2019-01-14

ハムストリングのストレッチは不要/『勝者の呼吸法 横隔膜の使い方をスーパー・アスリートと赤ちゃんに学ぼう!』森本貴義、大貫崇


 ・ハムストリングのストレッチは不要

・『間違いだらけ!日本人のストレッチ 大切なのは体の柔軟性ではなくて「自由度」です』森本貴義
『BREATH 呼吸の科学』ジェームズ・ネスター
『静坐のすすめ』佐保田鶴治、佐藤幸治編著

身体革命

 身体が硬いからとストレッチばかりしていると、骨盤を後ろから引っ張っておいてくれる縁の下の力持ちのようなハムストリングを伸ばしきってしまいます。それで力が出ないようにしてしまうのではなく、適切なトレーニングをすることでちゃんと力が出るようにしてあげましょう。これがPRIやDNSなどをベースとした私の持論です。
 もし、立った状態の前屈で指が地面に着かなくても、ハムストリングのストレッチは不要です。それはハムストリングの硬さが原因なのではありません。実は骨盤や胸郭、肋骨の位置などを変えることで指はどんどん地面に近づいていくのです。

【『勝者の呼吸法 横隔膜の使い方をスーパー・アスリートと赤ちゃんに学ぼう!』森本貴義〈もりもと・たかよし〉、大貫崇〈おおぬき・たかし〉(ワニブックスPLUS新書、2016年)】

 PRI(Postural Restoration Institute/姿勢回復研究所)、DNS(Dynamic Neuromuscular Stabilization/動的神経筋安定化)は呼吸に鍵がある。身体瞑想と名づけていいように思う。新しい概念で理解するのが容易ではない。

 ま、ヨガをやっていることもあり、「ハムストリングのストレッチは不要です」と言われて、ハイそうですかというわけにはいかない。私の場合、明らかに硬いのだ。伸ばしきってしまうと力が出ない、との指摘も根拠を示さなければ説得力を欠く。それでも尚、視点の新しさが蒙(もう)を啓(ひら)いてくれる。

 身体の総合性や関連性についてアメリカの研究に先を越されているのはどうも面白くない。もともと日本には古武術や忍術などの文化があったわけだから素地は失われていないだろう。

2019-01-13

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2019-01-12

思想する体/『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス


『悲鳴をあげる身体』鷲田清一
『ことばが劈(ひら)かれるとき』竹内敏晴
『究極の身体(からだ)』高岡英夫

 ・思想する体

『心をひらく体のレッスン フェルデンクライスの自己開発法』モーシェ・フェルデンクライス
『アイ・ボディ 脳と体にはたらく目の使い方』ピーター・グルンワルド
『運動能力は筋肉ではなく骨が9割 THE内発動』川嶋佑
『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』日野晃、押切伸一
『武学入門 武術は身体を脳化する』日野晃
『月刊「秘伝」特別編集 天才・伊藤昇と伊藤式胴体トレーニング「胴体力」入門』月刊「秘伝」編集部編

身体革命
必読書リスト その二

 われわれは自らの自己イメージ通りに行動する。この自己イメージは――他方ではわれわれのあらゆる行動を支配するが――程度の差こそあれ、遺伝、教育、自己教育という三つの要因に制約される。
 遺伝的にうけついだものは、もっとも不変の部分である。個人の生理学的資質――神経系、骨格、筋肉、体内組織、腺、皮膚、感覚器の形態と能力――は、なんらかの独自性が確立されるはるか以前に、身体的遺伝によって決定されている。その自己イメージは、自然の成り行きのなかで体験する行動と反応から生まれ発育する。
 教育は、ひとの言語を決定し、特定の社会に共通した概念と反応のパターンをつくりあげる。このような概念と反応は、生をうける環境次第でさまざまであろう。それらは種としての人間の特質ではなくて、ある集団や諸個人の特質なのである。
 教育が自己教育の方向を大部分決定するとはいえ、自己教育は、われわれの成長発展にとってもっとも積極的な要素であり、生物学的起源をもつ諸要素よりもはるかに多く社会的に活用される。自己教育は、外からの教育を身につける方法を左右するだけでなく、習得すべき材料の選択と同化できない材料の拒絶に影響を与える。教育と自己教育は断続的に行なわれる。

