2021-03-16

食物に含まれる反栄養素/『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー


『ファストフードが世界を食いつくす』エリック・シュローサー
『「食べもの神話」の落とし穴 巷にはびこるフードファディズム』高橋久仁子
『給食で死ぬ!! いじめ・非行・暴力が給食を変えたらなくなり、優秀校になった長野・真田町の奇跡!!』大塚貢、西村修、鈴木昭平
『伝統食の復権 栄養素信仰の呪縛を解く』島田彰夫
・『本当は危ない植物油 その毒性と環境ホルモン作用』奥山治美
『日本人には塩が足りない! ミネラルバランスと心身の健康』村上譲顕
『野菜は小さい方を選びなさい』岡本よりたか
『うつ消しごはん タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!』藤川徳美
『コレステロール値が高いほうがずっと長生きできる』浜崎智仁
『小麦は食べるな!』ウイリアム・デイビス

 ・炎症が現代病の原因
 ・食物に含まれる反栄養素
 ・意志力は限りある資源
 ・炭水化物は夕食で摂る

・『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』デイヴ・アスプリー
・『運動ゼロ空腹ゼロでもみるみる痩せる ガチ速“脂"ダイエット』金森重樹
・『食べても太らず、免疫力がつく食事法』石黒成治
・『世界のエグゼクティブを変えた超一流の食事術』アイザック・H・ジョーンズ
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム
『大豆毒が病気をつくる 欧米の最新研究でわかった!』松原秀樹
『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』アランナ・コリン

必読書リスト その一

さて、炎症が身体的パフォーマンスを制限し、精神的パフォーマンスも落としているのはわかった。だが、こうした炎症を起こしているものは何なのか?
 炎症の原因を勉強しはじめた僕は、「アンチニュートリエント」(反栄養素、栄養阻害物質)についての膨大な研究を見つけた。ごくふつうの食品におびただしい数が含有されている、慢性炎症の原因とおぼしき物質だ。腸を刺激して免疫系を発動させ、体の回復や解毒システムを損なう。

【『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー:栗原百代〈くりはら・ももよ〉訳(ダイヤモンド社、2015年)以下同】

 食品添加物もさることながら植物自体が合成する自然由来の反栄養素がある。反栄養素とは毒と考えてよい。特に動くことができない植物は昆虫や動物から身を守るために毒を放つ。ヒトは毒を苦味として感知する。良薬(ろうやく)が苦いのはもともと毒だからだ。毒を以て毒を制するのが薬の作用だ。

 反栄養素は毎日の体調に、あなたが想像しているよりずっと大きな影響を及ぼしている。何であれ達成しようとしていることから気をそらしたり、重度の食物への渇望のもとになり、体内の栄養素を奪ってホルモンの機能を妨(さまた)げ、時間の経過とともにさまざまな体のシステムを弱め、徐々に動きを鈍らせる。反栄養素摂取の多さや遺伝によっては、自己免疫反応が出るかもしれない。こうなると、免疫系が体の重要なシステムを攻撃して、体がいっそう大きなダメージを受けることになる。
【大切なのは、反栄養素を含む食品はなるべく摂らないで、免疫系を刺激する食品は完全に避けて、免疫反応を抑制することだ】。

 自然由来の反栄養素の主なものには、レクチン、フィチン酸、シュウ酸、カビ毒(マイコトキシン)などがある。例えばホウレンソウを茹でると灰汁(あく)が出るがこれがシュウ酸である。シュウ酸はカルシウムと結合して体外に排出してしまう。また尿道結石の原因にもなる。ただし実際の結石はコーヒーやお茶など毎日摂取するものによると考えられている(3 再発予防 CQ29 シュウ酸はどのような食物に多く含まれるか?また,シュウ酸の摂取について工夫すべきことはあるか? | Mindsガイドラインライブラリ)。

【このような反栄養素のいくつかは多くの植物性・動物性食品に見られるが、豆類、ナッツ、穀類などの植物性食品は他より圧倒的に多く含んでいる】。

・レクチンは熱で破壊されるが、ナス科の野菜などは熱で破壊されないレクチンを含んでいる。
・牧草飼育(グラスフェッド)の牛肉やラム肉はフィチン酸を除外してくれる。

【シュウ酸が血中のカルシウムと結合すると小さく尖った結晶となって体内に堆積(たいせき)して、筋肉痛が起こる】。これが腎臓(じんぞう)で起これば腎結石(じんけっせき)の一因になるわけだ。にわかには信じがたいことだが、シュウ酸が陰唇で結晶して性交時に痛みを感じる女性もいる。

 加齢に伴い性交痛を感じる女性が増えるようだが心配な方は一度調べるといいだろう。

 コーヒー以外の食品で【カビ毒の主要源は、小麦、トウモロコシといった穀物だが、ピーナッツ、果物、チョコレート、ワインが汚染されていることも多い】。そしてカビ毒は、汚染された穀物を食べた牛の乳にも蓄積される。

