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2011-08-08

モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子


『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
『親指はなぜ太いのか 直立二足歩行の起原に迫る』島泰三

 ・モンサント社が開発するターミネーター技術

『タネが危ない』野口勲
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン

 世界はカラクリで動いている。金融というゼンマイを巻くことで経済という仕掛けが作動する仕組みだ。そもそも資本主義経済は壮大なねずみ講といってよい。消費者に損をしたと思わせないために広告代理店がメディアを牛耳っている。テレビCMは五感を刺激し欲望を掻(か)き立てる。経済通は口を開けばGDPの成長を促す。生産と消費は食物摂取と排泄(はいせつ)みたいなものだ。あ、そうか、我々は無理矢理エサを食べさせられるガチョウってわけだな。

フォアグラができるまでアヒルのワルツver.

 ローマクラブが『成長の限界』で人類の危機を指摘したのが1972年のこと。これが椅子取りゲームの合図であった。エネルギーと食糧を先進国で支配し、発展途上国が豊かになることを未然に防ごうとしたわけだ。

世界中でもっとも成功した社会は「原始的な社会」/『人間の境界はどこにあるのだろう?』フェリペ・フェルナンデス=アルメスト

 先物相場で取引されるものをコモディティ(商品)というが、貴金属と非鉄金属以外は食糧とエネルギーである。元々生産者を保護するための先物相場は大阪の堂島米会所から始まったものだ。ところが現在は完全に投機の対象となっている。

 日本の食糧自給率はカロリーベースで40%、生産額ベースで70%となっている(2009年)。これは多分、アメリカの戦後支配によって誘導されてきた結果であろう。敗戦の翌年(1946年)、学校給食にパンが用いられた。アメリカ国内で小麦が余っていたためだ。

戦後の食の歴史を学ぶ:「日本侵攻 アメリカ小麦戦略」
現在のアレルギー性疾患増加は戦後の「栄養改善運動」と学校給食、そしてアメリカの小麦戦略によって作られた

 食糧とエネルギー、はたまた軍事に至るまで外国頼みである以上、日本が国家として独立することは極めて困難だ。

 そしてアメリカはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)という新ルールを日本に課すことで、カラクリを一層強化しようと目論んでいる。

中野剛志

 アグロバイオ(農業関連バイオテクノロジー〔生命工学〕)企業が、特許をかけるなどして着々と種子を囲い込み、企業の支配力を強めています。究極の種子支配技術として開発されたのが、自殺種子技術です。この技術を種に施せば、その種子から育つ作物に結実する第二世代の種は、自殺してしまうのです。次の季節にそなえて種を取り置いても、その種は自殺してしまいますから、農家は毎年種を買わざるを得なくなります。
 この技術は別名「ターミネーター・テクノロジー」と呼ばれています。『ターミネーター』という映画(1985年、米国)をご覧になった方もあるでしょう。(中略)次の世代を抹殺する自殺種子技術の非道さは、まさに映画の殺人マシーン〈ターミネーター〉と重なります。
 この技術の特許を持つ巨大アグロバイオ企業が、世界の種子会社を根こそぎ買収し、今日では、出資産業が彼ら一握りのものに寡占化されています。彼らは、農家の種採りが企業の大きな損失になっていると考え、それを違法とするべく活動を進めているのです。

【『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子(平凡社新書、2009年)以下同】

 検索したのだが、創業者であるジョン・F・クイーニーの情報がネット上に見当たらない。完全支配の発想がユダヤ的だと思うのだがどうだろうか。種の生殺与奪を握る権限という考え方はアジアからは生まれそうにない。砂漠で生きてきた民族の思考に由来するものだろう。

 病的な発想だ。きっと宗教的な妄想に取り付かれているのだろう。こんな連中が世界を支配しているのだから、貧困がなくなるわけもない。というよりはむしろ、彼らによって貧困が維持されていると考えるべきだろう。

 途上国はおしなべて農業国といえるのですが、農業国でなぜ飢えるのか。それは世界銀行が指南してきた開発モデルに従い、債務を返済するために地場の自給農業をやめて、農地ではもっぱら先進国向けの換金作物を生産しているからです。バナナ、サトウキビ、綿花、コーヒー、パーム椰子などを生産し輸出する、穀物は米国やフランスなど先進国からの輸入に依存するという構造を押しつけられてきました。
 世界銀行やIMF(国際通貨基金)の「助言」に従って自給農業を犠牲にした結果、主食を金で買うしかない、こうした貧しい国々が穀物高騰の直接的影響を蒙ったといえます。

 世界銀行を知るには以下の2冊が参考になる。

世界銀行の副総裁を務めた日本人女性/『国をつくるという仕事』西水美恵子
経済侵略の尖兵/『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス

 世界銀行とIMFの仕事は発展途上国を債務超過にすることである。つまり借金漬けにした上でコントロールするのだ。これを親切に涼しい顔でやってのけるのが白人の流儀だ。

 経済とは交換(trade,swap)である。その取引(deal)においてインチキがなされているのだ。アフリカがいつまで経っても貧困と暴力に喘いでいるのは、ヨーロッパが植民地化し、アメリカが奴隷化した歴史のツケが回っているためだ。彼らは有色人種や異教徒を同じ人間とは見なさない。

 いまでは全米のトウモロコシの3割がバイオエタノール用に降り向けられた結果、食用向けが逼迫して高騰しました。トウモロコシが高値で取引されることから、農家は大豆や小麦の生産をやめ、トウモロコシへ転換するようになりました。生産量の減少で小麦と大豆も価格が上がりました。
 原油の値上がりもバイオ燃料ブームを引き起こした一因です。

 食べ物が工業用エネルギーに化けた。経済的合理性は利潤を追求するので、生産者はより高い作物を育てようとする。政治や市場はこのようにして人々の生活を破壊する。過当競争が終われば必要な物が不足している。

 特定の方向に傾きやすいのは不安に根差しているのだろう。これがファシズムの温床となる。アメリカの農業は既に工業の顔つきをしている。

 モンサント社は遺伝子組み換え技術を使った牛成長ホルモンrBST(recombinant Bovine Somatotoropin' 商品名「ポジラック」)を開発し、米国では1994年より大人の乳量増加のために使用されてきました。「ポジラック」を乳牛に注射すると、毎日出す乳の量が15~25%増えるうえに、乳を出す帰還も平均30日ほど長くなるといいます。(EUはrBSTに発ガン性があるとして輸入禁止。カナダ政府保健省はrBSTによって牛の不妊症、四肢の運動麻痺が増加すると報告した。日本には規制がないためフリーパスで入ってきた。)

 生産性を上げるためなら、こんな残酷な真似までするのだ。我々人類は。

家畜の6割が病気!

