2022-02-16

鼻うがいには生理食塩水や洗浄液を使う/『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修


『人は口から死んでいく 人生100年時代を健康に生きるコツ!』安藤正之
『長生きは「唾液」で決まる! 「口」ストレッチで全身が健康になる』植田耕一郎
『ずっと健康でいたいなら唾液力をきたえなさい!』槻木恵一
『舌(べろ)トレ 免疫力を上げ自律神経を整える』今井一彰
『舌をみれば病気がわかる 中医学に基づく『舌診』で毎日できる健康セルフチェック』幸井俊高
『あなたの老いは舌から始まる 今日からできる口の中のケアのすべて』菊谷武
『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』西山耕一郎
『誤嚥性肺炎で死にたくなければのど筋トレしなさい』西山耕一郎
『病気が治る鼻うがい健康法 体の不調は慢性上咽頭炎がつくる』堀田修

 ・鼻うがい
 ・鼻うがいには生理食塩水や洗浄液を使う

鼻うがいのやり方

身体革命

 効果はEATには及びませんが、慢性上咽頭炎の改善に有効で、かつ自分でできる方法をいくつかご紹介しましょう。
 なんらかの理由で、上咽頭擦過療法を受けられないという方は、ぜひこれらの方法を試してみてください。いずれも、毎日自宅でできるので、耳鼻科でEATを実施している人の補助療法としてもお勧めです。

 最初にお勧めするのは、【少量の生理食塩水を用いた上咽頭洗浄】です。

 まず座った状態で頭を60度以上後ろに倒すか、上向きに寝た状態で生理食塩水をそれぞれの鼻にスポイトなどの容器を用いて2cc程度入れます。
 鼻から入れた食塩水は口から出してもいいですが、少量なのでそのまま飲み込んでもかまいません。
 起床時と風呂上がりなど、1日に2回は行ってください。

 生理食塩水とは水1000ccに食塩が9g入ったものをいいます。使用する水は残留塩素が含まれている水道水ではなく、蒸留水か精製水が望ましいですが、自販機やコンビニ等で入手できるミネラルウォーターでも可能です。
 水500ccに小さじ3分の2程度の食塩を(正確に0.9%に調整する必要はありません)加えて溶液を作ったら、1回に使用する量が少ないため冷蔵庫に保存しておくとよいでしょう。

【『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修〈ほった・おさむ〉(あさ出版、2018年)】

 洗浄液のお勧めは以下の通りである。

・ミサトールリノローション(アダバイオ社)
・プレフィア(グローバルアイ社)
・MSMプレフィア(グローバルアイ社)

「梅肉エキスが代用になる」とのアマゾンレビューもある。

 カネのかからない生理食塩水から試すのが王道だ。

食事と自律神経の関係/『病気が治る鼻うがい健康法 体の不調は慢性上咽頭炎がつくる』堀田修


 ・食事と自律神経の関係

『つらい不調が続いたら 慢性上咽頭炎を治しなさい』堀田修
鼻うがいのやり方

 一方、食事と自律神経の関係ですが、1食を5分以内で食べ終わるほどの早食いは交感神経優位の状態で、奥歯でよく噛んで十分に時間をかけて食事をする場合は副交感神経優位の状態です。そして、消化吸収時には副交感神経が働いて消化を促進します。ところがリラックスさせる副交感神経も、活発になりすぎるとアレルギー症状をひきおこしますので、バランスが大切といえます。
 食事の内容も影響します。肉食に偏っていると交感神経優位の状態をもたらし、野菜を中心とした食事をしていると副交感神経優位の状態をつくります。なぜなら、肉類はアミノ酸からつくられる酸性食品なので消化時間が短く交感神経を活発にさせ、野菜はアルカリ食品から活性酸素を奪って副交感神経を活発にさせます。
 事実、「アデノイドが腫れている子どもは偏食である」ということは、山崎氏が活躍した1960年代以前からよく知られていたことです。偏食が自律神経に影響して免疫システムを乱れさせるため、慢性上咽頭炎の発症に関係しているだろうことは、十分に考えられます。

【『病気が治る鼻うがい健康法 体の不調は慢性上咽頭炎がつくる』堀田修〈ほった・ほさむ〉(角川マーケティング、2011年)】

 交感神経優位とは昂奮状態である。肉食人種が戦闘的なのもむべなるかな。『つらい不調』よりも少しばかり臨床的な記述が目立つ。ただし堀田は著作が多いので、やはり新刊優先で考えた方がよかろう。


 一見してわかるように上咽頭は体外と体内の接点である(※喉や腸は体外という説もあるが)。言わば体内の入り口で異物を排除しているのが鼻や口であり、もう一歩進んだところに上咽頭が鎮座する。侵入を許してしまうと白血球の出番となるわけだが、時にウイルスや最近は獅子身中の虫となる。