 特に湿度の高い我が国ではカビ毒の影響は見過ごせない。流通という時間が新鮮さを失わせる。規制だらけの農業を改革し、地産地消の文化を根づかせるべきだろう。

致命的な誤字/『革命のインテリジェンス ソ連の対外政治工作としての「影響力」工作』佐々木太郎


『大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義』三田村武夫
『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア
・『ミトロヒン文書 KGB(ソ連)・工作の近現代史』江崎道朗監修:山内智恵子

 ・致命的な誤字

・『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』クライブ・ハミルトン
・『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』クライブ・ハミルトン、マレイケ・オールバーグ
・『「目に見えぬ侵略」 見えない手」副読本』奥山真司監修:『月刊Hanada』編集部

 国家による非軍事的で政治的な対外活動はさまざまな形態が存在する。その中には、たとえば、公然の手法を持(ママ)ってして自らの国益に沿った行動を他国にとらせようとするものがある。具体的に言えば、外交や通商において他国と折衝をおこなうことであったり、公式の声明を発表したり、あるいは政府高官がメディアのインタビューに答えるなどの行為がこれに該当する。
 一方で、自らの国益に沿った行動を他国にとらせるために用いられる非公然の手法としては、偽文書など情報の発信元を隠蔽したプロパガンダや、あるいは表向きは関係がないように装った組織を使って示威運動をおこなったりすることなどがある。これらは、いわゆる「欺瞞」(deception)と呼ばれる工作形態に属するものである。
 本書は、こうした非公然の手法のうち、自らの影響力を持(ママ)ってして他国の国民や政策決定者の知覚を誘導する個人を利用した工作――本書では「影響力」工作と呼ぶ――を、ソ連が当該時期に世界各地で展開していたことを示す。

【『革命のインテリジェンス ソ連の対外政治工作としての「影響力」工作』佐々木太郎(勁草書房、2016年)】

 一応、著者の経歴を調べてみたが、大学院を出ていながら「持ってして」と一度ならず何度も出てくるとあっては読むに堪(た)えない。更に「――を以てしても」と使うのが普通で、「以てして」は間違いではないが「以て」とするべきだろう。上記テキストでも気取ったつもりなのか、「他国の国民や政策決定者の知覚を誘導する個人を利用した工作」という意味不明な文章が出てきて辟易(へきえき)させられる。

 他方、日本においても、摘発されたソ連の「影響力行使者」はひとりもいない。だが、日本を舞台にしたソ連の「影響力」工作の実態は、ある事件によって世界的な注目を集めることになった。その事件とは、1975年から1979年まで東京のKGB駐在部に勤務して対日工作に当たり、その後アメリカに亡命したスタニスラフ・レフチェンコが、1982年7月14日に開催されたアメリカ連邦議会下院情報特別委員会聴聞会において、宣誓のうえ、日本における自身の活動内容について証言したことである。このときのレフチェンコの証言には、次のような一節がある。

KGBは1970年代において、日本社会党の政治方針を効果的にコントロールできていました。同党の幹部のうち10人以上を影響力行使者(エージェント・オブ・インフルエンス)としてリクルートしていたのです。

 さらにレフチェンコは議会での証言後、アメリカや日本のメディアからの取材の中で、自ら管理した協力者らのカバーネーム(コードネームとも言う)や実名を一部公表し、日本社会党関係者以外にも「影響力行使者」がおり、また日本政府の機密情報をソ連側に漏洩する者たちなどもいたことを明らかにした。

 もったいぶった文章が鼻につく。しかも今となっては広く知られた事実である。私は菅沼本で知った。やはり先程指摘したのは「致命的な誤字」であった。確かにパソコン辞書だと「持ってして」と出てくるが、これだけ多用する言葉を誤っているのだから、かような人物が発信する情報を信用できるわけがない。更に勁草書房編集者・校正の責任を見過ごすわけにはいかない。私が社長なら首にしているところだ。勁草書房の未来は暗い。

2021-03-11

新型コロナウイルスへの対処法/『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸、玉谷卓也監修


『臓器の急所 生活習慣と戦う60の健康法則』吉田たかよし
『医学常識はウソだらけ 分子生物学が明かす「生命の法則」』三石巌
『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』デイヴ・アスプリー
『医者が教える食事術 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方68』牧田善二
『医者が教える食事術2 実践バイブル 20万人を診てわかった医学的に正しい食べ方70』牧田善二
『DNA再起動 人生を変える最高の食事法』シャロン・モアレム

