鍛えると、【姿勢がよくなり、胃や腸など内蔵の機能を助ける】ことにもつながります。

 ドローインとは呼吸法である。ま、有り体に言ってしまえば腹式呼吸なのだが順逆のバージョンがある(ぽっこり下腹を撃退! 正しいドローインで腹横筋を鍛えよう | GetNavi web ゲットナビ)。池谷が説くドローインは考え方としてはプランクに近い。

 他にも簡単な体操が紹介されている。私の研究だと、ゆる体操や肩甲骨周りのストレッチが効果的だと思われる。

 今日で血管マッサージを行って3日目である。驚くほど目がよく見えるようになった。また今日からマッサージ後に倒立も行っている。健康の道は戒律に近いものがある。

 尚、図解版も出ているようだ。

 

2021-10-20

血管の長さは10万キロメートル、血液の量は5リットル/『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康


『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸

 ・血管の長さは10万キロメートル、血液の量は5リットル

『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎
『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝
『別冊Newton 人体の取扱説明書』
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔

身体革命
必読書リスト その二

 血管には動脈、毛細血管、および静脈などがありますが、その中でも特に「中くらいの太さの動脈(中動脈)」と「細い動脈(細動脈)」が大切です。この動脈が丈夫でしなやかであれば、酸素や栄養分を体の隅々まで運搬することができ、全身の細胞の機能を正常に保てます。これが生活習慣病を予防する秘訣です。(中略)
 これには私の恩師で岡山大学名誉教授・故妹尾左知丸〈せのお・さちまる〉先生が考案された「血管マッサージ」が効果的です。いつでも、どこでも、誰でも、お金をかけずに血管を丈夫にできる素晴らしい健康増進法であり、生活習慣病の予防にも効果的です。この本ではこれを「血管ほぐし健康法」として紹介します。

【『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康〈いのうえ・まさやす〉(角川SSコミュニケーションズ、2009年)以下同】

 妹尾の後に井上を読んだのは全くの偶然だった。知識がつながり、人がつながるところに読書の醍醐味(だいごみ)がある。

 人の血管は年齢とともに老化して硬くなっていきます。このため年をとると血圧が上昇し、脳卒中や心臓病などにかかる危険性が増していきます。
 病気だけではありません。血管の老化は容貌にまで影響します。同じ年齢でもずいぶん老けて見える人と若く見える人がいます。実は、その差は主に脳と血管のしなやかさの違いによることもわかっています。脳と血管の健康こそが元気と若さの秘訣なのです。

「脳のしなやかさ」の意味がわからぬが、血管のしなやかさは腑に落ちる。新品のゴムホースみたいなものだろう。あるいは自転車やクルマのタイヤなどのゴム製品を思えばわかりやすい。

 男女共に魅力というものは表情の豊かさに現れる、というのが私の持論である。表情筋が活発に動けば血行もよくなるはずだ。老け顔の原因は感情の乏しさにあるのだ。

 人間の血液は、心臓から動脈を経て全身組織の隅々にまで張り巡らされた毛細血管に到達します。そして、末梢組織の細胞から老廃物などを集めて静脈に合流し、心臓に返ってきます。この血管の長さを合計すると約10万キロメートルにもなります。人は体内に10万キロメートルもの血液の運河を持っているのです。
 人の血液は約5リットルあり、それが休むことなく全身の血管の中を流れ続けています。血液が体全体を巡るのに要する時間はわずか数十秒ですが、この流れは一生止まることはありません。
 心臓から肺に送られた血液は酸素を受け取って心臓に戻ります。食物中の栄養素は胃腸で分解されて糖やアミノ酸となり、消化管から吸収されて全身を駆け巡ります。
 心臓から全身に送られた血液は、末梢組織の細胞に酸素と栄養分を供給し、二酸化炭素や老廃物を受け取って心臓に戻ります。その二酸化炭素や老廃物は、呼気や便や尿として体外に排泄されます。
 このため、血管が障害されたり詰まったりすると、酸素や栄養素を組織や細胞に送ることができなくなり、老廃物も処理できなくなります。このようなことが起こればどんな組織や細胞も生きてはいけません。

 そして「心臓の鼓動が体中にメッセージを伝えている可能性もある」(『心臓は語る』南淵明宏)。人体の壮大な世界は地球規模で広がっている。血管マッサージは血管という河川の浚渫(しゅんせつ)工事だ。わずかな行為が10万キロメートルの血管に及ぶとすれば、これほど合理的なことはない。体を見つめることは自分を見つめることに通じる。世界を知ることも大切だが、自分を知ることはもっと大切だ。血管マッサージを始めて2日目であるが、実に調子がよい。

 尚、井上正康は精力的にコロナ関連書を出しているので併せて紹介しておく。



   