【『フェルデンクライス身体訓練法 からだからこころをひらく』モーシェ・フェルデンクライス:安井武訳(大和書房、1982年/新装版、1993年)】

 フェルデンクライス・メソッドは動作法である。体操ではない。正式にはソマティック・エデュケーションというらしい。直訳すれば「身体教育」だが「心身技法」とすべきだろう。気づきや内発性に重きを置くところに特徴がある。

 ルドルフ・シュタイナーオイリュトミーリトミックよりも負荷は弱い。

 アレクサンダー・テクニーク成瀬悟策〈なるせ・ごさく〉の心療動作法と同じジャンルと考えてよい。モーシェ・フェルデンクライスはフレデリック・マサイアス・アレクサンダーからレッスンを受けていたとのこと(ソマティック・エデュケーションとは | アレクサンダーテクニークの学校)。

 肉体との対話によって思想する体が形成される。無自覚な姿勢や動きが体の自由を損ない、肩凝りや猫背、腰痛となって現れる。日常生活で筋肉や骨を意識することは殆どない。我々が体を意識するのは病気や怪我をした時に限られる。身体障碍者のリハビリは時に運動部の練習よりも過酷の度合いを増すという。であれば元気なうちから体の内側に眼を向け、耳を澄まし、鍛えておくべきだろう。

 プロスポーツ選手でもフェルデンクライス・メソッドを実践している人がいる。やはり人によるのだろう。私は全くやる気が起こらなかった。ところがである。フェルデンクライスの言葉は刮目(かつもく)に値する。竹内敏晴や高岡英夫と完全に共鳴している。むしろ思想性では一歩先を行っている。

 フェルデンクライスがいう「イメージ」とはスタイルと言い換えてよい。「表現のなかで、人間がいちばん惹(ひ)かれるのは、その文体、スタイルである。人間を好きになる場合でも、その人のスタイルを好きになるのだ。どう生きているか、といった対他的、対社会的スタイルに共鳴するかしないか、である」(『書く 言葉・文字・書』石川九楊)。

 自分が自分らしくあろうと努めて確立したスタイルの結晶が「私」である。つまり「私」とは単なるイメージに過ぎない。そこにあるのは「私」という反応だけだ。ひょっとすると「私」という情報すら錯覚かもしれない。

 しかしながら、観察者と観察されるものとのあいだに分裂があるときには、葛藤があります。
 私たちの、他の人たちとの関係というのはすべて――親密なものであろうとなかろうと――分裂や分離に基づいています。
 夫は妻についてのイメージをもち、妻は夫についてのイメージをもっています。そういったイメージが、何年にもわたり、快楽や苦痛、いらだち、その他もろもろを通じて、ひとまとめにされてきたのです――ご承知のとおりの、夫と妻とのあいだの関係です。
 ですから、夫と妻との関係というのは、実際にはふたつのイメージのあいだの関係なのです。性的なことすら――その行為のなか以外のところでは――そのイメージが重要な役どころを演じているのです。
 そういうわけで、人が自分を観察すると、関係のなかで絶えずイメージを構築し、それゆえ分裂を生じさせていることがわかります。
 そのため、実際には関係というものなどまったくないのです。
 人は家族や妻を愛していると言うかもしれませんが、それはイメージであり、それゆえそこには実際の関係などなにもないのです。
 関係とは、物理的な接触だけではなく、心理的になんの分裂もない状態をも意味します。(スタンフォード大学での四つの講話)

【『あなたは世界だ』J・クリシュナムルティ:竹渕智子〈たけぶち・ともこ〉訳(UNIO、1998年)】

 病気や障碍を受け容れることが難しいのも過去のイメージを手放すことができないためだ。我々はイメージを持つことで現実性を見失っているのだ。ジョン・レノンは「想像してごらん」と歌ったが、想像を振り捨てて目の前の現実をありのままにただ見つめることが正しい。