 ・新型コロナウイルス対処法

『大豆毒が病気をつくる 欧米の最新研究でわかった!』松原秀樹

身体革命
必読書リスト その一

 ところが、その「あり得ないこと」のうちのひとつが、
 どうやら事実であるために
 新型コロナウイルスの根絶は非常に難しいものとなっています。

【それは「重症患者ほど、抗体の値が高かった」ということ。】

「抗体」は、体内の免疫細胞がウイルスを認知して
 そのウイルスを効果的に排除するために産生(さんせい)する分泌物(ぶんぴつぶつ)です。
 ふつう、わたしたちの身体のなかで起こる
 免疫細胞とウイルスとの戦いは
 抗体という最終兵器がつくられることで決着します。

 ところが、ウイルスを効果的に駆逐(くちく)するはずの抗体が
 感染しても無症状の患者や軽症者には少なく
 重症患者には多く検出されるのは、大きな矛盾です。
 抗体が多くつくられたのなら、
 それだけ新型コロナウイルスを撃退しているはずなのに、
 実際は重症化している――。
 つまり、「抗体は新型コロナウイルス感染症からの回復にあまり役に立っていない」と考えざるを得ません。
 さらに、もうひとつ驚くべき事実が解明されました。

【「回復した患者の体内から、抗体が消えていく」】

 抗体をつくる細胞は、いちどつくられれば一生、体内に残り続けます。
 そしてミサイル防衛システムのように、
 次に同じウイルスが身体に入ってきたら
 即座に撃ち落とす準備がなされているのです。

 そして、その声質を利用し、
 事前に身体のなかにこの抗体による防衛システムをつくることが
 一般的な「ワクチン」の目的です。

 しかし、新型コロナウイルスの抗体はあまりウイルスの撃退に寄与せず
 しかも1カ月から2カ月で消えてしまう。
 それはつまり、

【「抗体をつくるワクチンでは、感染予防が困難である」】

ということを意味しています。

「ワクチンを開発すれば感染拡大は収束する」という
 従来のウイルス感染症に対する根絶への勝ちパターンが
 新型コロナウイルスには通用しない可能性が判明したのです。
 さらに、「重症者は抗体が高い値を示している」という事実は
 もうひとつの恐るべき新型コロナウイルスの特徴をあらわしています。

【それは、免疫の暴走、
「サイトカインストーム」を引き起こすこと。】

 新型コロナウイルスは、主に肺や気管支などの
 呼吸器の細胞に感染して入り込み、
 細胞を、ウイルスを複製するあための増殖装置に変えてしまいます。

【『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』小林弘幸〈こばやし・ひろゆき〉、玉谷卓也〈たまたに・たくや〉監修(プレジデント社、2020年)】

 入魂の一冊である。飾り気のない装幀(そうてい)、「新型コロナウイルス」をタイトルに謳わない素っ気なさ、参考書のような色刷り、読みやすい文章、そして1100円という価格がプレジデント社の本気を示している。本書は「新型コロナウイルスへの対処法」を明快に説いた一冊である。ありふれた健康本と同じ作りなので「おかしいな?」と思いながら読んでいたのだが、小林は順天堂大学の医学部教授で、玉谷は日本免疫学会評議員で同大学の非常勤講師だ。

 新型コロナウイルスを取り巻く報道は「始めにワクチンありき」という姿勢が見え見えで、重症者や死者の多い欧米の実態を衝撃的に取り上げて、日本国内の実情を意図的に隠蔽してきた。既に世界各国で投与されているワクチンは動物実験を行うこともなく、長期毒性の影響も検証されていない。また陰謀論界隈を賑わす事実がある。ビル・ゲイツが2015年にTEDでパンデミックを予想した講演を行い、2019年には「次に起きるパンデミックはコロナウイルスによる」と想定し、「イベント201」という公開演習を実施したのだ(ビル・ゲイツと新型コロナウイルス)。

 またイタリア人医師のロベルト・ペトレラ博士が告発した動画は1分後に削除されたという。


イタリア人医師の告発:こちらは、ロベルト・ペトレラ博士です。彼が言わなければならないことに耳を傾け、そして大いに広く共有しよう - さてはてメモ帳
恐怖の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン:人類の大量絶滅のプログラム : 花子のブログ

 問題は新型コロナウイルス感染に関するデータが出てこないところにある。学術論文が次々と書かれているのにメディアが紹介することもない。テレビは感染者の数で不安を煽り、視聴者をワクチン接種に誘導するだけだ。

 かような言論情況を思えば何らかの統制が働いているものと考えてよかろう。学者や研究者が本気で正義を叫べば研究費や助成金を失う。功成り名を遂げようとする若手の学者は牙を抜かれている。もはや噛む力さえ残っていない。

「抗体をつくるワクチンでは、感染予防が困難である」との一言には千鈞(せんきん)の重みがある。結局自分の体は自分で守るしかない。そんな当たり前の事実に気づかされる。免疫、自律神経、腸内細菌、食事法などについてもしっかりとした内容が書かれていて目から鱗が落ちる。