2021-10-19

血管マッサージには運動と同じ効果が/『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸


 ・血管マッサージには運動と同じ効果が

『いつでもどこでも血管ほぐし健康法 自分でできる簡単マッサージ』井上正康
『「血管を鍛える」と超健康になる! 血液の流れがよくなり細胞まで元気』池谷敏郎
『血管指圧で血流をよくし、身心の疲れをスッと消す! 秘伝!即効のセルフ動脈指圧術』浪越孝
『別冊Newton 人体の取扱説明書』
『実践「免疫革命」爪もみ療法 がん・アトピー・リウマチ・糖尿病も治る』福田稔

身体革命

 人がふつうに呼吸をして食事をしていれば、体内部の細胞はよく働くはずです。しかし運動せずにいると、動かしてない部分の筋肉は栄養と酸素をもらえず、やせ細り、老化が進行してしまいます。したがって、毎日よく運動して全身の組織にずい時血液を流すよう、努力しなければなりません。化  とはいっても、毎日よく運動するのは大変でしょう。代わりに、動脈の表面に分布する血管拡張神経に外から刺激を与えて興奮させてやれば、刺激された部分の動脈は拡張子、その部分の筋肉に血液が流れます。つまり「血管マッサージ」で運動を代用するのです。
 私はこの20年間、毎日欠かさず全身の血管マッサージを続けています。1日1回、毎朝たった15~20分の血管マッサージ。でもそのマッサージが驚くほどの効果を見せてくれたのです。マッサージのおかげでしわやしみが薄くなり、生活習慣病にもかかっていません。

【『血管マッサージ 病気にならない老化を防ぐ』妹尾左知丸〈せのお・さちまる〉(KKベストセラーズ、2006年)以下同】

 執筆時、妹尾は91歳である。翌年死去(田代裕)。遺著となった。血液循環に関する本は何冊か読んできたが、よもや血管を直接マッサージできるとは思わなかった。眼(まなこ)を開いてくれた一書である。

「運動を代用」と書かれているが、実は運動の効果が血流をよくすることにあると考えることもできよう。心拍数を上げ、筋肉を肥大させるのも血管に対する刺戟が目的なのだろう。だとすれば血管マッサージ=運動という図式が成り立つ。

 ゆる体操(高岡英夫)やストレッチも同様だ。あるいはヨガも。身体を見つめ直す行為はよりよき生へとつながり、よりよき生は血管に収まるのだ(断言)。

 動脈は骨に沿って深いところを走っているので、血管(動脈)マッサージは皮膚の上から動脈に沿って行います。
 マッサージは皮膚と骨、骨と筋肉を上下左右にずらして、動脈をゆさぶるように動かして刺激するのがコツ。

 上記血管本を読んできた今となっては、本書のイラストは大雑把すぎると思う。私が神経質なのかもしれないが、もっと具体的に動脈の位置を知りたい思いに駆られる。

 私は当年取って58歳になるが、病気は十二指腸潰瘍しか知らない。ついこの間、20日間以上休みなしで働き、2日間で27時間も寝てしまうほど健康である。昨日も11時間半寝た。寝ると私の意志は強靭になるのだ。誰も私の眠りを妨げることはできない(大袈裟)。

 ま、そんなわけで、要は効果を感じにくいということだ。実は今日から血管マッサージを始めた。私は健康オタクを自称しているので、その名に恥ずかしくない実践をしてゆくつもりである。

 2ヶ月ほど前に免許試験場の隣で献血をしようとしたところ、血圧が200を超えていて断念した。三度目の正直で呼吸法を駆使して180以下まで下げたのだが、下の数値が高くて駄目だった。8年ほど前に酒をやめたところ突然高血圧となった。加齢の影響もあるのだろう(動脈が細くなる)。血圧はいつでも下げる自信があった。実際に2週間ほどサバ缶タマネギを食べ続けて140台まで下げた。次はいよいよ血管拡張だ。

農業の大規模化と個別化/『稼げる!新農業ビジネスの始め方』山下弘幸


『[農業]商売の始め方・儲け方』大森森介

 ・農業の大規模化と個別化

 オランダが先進的な農業国であることは知られていますが、それもICTIoTを活用しているからです。
 オランダの国土面積(3万7000平方キロ)は日本の国土面積(37万7900平方キロ)のおよそ10分の1しかありませんが、平坦な土地が多いため、耕地面積は日本の445万ヘクタールに対して、オランダの184万ヘクタールとおよそ4分の1程度です。
 また、総人口に対する農業者人口とその比率は、日本が3.7%で約290万人、オランダが2.8%で約15万人ですが、農家1戸あたりの農地面積は日本が2.8ヘクタールに対して、オランダは25.9ヘクタールとなっています。
 そのオランダの農業輸出は866億ドルと、1位のアメリカの1449億ドルにつぐ規模です。日本の農業輸出33億ドルの26倍にも相当します(輸出額の2012年の数値)。また、農業就業人口1人あたりの生産額は日本の14倍とも言われています。
 オランダ農業の特徴は、自国に強みのある品目に集中している点にあります。
 たとえばトマト、パプリカ、キュウリなどの施設園芸に特化しているのです。この農業モデルは、オランダが通商国家として発展する過程で培われたものだとされています。17世紀初頭のヨーロッパでは、オランダで栽培されるチューリップがたいへんな人気となり、球根の値段が高騰したあげく、チューリップバブルが発生したほどです。