 日本の場合、屠畜上で検査されて、抗菌性物質の残留や屠畜場法に定められた疾病(尿毒症、敗血症、膿毒症、白血病、黄疸、腫瘍など)や奇形が認められることが頻発しています。その場合、屠殺禁止、全部廃棄、また内蔵など一部廃棄となるのですが、その頭数は牛・豚ともに屠殺頭数の6割にも達します(2006年度)。出荷される家畜の多くが病体であるという現実はほとんど知られていません。疾患のある内装は廃棄されるとはいいえ、その家畜の肉が健康な肉といえるでしょうか。
 私たちの身体は食べたものでできており、何を食べるかで健康は大きく左右されます。この意味からも、病体の家畜を大量に生み出す生産方式を問い直す必要があるのです。

 元々食肉業界は闇に包まれている部分が大きい。

アメリカ食肉業界の恐るべき実態/『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー

 ターミネーター技術とは、作物に実った二世代の種には毒ができ、自殺してしまうようにする技術のことです。この技術を種に施して売れば、農家の自家採種は無意味になり、毎年種を買わざるを得なくなります。この自殺種子技術を、「おしまいにする」という意味の英語 terminate から、RAFI(現ETC、カナダ)がターミネーターと名づけました。

 更にこの技術を進化させているそうだ。

 また業界はターミネーター技術をさらに進化させた、トレーター技術も開発しています。植物が備えている発芽や実り、耐病性などにかかわる遺伝子を人工的にブロックして、自社が販売する抗生物質や農薬などの薬剤をブロック解除剤として散布しない限り、それらの遺伝子は働かないようにしてあります。農薬化学薬品メーカーでもあるこれらの企業の薬剤を買わなければ、作物のまともな生育は期待できないのです。RAFIが、この技術を指す専門用語 trait GURT にかけて traitor (裏切り者)技術と名づけました。自社薬剤と種子のセット売りは、除草剤耐性GM作物の「自社除草剤と種子のセット売り」戦略と同じです。ターミネーター技術やトレーター技術を開発するのをみれば、アグロバイオ企業の真の狙いは種子の支配なのだと思わされます。

 最終的に彼らは太陽の光や空気も支配するつもりなのだろうか?

 遺伝子組み換え作物に導入した特性は、次世代にも引き継がれます。そのためモンサント社の種子を購入する農家は、特許権を尊重するテクノロジー同意書に署名させられ、どんな場合でも収穫した種子を翌年に播くことは許されません。毎年種会社から種を買うことが求められます。

 これをパテント(特許)化することで完全支配が成立する。実際に行われている様子が以下。

 2003年7月、市民団体が招いたシュマイザーの講演によると、北米で、農民に対してモンサント社が起こした訴訟は550件にも上るといいます。モンサント社は、組み換え種子の特許権を最大限に活用する戦略を展開しています。遺伝子組み換え種子を一度買った農家には、自家採種や種子保存を禁じ、毎年確実に種子を買わせる契約を結ばせます。そうでない農家には、突然特許権侵害の脅しの手紙を送りつけるというものです。農家の悪意によらない、不可抗力の花粉汚染であるなら、裁判では勝てると常識的に思うのですが、法廷に持ち込まれることはほとんどないといいます。農民は破産を恐れ、巨大企業モンサント社との裁判を避けるために、示談金を払うしかないのだそうです。

 こうしてモンサント社は訴訟をもビジネス化した。

 モンサント社は特許権を守るというより、損害賠償をビジネスとして展開しています。ワシントンにある食品安全センター(FSC)の2007年の調査によると、モンサント社は特許侵害の和解で1億700万~1億8600万ドルを集め、最高額はノースカロライナ農民に対しての305万ドル(約3億500万円)だったそうです。モンサント社は訴訟分野を強化するため、75人のスタッフを擁する、年間予算1000万ドルの新部門を設置したといいます(03年)。

 なぜ、これほど悪辣な企業が大手を振って歩いているのだろうか? それは多額の政治献金を行っているからだ。そして天下りも受け入れている。抜かりはない。

 また次の改定では、研究機関の新品種へのアクセスは、10年間禁止し、その後、登録とロイヤリティの支払いを求めるとしています。そしてこれを実行ならしめるため、種子銀行システムを構築するとしています。品種育成のために使用できる合法種子は、種子銀行から正式な手順に従って許可された種子だけとなり、それにはロイヤリティの支払いを伴うことになります。

 文字通り農業を根こそぎ私物化し、自分たちの言い値で販売する戦略だ。もはや戦略というレベルではなく、世界全体の植民地化といってよい。

 彼らは何を目指しているのか?