レシピ > 魚

レシピ > 魚

■魚■

アラ汁●上田勝彦流漁師直伝あら汁

赤魚●赤魚煮付け

アジ●アジの捌き方三枚おろしアジの早卸&裏技小鯵南蛮漬けアジをさばいて骨まで美味しく食べる

いわし●イワシのさばき方イワシの捌き方いわしの煮付け骨までやわらかいわしの甘露煮イワシの梅煮圧力鍋なしで作るいわしの梅煮

小魚●小魚フリット

鮭●サーモンマリネ鮭の煮付け鮭フレーク鮭のゴマみそ焼き冷凍保存できる、鮭のみそ漬けちゃんちゃん焼き

鯖●冷凍の鯖塩サバの野菜蒸し冷凍塩サバの酒蒸し焼き

シシャモ●シシャモの味噌煮

ホッケ●ホッケの煮付け

ワカサギ●ワカサギのフライ甘露煮合法カキフライ

アクアパッツア●包んでレンチンたらの簡単アクアパッツァフライパンで簡単切り身魚で簡単アクアパッツア簡単アクアパッツァ簡単アクアパッツァ簡単アクアパッツァたらのアクアパッツァアクアパッツアとアクアパスタ「アクアパッツァ」基本&アイデアレシピ5選

2021-03-09

ブラックホールの予想を否定したアインシュタインとアーサー・エディントン/『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』村山斉


『ゼロからわかるブラックホール 時空を歪める暗黒天体が吸い込み、輝き、噴出するメカニズム』大須賀健
『宇宙が始まる前には何があったのか?』ローレンス・クラウス
・『宇宙は何でできているのか』村山斉
・『宇宙は本当にひとつなのか 最新宇宙論入門』村山斉

 ・ブラックホールの予想を否定したアインシュタインとアーサー・エディントン

・『宇宙になぜ我々が存在するのか』村山斉
・『宇宙を創る実験』村山斉編著

 20世紀の初頭に、光さえも脱出できない天体があり得ることを予想したのは、ドイツの物理学者カール・シュヴァルツシルトです。それは、アインシュタインが一般相対性理論を発表してからすぐのことでした。アインシュタインが示した方程式を解いたときに出てくるひとつの答えが、ブラックホールだったのです(ちなみに、シュヴァルツシルトは16歳で天体力学について論文を出版し、20代で名門ゲッティンゲン大学の教授になったというすごい人ですこのブラックホールの難しい計算も、実は第一次世界大戦の前線で従軍中に成し遂げたのでした。しかし惜しくもその1年後には前線で病気にかかり、亡くなってしまいました)。
 シュヴァルツシルトは、極端に小さくて極端に質量の重い天体を考えて、一般相対性理論の方程式に当てはめました。すると、光の速度でも脱出できないという解が出ます。しかしアインシュタイン自身は、シュヴァルツシルトが自分の方程式を解いてくれたことは喜んだものの、現実にブラックホールが存在するとは信じていませんでした。
 その後、インド出身の物理学者スプラマニアン・チャンドラセカールが、ブラックホールの実在を予言する発見をします。それまで星の一生はすべて第二章で出てきた白色矮星で終わると考えられていましたが、チャンドラセカールは白色矮星がある値以上は大きくなれないことを発見し、重い星はブラックホールになるはずだと予想したのです。
 これは、彼の師匠にあたる学者とのあいだで大論争になりました。イギリスの天文学者アーサー・エディントンです。
 このエディントンは、アインシュタインの一般相対性理論が正しいことを裏づける観測をしたことで有名な人物です。(中略)
 エディントンが公式の場でチャンドラセカールの発見を笑いものにしたので、チャンドラセカールはイギリスを去らなくてはなりませんでした。
 しかし、間違っていたのはチャンドラセカールではなく、エディントンでした。やがて世界中の学者たちが、チャンドラセカールの理論を受け入れるようになったのです。

【『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』村山斉〈むらやま・ひとし〉(集英社インターナショナル、2012年)】

 集英社インターナショナルの「知のトレッキング叢書」というシリーズの第一弾。実際の内容はハイキングレベルである。むしろ「知の一歩」と名づけるべきだろう。B6判で新書よりも横幅がある変わったサイズである。価格が安いのは薄いため。

 村山斉は5冊ばかり読んだが今のところ外れがない。読みやすい文章で最新の宇宙情報を届けてくれる。諜報(インテリジェンス)の世界では情報に対価を支払うのは当然であり、等価交換の原則が成り立つ。その意味からも私は書籍に優る情報はないと考えている。

 天才科学者ですら老いて判断を誤る。況(いわん)や凡人においてをや。世代交代の時に新旧の確執が生じるのはどの世界も一緒であろう。老境に入りつつある私も自戒せねばならない。