【『稼げる!新農業ビジネスの始め方』山下弘幸〈やました・ひろゆき〉(すばる舎、2018年)】

 飛ばし読みしようと思ったのだが全部読んでしまった。よく勉強していて目配りが利いている。ビジネス書としてもおすすめできる。

 元々オランダは小規模農家が多かったがEU統合を契機に大規模化が進んだという。日本の農業は規制まみれで大規模化を妨げている。本書では安倍首相が風穴を空けた事実が紹介されているが、それでもまだ道半ばである。

 食糧安全保障という側面から考えれば大規模化せざるを得ない。私は国民兵農化が望ましいと考えているので、一人ひとりが何らかの作物を作ることを目指すべきであると主張したい。

 日本という国家には昔から戦略がない。常に行きあたりばったりである。その最たるものが大東亜戦争だった。各兵士は世界最強であったが指揮官が愚劣すぎた。現在の政治家を見ても、「私は日本をこうする!」という演説を聞いたことがない。細かい政策に終始している。

 まずは憲法改正である。「憲法を改正して中国共産党から日本を守ります!」という政治家を我々は必要としているのだ。次に官僚機構を再編成し、縦割り行政を解消する。更に文科省とNHKから左翼を一掃する。続いて農業革命である。農地と農家の流動化を図る。補助金行政も見直し、まともなインセンティブにすることが望ましい。

 コンビニ各社も地産地消の一翼を担うべきだろう。

就農環境が整ってきた/『[農業]商売の始め方・儲け方』大森森介


 ・就農環境が整ってきた

『稼げる!!新農業ビジネスの始め方』山下弘幸

 そもそも農業は、就農する場所と作る作物を間違えず、まじめに働きさえすれば基本的には誰でも食べていける仕事だ。情報のアンテナを張り、知恵を絞れば「儲ける」ことだってできる。例えばイチゴのハウス栽培にしても、同じ地域で、同じ300坪の規模で600万円稼ぐ人と200万円しか稼げない人がいる。「農業は儲からない」というのは、儲けようとしないで、やるべき仕事を怠けていたり、なんの智恵(ママ)も使わないから儲からないのだ。
 確かに農業だけで食べていくことは簡単なことではないが、いまの農業は、本気で農業をやりたいという人には有利な環境が整ってきているのは事実だ。
 第一に、都道府県ごとに設置された新規就農相談センターをはじめ就農相談窓口が全国的に整備された。第二に、都道府県や市町村ごとに、資金の貸付や住宅の斡旋などの就農支援制度を用意している自治体が増えてきた。そして第三に、新規就農者の大きな壁であった農地に関して、以前厳しい規制はあるものの、ひと昔前よりも取得しやすくなっているということだ。

【『[農業]商売の始め方・儲け方』大森森介〈おおもり・しんすけ〉(ぱる出版、2008年)以下同】

 農業に興味がある。生業(なりわい)にしたいというよりも、作物が成長する様に興味があるのだ。植える~育てる~食べるという当たり前のサイクルを実践することで人類の足跡を辿ることができる。資本主義は便利であるが大切な行為を切り捨ててしまう。私が大根を買う時、太陽の光や肥料に思いを馳せることはない。

 元はと言えば観葉植物の栽培に端を発する。どんどん増えてゆくサンセベリアを見て、「これを食べることができたらいいな」と思うのは自然の流れであった。そこでグラパラリーフを手に入れた。肥料が強すぎたせいか徒長してしまった。まだ食べていないのだが、あまり腹の足しにはならないような気がする。

 新規就農者の多くが挑戦したいと思うのが有機農業だ。実際に、新規就農相談センターの窓口に相談にやって来る就農希望者でも「有機農業をやりたい」という人は多いようだ。

 それとなく私の興味に引っ掛かる書物を読んできたが、ピタッと収まったのが永田農法であった。関連書を5~6冊読み、DVDセットも購入した。永田農法からすれば有機農業は邪道である。人間の勝手な思い込みで野菜の環境を整えるよりも、野菜の声に耳を傾けるのが正しい。野菜の生命力を十全に発揮させる永田農法は人の教育についても考えさせられる。

 現在の農業を取り巻く状況がよく理解できる一冊で、入り口としてはおすすめできる。

2021-10-18

後藤健二氏殺害の真相/『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘


『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘 2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘 2013年
『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘 2014年