 この種子銀行システム構想の下敷きになっているのが、国際農業研究協議グループ(CGIAR)の遺伝子銀行やノルウェー領に建造された週末趣旨貯蔵庫ではないでしょうか。
 ビル・ゲイツのビルアンドメリンダゲイツ基金、ロックフェラー財団、モンサント社、シンジェンダ財団などが数千万ドルを投資して、北極圏ノルウェー領スヴァールバル諸島の不毛の山に終末趣旨貯蔵庫を建造し、2008年2月に活動を開始しています。ノルウェー政府によれば、それは、核戦争や地球温暖化などで趣旨が絶滅しても再生できるように保存するのが目的といいます。
 この貯蔵庫は、自動センサーと二つのエアロックを備え、厚さ1メートルの鋼鉄筋コンクリートの壁で出来ています。また爆発に耐える二重ドアになっています。北極点から約1000キロメートル、摂氏マイナス6度の永久凍土層深くに建てられた終末種子貯蔵庫には、さらに低温のマイナス8度の冷凍庫3室があり、450万種の趣旨を貯蔵できます。
 核戦争や自然災害など深刻な災害に世界の農業が見舞われたとき、果たして各国はこの貯蔵庫から種子を取り出し、食料生産を再開することができるのでしょうか。

終末の日の要塞 スヴァールバル世界種子貯蔵庫

 種子のマネー化である。農業の金融化。利息が利息を生んで自動的に増殖する仕組みだ。

信用創造のカラクリ
「Money As Debt」

 グローバリゼーションがニュー・ワールド・オーダー(新世界秩序)を目指したものであるならば、彼らは用意周到に恐るべき忍耐力を発揮しながら、それを必ず実現させることだろう。

 世界の仕組みを理解するための必読書であることは確かだが、如何せん最初から最後まで市民的な正義が全開となっており疲れを覚える。



モンサント社の世界戦略が農民を殺す
巨大企業モンサント社の世界戦略 遺伝子組換 バイオテクノロジー
遺伝子組み換えトウモロコシを食べる害虫が増殖中、米国
「遺伝子組換食品の脅威」ジェフリー・M・スミス
穀物メジャーとモンサント社/『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会
資本主義経済崩壊の警鐘/『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クライン
癌治療の光明 ゲルソン療法/『ガン食事療法全書』マックス・ゲルソン
アメリカの穀物輸出戦略/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘

2011-11-08

TPP推進の米倉経団連会長の住友化学とモンサント社との関係

TPP推進の米倉経団連会長の住友化学は、その米国子会社のベーラント USA 社が、米国の遺伝子組換農産物最大手モンサント社との間で提携関係にあります。米韓FTAでも遺伝子組み換え農産農産物が問題になっていますが、TPPでも問題になるかも。 http://t.co/cPkeHLIv
Nov 07 via webFavoriteRetweetReply


住友化学株式会社:農作物保護(雑草防除)分野におけるモンサント社との長期的協力関係について(PDF)
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
自殺する種子。TPPと経団連とモンサントが日本を奴隷化する

2014-01-28

穀物メジャーとモンサント社/『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会


なくならない飢餓
・穀物メジャーとモンサント社

『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
『タネが危ない』野口勲
 世界の食料供給は、すべてアメリカが掌握してきたといっても過言ではないだろう。従来の農業を根底から変え、「国際化」「大規模化・高収量化」「企業化」戦略を実現させた。その背景にあるのが、いわゆる“穀物メジャー”と呼ばれる多国籍企業による巨大資本だ。
 アメリカ国籍のカーギル、コンチネンタル・グレイン、オランダ国籍のブンゲ、フランス国籍のアンドレが五大穀物メジャーといわれ(現在はアメリカのADMが穀物メジャー第2位に急成長した)、全世界における穀物貿易の70~80%のシェアを握っていると推定される。オイルメジャーと並び世界経済の実質的な支配者といっていいだろう。
 日本のように食料の海外依存度が高い国にあっては、不測の事態が生じた時こそ穀物メジャーにビジネスチャンスが生まれる。
 なにしろ、自国の食糧さえ供給できれば、あとは市場で値をつり上げて売ればいい。食糧供給量が減って価格が高騰すれば、それだけ余剰利益を上げられる仕組みとなるからだ。
 こうした構造は、1954年に成立した農業貿易促進援助法(PL480号)にその萌芽を見ることができる。

【『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会(日本文芸社、2004年)以下同】

「カーギル、ブンゲ、ドレフェス、コンチネンタル、アンドレが、その五大穀物メジャーだが、カーギルを除き、すべてユダヤ系資本である」(笑う穀物メジャー。: 日本人は知ってはいけない。)。やっぱりね。ユダヤ人の世界戦略は数千年間にわたる怨念に支えられている。彼らの意趣返しを止めることは決してできない。

 以前から不思議でならないのは日本の食料自給率の低さである。きっと敗戦によって食の安全保障までアメリカに支配されているのだろう。小学校の給食でパンが出るようになったのも「アメリカの小麦戦略」であった。

 軍事・エネルギー・食糧を海外に依存しながら独立国家であり続けることは難しい。牙を抜かれた上に与えられる餌でしか生きてゆくことができないのだから。

 本書は軽薄なタイトルとは裏腹に硬骨な文体で国際情報の裏側に迫っている。

 たとえば、モンサント社はカーギル社の海外種子事業を買収するほか、アメリカ国内はもとより海外の種子企業まで軒並み買収している。市場規模ではアメリカが57億ドルとトップだが、それに次いで日本が25億ドルと、ニュービジネスに賭ける意気込みは強い。

モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子

 アグリビジネスといえば聞こえはいいが、実際に行っているのは大掛かりなバイオテロに等しい。種の自爆テロ。穀物が実るのは一度だけ。農家は永久に種を買い続ける羽目となる。砂漠の民は自然を脅威と捉えて愛することがないのだろう。種に死を命じる発想がやがては人間にも及ぶことだろう。

 そもそも、種子市場で主要輸出国の上位3位を占めるのが、アメリカ、オランダ、フランスとくれば、いかに穀物メジャーと密接なかかわりをもつかは一目瞭然だ。これらで世界の種子輸出の53%をきっちり押さえ、複合的にビジネスが展開されていく。

 いつからだろうか。ビジネスがトレード(交換)を意味するようになったのは。右から左へ物を移して、差額分を儲けるのがビジネスだ。それを労働とは呼びたくない。かつては商いにだって志が存在したものだ。高値で売れればよしとするなら麻薬売買と変わりがない。

