2019-02-24

ウォーキングの極意/『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成


『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『だれでも「達人」になれる! ゆる体操の極意』高岡英夫
『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
『「体幹」ウォーキング』金哲彦

 ・ウォーキングの極意

『あらゆる不調が解決する 最高の歩き方』園原健弘
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』みやすのんき
ナンバ歩きと古の歩術
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』小田伸午
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』久野譜也
『人生、ゆるむが勝ち』高岡英夫
『究極の身体(からだ)』高岡英夫

身体革命

 私は2004年に、『高岡英夫の歩き革命』(弊社刊)を舞台に、人の理想の歩きとして、「ゆるウォーク」を提示した。
 ゆるウォークとは、体をゆるめて、コリやムダな力を取り除き、もって生まれた自然の力を取り戻し、快適に歩くことである。つまり、この本は、観念的に正しいとされる歩き方に人の体をはめ込むという、これまでなされてきたすべての歩き方の理論と指導に、警鐘を鳴らす本でもあった。
 そして「この本は、とても奥の深い内容を、懇切丁寧に、わかりやすく説いている。これこそ、快適な歩きをものにするためのバイブルだ」との声を、数多くいただいた。
 しかし、ゆるウォークを、どこまでも正確に理解していただきたいという思いが強すぎたのか、その内容は少々ヘビーなものになってしまった。そこで、このヘビーな本を手にした多く(ママ)方々から、今度は、もっと気軽に取り組めるやさしい本を出版してほしいというご希望をいただき、本書は生まれた。

【『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬〈こまつ・みふゆ〉構成(学習研究社、2006年)】

 臆面もなく自画自賛を綴(つづ)る神経が図太い。病的といってもいいほどだ。自己愛性人格障害か、もしくは自分を高く売りつけようとする詐欺師のどちらかだろう。『高岡英夫の歩き革命』の焼き直しにすらなっていない著作で、半分ほどの量を費やしてゆる体操を紹介している。かえって手の内を隠すような体裁となっているのが疑問である。2008年には同じく学研から『楽しくなるゆるウォーク DVD付き』を刊行しており、著者と出版社にとっては「一粒で三度おいしい」マルチ出版となっている。

 理想の歩きでは、脚に重みが感じられるものの、軽く動くようになる。脚に重みを感じるというのは、脚の脱力が進んだ証拠。軽く感じるのは、股関節のまわりの筋肉がゆるんできたということで、大腿骨がパッとスムーズに前に振り出されるようになってきた証拠である。
 さらに股関節まわりの筋肉の脱力が進むと、腸腰筋(ちょうようきん)が使われ始めてくる。腸腰筋(下図)は、股関節と骨盤及び背骨をつなぎ、大腿骨をポンと前に振り出す働きのある筋肉なので、さらに脚は軽く感じられるようになる。

【『高岡英夫の歩き革命』高岡英夫:小松美冬〈こまつ・みふゆ〉構成(学習研究社、2004年)】


 人品が卑(いや)しくとも理論が優(すぐ)れているのは確かだ。ただし体に関することは本書に限らず鵜呑みにするのは危険である。飽くまでも参考にしながら自分自身で創造的な手法を編み出すのが正しい。体も心も千差万別なのだから。注意深く体の声に耳を傾けることだ。

 腸腰筋を使うというのは要は振り子の原理である。もともとウォーキングに関心はあったのだが、近所のおばあさんの歩行訓練を手伝うことになり真剣の度合いが一気に増した。歩けない人が歩けるようになる課程に私は歩行の合理性を見出した。

 次に「Lesson 4 のおもなワーク」を紹介する。


 歩行障害があるとどうしても足先に意識が向かう。これが躓(つまづ)きの原因となる。介護の場合はまず「膝を高く上げる」ことを促し、少しずつ腿(もも)から腸腰筋を意識させるのがいいだろう。腸腰筋を使うには膝を曲げずに歩いてみればよい。

 続いてウォーキングに関する私の試行錯誤をいくつか紹介しよう。

 








「大股で歩くことにまったく意味はない」(田中尚喜)という。また「時速8kmを超えたら、歩いた方がエネルギー消費量が大きく」なるそうだ(園原健弘)。とすれば高速小股歩行は最強の運動となる。

 色々と調べているうちに踵(かかと)への衝撃がダメージを蓄積することがわかってきた。クリストファー・マクドゥーガル(近藤隆文訳、NHK出版、2010年)のベストセラー『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族"』でヒール・ストライク(踵着地)走法が怪我の要因となることが広く認知された。またララムリ(タラフマラ族)のサンダル(ワラーチ)ランニングが世界のランナーに衝撃を与えた。








 フォアフット走法とミッドフット走法については判断するほどの材料を私は持たないが、足の形状が縦長であることを踏まえるとミッドフットに動力性の軍配が上がると思われる(正しくは「ミッドフット」 - Great Life)。

