2019-06-02

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初めての半原越


 ・初めての半原越

越すに越されぬ半原越(愛川町経由)
雪辱の半原越(愛川町経由)
半原越往復
半原越まで歩く

 午前5:00に家を出た。鳥たちの鳴き声が背中をそっと押してくれた。薄曇り。この間までの暑さはどこかへ行ってしまったようだ。紫陽花(あじさい)も色づいてきた。土山峠の手前、清川村方面から半原越(はんばらごえ)に向かう。「越」(こえ)とは峠のことである。

 峠は、中国地方で垰あるいは乢とも書き、「たお」「とう」「たわ」「たわげ」などと呼ぶ地方があり、地名などにも見られる(岡山県久米南町安ケ乢など)。登山用語では乗越(のっこし)、または単に越(こえ、こし)などとも言い、山嶺・尾根道に着目した場合は鞍部(あんぶ)、窓、コル(col)とも言う。
 かつて峠はクニ境であり、その先は異郷の地であった。そのため、峠は、これから先の無事を祈り、帰り着いた時の無事を感謝する場所でもあったことから、祠を設けている所が多い。この祠は、異郷の地から悪いものが入り込まないための結界の役割も果たしていたと考えられる。本来の意味から転じて、何らかの物の勢いが最も盛んな時期のことを峠という。

Wikipedia

 清川虹子村からだと道路左側に看板があるので「しっぽ村」を目指せばよい。


 かつては封鎖されていたようだ。やや道幅の広い林道と考えていいだろう。ところどころに土砂崩れや落石があり軽自動車でギリギリ通れるほどの幅員である。

 実はナメてかかっていた。半原越という名前がよくない。「半ば越えたも同然」みたいな印象があった。私の脚力ではほぼ限界に近かった。辛うじて足は着かなかったが、単に着かなかったというだけのことだ。時折下を見ると標高が実感できて足に力が入る。静かな道で鳥の声も少ない。



 下りは路面が荒れていてブレーキを握る指が痛くなる。これは愛川方面からの方がきつそうだ。


 中年の男性ローディーが上り下(お)りを繰り返していた。同じ人物を三度も見たのだから間違いない。見上げたものだ。

 トレーニングには格好の場所だ。ここを楽々と越えることができれば次に牧馬峠とヤビツ峠、それから和田峠を目指す予定である。

2019-06-01

デンマークで放送された家庭内暴力の恐ろしさを訴えるCM


2019-05-29

学者の凡庸さ/『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一


 ・学者の凡庸さ

『アルツハイマー病は治る』 ミヒャエル・ネールス
『アルツハイマー病 真実と終焉 “認知症1150万人”時代の革命的治療プログラム』デール・ブレデセン

 見当識に障がいがある状態を理解してもらうために、私はよく、「眠っている間に、知らない場所に連れて行かれてしまったら?」と尋ねます。
 もしもあなたが、眠っている間に、知らない場所に連れて行かれてしまったら、目が覚めたとき、どんな気持ちがするでしょうか?
 自分の部屋だと思っていたのに、どこかわからない別の部屋の中にいる。今が朝なのか昼なのか、夕方なのかもわからない。親しげに声をかけてくる人がいるけれど、誰なのかわからない。あなたは誰? ここはどこ? 今はいつ? 私はなぜ、こんなところにいるの?
 と、そんな風に、不安で不安で仕方がないはずです。自分が置かれた状況が理解できあにと、私たちはとても不安になるのです。
 しかも認知症になると、記憶にも障がいが出ます。もしも知らない場所で目覚めたら、私たちは必死で、眠る前の状況を思い出そうとするはずです。昨夜は友人と飲みに行って、最後はカラオケで、疲れが出て眠ってしまったんだった。かすかに、友人と一緒にタクシーに乗ったような記憶が……。とすると、ここは友人の家か? といった具合です。
 ところが認知症が進むと、眠る前の状況を思い出そうとしても、思い出せません。

【『認知症の人の心の中はどうなっているのか?』佐藤眞一〈さとう・しんいち〉(光文社新書、2018年)以下同】

 時間的・空間的・社会的な自分の位置を正しく認識するのが見当識である。見当違いの見当が語源。失見当識は記憶喪失の状態と変わらない。記憶の糸を辿ることができなくなる。

 佐藤は、日常会話によって認知機能を評価する尺度(スクリーニング方法)の「CANDy」(キャンディ)を開発した一人。15項目の合計点が6点以上の場合、認知症の疑いがある。ただし飽くまでもふるい分けの尺度に過ぎないので専門医に診てもらう必要がある。


 初めに述べておくと、現在、認知症予防にいいとされているもので、認知症を予防できるという科学的な証拠があるものはありません。研究は世界中でなされていますが、まだ結果が出ていないのです。ではなぜ、認知症予防にいいと言われるものがあるのでしょうか?
 計算ドリルなどに認められる効果は、「認知機能の低下予防」であって、「認知症予防」ではないのですが、それが混同されているのです。

 ミヒャエル・ネールスは初期~中期のアルツハイマーは治ると指摘している。日本だと河野和彦によるコウノメソッドも知られている。佐藤は「予防」と書いているが、受け身の姿勢が凡庸さをよく表している。誰かが道を拓いてくれるのを待っているのだろう。

