2009-08-15

紙幣とは何か?/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・本格的な経済の問題は紙幣の発明とともに起こった
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

 我が国における紙幣とは「日本銀行券」のことである。私はこれを小学生の時分にクイズで知った。よもや、こんな妙ちきりんな名前だとは夢にも思わなかった。「券」だと? じゃあ、映画のチケットと変わりがないことになる。しかし、流通の範囲がべらぼうに異なる。ただ、日本全国のお店、会社で取引可能な商品券と考えると腑に落ちる。

「紙幣(しへい)とは、広義には、公的権力(主に国家)により通貨として強制通用することが認められている紙片である」(Wikipedia)――何だ、この素っ気ない言い方は(笑)。まるで、大金持ちの坊っちゃんが「ケッ、こんなモンは所詮紙切れなんだよ」と捨てゼリフを吐いているように聞こえる。

 ミヒャエル・エンデは紙幣の意味を法律家に問い質(ただ)した――

「私は10人の法律家に手紙を書き、法律的見地から銀行券とは何かと尋ねました。それは『法的権利』なのか、国家がそれを保証するのか。もしそうなら『お金』は経済領域に属さず、法的単位ということになります。『法的単位』なら商いの対象にはできません。しかし、そうではなく経済領域に属するものなら、それは商品といえます。10人の法律家からは10通りの返答がきました。つまり、法的に見て、銀行券とは何なのかを私たちはまるで知らないわけです。定義は一度もされませんでした。私たちは、それが何か知らないものを、日夜使っていることになります。だからこそ、『お金』は一人歩きするのです」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 何ということか。我々は紙幣の意味もわからずに紙幣を使い、紙幣を追い求め、紙幣のためにあくせくと生きていたのだ。もっと混乱させてあげよう。では、紙幣と貨幣はどのように違うのか? 紙幣は日本銀行が発行し、貨幣は国が発行する。で、発行元が異なる理由もわからない。

 疑問はどんどん膨らむ。国立印刷局が紙幣を印刷し、造幣局が貨幣を鋳造すると、どの程度の報酬が支払われているのであろうか? ちなみに、券種を問わず紙幣1枚あたりの印刷代は約16円である(廣宮孝信著『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』彩図社、2009年)。これぞ錬金術(笑)。

 脳がそうした性質を持つことから、われわれがなぜお金を使うことができるかが、なんとなく理解できる。お金は脳の信号によく似たものだからである。お金を媒介にして、本来はまったく無関係なものが交換される。それが不思議でないのは(じつはきわめて不思議だが)、何よりもまず、脳の中にお金の流通に類似した、つまりそれと相似な過程がもともと存在するからであろう。

【唯脳論宣言/『唯脳論』養老孟司】


・「国家」と「貨幣」は人間を超越する/『ナショナリズムという迷宮 ラスプーチンかく語りき』佐藤優、魚住昭

 ということは、だ。お金とは「情報」ということに落ち着く。つまり貨幣とは、交換媒介機能、価値尺度機能、価値保蔵機能を併せ持った情報なのだ。永井俊哉氏は貨幣の機能を「コミュニケーションメディアである」としている。

 この情報は、一般的に労働の対価として考えられている。多くの人々がそのように考えることは国家権力にとって甚だ都合がよい。では、目覚めた民衆となるべく二つの疑問を提示して今回は筆を擱(お)こう。

 労働の対価は正当に支払われているのか? 労働以外にお金を獲得する方法はないのか?

エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社+α文庫)
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2009-08-13

貨幣経済が環境を破壊する/『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳、グループ現代


 ・貨幣経済が環境を破壊する
 ・紙幣とは何か?
 ・「自由・平等・博愛」はフリーメイソンのスローガン
 ・本格的な経済の問題は紙幣の発明とともに起こった
 ・世界金融システムが貧しい国から富を奪う
 ・利子、配当は富裕層に集中する

『デジタル・ゴールド ビットコイン、その知られざる物語』ナサニエル・ポッパー

 お金は不思議な存在だ。お金は本来であれば単なる約束事に過ぎない。ところが等価交換の物差しが、いつしか目的と化してしまっている。「金に物を言わせる」という表現があるように、お金は雄弁だ。そして言葉の如く流通する。

 お金の意味を我々は知っているようで知らない。学校で教わることもなかった。お金に関する何冊かの本を読んできたが、疑問は膨らむ一方だった。しかし、本書を読んで私の蒙(もう)は啓(ひら)かれた。貨幣の欺瞞、信用創造のインチキを本書は十全に暴いている。

 唯一の難点は、ミヒャエル・エンデの言葉にキリスト教的な臭みがあることだ。謙遜が慇懃無礼(いんぎんぶれい)のレベルに達している。ま、死者はいつだって美化されるということか。

 重要な内容を鑑み、何度かに分けて書く予定である。

 まずは、「貨幣経済が環境を破壊する」事実を示す――

「紙幣発行が何をもたらしたのか? 一つの実例が、ビンスヴァンガーの著書に出ています。たしかロシアのバイカル湖だったと思いますが、その湖畔の人々は紙幣がその地方に導入されるまではよい生活を送っていたというのです。日により漁の成果は異なるものの、魚を採り(ママ)自宅や近所の人々の食卓に供していました。毎日売れるだけの量を採っていたのです。それが今日ではバイカル湖の、いわば最後の一匹まで採り尽くされてしまいました。どうしてそうなったかというと、ある日、紙幣が導入されたからです。それといっしょに銀行のローンもやってきて、漁師たちは、むろんローンでもっと大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を採用しました。冷凍倉庫が建てられ、採った魚はもっと遠くまで運搬できるようになりました。そのために対岸の漁師たちも競って、さらに大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を使い、魚を早く、たくさん採ることに努めたのです。ローンを利子つきで返すためだけでも、そうせざるをえませんでした。そのため、今日では湖に魚がいなくなりました。競争に勝つためには、相手より、より早く、より多く魚を採らなくてはなりません。しかし、湖は誰のものでもありませんから、魚が一匹もいなくなっても、誰も責任を感じません。これは一例に過ぎませんが、近代経済、なかでも貨幣経済が自然資源と調和していないことがわかります」

【『エンデの遺言 「根源からお金を問うこと」』河邑厚徳〈かわむら・あつのり〉、グループ現代(NHK出版、2000年/講談社+α文庫、2011年)】

 これは、アーロン・ブラウンの主張と全く同じである。

帝国主義による経済的侵略/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン

 ブラウンが結論を人間不信に着地させたのに対し、エンデは環境破壊に結びつけている。

 貨幣経済は、将来の価値を先取りするために現在の環境を踏みにじる。人間は未来に生きる動物といえる。そして「未来=蓄え」を意味する時、人は現在を犠牲にする。

 ここで行われていることは「未来を先取りする競争」である。つまり、貯蓄を可能にした貨幣経済は、「未来を奪い合う」社会を招来する結果となる。しかもこの未来は、人類全体のものではない。ということは、「エゴの競争」である。

 エゴイズムは限りなく肥大する。肥大したエゴイズムを地球環境は支えることができない。「自分さえよければ」という生き方が、湖の魚を獲り尽くしてしまった。人間の未来が魚の未来を奪ったのだ。共存の崩壊。

 お金は未来である。とすると、蓄えられたお金は意志を持つようになる。エゴ未来は人間を、畜生道の下の餓鬼道に引き摺り込む。ここにおいて人間は動物以下の存在と化す。

 お金はエゴイズムに火を点ける。お金を持っている人は確かに幸せだ。だが、お金から離れられる人はもっと幸せではなかろうか。

 欲望は否定されるものではなくして、コントロールされるべきものである。「少欲知足の経済」を実現しなければ、地球の寿命は短くなる一方だ。

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Ende`s Last Will
信用創造のカラクリ/『ギャンブルトレーダー ポーカーで分かる相場と金融の心理学』アーロン・ブラウン
・時は金なり/『反社会学講座』パオロ・マッツァリーノ