 遺伝子組み換え作物の開発主体が、多国籍アグリビジネスであることはもはや周知の事実。1980年台から農業や医薬部門を主力とする多国籍化学企業によるM&Aが進み、モンサント、デュポン、シンジェンダ、アベンティスの4社でシェアのほぼ100%を寡占している状態だ。

 企業はメガ化することで国家を超えた存在と化す。多国籍企業は最も法人税率の低い地域に本社を設置し、オフショアバンクを通じて国家から利益を守りぬく。彼らは租税を回避し、世界中から収奪した富をひたすら蓄え続けるのだ。彼らは飢餓をコントロールできる存在だ。

 エネルギーは少々困ったところで経済的な打撃を受けるだけである。だが食糧が絶たれれば生きてゆくことは不可能だ。その時になってから戦争を始めても遅い。

2011-08-31

遺伝子組み換えトウモロコシを食べる害虫が増殖中、米国


 ウエスタン・コーン・ルートワームという代表的なトウモロコシの害虫に、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシが出す毒素に対する耐性が広がりつつあり、トウモロコシ生産者にとって新たな脅威となりつつある。
 イリノイ大学(University of Illinois)のマイケル・グレイ(Michael Gray)教授(作物科学)は「ウエスタン・コーン・ルートワームは米国で最も多いトウモロコシの害虫で、欧州でも増える可能性がある」と説明する。
 これまでのところ耐性の拡大は限定的だとみられているが、専門家たちは耐性を持った害虫がまん延すればトウモロコシ生産者は再び農薬の大量使用を余儀なくされるだろうと警告している。また、害虫が耐性を獲得しにくい方法でGMトウモロコシを栽培する必要があると指摘している。

2009年に初めて見つかる

 トウモロコシ生産者は従来、同じ土地に性質の違う数種類の作物を順番に作付けする輪作を行って害虫被害を防いできた。しかしこの害虫は、トウモロコシと組み合わせて輪作されることが多い大豆にも卵を産むようになったため、農家は農薬を使用せざるを得なくなった。グレイ教授によると、ウエスタン・コーン・ルートワームは頑強で順応性も高く、いくつかの農薬への耐性も持ち始めているという。
 米バイオ企業大手モンサント(Monsanto)は2003年、この害虫に強いGMトウモロコシの種を発売した。以降、米国のGMトウモロコシの作付面積は増え、2009年には国内で収穫されたトウモロコシの45%をGMトウモロコシが占めるようになった。
 だが、2009年にこの害虫による大きな被害を受けたアイオワ(Iowa)州の4か所のトウモロコシ畑で、GMトウモロコシへの耐性を持ったタイプが初めて発見された。今年はイリノイ(Illinois)州でGMトウモロコシがこの害虫による食害被害を受けた。グレイ教授はここで見つかった害虫がGMトウモロコシ毒素への耐性を持っているかどうか調べている。
 前月発表された研究結果では、アイオワのトウモロコシ畑で見つかった害虫は、GMトウモロコシ毒素への耐性を子孫にも引き継いでいることが分かった。

輪作や「おとり作物」栽培をしっかりと

 アイオワ州立大学(Iowa State University)のアーロン・ガスマン(Aaron Gassmann)主任研究員は、「この結果は、害虫の耐性獲得管理を改善するとともに、Bt作物(毒素を出すバチルス・チューリンゲンシスという細菌の遺伝子を組み込んだ作物)の使用にあたって統合的なアプローチを取る必要性を示唆している」と、研究報告書のなかで指摘した。
 耐性を持つ害虫が発見された畑では、少なくとも3年連続してGMトウモロコシを栽培していた。このことが、害虫が耐性を獲得する一因になったとガスマン氏は考えている。
 さらにガスマン氏は、もう一つの要因として「おとり作物」の作付け不足を挙げた。トウモロコシ農家は、農地の20%に遺伝子組み換えではない普通のトウモロコシを植えることになっている。耐性を持つ害虫が発生しても、耐性を持たない害虫と交配すれば耐性を次世代へ引き継ぐ可能性が減るからだ。
 すでにモンサントは、政府が義務付けるおとり作物の栽培を容易にするため、1袋にGMとそうでないトウモロコシの種を混ぜたセットを販売しているほか、耐性を持つ害虫が大量発生した場合に代替となる数種類の作物を販売しており、さらに新品種も開発中だという。
 モンサントは耐性を持つ害虫が増えているという研究結果を深刻に受け止めていると話しているが、既存のGM作物は作付けした土地の99%以上で良好な結果が出ているとして、農家が既存のGM作物の栽培を止める理由は何もないと主張している。

AFP 2011-08-31

モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子

2012-01-23

種は神の恵み モンサントには渡さない


 Natabar Sarangi さんの使命は地元の農家の人たちとともに、土着の米の種(稲)を見つけだし、保存し、共有することです。現在まで、彼は350種類の土着のお米を再び、導入することに成功­しました。

モンサント

2011-10-22

9.11テロに関する仏ネオコンのプロパガンダ


 9.11テロの政府陰謀説を否定するため放送局ARTEが放映したプロパガンダ・ドキュメンタリーの分析。




グレゴリウス15世(ローマ教皇)

布教聖省
1622年、全世界の宣教活動を指導するために創設された教皇庁の行政機関。教皇グレゴリウス15世の命により正式に発足、「プロパカンダ」とも呼ばれ、1649年の資料では、26宣教団と300名以上の宣教師を指導。

VII 近代世界のキリスト教 2

福音宣教省
PNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)
“米帝国論”のシンクタンク アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子

 アメリカにおいてシンクタンクが作るのは政策というよりも「政治レベルの教義」であることがよく理解できる。

プロパガンダ[新版]プロパガンダ教本精神分析学入門 (中公文庫)群衆心理 (講談社学術文庫)

戦争プロパガンダ 10の法則プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜くメディアとプロパガンダ