 ・アメリカの軍事予算削減を補う目的で平和安全法制が制定された
 ・戦死の法律的定義
 ・後藤健二氏殺害の真相

 今度の後藤(健二)さんの殺害をめぐって最大の謎はそこなのです。なぜ、ヨルダン政府は、1月27日に、すでに1月3日に殺されていたパイロットの釈放を取り引きの条件にしたのか。
 それを弁明して、「我々も誰かが殺されていたことは把握していたが、それがパイロットであるという確証は得ていなかった」とヨルダン政府は言ったのですが、この弁明はあまり説得力がない。いまの偵察衛星の精度から言えば、顔かたちまでみんなわかるはずです。
 それから、もうひとつ。このパイロットの父親は、昔からヨルダン王国と関係が深かったある遊牧民族の族長なのです。遊牧民というのは、昔から聴覚とか視覚とかがものすごく発達しています。肉眼では見えないような砂漠の遥か彼方にわずかな砂煙がちょっと立っただけで、敵が来るとわかる。そうでないと生きていけないのです。それと部族間の情報は、ものすごく早く回る。ヨルダンとイラクの距離はそんなにない。当然、この父親は部族の情報網を通じて、息子は殺されたことを知っていたはずです。この父親の元へ何度もヨルダン政府の人間が行っている。ヨルダン政府もすべて知っていたはずです。にもかかわらず、なぜすでに死んだ者の釈放を条件に挙げたのか。
 無理難題を出して交換できないようにしたわけです。後藤さんを釈放させないようにさせたのです。そこに英国の情報機関の介在が疑われる。かねて、英国は、第2次世界大戦のとき、1941年の12月8日に真珠湾攻撃があり、その二日後に、マレー沖海戦があった。この海戦で、日本海軍の航空隊によって、英国のロイヤル・ネーヴィーが誇る作戦行動中の戦艦プリンス・オブ・ウェールズ、重巡洋艦レパルスが撃沈された。真珠湾は泊まっている艦めがけての攻撃です。こちらは反撃もする作戦行動中の戦艦です。それを日本の海軍の、ベトナムから飛んで行った航空隊が、撃沈したのです。
 このニュースは日本でも大きく取り上げられたのですが、ヨーロッパ、とくに中東にものすごいショックを与えたのです。これが、英国の歴史家も書いていますが、中東の歴史を替えた。このことに刺激されて、当時英国の信託統治下にあったイスラエルのエルサレムで、いまでも現存している最高級のホテル、キング・デイヴィッド・ホテルに、当時の英国政府の代表部と、パレスチナ駐在の英国軍の司令部があったのですが、そこへ、イスラエルの秘密機関の命令で、そこのコックがホテルの地下に爆弾を仕掛けて、爆破させてしまった。それで、英国はほうほうの体でイスラエルから逃げることになった。それがイスラエルの独立につながっていったのです。
 当時、英国は世界最強の国だった。英国の海軍は七つの海を支配していた。こんな強い英国に抵抗するなどということは、当時ユダヤ人にも、もちろんアラブ人にも考えられなかったことなのです。
 ところが、イエロー・モンキーと呼ばれた日本人がやってしまった。だから、これは世界史的に見ても大変なことだったのです。
 先ほどから何度も言っているように、アラブ人を2級市民として扱い、くそみそに言っている英国を、同じアジア人がやっつけてくれた。本当にみんな喜んじゃったのです。
 以後、アラブの人たちは親日派になった。特に知識人がそうです。
 しかし、逆に、英国にとっては頭に来ることだった。当然ですね。結果的に、日本によって、英国は中東から放り出されたということになるわけですから。
 したがって、英国にとっては、もう二度と再び、中東に日本の進出させるのは御免蒙(こうむ)るということです。

 ところが、昨年12月に安倍さんがイスラエルに行って演説しました。「イスラム国」に抵抗する中東の国々に日本は援助を惜しまない、と演説したのです。そして、後藤さん救出のための本部をヨルダンのアンマンに置いた。本来、これは民間人の問題だったのだから、外務省の領事部あたりでこそこそやればいいものを、わざわざ副大臣を本部長としてアンマンに駐在させて、救出活動を大々的に宣伝した。
 しかし、そのときに英国は、これを逆用して、日本人の中に「反イスラム」の空気を醸成しようと考えたはずです。要するに、イスラムを日本人の敵にさせよう。世界の情報機関というのはこういうことを考えるのです。日本が「親イスラム」では困るのです。(中略)