 検索したところ『「つま先歩き」で腰の痛みが消える』(宮崎義憲)との記事を見つけた。試しに5kmほど歩いてみた。何と寝る前から筋肉痛が出た。ふくらはぎから太腿に至るまで足全体が鈍い痛みに包まれた。

 実際にやってみると直ぐにわかることだがスニーカーだと歩きにくい。ギョサンも踵部分が高いので向いていない。ソール(靴底)は薄い方がよさそうだ、と気づいた瞬間に地下足袋が思い浮かんだ。案の定同じ考えの人がいた。

地下足袋ウォーキング ~正しい足運びを身に付けよう 『それいいな!』の山道具

 ワラーチの作成もそれほど難しくはなさそうだ(コルクマットワラーチがすごすぎるので作り方教えます! - 裸足と瞑想の日々)。また足型をファックスやメールで送るオーダーサービスもある(2700円:ランニングサンダル・ワラーチを作ります!! - クローズアップ源内)。

 では今日現在でのウォーキングの極意を開陳しよう。家の中を歩く時の動きをよくよく吟味すれば踵をつけていないことがわかる(踵をついている人はよほど運動神経が鈍いか、体のバランスが狂っている)。裸足の動きを再現するためにはソールの薄い履物(←シューズとは書かないぞ)が望ましい。イメージとしては足袋(たび)や草鞋(わらじ)である。

 爪先ウォーキングの肝は指の付け根部分を後ろから前に向かって半回転運動をさせるところにある。現実には土踏まずから着地することはできないわけだから、これがミッドフット歩行ということになる。

 で、ここからが問題なのだが、腸腰筋を使って脚を動かすと爪先から着地するのが極めて難しい。慣れないうちは小股で爪先を内側へ向けると歩きやすい。そう、和服姿の女性の歩き方だ。

 これをマスターすれば「歩くスローステップ運動」が完成する。筋肉に負荷が掛かる分だけ関節や骨のダメージは軽減されるはずだ。

 ヒトと猿とを分けるのは二足歩行である。だったらきちんと歩きたいものである。



疲れない、きれいな歩き方は、腰から歩く、フラットに着地する | 笛吹きおじさんの、中高年が健康で快適に生きるための情報
その2「大転子を引き上げるイメージ」|にぎりこぷし|note
X脚、O脚の子を救う 歩き方&立ち方 | プレジデントオンライン

2019-02-22

腕は後ろに振る/『「体幹」ウォーキング』金哲彦


『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博

 ・腕は後ろに振る

『高岡英夫の歩き革命』、『高岡英夫のゆるウォーク 自然の力を呼び戻す』高岡英夫:小松美冬構成
『すごい!ナンバ歩き 歩くほど健康になる』矢野龍彦
『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史

 黄色人種である日本人は、骨格的に大きなハンディがあります。
 黒人選手の骨格で特徴的なのは、骨盤がしっかり前傾していることです。そのため、骨盤が動きやすく、骨盤を動かすインナーマッスルの腸腰筋も非常に発達しています。つまり、生まれつき体幹が機能しやすいのです。黒人アスリートの、パワフルでダイナミックなフォームは、骨格からくる体幹の力によるものなのです。
 これに対し、日本人をはじめとする黄色人種は、骨盤がもともと後継ぎみ。そのため、腸腰筋やお尻の筋肉が発達しにくく、油断すると体幹がすぐに眠った状態になってしまいます。黄色人種の私たちが黒人に対抗するには、トレーニングによって強靭な体幹を作り上げることが必須条件なのです。

【『「体幹」ウォーキング』金哲彦〈きん・てつひこ〉(講談社、2010年)】

 実に危うい記述である。人種の違いを指摘することすら差別と受け止められかねない時代情況を思えば編集が甘すぎる。著者の視野も狭い。「骨格的に大きなハンディ」としているが、日本人の骨盤は稲作や山歩き(峠越え)に応じて進化したものと私は考える。江戸時代は「男十里、女九里」と言われた。男性なら40km、女性でも36km程度歩くのが普通だった。健脚の飛脚であれば100km以上の距離を移動したという。

 最近の若者を見ると日本人の脚もずいぶんと長くなった。床から椅子に坐るようになった生活スタイルの変化が影響しているのだろう。胴長・短足・眼鏡・出っ歯・首からカメラという日本人のイメージは既に過去のものだ。

 ウォーキングで大きく手を振ることには意味がないと書かれている。肩甲骨を動かすために腕は後ろに振るのが基本で、「肩甲骨に羽がある」というイメージを持つ。これは読んでから直ぐに実践した。

2019-02-21

「聖書とガス室」/『人間について 私の見聞と反省』竹山道雄


『竹山道雄と昭和の時代』平川祐弘
『昭和の精神史』竹山道雄
『見て,感じて,考える』竹山道雄
『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』竹山道雄:平川祐弘編
『剣と十字架 ドイツの旅より』竹山道雄
『ビルマの竪琴』竹山道雄

 ・「聖書とガス室」

『竹山道雄評論集 乱世の中から』竹山道雄
『みじかい命』竹山道雄
『歴史的意識について』竹山道雄
『主役としての近代 竹山道雄セレクションIV』竹山道雄:平川祐弘編