2012-04-06

「Money As Debt」(負債としてのお金)


「腐敗した銀行制度」カナダ12歳の少女による講演
30分で判る 経済の仕組み

 ・「Money As Debt」(負債としてのお金)

武田邦彦『現代のコペルニクス』 日本の重大問題(2)国の借金
『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康
『マネーの正体 金融資産を守るためにわれわれが知っておくべきこと』吉田繁治
『〈借金人間〉製造工場 “負債"の政治経済学』マウリツィオ・ラッツァラート


 直訳すれば「負債としてのマネー」。お金ができる仕組み。銀行の詐欺システム。

学校の先生が絶対に教えてくれないゴールドスミス物語
信用創造のカラクリ
ある中学校のクラスでシャーペンの芯が通貨になった話
『モノポリー・マン 連邦準備銀行の手口』
『アメリカ:自由からファシズムへ』アーロン・ルッソ監督
モンサント社が開発するターミネーター技術]/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
ネイサン・ロスチャイルドの逆売りとワーテルローの戦い/『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う』宋鴻兵

2014-11-20

ウィリアム・ブルム、菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄


 2冊読了。

 91冊目『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム:益岡賢〈ますおか・けん〉訳(作品社、2003年)/必読書入り。『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』ナオミ・クラインを読んだ人は必読のこと。まだ読んでいない人はこちらから読むべし。これほど胸の悪くなる本を知らない。私は長らく世界の癌はイスラエルでその次にアメリカだと思い込んでいた。アメリカは病める大国にして世界最悪のテロリスト国家であった。その歴史的事実がこれでもかと羅列されている。因みに菅沼本では徹底してアメリカ批判が展開されているが菅沼は反米ではない。私は反米であり反イスラエルである。しかし反ユダヤではない。正確に言えば反シオニズムだ。安全保障をアメリカに委ねている我々日本人はアメリカの実態を知らねばならない。彼らはその矛先を既に国内のアメリカ人にまで向けている。TPPが実現する前に本書を一読することを強く勧める。

 92冊目『見えてきたぞワンワールド支配者の仕掛け罠 神国日本八つ裂きの超シナリオ 絶対に騙されるな! モンサントと手を組む日本企業はこれだ』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄〈あすか・あきお〉(ヒカルランド、2012年)/ベンジャミン・フルフォードといえば陰謀本である。菅沼はそれを逆手に取って言いにくい情報を語る場としたのであろう。トンデモ本と思わせておけば危険は少なくなる。あとは読み手の力量次第だ。

2011-09-17

世界情勢を読む会、矢野絢也


 2冊読了。

 63冊目『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会(日本文芸社、2004年)/息抜きのつもりで読んだのだが予想以上に面白かった。確かに裏面史ではあるが内容は硬派。経済的なつながりが浮き彫りにされており、ニュースの裏側がわかる仕組みとなっている。モンサント社に関する記述もあり、もっと早く読むべきであったと反省。

 64冊目『「黒い手帖」裁判全記録』矢野絢也〈やの・じゅんや〉(講談社、2009年)/前著の『黒い手帖 創価学会「日本占領計画」の全記録』と大半が重複した内容。高裁で逆転判決が出て矢野側が勝訴したので出版に至ったのだろう。内容的には前著の方が優れている。公明党OBである大川清幸〈おおかわ・きよゆき〉元参議院議員、伏木和雄〈ふしき・かずお〉元衆議院議員、黒柳明参議院議員の3名が、矢野から100冊を超える手帳を強奪したことが明らかになった。また幾度となく創価学会の幹部複数名が億単位の寄付を強要している。

2014-10-18

アメリカの穀物輸出戦略/『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘


『日本はテロと戦えるか』アルベルト・フジモリ、菅沼光弘:2003年
『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘:2006年
『菅沼レポート・増補版 守るべき日本の国益』菅沼光弘:2009年
『この国のために今二人が絶対伝えたい本当のこと 闇の世界権力との最終バトル【北朝鮮編】』中丸薫、菅沼光弘:2010年
『日本最後のスパイからの遺言』菅沼光弘、須田慎一郎:2010年
『この国の権力中枢を握る者は誰か』菅沼光弘:2011年

 ・教科書問題が謝罪外交の原因
 ・アメリカの穀物輸出戦略
 ・中国の経済成長率が鈍化
 ・安倍首相辞任の真相

『日本人が知らないではすまない 金王朝の機密情報』菅沼光弘:2012年
『国家非常事態緊急会議』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄:2012年
『この国はいつから米中の奴隷国家になったのか』菅沼光弘:2012年
『誰も教えないこの国の歴史の真実』菅沼光弘:2012年
『この世界でいま本当に起きていること』中丸薫、菅沼光弘:2013年
『神国日本VS.ワンワールド支配者』菅沼光弘、ベンジャミン・フルフォード、飛鳥昭雄
『日本を貶めた戦後重大事件の裏側』菅沼光弘:2013年