 それはその後の展開を見ればわかる。後藤さん、湯川遥菜さんが殺されてしまって、日本人はみんな「『イスラム国』はなんということをしてくれたんだ」となった。
 そして、日本の国民が「反アラブ」「反イスラム」なんてことになってくると、向こうもますますもって「反日」となっていく。そして、その流れの中で、2020年の東京オリンピックが行われることになると、日本を標的にしたテロが怖い。
 後藤さん殺害のときに「イスラム国」は「これから、日本および日本人をテロの標的にする」と宣言しました。だから、東京オリンピックでの「イスラム国」によるテロの可能性も排除できない。本来、その可能性は限りなくゼロに近かったのに、です。
 そういうことをイギリスの情報機関はやった可能性があるのです。
 しかし、あの人たちはものすごく巧い。この事件の直前に、初めてロンドンで、日本の防衛大臣、外務大臣、英国の国防大臣、外務大臣の「2+2」の会談を行ったのです。
 そして、そのときに、お互いに安全保障の問題について意見を交換したのです。まさにこの時期だから、「イスラム国」の問題について、ロンドンのほうが情報が多いというので、情報の共有をもちかけたはずです。そのとき、英国側は日本は何も知らないということを確信したのですね。だからできたのです。いま言ったような形で騙(だま)せた。日本の人はそんなことは夢にも思わない。
 また、その後、追い打ちをかけるように、イギリスのプリンス、ウィリアムが日本の東北に来ました。イギリスはそんなに悪い国だと、私みたいな人間が言っても、いやいやそんなことはない、わざわざプリンスが来日して、東北のお見舞いをしてくれた、ああイギリスはいい国だ、ということになるでしょう。こんな私みたいな見立てをする人間は、誰もないですよ。
 しかし、インテリジェンスの世界というのはそんなものなのです。よその国のことなんか考えてくれません。みんな自分の国の国益だけを考えて行動する。それが情報機関というものです。
 そして、後藤さんの首を斬ったジハーディスト・ジョン。あの英語はロンドン訛(なま)りの英語だという。あの男、しばらくしてから、自分がなぜ「イスラム国」に参加しているか、手記を出したのです。それによると、イギリスでMI5につかまってしまって、MI5がいろいろなことを要求するから頭に来て「イスラム国」に来たと書いてある。そういう話を聞くと、プロは、あのMI5が逃がすようなことはしない。「我々に協力するか、それとも死ぬか、二つに一つ」、どちらかしかない。あそこへ行ったということは、MI5の手先として行っているのです。MI5の手先が「イスラム国」の中に浸透しているということです。(中略)
 MI5の連中はもっと狡猾(こうかつ)です。命令されて、あるいは自ら進んでかもしれないけど、ナイフで捕虜の首を斬る。そういう映像をぱーんと出す。「そうか、お前信用できるな」となる。MI5のやり方はそれなんです。(中略)
 ただ、後藤さんが殺されたひとつの理由は、彼がキリスト教徒だったからだろうと思います。彼がもし仏教徒だったら、あるいは殺されなかったかもしれません。イスラムの人にとってはキリスト教徒は敵なのですから。

【『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘〈すがぬま・みつひろ〉(KKベストセラーズ、2015年)】

『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』後藤健二

 省略したのだが、日本赤軍は中東で英雄視されているとも書かれている。テルアビブ空港乱射事件(1972年)が自爆テロの呼び水になったとのこと。

 歴史の恩讐(おんしゅう)はかくも根深い。特に植民地を失ったイギリス・フランス・オランダは帝国の位置から叩き落されたわけだから恨み骨髄である。

 プリンス・オブ・ウェールズの撃沈の報告を聞いたイギリスのチャーチル首相は絶句し「戦争全体でその報告以上に私に直接的な衝撃を与えたことはなかった」と著書の『第二次世界大戦回顧録』で語っている。

Wikipedia

 日本人捕虜の犠牲をお膳立てし、その価値を最大限にまで高める。所謂「最適化」だ。バイブルを台本とする彼らであればこそ、かような演出が可能なのだ。シェイクスピアも墓場で目を白黒させているに違いない。

 日本人はあまりにも恵まれている。まず水や食料に困ることがない。気候も温暖で雪国を除けば雨露さえ凌ぐことができれば死ぬこともない。何にも増して異民族から支配されたことが一度もない。ヨーロッパのように権謀術数が必要な場面も少なく、腹を切ってしまえば後は水に流してもらえる。「水に流せる」のは水が豊富だからだ。砂漠の民族の苛烈さは水の乏しさに依るものか。

 陰謀は欧米の伝家の宝刀である。「陰謀論」という言葉は、もちろん陰謀を隠すために編み出されたキーワードである。王朝がくるくると変遷するチャイナもまた謀(はかりごと)の国である。孫子の兵法はナポレオンも愛読していた。そんな世界にあって我々日本人はまるで中学生のように陰謀を「卑怯」と憎む性質から脱却できていない。それどころか「敵を知る」努力すら敗戦後怠ってきた。

 中国を肥え太らせたのは日本である。小さかった座敷犬は既に猛獣と変貌した。彼らは日清戦争の恨みを忘れなかった。習近平は中華思想に息を吹き込み、かつての朝貢国を再び従えようと目論んでいる。

