・『反穀物の人類史 国家誕生のディープヒストリー』ジェームズ・C・スコット
・『お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」』大村大次郎
・『お金の流れで探る現代権力史 「世界の今」が驚くほどよくわかる』大村大次郎
・『脱税の世界史』大村大次郎
・『税金を払う奴はバカ! 搾取され続けている日本人に告ぐ』大村大次郎
・『消費税減税ニッポン復活論』藤井聡、森井じゅん
・taxと税の語源
・税を下げて衰亡した国はない
・現行の税金システムが抱える致命的な問題
・社会主義的エリートを政府へ送り込んだフェビアン派
・一律一割の税金で財政は回せる
・目次
・『対論「所得税一律革命」 領収書も、税務署も、脱税もなくなる』加藤寛、渡部昇一
・必読書リスト その二
英語で税金のことを普通tax(タクス)と言うが、「義務的な労働」を意味するtask(タスク)も、昔は税金を意味していた。つまり、taxもtaskも同じ語源から発していて、それが時間が経つうちに、KとSの音(おん)が入れ替わって、税そのものを意味する言葉と労役(ろうえき)を意味する言葉に分かれたわけである。古代日本の税制で言えば、taxは「租」(そ)、taskは「庸」(よう)ということになる。
taxの語源をさかのぼると、tangere(タンゲル/触れる)という言葉と同じになる。つまり、「手で触れて査定し、それに基づいて税を取り立てる」ということだった。
いまでも高速道路や橋を渡るところに、toll(トル)と書いてあるが、これは「(高速)料金」「橋銭」(はしせん)のことで、ドイツ語のZoll(ツォル/関税)と同じ語源である。同一の語源から出たものにギリシャ語のtelos(テロス/目的、終わり)という言葉があって、「最終的に支払う」という意味を表している。
その他に、下の者が上の者に「義務として差し出す」という意味のduty(デューティ)という言葉があるが、フランス語では逆に、上の者が下の者から「権利として巻き上げる」という意味のdroit(ドロワ)がある。
1989年頃に日本で大騒ぎして導入した消費税があるが、これに近い英語はexcise(エクサイズ)である。exciseには、「消費税」という意味と「削り取る」という二つの違った意味があるが、元々は「売上げのなかから削り取られる」という語感からきたと思われている。イギリスでは、1643年にオランダに真似て導入された。
税金は、「上のほうから割り当てられたもの」という感じが強いが、それに似たものは上に置くことから生じたラテン語のimpstus(インポスト/英語)、impot(アンポ/フランス語)がある。ただ、いまではあまり使われていない。これに近い意味で、「(お上が人民より)召し上げるもの」という英語に、levy(レヴィ/徴税、招集)がある。(中略)
漢字の「税」というジは、「禾」という穀物を示す【のぎへん】に「兌」を組み合わせたものだが、「兌」は「脱」であり、収穫された穀物から、「お上が抜き取る」という意味である。
学校の授業で習う租・庸・調の「租」も、「禾」に「且」を合わせたもので、これは「組む」という意味である。つまり、「上から積み重ねる、押しつける」ということで、英語のimpostに似た語感がある。
田畑から取る税を「租」というのだが、日本語で税金を表す言葉は「貢」(みつぎもの)であり、動詞は「みつぐ」である。「み」は敬意を示す接頭辞で、中心の意味は「つぐ」にある。「つぐ」に漢字を当てると、「継」「続」「接」などであって、お上に対して人民が、「絶えず継ぎ継ぎ(次ぎ次ぎ)に供給する」というのが根本義であると言える。
「みつぐ」は語感からすると、「運び込む」とか「与える」とか「支える」といったニュアンスがあるが、「支える」というのは、これと同じようなものにドイツ語のSteuer(シュトイア)がある。これによって、国や教会を支えるということなのだが、考えてみれば、税金についての理論が百千あろうとも、つまるところ「公共のものを支える」というところに帰一(きいつ)するなら、実に的確な言葉と言える。
【『税高くして民滅び、国亡ぶ 渡部昇一著作集 政治1』渡部昇一〈わたなべ・しょういち〉(ワック、2012年/PHP研究所、1993年『歴史の鉄則 税金が国家の盛衰を決める』/PHP文庫、1996年/ワック文庫、2005年、改題改訂新版『税高くして国亡ぶ』/更に改題改訂したものが本書。著作集の副題は奥付による)】