 TPPによって日本が受ける打撃のなかでも、とりわけ農業は深刻な状況に直面することになります。ブッシュ前大統領はいみじくも「主食をよその国に依存しているような国家は独立国家とはいえない」と言いましたが、アメリカがターゲットにしている一つは、まさに日本の主食の自給率をゼロに持っていくことです。
 いま日本人の主食である米の自給率は95%以上を確保していますが、小麦は十数パーセント(ママ)の自給率でしかなく、トウモロコシは100%輸入に頼っています。そして小麦の50%以上、トウモロコシの90%以上をアメリカから輸入しています。こうした構図になったのには理由があって、これまたアメリカの食糧戦略の結果なのです。
 戦後間もない1950年代、アメリカは大量の小麦をかかえて、これをどうさばくか頭を悩ませていました。そこで目をつけたのが、まだ復興途上の敗戦国日本です。そのために何をしたかというと、まずアメリカは余剰農産物処理法という法律をつくり、アメリカの余剰農産物はドル決済ではなくて輸入国の通貨で購入できるとしたのです。当時の日本にドルの蓄えなどありませんから、円で決済できるとなればこれはありがたいと、余剰小麦の輸入に飛びつきました。しかし、アメリカの戦略のすごいところはそれからです。
 余剰農産物処理法には、売却した代金の一部を輸入国内にプールし、アメリカ農産物の宣伝および市場開拓のために使用できる、また余剰農産物の一部は無償で学校給食に供与できるとあって、本来、日本政府から支払われた輸入代金を使って、アメリカは小麦のPR活動を展開するとともに、学校給食はパン食にするというシステムをつくりあげます。当時、小学生だった人はよく憶えているでしょうが、コッペパンに脱脂粉乳というのが学校給食になったのです。もちろん脱脂粉乳もアメリカから提供されたものです。
 一方、厚生省はアメリカの意を受けて、食生活改善運動としょうして日本食生活改善協会という外郭団体を立ち上げ、キッチンカーというものを全国に巡回させて、パンを食べましょう、卵を摂(と)りましょうと小麦粉料理の講習事業を展開しました。さらにマスメディアを使って、日本人の主食である米については、「米ばかり食べていると頭が悪くなる」「脚気(かっけ)や高血圧になる」「背骨が萎縮(いしゅく)する」などとネガティブキャンペーンもやっています。もちろんこれらの活動資金はアメリカが日本国内にプールした円から支出されました。
 その結果どうなったか。1960年頃を境に日本人の食生活ががらりと変わっていきました。それまで一人辺り年間120キロ近くの米を食べていたのが、1960年以降は年々減り続け、いまや半分の60キロまで落ち込んでいます。日本人の主食が完全に様変わりしてしまったのです。国民の主食がこれほど劇的に変化した国は他にありません。
 アメリカの戦略はつねにこうなのです。決して焦らない。時間と金をかけて根底から変革していく。そしてその国の国民が気がついたときには、もはや取り返しがつかないという状態まで追い込んでいくのです。

【『この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?』菅沼光弘(徳間書店、2012年)】

 アメリカの余剰小麦が給食になったのは知っていたが、円で決済ができたとは知らなかった。これこそソフトパワーだ。当時の日本政府は「アメリカの善意」を信じて疑わなかったことだろう。戦略とは物語でもある。食べることを目的にしている国家が、売ることを目的としている国家にかなうわけがない。

 私は菅沼は信用できるが、佐藤優はどうも信用できない。佐藤は鈴木宗男との人間関係を通して信義を貫いたような印象を巧みに演出しているが、該博な知識で何かを隠蔽(いんぺい)しているような疑惑を払拭することができない。きっとイスラエルのスパイだろうと私は睨(にら)んでいる。佐藤はTPP賛成で、同じく官僚上がりの江田憲司もTPPに賛成している。しかも理由が同じなのだ。「日本がアメリカブロックを選ぶか、中国ブロックを選ぶかという選択肢だ」と。

 菅沼によれば、田中角栄がロッキード事件で失脚したことによって、日本の政治家はアメリカを恐れ、尻尾を振るようになったという。ロッキード事件は日中国交回復に激怒したキッシンジャーが仕掛けたものだ。日本の首相は誰が務めようとアメリカのコントロール下にある。そもそも国家の安全保障をアメリカに委ねているのだからアメリカに頭が上がらないのも当然だ。

 エネルギーと食糧は戦略物資なのだ。しかも穀物を始めとする農産物は生産に一定期間を要する。そして市場を席巻するF1種には種がならない。一代限りの野菜なのだ。またモンサント社を始めとする巨大アグリ産業は農業を完全支配しつつある(『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子)。そしてビル・ゲイツはスヴァールバル世界種子貯蔵庫に3000万ドルを投資している。

 そろそろアングロサクソンの誇大妄想と被害妄想が世界を混乱させている事実に我々は気づくべきだろう。



戦後アメリカの小麦戦略/『味噌をまいにち使って健康になる』渡邊敦光
赤い季節/『北朝鮮利権の真相 「コメ支援」「戦後補償」から「媚朝派報道」まで!』野村旗守編
現代の小麦は諸病の源/『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス
余ったトウモロコシのために清涼飲料水が発明された/『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二

2009-10-10

世界銀行の副総裁を務めた日本人女性/『国をつくるという仕事』西水美恵子


田坂広志『なぜ、我々は「志」を抱いて生きるのか』

 ・世界銀行の副総裁を務めた日本人女性

『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』ジョン・パーキンス

 面白かった。国際社会が政治力学のみで動いているわけではないことがわかる。西水美恵子はサザエさんそっくりだ。性格はもとより顔つきまで似ている。ただし、この人は良家の出。これが読み始めた際の印象を悪くした。途中で一度挫けそうになったことを白状しておこう。本書のタイトルも同様で、「フン、金貸し風情が随分と大きく出たもんだ」と思わざるを得ない。

 ただ、こうした違和感は上流階級の文化に基くものであり、所詮は庶民のひがみなのだろう。鼻につく表現が時折見られるが、それは西水が育ってきた環境を形成している文化であって、私は彼女の人間性を批判するつもりはない。

