2011-12-10

『カラマーゾフの兄弟』翻訳比較


どの小説から読んだらいいか、どのテキストで読んだらいいか、についての案内

誤訳余りに多し、全面改訂を

《亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫》

 週刊新潮5月22日号で取り上げられているとおり、この訳書にはおびただしい誤訳がある。指摘した「ドストエーフスキイの会」のHPによると、誤訳・不適切訳は、検証された第1巻だけで100以上。全巻では数百箇所に上るという。しかも、その多くが初歩的誤りであり、仕事の杜撰さは否みようがない。実際、誤訳のほとんどは先行訳では正しく訳されているのである。

 それだけではない。その後の対応に不信が募る。1月末以降、訳者・出版社は、指摘をなぞり、脱落も含めて第1巻の40数箇所を第20刷と22刷で訂正している。ところが、このことは明記も公表もされていない。しかも、上記週刊新潮で誤訳訂正について質された訳者は、「ケアレスミスが10箇所程度。その他は解釈の違い」と弁明しているのである。残念ながら、これは事実に反する。現に40箇所余りを訂正しているのがその証拠であり、また、その大半は上述のように「解釈」以前のレベルの誤訳だからである。

 問題は更にある。訳者は、先の弁明の如く大量誤訳の事実を認めていない。従って、第1巻の残り、そして、巻を追って増すという第2巻以降の膨大な誤訳はいまだ手つかずのまま増刷され続けているのである。

 苦しいことではあろうが、訳者・出版社は、誤訳の実態を率直に認め、もう一度原文に立ち返って全巻を徹底的にチェックし直すべきである。そして、できるだけ早く改訂版を出してほしい。それが、読者、また、作品に心血を注いだ原作者に対して果たすべき道義的責務ではないか。なお、誤訳の大半は文脈の誤読に由来するものだが、中には、恣意的誤訳も散見する。これらも是非正して頂きたい。

 ドストエフスキーの魅力を広く世に伝えた訳者の功績は大であり、読みやすさを目指した新訳の意図に異論はない。問題は、翻訳の基礎がおろそかだったことである。これでは、作品の読みを深めることは出来ない。新訳が信頼できる翻訳に生まれ変わることを願いたい。

(削除につき、再投稿しました。事態は今も基本的に変わっていません。2011/6/30)

のんき亭

亀山訳「カラマーゾフの兄弟」雑感
亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』がいかにひどいか
亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』を検証する
佐藤優氏の「亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』批評」を読む
カラマーゾフの兄弟(亀山郁夫訳)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)
カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)




翻訳比較
亀山郁夫訳と原卓也訳の比較

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)カラマーゾフの兄弟〈下〉 (新潮文庫)



岩波文庫第一巻にはすばらしい解説がついている!

《米川正夫訳、岩波文庫》

 私は最初に光文社文庫の『カラマーゾフの兄弟』(亀山郁夫訳)を読みました。その中で文脈からして疑問に感じる箇所がいくつかあり、その確認のために岩波版を読んでみました。すると非常に明快に色々な箇所の疑問が解けました。

 以下、光文社亀山版と岩波米川版とを比較した感想です。亀山訳には人の名前などロシア文学初心者にとって親切な解説があり、文字や段落の工夫などでぐんぐん読み進めることができますが、ドストエフスキーの意図をきちんと読み解くには米川訳は必携。亀山訳で『カラマーゾフ』にはまった人は是非米山訳も手にとってみられることをお奨めします。

 何より岩波文庫1巻の最初についている解説がすばらしい。高々2~3頁の短い解説ですが、江川卓や亀山郁夫による色々な解説本と比較しても、この米川正夫の解説は非常によくまとまった優れた内容のものです。

 色々な新機軸の説を読む前に、まずはこの解説を読まれてはどうでしょうか(さらに詳しい解説としては『評伝ドストエフスキー』モチューリスキー、筑摩書房が定評あり)。宗教的な背景についてこの岩波の解説よりももっと簡潔概観的なものが必要な場合は講談社学術文庫『キリスト教の歴史』小田垣雅也(うち、9章10章)が参考になります。

 欲を言えば、字をもっと大きくして欲しい。岩波文庫には米川正夫訳で『悪霊』『未成年』『作家の日記』もあるはずですが、品切れ重版未定のまま、というのはいかにも惜しい気がします。