 いざ戦争となれば日本人は強い。グルカ兵ですら恐れた日本人である。戦闘状態に入ればDNAが目覚めることだろう。だが、起つの遅くなれば被害が大きくなってしまう。犠牲になるのは老人と婦女子である。それを最小限に抑えるためには「備え」が欠かせないのだ。憲法改正が急務である。

戦死の法律的定義/『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘


『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘 2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘 2013年
『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘 2014年

 ・アメリカの軍事予算削減を補う目的で平和安全法制が制定された
 ・戦死の法律的定義
 ・後藤健二氏殺害の真相

 安倍内閣のやったことは、集団的自衛権の行使は憲法違反ではないとしたことですが、その集団的自衛柄件というのを具体化した場合、どうなるでしょうか。
 例えばいまの自衛隊員が、仮に中国が尖閣に攻めて来たときに、国を守るというようなことになれば、後顧の憂いなく立ち上がって中国に立ち向かっていく。これはまさに個別的自衛権の発動ということになります。だから、それについては何の問題もありません。
 しかし、ではアメリカの艦船がミサイル攻撃を受けるかもしれないという段階のときに、日本の自衛隊が、中国のミサイル艦を攻撃する。そして、中国の反撃を受けて、自衛隊員が戦死することもある。こういう事態を、日本の自衛隊の人たちは受け入れることができるだろうか。現に、その形で戦死したときに、これまでそれについての具体的な法律は何もできていなかった。その戦死した自衛官は靖国神社に祀(まつ)られるのか。いま、防衛省の中に慰霊碑があって、毎年慰霊祭をやっています。それは災害出動で亡くなった方とか、演習中に命を落とした方とか、そういう人たちがみな祀られている。それらの方々は靖国神社とは関係ない。戦争ではないのだから。これは「戦死」ではないのだから。
 自衛隊員が国のために戦って撃たれる。これは本望だ。だから、国のためにお亡くなりになったのだから、国がその慰霊をやる。遺族に補償をする。これは当然です。
 しかし、アメリカのために戦ってやられたという場合、どのように遺族に説明をして、どのように処理をしていくか。例えば遺族への補償はどうするか。遺族年金があるのか。いままでそういう事態をまったく想定していないから、それに備えた法律は何もできていないのです。
 そして、さらにもっと言えば、自衛隊は憲法上では軍隊ではないので、 軍隊ならば、当然の権利・義務みたいなものも揃っていないのです。
 それから、個別的自衛権の場合は、正当防衛という論理を使う。例えば自衛艦が砲撃されるという場合、攻めて来た中国の軍艦に向かって自衛隊が発砲する。この場合、これは正当防衛の論理で考える。
 しかし、アメリカの軍艦のために、中国の兵員を自衛隊員が撃ち殺した場合、これは日本の法制の中にどう位置づけられるのか。一番細かいことから言うと、違法性は阻却されるのか。そんなことから始まって何も決められていないのです。
 だから、集団的自衛権の行使だけ認めても、さまざまな以前の法律が矛盾したまままだ生きている。自衛隊が発砲する法的根拠というのは、警察何職務執行法ですよ。それに準じているのです。だから、警察官がピストルを撃ったとき、過剰防衛ではない、正当防衛であった、という弁明をしますね。正当防衛というのは、急迫不正の侵害に対し、やむをえないやり方でやらないと、違法性が阻却されない。阻却されない場合、警察官は逮捕されることになります。
 法整備なしに集団的自衛権を行使したら、苦労するのは自衛隊員だということは目に見えている。だから、そういう自衛隊の人たちのための法整備をやらないことにはどうしようもない。これが「安保法制」ということの本当の問題点です。

【『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘〈すがぬま・みつひろ〉(KKベストセラーズ、2015年)】

 新聞やテレビはこうしたことを報じたのだろうか? 政治的なテーマを国民が理解しているようには思えないし、政治家自らがきちんと伝えているとも思えない。自衛隊もしっかりと発信するべきだろう。

 日本国民は日米安保というサンタクロースを信じて国防意識を眠らせている。中国が尖閣諸島の上陸すれば米軍が攻撃するだろうか? 異国の無人島のために彼らは自らの生命を犠牲にするだろうか? しかも当事者は指をくわえて眺めているだけにも関わらず。あり得ない。米軍の軍事行動には議会の採決が必要なのだ。アメリカ国民がそれを支持することは断じてないだろう。

 戦後の日本は致命的な過ちを二度犯した。一つは北朝鮮拉致問題(1988年、梶山答弁)で、国民の生命と財産を守る国家の義務を思えば、戦争をしてでも取り返すべきだった。もう一つは地下鉄サリン事件(1995年)に対して破防法適用しなかったことである。バブル景気が日本人を狂わせてしまったのだろう。