 西水はイギリス人男性と結婚。夫はIMF(国際通貨基金)に勤務し、本人はプリンストン大学の助教授をしていた。

 チェネリー副総裁は、そんな不真面目な私を笑いながら、契約にひとつの条件を出した。
「一国でもいい。発展途上国の民の貧しさを、自分の目で見てくるように……」
 プリンストンの修士課程を終えて世銀で活躍していた教え子が、それならエジプトがいいと誘ってくれた。彼が率いる開発5カ年計画調査団に同行して、首都カイロへ飛んだ。
 週末のある日、ふと思いついて、カイロ郊外にある「死人の町」に足を運んだ。邸宅を模す大理石造りの霊廟がずらりと並ぶイスラムの墓地に、行きどころのない人々が住み着いた貧民街だった。
 その街の路地で、ひとりの病む幼女に出会った。ナディアという名のその子を、看護に疲れきった母親から抱きとったとたん、羽毛のような軽さにどきっとした。緊急手配をした医者は間にあわず、ナディアは、私に抱かれたまま、静かに息をひきとった。
 ナディアの病気は、下痢からくる脱水症状だった。安全な飲み水の供給と衛生教育さえしっかりしていれば、防げる下痢……。糖分と塩分を溶かすだけの誰でも簡単に作れる飲料水で、応急手当ができる脱水症状……。
 誰の神様でもいいから、ぶん殴りたかった。天を仰いで、まわりを見回した途端、ナディアを殺した化け物を見た。きらびやかな都会がそこにある。最先端をいく技術と、優秀な才能と、膨大な富が溢れる都会がある。でも私の腕には、命尽きたナディアが眠る。悪統治。民の苦しみなど気にもかけない為政者の仕業と、直感した。
 脊髄に火がついたような気がした。

【『国をつくるという仕事』西水美恵子〈にしみず・みえこ〉(英治出版、2009年)】

 ナディアの死が西水の人生を変えた。不正が罪なき人を殺す現場に遭遇した瞬間、それまでは自分のものであった人生を、彼女は貧しい人々に捧げることを決意した。

 本をどう読むかは、「人をどう見るか」、「人生をどう生きるか」といった次元に連なっている。そこに如何なる価値を見出し、反価値(マイナス価値)を見定めるか――物語を読み解く営みの本質はこの一点にある。手放しの称賛は目を曇らせる。頭ごなしの批判は目を閉じさせる。仏像が半眼(はんがん)であるのは、あの世とこの世を見つめているとされているが、結局のところは“正視眼”(せいしがん)の肝要さを示しているのだろう。

 本書は西水の経験に即して書かれており、世界銀行という存在の正当性については全く触れられていない。例えば、ブッシュ政権で国防副長官を務めたポール・ウォルフォウィッツが、その後世界銀行の総裁に就任している。彼は「米国で最も強硬なタカ派政治家」だよ。タカ派というのは、舌禍(ぜっか)でもって世論に波風を立て、センセーショナルな言動をぶちまけて世論を誘導しようと目論む。石原慎太郎のように。エゴが国家の名をまとうと、何となく説得力を持ってしまう。さしたる考えもなしで、「やっぱり、俺も日本人だからなあ」と頷いてしまう。ここが恐ろしい。

愛国心への疑問/『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆

 チト、余談が過ぎた。ま、そんなわけで物足りなさを感じはするものの、西水というサザエさんは本気で仕事をした。副総裁となった彼女が接する相手は国家元首クラスの連中だ。彼等の前で常識を説くことが、どれほど勇気を要することか。だが、胸にナディアを抱く西水は、真っ直ぐな言葉を浴びせる。

 決して一筋縄ではいかない国際舞台で、一人の日本人女性が必死で貧しい人々の側に立って、与えられたポジションを最大限に利用し、奮闘した足跡が綴られている。悪しき権力者に対して、西水の筆鋒は鋭さを増す。遠慮するところが全くない。その意味で本書は、「権力の正しい使い方」を描いた作品といってよい。

 民主党政権は西水を閣僚に起用すべきだった。

 尚、余談となるが田坂広志の「解説」が薄気味悪い。まるで新興宗教の教祖みたいだ。



モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
ソフィアバンク
ガバナンス・リーダーシップ考:西水美恵子

2009-04-11

信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン


 ・信用創造のカラクリ
 ・帝国主義による経済的侵略

『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代
『円の支配者 誰が日本経済を崩壊させたのか』リチャード・A・ヴェルナー

 我々の社会における「信用」とは何であろうか? 本来であれば人柄が織りなす言葉や行動に対して向けられるべきものだが、実際は違っている。資本主義社会における信用とは、「どれだけのお金を借りることができるか」という一点に収斂(しゅうれん)される。信用=クレジット(credit)。つまり、“与信枠”を意味する。もちろん、ヒエラルキーの構成要素もこれに準じている。

 資本とはお金のことだ。で、お金は銀行にある。資本主義経済において銀行は心臓の役目を担っている。続いて銀行の機能を紹介しよう。

 一言でいえば、「銀行とは、準備預金制度のもとで信用創造を行う業態」のこと。話を単純にすれば、「銀行が日銀に金を預ければ、その1000倍貸し出しても構わないよ」(※「準備預金制度における準備率」〈500億円超〜5,000億円以下〉を参照)という仕組みになっている。上手すぎる話だ。私にも一口乗らせて欲しい。

 すると理論的には以下のようなことも可能となる――

 例えば、銀行は1ドルの資本につき、12ドルの貸付をするかもしれない。なぜこれが可能かと言えば、貸し出された資金は使われるか、再び銀行システムに預けられるのかの、いずれかだからだ。使われた場合、その資金は再び使われるか、再び預けられる。貸し出された資金はすべて預金として戻ってくるため、再び貸し出すことができる。理論的には、1ドルの資本で世界中の貸付金を賄うことも可能だ(実際にこれを試みる人たちもいる)。

【『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン:櫻井祐子訳(パンローリング、2008年)】

 2007年7月27日からマーケットにサブプライムショックが襲い掛かった。そして昨年9月15日に米大手証券会社のリーマン・ブラザーズが破綻し、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が危機に見舞われた。

 一連の出来事を、「週刊スモールトーク」のR.B氏が絶妙な例えで解説している――

 ここで、今回の問題を整理しよう。個々は複雑だが、全体はいたってシンプルだ。身なりのいいセールスマンが、「100円+50円」と書かれた紙切れを売りさばいていた。曰く、
「この証書を100円で購入すると、1年後には150円になりますよ」
「集めたカネで宝くじを買って、それで支払うつもりです」
「大丈夫かって?」
「ご心配無用。保険をかけてありますから」
「宝くじにはずれても、保険会社が払ってくれますよ」