フェルデンクライス身体訓練法―からだからこころをひらく
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2019-01-10

最後の元老・西園寺公望/『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦


『日米・開戦の悲劇 誰が第二次大戦を招いたのか』ハミルトン・フィッシュ
『繁栄と衰退と オランダ史に日本が見える』岡崎久彦
『陸奥宗光とその時代』岡崎久彦
『陸奥宗光』岡崎久彦
『小村寿太郎とその時代』岡崎久彦

 ・最後の元老・西園寺公望

『重光・東郷とその時代』岡崎久彦
『吉田茂とその時代 敗戦とは』岡崎久彦
『村田良平回想録』村田良平『歴史の教訓 「失敗の本質」と国家戦略』兼原信克

日本の近代史を学ぶ
必読書リスト その四

 西園寺(さいおんじ)は公卿(くぎょう)である。公卿は百六十家あるというが、そのなかでもっとも格式が高いのは五摂家(ごせっけ)であり、近衛篤麿(このえあつまろ)、その子の文麿(ふみまろ)を出した近衛家はその一つである。その次は九清華(せいが)であり、維新後の太政大臣三条実美(さんじょうさねとみ)を出した三条家西園寺家が含まれる。つまり、公卿のなかでもトップの十分の一に属する名門である。

【『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦(PHP研究所、2000年/PHP文庫、2003年)以下同】

 西園寺公望〈さいおんじ・きんもち〉は明治維新から支那事変までを生き抜いた最後の元老(げんろう)である。陸奥宗光と共に伊藤博文を支えた。伊藤の腹心とする向きが多いが彼らの関係は朋友であった。

 政治の場においては、すべての歴史家が指摘するように無欲恬淡(てんたん)、権力にも金にもまったく執着するところがなかった。というよりも、公卿育ちのわがままで、面倒なことにかかずらうのが嫌だったのであろう。
 東洋自由新聞社の社長になったときも、「社長もいいが僕には到底真面目(まじめ)の勤めはできぬ」というと、「それもよく心得ている」といわれてなったと追想しているが、謙譲でなく本音であろう。外国でも日本でも、文人墨客(ぶんじんぼっかく)、才子佳人(さいしかじん)と付き合うほうに強い関心があった。かつて大磯の伊藤博文の邸(やしき)で、尾崎行雄に対して「政治などということは、ここのおやじのような俗物(ぞくぶつ)のすることだ」と吐き棄てるようにいったという。

 最後の一言がいい。8歳違いの伊藤を「おやじ」呼ばわりした若気(わかげ)の至りも好ましい。一億総町人のような現代社会には貴族が存在しない。金持ちはいる。が、彼らに西園寺のような矜恃(きょうじ/「矜持」と「矜恃」の本来の意味と違い)は持ち得ない。金儲けに腐心する輩は利で動く。経団連を見れば一目瞭然である。国の行く末よりも自社の利益しか眼中にない連中だ。

 かねがね記しているように私は民主政という制度を全く信用していない(『民主主義という錯覚 日本人の誤解を正そう』薬師院仁志)。むしろエリートや貴族が政治を担い、国民をリードするべきだと考える。戦前の政治家で私腹を肥やした者は殆どいないという。井戸塀政治家(いどべいせいじか)という言葉があったほどだ。自民党が金権腐敗に染まったのは田中角栄以降のことだろう。

