・『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』クリストファー・マクドゥーガル
・人類が獲得した投擲能力
「人間は驚嘆すべき投擲手です。あらゆる動物のなかでも人間は異色の存在で、投射物を速いスピードで、かつ信じがたい精度で投げる能力をもっています」。そう語るのはジョージ・ワシントン大学のニール・ローチ博士。地球上のほかの霊長類とは異なり、なぜわれわれだけが必殺の投擲で獲物を殺せるのか、という謎に取り組んだ2013年の研究の筆頭著者だ。(中略)
では、われわれにあってチンパンジーにないものとは何か? 肩に広がる「ゴムのようなぬるぬるしたもの」――筋膜と靭帯、そして伸縮性のある腱だ。腕を振りあげることは、ぱちんこ(スリングショット)のゴム紐を引くようなものだと、ローチ博士は説明する。「このエネルギーが解き放たれると、上腕の急激な回転の動力となります。それは人体が生み出すもっとも速い動作です――プロのピッチャーなら角度にして毎秒9000度の回転(25回転)にも達するのです!」速い投擲は単なる筋肉の活動ではなく、弾力の三段階にわたる解放の賜物だ。
投げる手の反対側の足で【踏みこむ】。
腰を、つづいて肩を【回転させる】。
そして腕、手首、手の関節を弾いて【しならせる】。
われわれは昔からそんな榴弾砲を具えていたわけではない、とローチ博士はつづける。およそ200万年前、われわれの祖先はいくつか重要な構造的変化を発展させ、木登りや腐肉漁りをする者から生ける投擲器に変貌を遂げた。腰はやや広がり、肩はやや下がり、手首はしなやかさを増し、上腕は若干まわしやすくなった。いったん〈揺らぎ力〉のこつをつかみ、棒に先端をつけることを学ぶと、われわれは地球上でもっとも殺傷能力が高いばかりか、もっとも賢い生き物となった。投げ方がうまくなればなるほど、どんどん知的になっていった。
【『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ 人類が失った“野生"のスキルをめぐる冒険】クリストファー・マクドゥーガル:近藤隆文訳(NHK出版、2015年)】
野球の魅力がやっとわかった。投げることは元より打撃もまた形を変えた投擲(とうてき)である。バットを手放せばそこそこ飛んでゆくことだろう。私は野球を観ない。ずっと「一体どこが面白いんだ?」と思ってきた。中学の時は札幌優勝チームの4番打者をしていたがそれほど面白くはなかった。まず第一に動きが乏しい。体育に野球を取り入れてないのもこれが理由だ。バレーボールやバドミントンの方がはるかに面白い。だが投擲という動きに注目するとこれほどはっきりと「投げる」スポーツは他にない。槍で獲物を仕留める感覚に最も近いのではあるまいか。
日本の武術と同じ次元の話がてんこ盛りである。体の智慧を思わせるエピソードが豊富だ。しかしながら訳文が悪く読みにくい。私は『BORN TO RUN』も読み終えることができなかった。つくづくもったいないと思う。
関連動画を紹介しておく。
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