 自分の恩師である大学教授が介護施設では「さん付け」で呼ばれていた事実にショックを受ける。

 答えは、ケースバイケースで考えていくことの中にしかないでしょう。単純に、「みんな平等だから、さん付けでいい」というのでは、認知症の人の世界を大事にすることはできません。

 この件(くだり)はいかにも現場を知らない学者が馬脚を露(あら)わしたもので、公私混同も甚だしいと言わざるを得ない。佐藤は認知症を知っているのかもしれないが、認知症患者を知らないのだろう。お笑い草である。

認知症の人の心の中はどうなっているのか? (光文社新書)
佐藤眞一
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2019-05-26

煩悩即菩提/『新板 マーフィー世界一かんたんな自己実現法』ジョセフ・マーフィー


『ニューソート その系譜と現代的意義』マーチン・A・ラーソン
『「言葉」があなたの人生を決める』苫米地英人
『アファメーション』ルー・タイス
『「原因」と「結果」の法則』ジェームズ・アレン
『「原因」と「結果」の法則2 幸福への道』ジェームズ・アレン

 ・煩悩即菩提

『未来は、えらべる!』バシャール、本田健
・『バシャール・ペーパーバック1 ワクワクが人生の道標となる』ダリル・アンカ、バシャール
『潜在意識をとことん使いこなす』C・ジェームス・ジェンセン
『こうして、思考は現実になる』パム・グラウト
『こうして、思考は現実になる 2』パム・グラウト
『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』アラン・ピーズ、バーバラ・ピーズ
『あなたという習慣を断つ 脳科学が教える新しい自分になる方法』ジョー・ディスペンザ
『ソース あなたの人生の源はワクワクすることにある。』マイク・マクナマス
『科学的 本当の望みを叶える「言葉」の使い方』小森圭太

 前向きに考えるための基本を身につけてください。「思考が道具であること」「心で感じたものが引き寄せられてくること」「人間は、心で想像したとおりになること」、この三つがわかれば、何でも前向きに考えられるようになります。

【『新板 マーフィー世界一かんたんな自己実現法』ジョセフ・マーフィー:富永佐知子〈とみなが・さわこ〉訳(きこ書房、2012年/きこ書房、2003年『マーフィー 世界一かんたんな自己実現法 驚異のイメージング』)以下同】

 原著刊行は1952年(昭和27年)。GHQの日本占領が終わった年である。新しい思考は余暇から生まれる。文明発達の目的は自由な時間の獲得、すなわち余暇にある。枢軸時代の思想家を生んだのは鉄器であったと武田邦彦が指摘している。鉄器によって農業の生産性が格段に上がり、余剰を蓄えることが可能となった。

 願望実現のベクトルが内側に向けられると自己啓発となり、外側に向かうとマーケティング理論になるというのが私の考えだ。ジョセフ・マーフィーの後塵を拝すようにしてヴァンス・パッカードマーシャル・マクルーハンが登場している。

 マーケティング理論には心理学が悪用され深層心理に働きかけることで消費者の購買意欲を煽った。広告、広告、広告だ。戦争と好景気を背景に人々は物欲を満たした。

 あなたが心で考えていること、それがあなたです。
「信頼」は、考え方や感じ方、つまり心構えや志のひとつです。人間は成功を「信頼」することも、失敗や不運、貧しさを「信頼」することもできます。そして、こうした心の状態はすべて人生にあらわれます。「信頼」が外に押し戻されるのです。そもそも、信頼するということは、心の中で何かをじっくり眺め、納得して受け入れるということです。もとより「信頼」は思考のひとつで、思考にはものを作る力があるので、考えていることを外部に作り出してしまいます。人間とは、心の中の思いが形を取ってあらわれ出たものだからです。わたしたちは、本当に信じていることを現実に作り上げます。心の底で何を信じているかが重要なのであって、通りいっぺんに納得するだけではだめです。

 結局何を信じるかである。信心・信仰・信念といっても一緒である。我々は何かを信じずには生きられない。そして自分が信じている多くのことが実は誤っている。人は解釈された世界を歩み、妄想の中を生きるのだ。

 年を重ねるに連れて自分の中に制限を見出す人が多い。仕事は学歴や資格で選択肢が狭まれ、能力や適性を発揮することもないまま中年期に至る。人生が何となく先細りになってゆくことを避けられない。

 加齢に伴う自己制限が不幸の大きな原因の一つであるように思える。

 自己実現が欲望の実現を目指しているならば実にわかりやすい煩悩即菩提の構図である。所願満足といってもよい。そう考えると後期仏教(大乗)が多くの人々を乗せることができる乗り物に喩えられたのは、欲望充足の巧みなデッサンを提示したためか。より多くの人々が信じられるものは、より易しくてわかりやすい教えだ。

 つまり自己啓発の思想は大乗の香りを放ち、鎌倉仏教のビートを奏(かな)でているのだ。神智学協会(1875年-)というコネクター(『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール)が登場するのも偶然ではない。これはキリスト教世界における神仏習合なのだ。

 人類の思想史は肯定と否定の波を繰り返し、自己実現と諸法無我の間を彷徨(さまよ)い続けるのだろう。