海産巻貝
カラマーゾフの兄弟〈第1巻〉 (岩波文庫)カラマーゾフの兄弟〈第2巻〉 (岩波文庫)カラマーゾフの兄弟 第3巻 (岩波文庫 赤 615-1)カラマーゾフの兄弟 第4巻 (岩波文庫 赤 615-2)

「カラマーゾフ兄弟の翻訳をめぐって」という本

リビア難民の証言 2011年4月4日 ラス・ジュディの国境

イラン大統領「核兵器の時代は終わる」2011年8月5日

イスラエル最高裁判所 ロスチャイルド家とフリーメイソン



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ジャーナリストの拘束数、昨年比20%増 NPOまとめ


 国際非営利団体のジャーナリスト保護委員会(CPJ)は8日、世界各地で投獄されているジャーナリストの数は前年比で20%以上増加し、179人に上ったとする報告を発表した。中東と北アフリカの国々で行われた取り締まりが増加の主因だという。

 CPJのまとめによると、今年12月1日時点で投獄されている記者や編集者、フォトジャーナリストの数は総計179人にのぼる。2010年の12月1日は145人だった。

 国別の内訳ではイランが最多の42人を拘留しており、CPJは2年以上前に行われた大統領選以降、報道関係者に対する圧迫が始まったとしている。次いでアフリカのエリトリアで28人、中国で27人が拘留されていた。

 中東および北アフリカ地域であわせて77人のジャーナリストが拘留されており、全体の45%を占めた。

CNN 2011-12-08

拘束される記者激増 中国はワースト3位

ノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの死因再調査で遺体発掘か チリ


 チリ共産党が、1973年に死去した詩人パブロ・ネルーダ氏の死因再調査に際して遺体を発掘し調査するよう当局に求めている。

 パブロ・ネルーダ氏の死因は前立腺がんとされているが、同氏の元運転手は、治療を受けていた病院で毒物を注射投与されて死亡したと証言している。ネルーダ氏は、ピノチェト陸軍司令官が率いた軍事クーデターの12日後に死亡している。

 ネルーダ氏の死因をめぐっては、今年6月に証言や投薬記録を改めて調査する命令が裁判所から出されていた。裁判所の命令は遺体の調査には触れていない。

 同氏の功績を称える目的で未亡人が設立したパブロ・ネルーダ財団の責任者は地元ラジオ局に対し、同氏の死に第三者が介在するとは考えにくいとして遺体発掘に反対の意を示した。

 ネルーダ氏は詩人で国会議員も務め、共産党員でもあった。1971年にはノーベル文学賞を受賞している。

 チリではピノチェト政権時代の人権侵害726件に関する大規模な調査が行われている。アジェンデ元大統領の遺体は今年に入って発掘調査され、死因は自殺との結論が7月に出されている。

CNN 2011-12-08

マチュピチュの頂二〇〇〇年ネルーダ詩集 (海外詩文庫)愛と革命の詩人ネルーダ

『禁じられた歌 ビクトル・ハラはなぜ死んだか』八木啓代

観測史上最大のブラックホール二つ発見、太陽の100億倍


 米カリフォルニア大学などの研究チームが観測史上最大のブラックホールを二つ発見したとして、科学誌「ネイチャー」に発表した。

 二つのブラックホールはそれぞれ太陽の約100億倍の質量を持ち、あらゆる物質が重力から抜け出せなくなる「外縁」の大きさは、太陽と冥王星との距離の約5倍に達していた。これまでの観測では1977年に見つかった太陽の60億倍のブラックホールが最大とされていた。

 研究チームはハワイにあるケック天文台やジェミニ天文台、マクドナルド天文台を使って地球から比較的近い距離にある銀河を観測。その結果、地球から3億2000万光年離れた獅子座の方向にあるブラックホールと、同3億3600万光年離れたかみのけ座の方向にあるブラックホールを発見した。

 今回の発見についてカリフォルニア大学バークリー校の研究者は「われわれは最大のブラックホールに近付いているかもしれない」「この二つのブラックホールが最大なのか、それとも氷山の一角なのかを見極めるために観測を続ける必要がある。現時点では分かっていない」と話している。

CNN 2011-12-06

ブラックホール