   I

 聖書とガス室
 キリスト教とユダヤ人問題

   II

 ペンクラブの問題
 『竹山道雄の非論理』
 ものの考え方について

   III

 ソウルを訪れて
 高野山にて
 四国にて
 西の果の島

   IV

 死について
 人間について

 あとがき

【『人間について 私の見聞と反省』竹山道雄(新潮社、1966年)以下同】

 初出誌については「あとがき」に記載されている。

(ゴッドを神と訳したことから、たいへんな誤解や混同がおこったので、キリスト教の神をゴッドと書くことにする。ゴッドと古事記にでてくる神とは、まったく別物である。また、教皇とか回勅とかいうのはいい訳語ではなく、これは天皇を擬似絶対者としたころの政治的風潮のまちがった絶対者観をあてはめたのだろう。さらに、神父というのも奇妙な言葉で、自分は神なる父であると名のる人があるのはおかしい。牧師というのはひじょうにいい言葉だと思うが)(「聖書とガス室」/『自由』昭和38年7月)

「聖書とガス室」は本書以外だと、『竹山道雄著作集5 剣と十字架』(福武書店、1983年)と『西洋一神教の世界 竹山道雄セレクションII』平川祐弘〈ひらかわ・すけひろ〉編(藤原書店、2016年)にも収められている。

 私が竹山道雄を敬愛してやまないのは文学者でありながらもキリスト教を鋭く見据えたその眼差しにある。文明史的な批判は「西洋に対する極東からの異議申し立て」といっても過言ではない。

 昭和38年(1963年)7月は私が生まれた月である。「7月」と表記されているが多分「7月号」なのだろう。内容もさることながら私を祝福してくれているような錯覚に陥る。

 カミの語源は「隠れ身」であるという(『性愛術の本 房中術と秘密のヨーガ』2006年)。漢字の「神」はツクりの「申」が稲妻を表す。闇を切り裂く雷光を神の威力と見ることは我々にとっても自然だ。「申」が「もうす」という意味に変わったため、お供えを置く高い台を表す「示」(示偏〈しめすへん〉)を添えて「神」という文字ができた(第3回 自然に宿る神(1) | 親子で学ぼう!漢字の成り立ち)。

 キリスト教は砂漠から生まれたが、日本人は豊かな自然に恵まれている。彼らは過酷な環境を憎み支配の対象としたが、我々は大自然と共生しながら大地と海の恵みに感謝を捧げた。一神教と多神教を分けるのは環境要因なのだろう。

キリスト教における訳語としての「神」

 フランシスコ・ザビエルは当初、ゴッドを「大日」と約し、その後「デウス」に変えた(日本のカトリックにおけるデウス)。「キリスト教は、聖書に基づく人間観、世界観、実在観を教義として整備していくために、主にプラトンとアリストテレスの哲学を摂取して利用した 」(キリスト教54~プラトンとアリストテレス - ほそかわ・かずひこの BLOG)。それゆえ「大日」との訳はそれほど見当違いであったわけではない。大日とは仏教におけるイデア思想であろう。

 日本人からすれば一神教(=アブラハムの宗教)は異形の宗教である。

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2019-02-20

ジョン・ガードナー、徳岡孝夫、ミヒャエル・ネールス


裏切りのノストラダムス』ジョン・ガードナー:後藤安彦〈ごとう・やすひこ〉訳(創元推理文庫、1981年)/数十年ぶりに再読。訳文に少々乱れあり。ま、責めは出版社の校正が負うべきだろう。ドイツがフランスを陥落した後、フランス人女性がドイツ兵と性的関係(具体的な記述はない)を結ぶことを「この種の『協力』」と書いている(180ページ)。またドイツが非戦闘員を殺傷する場面あり。フィクションだから嘘と考えるのは短絡的だ。こうした記述を受け入れるヨーロッパの世相を理解すべきだろう。

「戦争屋」の見た平和日本』徳岡孝夫〈とくおか・たかお〉(文藝春秋、1991年)/著者は三島由紀夫が最後に連絡を取った記者の一人。毎日新聞、サンデー毎日の元記者。「『ビルマの竪琴』と朝日新聞の戦争観」(313ページ)。1985年7月に書かれたもの。米軍の原子力空母エンタープライズの佐世保入港に賛成した竹山道雄を朝日新聞が叩きまくった出来事の概要がわかる。投書も紹介している。嘘と捏造(ねつぞう)を繰り返し、言論弾圧をしてきたのが朝日新聞の歴史といってよい。

アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス:鳥取絹子〈とっとり・きぬこ〉訳(筑摩書房、2018年)/翻訳がよくスリリングな内容だ。記憶を司る海馬は死ぬまで成長し続けるという。アルツハイマー病が海馬を破壊する原因は文明にありとしている。「食べ物、運動、知的活動、社会との接触」における欠乏を補うことで初期アルツハイマーは改善できる。