 自律神経失調症は症状が多岐にわたっていてドクターの所見は意外と当てにならない。通院してもよくならない場合は上咽頭炎を疑うべきだろう。

2022-02-09

アリストテレスとキリスト教会/『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史


『進化する星と銀河 太陽系誕生からクェーサーまで』松田卓也、中沢清
『科学と宗教との闘争』ホワイト

 ・『バッハバスターズ』ドン・ドーシー
 ・時間の矢の宇宙論学派
 ・アリストテレスとキリスト教会

『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』松田卓也
・『宇宙を織りなすもの 時間と空間の正体』ブライアン・グリーン

時間論
必読書リスト その三

 宗教、政治的権威から離れ、実利的目的からすら離れた自然現象や天文学の研究は、紀元前6世紀にイオニアの自然哲学者とよばれる一群の思索者達の出現を待たなければならなかった。有名なとこでは自然哲学の祖とされ、万物の根源は水としたターレス、後に南イタリアに移った数学のピタゴラス、原子論を唱えたデモクリトスなどがいる。ターレスは紀元前585年5月28日に小アジアで起こった日食を予言したと伝えられている。またピタゴラスは地球が丸くかつ自転しており、天体の運動は円運動であると唱えた。宗教あるいは政治的権威に支えられることなく、無為無用の哲学者が存在できたのは、オリエント社会にはなかった自由な精神といったものがギリシャのポリス社会にあったからだろう。もっとも奴隷の存在の上にたった自由ではあるが。
 その後プラトン、アリストテレスが現れ、ギリシャの自然哲学は完成されていく。

【『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也〈まつだ・たくや〉、二間瀬敏史〈ふたませ・としふみ〉(丸善フロンティア・サイエンス・シリーズ、1987年)以下同】

「奴隷の存在」をきちんと指摘しているところを見逃してはなるまい。我々日本人だけがストレートに批判できる資格があるのだ。国家という枠組みで見れば、奴隷がいなかったのは日本くらいなものだろう。天皇陛下を中心とする一君万民思想があったればこそである。江戸時代の士農工商は職能に重きを置いた身分であったが、ヨーロッパのような階級社会となることはなかった。

 アリストテレスによると宇宙は有限であり、地球を中心とする九つの球面があり、太陽、月そして火星や木星といった惑星が一つ一つの球面にくっつき、一番遠くの球面に恒星がくっついているという。今日のわれわれから見れば滑稽なモデルであるが、観測技術が未熟で精密な観測ができず、また観測そのものにあまり価値をおかない当時にあってはモデルの論理的な無矛盾性と美しさが最も重要であった。その点からみるならアリストテレスの宇宙論はうまくできている。たとえば、一番外側の球面が有限の距離にあるのは次のように説明できる。地球から見て恒星は24時間で一回りしている。したがって一番外側の球面も24時間で一回りする。その球面の距離が遠ければ遠いほど速度は大きくなっていく。もし無限のかなたにあれば無限大の速度で回らねばならず、無限大などはナンセンスだから宇宙は有限である。その外は無である。それなりに説得力があるではないか。
 このアリストテレスの説が権威となって、それが後にキリスト教会の権威と結び付き、ヨーロッパの科学は16世紀まで続く暗黒時代に入っていくのである。(中略)
 特にアリスタルコスは太陽の大きさが地球より遥かに大きいことを示し、大きな太陽が小さな地球のまわりを回っているのは不自然であることを主張したのであるが、アリストテレスの権威の前に無神論者という汚名まできせられたという。



 あまりにも偉大であったためにアリストテレスの学説は後世の人々の思考を束縛し続けた。中世の暗黒を支えたのが教会の権威とアリストテレスの権威であった。具体的には魔女狩りと帝国主義〈「発見の時代」(Age of Discovery/大航海時代)〉という形で表出する。内外で殺戮を繰り返しながらヨーロッパは世界を征服する。

 アリストテレスとキリスト教会の絶大なる権威も15世紀ルネサンスにいたって衰えていき、まず空間観が天体の精密な観測からくずれていく。一方、時間についてインドでは輪廻の思想があり、一定の周期で無限に繰り返していくと考えられたが、そのような思想はヨーロッパにはなかったようである。

 古代ギリシャにはあったはずだが、キリスト教によって滅ぼされてしまったのだろう。生と死を繰り返す自然の摂理や、周期がある星の運行などを考えれば、輪廻(りんね)こそが自然である。地球を巡る水の循環もまた輪廻といってよい。

 数千年の未来から振り返れば、私はまだ中世暗黒の時代は終わっていないように思う。一神教がなくならない限りは。