 相対性理論が面白いのは発見者の思惑を超えて宇宙の真理を示した点にある。アインシュタインは静的宇宙を絶対的に信じていたが実際は膨張していた。それも凄まじい速度で。科学的真理はどこまでいっても部分観に過ぎない。それでも尚、広大な宇宙の新たな事実が判明するたびに心を躍らせるのは私一人ではあるまい。

 科学の世界ですら古い巨人が後進の行く手を遮(さえぎ)るのであるから、政治の世界は推して知るべしである。私は57歳だが体力と共に知力・判断力の低下を実感している。政治家や大企業の取締役は55歳以下にするのが望ましい。長幼序ありの伝統に従うなら、老人で参議院を構成すればよい。

2021-03-04

野生動物が家畜化を選んだ/『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス


『人間の本性について』エドワード・O ウィルソン
『徳の起源 他人をおもいやる遺伝子』マット・リドレー
『環境と文明の世界史 人類史20万年の興亡を環境史から学ぶ』石弘之、安田喜憲、湯浅赳男
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文化がヒトを進化させた 人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉』ジョセフ・ヘンリック
・『文化的進化論 人びとの価値観と行動が世界をつくりかえる』ロナルド・イングルハート

 ・野生動物が家畜化を選んだ

『人類史のなかの定住革命』西田正規
『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ

 新石器革命が始まった当初、地球の人口は1000万だったと見積もられているが、いまや地球上には70億を超える人々が住んでいる。人口の爆発的な増加は、人間以外のほとんどの生物にとって災難でしかない。しかし、幸運にも家畜や作物としての身分を保障されている生物にとってはそうではない。家畜や作物はわたしたちとともに繁栄の道を歩んできたのである。新石器時代以降、生物の絶滅率は、それ以前の6000万年間に対して100~1000倍になっている。タルバン(ウマの祖先)やオーロックス(ウシの祖先)など、家畜化された動物の祖先(野生原種)の多くも新石器時代以降に絶滅した。だが、家畜のなかには絶滅したものはいない。ラクダやイエネコ、ヒツジ、ヤギについては、それぞれの野生原種は消滅の瀬戸際にいるが、家畜化された子孫たちは地球上の大型哺乳類のなかで最も多い部類に入るのである。進化という観点からすれば、家畜化されて損はなかったのだ。  だが、家畜の成功にはそれ相応の代償もある。進化の主導権を握られてしまうのだ。家畜や作物がどのように進化するか、その運命の支配権のかなりの部分を、人間は自然からもぎとってしまっている。そのため、家畜や作物は、進化の過程を理解するための多くの情報をもたらしてくれる存在になっているのである。実際、家畜や作物は非常にドラマチックな進化の実例なのだ。特殊創造説〔生物の種は天地創造の6日間に神が創造したものであり、それぞれの種はそれ以来変化していないという説〕の信奉者でさえも、オオカミからイヌへの変化は進化によるものであったことを、ある程度にせよ認めてはいる。家畜の作出では、特定の形質をもつ品種を作り出すために人為選択が行われる。ダーウィンは「自然選択」(自然による選択)と「人為選択」(人間による選択)はよく似た過程だと考えていた。だからこそ、イヌやハトの人為選択について、かなり注力して議論したのである。

【『家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか』リチャード・C・フランシス:西尾香苗〈にしお・かなえ〉訳(白揚社、2019年)以下同】

 新石器時代とは大雑把にいえば紀元前6000~紀元前3600年の牧畜・農耕を開始した時代である。紀元前9000年前という説もある。「イギリスの考古学者J.ラボックによって設定された時代名。打製石器に加えて磨製石器が出現し,土器も用いられた。気候が温暖となり,農耕,家畜飼育が行われた。人類は定住・集団生活に移り,ムラ国家を経て氏族国家を形成するようになる」(百科事典マイペディアの解説)。謂わばムラからクニ(≒階級社会)へと文明が階段を上った時代である。

 私は今まで野生の畸形化が家畜と考えてきた。その典型が座敷犬である。畸形同士を交配させることで小型化に成功したわけだ。ところがリチャード・C・フランシスの指摘は全く異なる様相を示している。家畜化とは共生系への移行らしい。

 世界には、牛約14億頭、豚約10億頭、羊約10億頭、鶏190億羽の家畜がいる。それに対し人口は68億人である。人間2人に対し、家畜1頭と鶏5羽の比率である。現在、地表面積の42パーセントが畜産業(家畜飼育の場所や家畜の飼料生産)に使われており、国連食糧農業機関(FAO)は「家畜は世界最大の土地利用者」であると述べている。例えば毎日グラス1杯の牛乳のためには650㎡の土地が必要であり、この面積は乳代替品(豆乳やライスミルク、アーモンドミルク)等と比較して10倍も高い。

