・『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール
・『不可触民 もうひとつのインド』山際素男
・ジョン・ケネス・ガルブレイスの人種差別
しかしそこに政治が介入してきた。
ジョン・ケネス・ガルブレイス。新任の駐インドアメリカ大使で、ケネディの最も信頼する顧問の一人であり、チベット問題に公然と反対する人物であった。数々の肩書きを持ち、明らかに無視できない相手であった。即ちハーバード大学教授にして、経済学者、作家、テレビコメンテーター、雑誌「フォーチュン」編集委員、そしてケネディ一族と親交がある、といった具合だ。さらに重要なのは、アイゼンハウアー時代に培ってきたパキスタンとの友好関係を犠牲にしてでも、インドとより友好的な関係を結ぶのがアメリカのアジア政策に欠くことのできない必須条件だとするケネディ自身の意向を彼が反映していたという点である。ガルブレイスのチベット計画への反対は、チベットに対する個人的嫌悪感にまで達していた。曰く「チベット人は不愉快で野蛮であり、恐ろしく非衛生的人種だ」とまで決めつけていた。
ガルブレイス・インド大使は、ムスタンであろうとチベット本土であろうと、いかなる補給物資の空中投下にも反対するロビー活動を強めていた(備忘録にガルブレイスは臆面もなく、CIAのチベットへの援助を直ちに止めるよう国務省に忠告した、と書いていた。そしてケネディに対する自分の影響力で、CIAのチベット援助を最小限度に抑えるのに成功したと豪語している)。大使がアメリカの外交政策を決めていたわけではないにしろ、インドに関してはケネディの目と耳であり、ケネディを通してムスタンへの空中補給に関する生殺与奪(せいさつよだつ)の権を行使していたことになる。 ネールの中共への迎合的態度からしてインドの協力的態度を望めなかったし、彼の右腕とされる親共的国防相クリシュナ・メノンは大のアメリカ嫌いであり、アメリカCIAの意向がケネディの新しい政策に受け入れられないことをつとに読んでいた。かくしてムスタンへの空からの補給は頓挫することになった。
そればかりでなく、キャンプ・ヘイル関係者の多くは部署替えになった。ロジャー・マッカーシーは台湾担当となり、ケネディ-ガルブレイス-ネールの“いい仲”はその後も長くつづいてチベット特別チームもお仕舞いかと噂されるまでになった。
もちろんムスタンのゲリラはアメリカの政策転換など夢にも知らず、ただただ生き延びるこに必死であった。
こうした危機的状況を一気に変え、ネールをして一転、親チベット派に豹変させる大事件が発生した。1962年10月22日、中共がインドを侵略したのである。
【『中国はいかにチベットを侵略したか』マイケル・ダナム:山際素男〈やまぎわ・もとお〉訳(講談社インターナショナル、2006年)】
ジョン・ケネス・ガルブレイス - Wikipedia https://t.co/jNuQ0SehIY pic.twitter.com/MWGUCdxLnh
— 小野不一 (@fuitsuono) January 29, 2020
先ほど流れてきたニュースを紹介しよう。
米下院、チベット支援法案を可決 中国の後継者選び介入をけん制
2020年1月29日 18:50 発信地:ワシントンD.C./米国
【1月29日 AFP】米下院は28日、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世(84)の後継者選びに介入する中国当局者への制裁を許可する法案を可決した。
法案によると米政府は、政府が承認する後継者の「特定や任命」に関与したことが発覚した中国当局者に対し、米国にあるすべての資産を凍結するほか、米国への渡航を禁止するという。
議員392人が賛成し、反対票を投じたのは共和党議員21人と保守派の無所属議員1人の計22人だった。
法案は上院で承認される必要があり、マルコ・ルビオ(Marco Rubio)議員(共和党)が通過に向けた動きを指揮すると約束している。法案はその後、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の署名を経て成立する。
チベットを長年支持してきた民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は、法案の目的は、10年前に決裂したダライ・ラマ14世の特使団との協議を中国政府に再開させることだと説明。
また、「チベット仏教社会がダライ・ラマ15世を含む宗教指導者選出の独占権を有するとする米国の方針を正式に制定することで、われわれはチベットの人々の信教の自由や真の自治の権利を支持している」と述べた。
公式には「無宗教」とする中国政府は、ダライ・ラマ14世の後継者を陰で操ろうとしていることを示唆しており、政府の言いなりになるチベット仏教指導者を仕立てることを目指しているとみられる。儀式的な後継者選びでは、僧侶たちは生まれ変わりの少年を探し出す。
中国政府は1995年、チベット仏教第2の高位者パンチェン・ラマ(Panchen Lama)の後継者を独自に選出し、後継者に認定されていた6歳の少年を拘束した。人権団体は少年が「世界最年少の政治犯」になったとして政府を非難した。(c)AFP
ジョン・F・ケネディは民主党の下院議員でアメリカ初のカトリック大統領だった(その後もカトリック大統領はいない)。半世紀前にチベットゲリラを見捨てた民主党が今頃になってダライ・ラマを担ぐのは政治利用以外の何ものでもない。そもそもアメリカは他国の内政に干渉しすぎる。「世界の警察官ではない」のだから引っ込んでろと言いたくなるのは私だけではないだろう。
それにしてもガルブレイスの人種差別は凄い。我々日本人がこうした白人感情を理解することは不可能だろう。精神が病んでいる。単なる容共のリップサービスとは思えない。ロモノーソフ金メダルを授与されているのもきな臭い。
創価学会の池田大作とも親交が深く、晩年には対談『人間主義の大世紀を わが人生を飾れ』(潮出版社、2005年)を編んでいる。どちらも親中派である。
国際的には経済的な見返りを求めてチベット、ウイグル、台湾に目をつぶってきたのが親中派である。暴力団とのつながりは規制されるが中国とは大手を振ってつながるのが法治と呼ばれる不思議な体制である。
人種差別感情から自由になれなかった人物は偉大なる経済学者であった。人間性は下劣でも金勘定が得意であったのだろう。
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