 貴族は遊民というよりも国家にとっての遊撃と私は考える。

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若き日の感動/『青春の北京 北京留学の十年』西園寺一晃

2019-01-09

若き日の感動/『青春の北京 北京留学の十年』西園寺一晃


 ・中国人民の節度
 ・若き日の感動

『幣原喜重郎とその時代』岡崎久彦

「我々は口ではどんな格好のよい事も言える。しかし、問題は実践だ。君達は準備討議の時、たくさん立派な事を言った。でも実際行動はまるで正反対だ。働けば疲れる。コヤシは臭い。臭くないと言ったら嘘だ。しかし、疲れるのを嫌がったり、臭い仕事から逃げるのは思想問題だ。それに、疲れる仕事、臭い作業も誰かがやらねばならない。僕はそういう仕事こそ進んでやるべきだと思う。それを一つの鍛錬の場と思い、喜んでやるべきだ。それでこそ進歩するんだ。口でいくら進歩すると言っても、結局は実践の中で努力して、初めて実現するんだ。口先だけの革命の本質は、不革命か反革命なんだ」

【『青春の北京 北京留学の十年』西園寺一晃〈さいおんじ・かずてる〉(中央公論社、1971年)以下同】

 35年前に読んだ本である。同じ頃に本多勝一著『中国の旅』(朝日新聞社、1972年)も読んでいる。1980年代はまだ進歩的文化人が大手を振って歩いていた。知識がなければ判断力が働かない。直接会えば声や表情から真実を辿ることは可能だが、読書の場合かなり難しい。例えば相対性理論に関する間違いだらけの解説書を読んでも素人には判別しようがない。特に大東亜戦争を巡る歴史認識は専門家たちによって長く目隠しをされてきた。

 若さとは「ものに感じ入る」季節の異名であろう。10代から20代にかけてどれほど心の振幅があったかで人生の豊かさが決まる。西園寺少年が直接見聞した中国の姿に私は甚(いた)く感動した。社会主義国の高い政治意識に度肝を抜かれた。

「あの店はあなた方、外国同志達のためにあるのです。私もあの店の洋菓子がおいしいことを知っています。でも今は食べません。もう少ししたら、我々は今の困難(100年振りの大災害による食糧不足)を克服して6億人民全部がいつでも好きなだけ、おいしい菓子を食べられるようになります。そうしたら食べます。その時は、おいしい菓子が一段とおいしく感じられるでしょうから、その時までとっておきますよ」
 と言って笑った。彼はその日、中国の笑い話やことわざについて色々と話してくれ、僕達を腹の皮がよじれるほど笑わして帰っていった。しかし、彼の前に出されたシュークリームはそのまま残っていた。僕達一家4人は、同じように手をつけなかった菓子を前に、妙に白けた気持ちになった。僕は苦いものを飲み込むようにそれを食べた。少しもおいしくなかった。

 これらのテキストは当時私がノートに書き写したものだ。他にもまだある。

 西園寺一晃〈さいおんじ・かずてる〉の父・公一〈きんかず〉が尾崎秀実〈おざき・ほつみ〉(『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫)の協力者でゾルゲ事件に連座して公爵家廃嫡となったのを知ったのは最近のことだ。公一〈きんかず〉は西園寺公望〈さいおんじ・きんもち〉の孫である。

 公一〈きんかず〉は真正の共産主義者であった。息子の一晃〈かずてる〉が同じ道を歩むのは当然だろう。とすると本書はただのプロパガンダ本ということに落ち着く。著者は嘘つきだったのか? その通り。西園寺は「大災害による食糧不足」としているが、実際は毛沢東が行った大躍進政策が原因であった。中国人が語った「今の困難」とは5000万人の餓死を意味する。まるで秋にやってくる台風のような書きぶりだ。左翼に限らず主義主張に生きる者は都合の悪い事実に目をつぶり、自分たちに都合のよいことは過大に評価する。

 若き日の感動は長く余韻を残しながらも、情報は書き換えられて更新されてゆく。今となっては嘘つきに騙された無念よりも、嘘つきに気づいた満足感の方が大きい。尚、親中派つながりで創価学会が組織を上げて本書を購入した経緯があり、後に西園寺は『「周恩来と池田大作」の一期一会』(潮出版社、2012年)という礼賛本を書いている。

青春の北京―北京留学の十年 (1971年)
西園寺 一晃
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