Wikipedia

 食用作物41品目の収穫物として,世界全体で総計9.46×1015;(9.46兆)カロリーが生産された。この55%が人間の食用,36%が家畜飼料,9%がその他(工業利用やバイオ燃料)に利用された(表1)。飼料に利用された熱量の89%がロスされ,畜産物に保持されたのは12%,つまり,4%(36×0.12=4.32%)が人間の食料に変換されただけであった。換言すると,食用作物41品目中の熱量の59%(55%+4%)だけが,作物と畜産物として人間の食料として利用され,41%が非食用に利用されたりロスされたりしたことになる。

No.244 穀物を家畜でなく人間が直接食べれば,世界の人口扶養力が向上 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

 米は殆どが食用になっているが、小麦は2割、トウモロコシは6割が飼料用だ(PDF:世界の穀物需給の行方)。バイオ燃料は食い物を燃やすわけだから日本人からすれば罰当たりな話だ。

 本書でこれから見ていくように、多くの場合、家畜化過程をスタートさせるのは人間ではなく動物自身である。理由はさまざまだが、動物が人間のすぐそばで生活するようになるのが第一歩である。この自発的な人馴れ〔原語はself-taming」。2017年、国立遺伝学研究所が「人になつく動物の遺伝子領域を解明」と発表した。そのなかで、「自ら人に近づく」ことを「能動的従順性」としている。人間の近くに自ら近づいてきたオオカミには、この「能動的従順性」があったといえるだろう〕の過程は、主として通常の自然選択を通じて起こる。人間による意識的な選択、つまり人為選択が行われるのは、家畜化過程のもっとあとの段階である。

 衝撃の事実である。なぜこんな簡単なことに気づかなかったのだろう? 動物を無理矢理飼うことはできても慣れさせることは難しい。当初はゴミ漁りが目当てだったのだろう。やがてヒトが餌を与えると大人しく撫でられるようになった。更には自らヒトに体をこすりつけたのだろう。人間にとって犬は最良の友である(『ゴルゴ13』第130巻)。

 人間による選択がイヌの行動に及ぼした効果がドラマチックなのはいうまでもない。なかでも注目に値するのは、イヌが人間の意図を「読み取る」能力を進化させたという点だ。イヌは人間のジェスチャー、たとえば離れたところにある食べものを指さすなどの意味を理解する。野生のオオカミにはこんなことはできない。実際、人間の意図を読み取ることにかけては、人間に最も近い親戚であるチンパンジーやゴリラよりも、イヌのほうがよほど上手だ。ということはある意味、社会的認知に関しては、イヌのほうが大型類人猿(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン)よりも人間に似通っているというわけだ。

 これまたビックリである。イヌとオオカミの脳の違いを調べて欲しいものである。「頭がよくなった」ということよりも「コミュニケーション能力を高めた」事実が重い。なぜならその方が圧倒的に進化的優位性が増すからだ。ここで一つ問題が浮かび上がる。高いコミュニケーション能力を進化とするならば、コミュニケーション能力が低い自閉症や発達障害をどう考えればいいのか? しかもイヌとのコミュニケーションは言葉を介さない。テンプル・グランディンは自らのアスペルガー症候群を『動物感覚』と表現した。知性は群れの形を変える。その先が今の私には見えてこない。

 ただ、野生動物が家畜化を選んだのが事実であるならば、人間が奴隷化の道を歩むのは必然と言えそうだ。



2乗や3乗などのn乗をHTMLで表示する方法 [ホームページ作成] All About

長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル#43『長谷川×高橋がついに電波利権タブー暴露!?「波取り記者」とは? マスコミ の官僚接待 の実態!』


「権利」は誤訳


 昨年の10月から牛馬の如く働いている。「モーはまだなり。まだはモーなり」()と独り言(ご)つ。書評をちまちまと書いてはいるのだが、途中で検索が始まるとそこでピタリと止まってしまう。そこまでして正確を期す必要があるのかと問われれば何とも言い難い。ま、読むのが専門でも構わないのだが。

 Rightを西周〈にし・あまね〉が「権利」と訳し、福澤諭吉は「権理通義」と訳した、と私は思っていた。よくよく調べるとどうも違うようだ。権利という言葉にはポリティカル・コレクトネスと同じ異臭を感じる。

【通義】世間一般に通用する道理や意義。

通義とは - コトバンク

 通義とは文字通り「義に通ずる」意味で、すなわち(道)理を意味します。つまり天下公益、現代的に言うなら「公共の福祉」に適う=理に適った社会のあり方を追求するために必要な権力・権限こそが「Right」である、という考えです。