 既に法律のテクニカルな問題を論じても徒労感につきまとわれる。日本国民の意思で憲法改正を行っておかなければ、軍事行動が先んじてなし崩し的に突入した満州事変と同じ轍を踏む羽目となることだろう。

 政治に期待できなければ、石原莞爾〈いしわら・かんじ〉か海江田四郎の登場を待つ他ない。

2021-10-17

アメリカの軍事予算削減を補う目的で平和安全法制が制定された/『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘


『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘 2013年
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘 2013年
『この国を呪縛する歴史問題』菅沼光弘 2014年

 ・アメリカの軍事予算削減を補う目的で平和安全法制が制定された
 ・戦死の法律的定義
 ・後藤健二氏殺害の真相

 対米関係で一番大事なことは何か。いま、アメリカの現状をつらつら考えるに、アメリカはイラク戦争をやったり、あるいはアフガニスタンに兵を出したりして、膨大な軍事費を使ってしまった。その結果、アメリカの財政が逼迫(ひっぱく)したことです。アメリカはドルさえ刷ればお金はつくれるのだけけれども、それにも限界があるわけです。あまりやり過ぎると、強烈なインフレが起きてにっちもさっちもいかなくなる。したがって、そこで締めなければいけない。軍事予算も緊縮しなければいけない。オバマ大統領は3年前から、今後10年間、国防予算を毎年10%、機械的に削減していくことにした。それは国際情勢いかんにかかわらず、そうするという方針を出したのです。アメリカの国防予算の10%というのは、日本の自衛隊の予算よりも多いのです。それだけの額を目標に毎年カットしていくというわけです。これはたいへんなことです。
 そのために、その削減分を、日本に、特に太平洋においては自衛隊に肩代わりしてほしいというのが、アメリカの最大の要望なのです。
 それに応え、アメリカに協力できるような法制をつくる。それが、2015年7月18日に衆議院を通った安保法制なのです。その中核は何かというと、集団的自衛権の行使を現憲法の下でも認めるということです。そこで、内閣法制局長官の首を切ってまで(2013年8月8日山本庸幸小松一郎)、安倍さんは、「解釈」を変更することで、集団的自衛権の行使を認めることにしたのです。
 そして、その法的根拠は、昭和32、33年の砂川闘争というのがあったわけですが、そのときの裁判で、最高裁は初めて「日本には自衛権がある」ことを認めた。その砂川判決に依ったのです。最高裁が自衛権を認めたことは、個別的自衛権の他に集団的自衛権もあると認めたことだ、という解釈で、歴代の内閣が慎重に「憲法違反」としてきた集団的自衛権を、内閣の一存で認めさせたのです。
 そのことによって、アメリカの軍事予算削減に起因する、軍事力の弱体化を日本の自衛隊が具体的に補えるようにしたのです。
 こういうことで「もう安倍内閣は大丈夫だ」というところまで見届けて、岡崎(久彦)さんは安心してお亡くなりになったと言われています。
 安保法制を、そんな具合にして政府はここまで押し通してきたわけです。ところが、国会が始まって、参考人として呼んだ憲法学者がみんな「集団的自衛権は憲法9条違反だ」と言った。与党が呼んだ参考人までが憲法違反だと言いました。それで国会審議の雰囲気はまたおかしくなったけれども、その流れの中で、しかし衆院を通したわけですから、これから安倍内閣自体が国内的にどうなるかはわかいませんが、アメリカは満足したでしょう。
 アメリカにしてみれば、これで中国に対してかなり大きな抑止力を構築できたということになります。

【『日本人が知らない地政学が教えるこの国の進路』菅沼光弘〈すがぬま・みつひろ〉(KKベストセラーズ、2015年)】

 久方振りの菅沼本である。語り下ろしであるが、やはり老いた感が否めない。

砂川裁判が日本の法体系を変えた/『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』矢部宏治

 上記リンクは狡猾(こうかつ)な左翼本であるが一読の価値はある。

 平和安全法制制定の事情と背景はわかった。それにしても、なぜ日本政府はいつも受けばかりに回って、攻めに転じないのか? 吉田茂が経済を優先して軍事を後回しにしたのはそれなりの見識に基づいた政策であった。しかし吉田はその後変節する。

日米安保条約と吉田茂の思惑/『重要事件で振り返る戦後日本史 日本を揺るがしたあの事件の真相』佐々淳行
憲法9条に対する吉田茂の変節/『平和の敵 偽りの立憲主義』岩田温
マッカーサーの深慮遠謀~天皇制維持のために作られた平和憲法/『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦

 岸信介が行った日米安保条約改定も極めて正当なものだった。とすれば池田勇人以降の首相責任が重いと考えざるを得ない。

 アメリカが日本に何かを肩代わりさせようと近づいてきた時に、なぜこれを梃子(てこ)にして攻勢に打って出ないのか。本書によればEUはドイツを封じ込める目的で結成されたとあるが、そのEUでドイツは見事に経済的な主導権を確立したのである。日本政府はアメリカを利用して自主憲法を制定するのが当然ではなかったか。

 あまりにも馬鹿馬鹿しい戦後の歴史を思えば、日本の官僚制度がアメリカに牛耳られているような錯覚すら覚える。

 規制緩和も遅々として進まない現状を鑑みれば、一定程度の独裁政権が誕生しない限り、この国が変わることはなさそうだ。

2021-10-16

社会性=都市化/『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン


 ・社会性=都市化

『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン

 葉をかつぐアリを追っていけば巣にたどり着く。ただしその道のりは50メートルから100メートル以上にも及ぶ場合がある。途中で分厚い茂みを抜けることもあるだろうし、ちょっとした上り下りもあるだろう。やがて唐突に巣が姿を現す。そこには何百万匹ものアリが暮らす地下の一大都市だ。地上には、巣づくりのために掘り出した土が2メートルを超える高さに積みあがり、丸い小山のようになっている。地下は何千という部屋に分かれ、それぞれの大きさを平均するとだいたい人間の頭ほど。もっと正確にいえば、容積にして30分の1リットルから50リットルくらいである。
 各部屋はトンネルで迷路のようにつながっていて、部屋にはふわふわした灰色のかたまりが詰まっている。部屋の壁は薄く、表面積ができるだけ大きくなるようにでこぼこしている。
 壁には特殊な菌類(キノコなどの仲間である真菌類)が生えている。この菌は、アリに栽培されるためだけに存在している。ハキリアリや、進化的にもっと未発達な近縁のアリにだ。この菌がおなじみのキノコ形になって傘と柄をつけることはめったにない。たいていは細い菌糸がもつれ合ったかたまりになる。
 菌は部屋の壁から栄養を得ていて、壁はバルブのような糊状の物質でできている。そしてこの糊状の物質をつくる材料が、働きアリのもち帰る植物の断片だ。
 ハキリアリは植物を切りとって樹液を吸うこともあるが、それ以外はこうして育てた菌だけを食べて生きている。生の植物そのものはアリの消化器官の手に負えない。そこでハキリアリは、それを食べられる食物に変える方法を編みだした。
 農業を始めたのである。
 おかげでハキリアリは進化の壁を突きやぶって大躍進を遂げる。切りとった植物で土台をつくり、その上で菌という作物を栽培することで、ほぼ無尽蔵といっていい食料を確保する道を開いたのだ。

【『ハキリアリ 農業を営む奇跡の生物』バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン:梶山あゆみ訳(飛鳥新社、2012年)】

 地球で最後まで生き残るのは社会性昆虫か菌類だろう。ヒトの社会性は文明を誕生させたが、いたずらに資源を浪費する。自然の摂理においてヒトは必要とされていない。むしろ癌細胞のような存在と言えるだろう。

 そろそろ知能よりも協働を重視するべきだ。天才の閃きよりも傾聴から生まれる集合知が尊い。巨大なアリの巣は完璧な空調システムをも備えている。誰かが設計し、現場監督を務めたわけではない。一匹一匹のアリが必要な作業を繰り返してゆく中で創発されたものだ。人間の造った建築物が創発に至ることはない。図面はあっても知恵を欠くためだ。

 ヒトの生活を振り返ると屎尿(しにょう)がリサイクルされていないことに気づく。「じゃあ、今度から畑でウンコをするよ」というわけにいかない。なぜなら薬や化学物質が混じっているからだ。就中(なかんずく)、薬が厄介で放射能の半減期を思わせるほどしっかりと残っている。健康な人物の便は細菌の宝庫である。アメリカでは便移植が始まっているが、間もなく日本でも解禁されることだろう。例えば痩せている人の便を移植すれば、痩せ菌によって容易に体重を落とすことができる。薬価を思えば、ウンコが1000円とか1万円で取引されるようになっても決しておかしくない。

 準完全食といわれているのは卵、サツマイモ、納豆、オートミール、ブロッコリー、キヌア、リンゴなど。昔、沖縄で抜きん出て健康な男性がいたが、彼が食べていたのはサツマイモだけだった、という話を物の本で読んだことがある。

 縄文人が食べていたとされるのは、団栗(どんぐり)・栗・胡桃(くるみ)・栃の実など。あとは魚、貝類、山菜である。また塩が必須だ。

 ヒトは雑食のため単一の食べ物で生きてゆくことは難しい。タンパク質摂取のために昆虫食を開拓する必要もあるだろう。

 迫りくるチャイナリスクを思えば、国民に兵農を義務づけるのもいい手だと思う。義務教育でサバイバル技術を身につければ、日本も生まれ変わることができるだろう。