 こうして、セールスマンはこの紙切れを、世界中に売りさばいたが、運悪く? 宝くじははずれてしまった。ところが、あてにしていた保険会社は、額が多すぎて払えないという。金融世界を守る最後の砦が、いとも簡単に崩壊したのである。

【「世界恐慌I ビッグ3ショック」】

 結局のところ、問題の本質は「信用バブル」にあったという鋭い指摘だ。

 色々とネットを調べていたところ、物凄い動画を発見した。私がダラダラと何かを書くより、こちらを見た方が100倍以上も有益だ。タイトルは「Money As Debt」(負債としてのお金)。メディアが絶対に指摘しない資本主義システムの欺瞞が暴かれている。→「Money As Debt


学校の先生が絶対に教えてくれないゴールドスミス物語
ロスチャイルド家
「ロックフェラー対ロスチャイルド」説の研究
ある中学校のクラスでシャーペンの芯が通貨になった話
マネーサプライ(マネーストック)とは/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人
『アメリカ:自由からファシズムへ』アーロン・ルッソ監督
『モノポリー・マン 連邦準備銀行の手口』日本語字幕版
・『Zeitgeist/ツァイトガイスト(時代精神)』『Zeitgeist Addendum/ツァイトガイスト・アデンダム』日本語字幕
・ファイナンシャル・リテラシーの基本を押さえるための3冊
・サブプライム問題と金融恐慌
モンサント社が開発するターミネーター技術/『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』安田節子
マネーと民主主義の密接な関係/『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康

2009-02-21

砂漠の民 ユダヤ人/『離散するユダヤ人 イスラエルへの旅から』小岸昭


 流浪の民ユダヤ人は、砂漠に追放された民でもあった――

「私にとって、砂漠の経験はまことに大きなものでした。空と砂の間、全と無の間で、問いは火を噴いています。それは燃えていますが、しかし燃え尽きはしません。虚無の中で、おのずから燃え立っております。」(「ノマド的エクリチュール」
「おまえはユダヤ人か」という火を噴くような問いを、このように「砂漠」を憶(おも)いつづける自分自身につきつけて思考するのは、エドモン・ジャベス(1912-91)である。エジプトからヨーロッパの大都市パリへ移住してきたこの詩人は、さらにこれにつづけて、「他方で、砂漠の経験は研ぎすまされた聴覚とも関係があります。全身を耳にする経験と言っても差しつかえありません」と言う。ジャベスのこのような「砂漠の経験」の根底には、当然のことながら、追放という濃密なユダヤ性が鳴りひびいている。
 エードゥアルト・フックスによれば、少なくとも1000年間は砂漠の中に暮らしていたというユダヤ人は、その「研ぎすまされた聴覚」によって、迫り来る危険をいち早く察知する能力を身につけていた。砂漠の遊牧民だったユダヤ人は、地平線から近づいてくる「生きもの」が獣であるか人間であるかを、そのかすかな音を耳にした途端すでに聞き分け、刻々と変化する危険な事態を乗り切るため、つぎの行動に素早く移行しなくてはならない。こうして砂漠の経験は、忍び寄る危険の察知能力ばかりでなく、あらゆる状況の変化への同化能力を彼らの中に発達させた。

【『離散するユダヤ人 イスラエルへの旅から』小岸昭〈こぎし・あきら〉(岩波新書、1997年)】

 実に味わい深いテキスト。砂漠という空間と、ユダヤ民族という時間が織り成す歴史。

 養老孟司が『「わかる」ことは「かわる」こと』(佐治晴夫共著、河出書房新社)の中で興味深いことを語っている。耳から入る情報は時間的に配列される。つまり、因果関係という物語は耳によって理解される。一方、眼は空間を同時並列で認識する。

 つまり、だ。迫害され続けてきたユダヤ人は、歴史の過程で「強靭な因果」思想を構築したことが考えられる。彼等が生き延びるためにつくった物語はどのようなものだったのだろうか。そこにはきっと、智慧と憎悪がたぎっていることだろう。

 民族が成立するのは、「民族の物語」があるからだ。そして民族は、過去の復讐と未来の栄光を目指して時が熟すのを待つようになる。



穀物メジャーとモンサント社/『面白いほどよくわかる「タブー」の世界地図 マフィア、原理主義から黒幕まで、世界を牛耳るタブー勢力の全貌(学校で教えない教科書)』世界情勢を読む会
シオニズムと民族主義/『なるほどそうだったのか!! パレスチナとイスラエル』高橋和夫
中東が砂漠になった理由/『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男

2011-08-19

副島隆彦、一ノ瀬正樹、ポール・ホーケン


 3冊挫折。尚、前回から挫折本の冊数をカウントするのをやめた。読了率を示すことに意味があるとは思えないため。五十の坂が近づいているので、とにかくムダな本を避けなくてはならない。

新たなる金融危機に向かう世界』副島隆彦〈そえじま・たかひこ〉(徳間書店、2010年)/おっかなびっくり開いて飛ばし読み。言葉遣いが2ちゃんねらーと同じレベルだ。きっと小室直樹の負の部分だけを譲り受けてしまったのだろう。ものの考え方が極端を超えて破綻の領域に突入している。一部からカルト的人気を博しているようだが、ただのカルトだと思う。

原因と結果の迷宮』一ノ瀬正樹(勁草書房、2001年)/狙いはいいのだが文章がまどろっこしい。妙なわかりやすさを演出したのではあるまいか。そのため文章が迷宮のようになっている。

祝福を受けた不安 サステナビリティ革命の可能性』ポール・ホーケン:阪本啓一訳(バジリコ、2009年)/「レイチェル・カーソン『沈黙の春』の精神を受け継ぐベストセラー」と見返しに書いてあるのを見てやめた。多分イデオロギー宣揚が目的なのだろう。内容は決して悪くはないと思う。モンサント社に対する批判も書かれている。それから、わけのわからんカタカナ語をタイトルに使用するのは賢明ではない。