明治時代に持ち込まれた概念「Right」は権利?権理?福沢諭吉の「理」へのこだわり | ライフスタイル - Japaaan

 ところが、この「権利」という訳に、福沢諭吉が噛み付きました。
「誤訳だ!」というのです。
そして福沢諭吉は、ただ反発しただけでなく、
「『Right』は『通理』か『通義』と訳すべきで、『権利』と訳したならば、必ず未来に禍根を残す」と、厳しく指摘しています。(中略)
「Right」を「権利」と訳せば、個人が自らの利益のために主体となって主張することができる一切の利権という意味になります。
 けれど、英語の「Right」には、そんな意味はありません。
 一般的通念に照らして妥当なものが「Right」です。
 つまり、「Right」は、個人の好き勝手を認める概念ではなく、誰がみても妥当な正当性のあるものが「Right」の意味です。
 さらにいえば、「Right」には、正義という概念が含まれます。
 要するにひらたくいえば、誰がみても正しいといえる一般的確実性と普遍的妥当性を兼ね備えた概念が、「Right」なのです。

権利と通義 | 日本のこころを大切にする

「法」の【翻訳語の意味】(堅田剛)には「少なくとも西周において、「権利」は英語rightの訳語ではなく、ドイツ語Rechtの訳語である。(中略)ドイツ語の場合Rechtは(中略)「権利」と「法」という異なった意味を併せもっている」「Rechtをrightと訳すかlawと訳すかは、英米人にとっても悩みの種なのである。(改行)Rechtを一律に「権利」と訳した西周訳を未熟とか誤訳とかいう者もあるが、それはまったくの見当ちがいだ。」(p.250)とある。

right(s)の意味が「権利」として定着した背景がわかる資料があるか。特に、福沢諭吉が提案した新訳... | レファレンス協同データベース

 福沢は、「権利」とは、「分限」の意であるとしている。「人たる者の分限を誤らずして世を渡るときは、人に咎めらるゝこともなく、罰せらるゝこともなかる可し。これ人間の権義と言ふなり。人たる者は他人の権義を妨げざれば自由自在に己が身体を用ひるの理なり」(「学問」三・七九)とし、「其分限とは、天の道理に基き人の情に従い、他人の妨げを為さずして我【一身の自由を達する】事なり」(「学問」三・三一)としていた。

PDF:福沢諭吉における「法」および「権利」に関する一考察:松岡浩

3)すなわちその【権理通義】とは、人々その命を重んじ、その身代所持のものを守り、その面目名誉を大切にするの大義なり。

No.1217 【権理通義】 けんりつうぎ|今日の四字熟語・故事成語|福島みんなのNEWS - 福島ニュース

 しかし“right”はけっして「権利」、「利にすぎない権」なんかではない。英和辞典を引くと(形容詞や副詞的用法は別にして、ここでは名詞だけを取りあげる)、「1(道徳的に)正しいこと、正当、正義(以下略) 2(法的・政治的な)権利、正当な要求 3(複数形で)本来の状態、正しい状態 4(複数形で)真相」と説明されている。そして古期英語では「まっすぐな」の意に用いられていたと。(派生的に「右」という意味にも使われるが、これも「右手の方が正しい」という『聖書』の言葉から生まれたものらしい。)
 他方、「義務」の方は、“duty”の訳語に当てられたが、この言葉もそれほど古くから使われれていたものではなく、明治になって、西周あたりによって創案されたものらしいという。それはともかくとして、いずれにしろ「権利」が「利」にすぎないものと貶められたのに対して、「義務」の方は「義」なる務めとして「義」を独占してしまうことになっった。そこからどいう結果が引き出されるか、誰にも推測できると思うが、義務優先の権利観が導かれてしまう。

(30)「権利と権理」 : yodonosuikou84のblog

「権利」を英語で表すと、「right」ですが、その意味の第1は、「 (道徳的に)正しいこと、正当とか、 正義、正道、公正とか、正しい行ない」を意味します。そして、第2に「(法的・政治的な)権利」があるのですが、その意味として「正当な要求」とあります。決して、多くの人がイメージするような「権利」ではないのです。他の言語でも多くの意味は「正義」として使われることが多く、その「正義」から「権利」を言う言葉が生まれたようです。

権理 | 臥竜塾

 公益というものの持っているライト「正しい」理(ことわり)に沿うべく自分の行為を権(はか)ること、それが権理(ライト)である。 (西部邁〈にしべ・すすむ〉)

「権理」と「権利」 - Freezing Point

 前述のヘボンの英語辞典『和英語林集成』では、“right” には「道理、道、理、義、善、筋、はず、べき」という語が当ててあり、また、福沢諭吉は “right” に「通義」という訳語を当てつつ、「訳字を以って原意を尽すに足らず」(この訳語では原意をじゅうぶんに表現しきれていない)と述べている。

権利と right : ことばの広場

 実は、英語rightを「権利」と翻訳したのはアメリカ人なのだ。

 このアメリカ人の名前は、William Alexander Parsons Martinウィリアム・アレクサンダー・パーソンズ・マーティン(1827〜1916。漢語名は丁韙良。支那には仮名文字がないため、欧米人名を漢字で表記する。)という。プロテスタント長老派の宣教師として、清国で布教活動等をしていた。(中略)

 ウィリアム・マーティンが、アメリカの国際法学者であるHenry Wheatonヘンリー・ホィートン(1785〜1848。漢語名は恵頓。)の著書『Elements of International Law』(直訳すれば、国際法の要素。)を『万国公法』という書名で漢語に翻訳した際に、rightにこの「権利」という漢語を当てはめ転用したわけだ。この他にも、「主権」(sovereign rights)や「民主」(republic)も、ウィリアム・マーティンの翻訳語だ。

アメリカ人が作った翻訳語「権利」 | 源法律研修所



「ひとりごちる」という語は存在するか? : 日本語、どうでしょう?

2021-02-28

おとうさんにもらったやさしいうそ


2021-02-26

人間が「マシン化」する未来/『Beyond Human 超人類の時代へ 今、医療テクノロジーの最先端で』イブ・ヘロルド


『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル
『AIは人類を駆逐するのか? 自律(オートノミー)世界の到来』太田裕朗
『トランセンデンス』ウォーリー・フィスター監督
『LUCY/ルーシー』リュック・ベッソン監督、脚本

 ・人間が「マシン化」する未来

『〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則』ケヴィン・ケリー
・『養老孟司の人間科学講義』養老孟司
『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』ユヴァル・ノア・ハラリ
『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ
『文明が不幸をもたらす 病んだ社会の起源』クリストファー・ライアン
『われわれは仮想世界を生きている AI社会のその先の未来を描く「シミュレーション仮説」』リズワン・バーク

 コートニー・S・キャンベルを中心とする生命倫理学者の研究グループは、2007年にCambridge Quarterly of Healthcare Ethics誌に論文を投稿して、次のように述べている。
「ある時点まで来ると、おそらく『他者』であるマシンと、それが埋め込まれている『自己』との区別をつけることが、ますます困難になるだろう。マサチューセッツ工科大学人工知能研究所のディレクター、ロドニー・A・ブルックスの見解によると、『人は過去50年ほどの間にマシンに【頼る】ようになったが、今世紀になってからは、人が【マシン化】しつつある』」。

【『Beyond Human 超人類の時代へ 今、医療テクノロジーの最先端で』イブ・ヘロルド:佐藤やえ訳(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017年)】

 現代人が眼鏡や靴を文明の恩恵と感じることはない。「あるのが当たり前」で思い出すのはなくした時くらいだろう。例えば義歯がなければ健康を維持することは難しい。あるいは鬘(かつら)によって人間心理ががらりと変わる場合もあるだろう。デバイスや周辺機器が脳内や体内に埋め込まれれば人類はポストヒューマンへと進化する。マンマシンシステムが構築されると我々の視界もターミネーターのようになるはずだ。


 すでに、障害を持つ人たちにコンピュータチップや半導体アレイを植え込んで、視覚や聴覚、運動能力、記憶力などを修復しようとする試みは、もう準備が整いつつある。この流れでいくと、いずれ私たちが現在持っている「標準」的な能力をはるかに超えて、知覚を増幅させたり、記憶力や学習能力を強化したりするテクノロジーへと進化することは間違いない。

 知識や記憶は既にパソコンかウェブ上に存在する。思い出す営みは検索という作業に変わり果てた。知識は記憶するよりも、ラベルやタグで検索に紐づける方が効果的だ。完璧なライフハックがあれば記憶や性格のアップロード、ダウンロードも可能になるはずだ。人間は情報的存在と化して死んでも尚ウェブ上で生き続けることだろう。

 この事態が避けられないと見る理由のひとつは、「標準」という概念の定義のしにくさにある。科学者と哲学者の間では「標準」の定義についての議論が続いているが、いつか私たちが能力増強テクノロジーを幅広く受け入れるようになれば、何を「標準」とするかの考え方も変わってくることだろう。

 既に高性能の義足は陸上競技において健康な脚を上回るポテンシャルを秘めている。ゆくゆくはタイヤ付きの義足が登場するかもしれない。更にモーターやエンジンがつけば年老いた人々もどんどん外に出ることができる。

 ただしユートピアを想像するのは間違いだ。国家が国民に対して常に求めるのは賦役(ふえき)と徴兵である。ロボットが不得手なのは肉体労働である。知的労働のスキルを持たない多くの人々はやがて肉体労働に従事する羽目となる。社会は形を変えた貴族と奴隷に分かれる。こうした未来を察知すればこそ発達障害や自閉傾向が顕著になってきているのだろう。貧困層は炭水化物中心の食事となり生活習慣病や慢性疾患、あるいはアレルギー疾患や知的障碍を持つ子供たちが生まれてくる。