2020-07-08

頭隠して尻隠さず/『『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』馬場公彦


『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一

 ・頭隠して尻隠さず
 ・進歩的文化人の亡霊を甦(よみがえ)らせる

『竹山道雄と昭和の時代』平川祐弘
『ビルマの竪琴』竹山道雄

 だが、長く続いた冷戦は終わった。竹山が身を挺して告発した東ベルリン住民への人権抑圧や、台湾に住む大陸中国の亡命者からの共産中国批判の聞き書きには、たとえそれがのちに事実であったと判明しても、情報としての価値はもはや皆無に近い。となると、『竪琴』の作家ということ以外、消去法でかろうじて残るのは、失われていく日本の伝統文化を愛惜し擁護しようとした、日本主義的ディレッタントということにとどまるかもしれない。
『竪琴』の命運も安泰とは言えないようだ。(中略)最近の『竪琴』を取り上げた戦後世代による評論群からうかがえることは、『竪琴』はアジアを舞台として近代小説としても、日本の戦争に題材をとった戦争文学としても、取り扱い注意品目に指定されつつあるということだ。
 
【『『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』馬場公彦〈ばば・きみひこ〉(法政大学出版局、2004年)以下同】

 馬場は編集者のようだ。こなれた文章で論理的なのだが直ぐに私の鼻は異臭を嗅ぎ取った。読むほどに嫌な臭いを放っている。池上彰佐藤優と同じ体臭がする。肝心な情報は伏せておいて、都合のいい事実だけを組み合わせて我が田に水を引くという寸法だ。左翼の常套手段は不作為という作為だ。

 馬場の意図は竹山を美術評論家に留(とど)め置くことなのだろう。刊行された2004年という時を思えば竹山道雄は既に「忘れられた作家」であった。そこそこ本を読んできた私も竹山の著書は一冊も読んでいなかった。『ビルマの竪琴』の名場面は知っていたが食指は動かなかった。それでもかような本を出す目的はネトウヨブームに釘を刺し、竹山の著書を禁書扱いしたかったのだろう。そうでもなければ気取った悪口をこれほど延々と綴ることは難しいだろう。

 馬場は上記テキストで竹山の共産主義批判を正面からは取り上げずに時事評論の印象づけを行っている。思わず舌を巻く狡猾(こうかつ)さである。更に返す刀で『ビルマの竪琴』のストーリーは完全に無視した上で誤った時代考証を指摘する。馬場は本書の中で繰り返し竹山を持ち上げてから落とすことを繰り返す。竹山道雄のようなきらめく英知は一つもないし、時流に抵抗する精神も見受けられない。それこそ「皆無」である。

 最近の『竪琴』を取り上げた戦後世代による評論群からうかがえることは、『竪琴』はアジアを舞台として近代小説としても、日本の戦争に題材をとった戦争文学としても、取り扱い注意品目に指定されつつあるということだ。

 本書を読むきっかけとなったのは“志村五郎「竹山を今日論ずる人がないことを私は惜しむ」/『竹山道雄と昭和の時代』平川祐弘”で紹介した“馬場公彦著「『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史」2004年法政大学出版局刊・3の2 | 知的漫遊紀行 - 楽天ブログ”による。米原子力空母エンタープライズの寄港に関する詳細を知りたかった。ところが馬場が行っているのは朝日新聞と全く同じことなのだ。悪い冗談としか思えない。編集者は創作者ではない。他人をあげつらったり、自分の知識をひけらかしたりするだけの気楽な商売なのだろう。

 本書が平川祐弘〈ひらかわ・すけひろ〉の心に火を点(とも)し、『竹山道雄と昭和の時代』(2013年)や新たな全集『竹山道雄セレクション』(全4冊、藤原書店、2016-17年)の推進力となったことは間違いあるまい。馬場の歯ぎしりが聞こえてきそうだ。

 東ドイツや中国といった共産圏を擁護した馬場だが、現在の香港弾圧やウイグル人虐殺をどう見ているのだろうか? 竹山道雄が終生にわたってノーを突きつけたのは全体主義であった。オールドリベラリズムの所以(ゆえん)である。「全ての日本人が今こそ竹山道雄を読むべきだ」と私は声を大にして言いたい。

2020-07-07

抜けない指輪を簡単に外す方法


 こういうのは万一に備えて覚えておくべきだ。

2020-07-06

日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)/『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一


・『書斎のポ・ト・フ』開高健、谷沢永一、向井敏
・『紙つぶて(全) 谷沢永一書評コラム』谷沢永一
『「悪魔祓い」の戦後史 進歩的文化人の言論と責任』稲垣武
『こんな日本に誰がした 戦後民主主義の代表者・大江健三郎への告発状』谷沢永一

 ・進歩的文化人の正体は売国奴
 ・日本罪悪論の海外宣伝マン・鶴見俊輔への告発状 「ソ連はすべて善、日本はすべて悪」の扇動者(デマゴーグ)
 ・日本の伝統の徹底的な否定論者・竹内好(たけうち・よしみ)への告発状 その正体は、北京政府の忠実な代理人(エージェント)

『誰が国賊か 今、「エリートの罪」を裁くとき』谷沢永一、渡部昇一
『いま沖縄で起きている大変なこと 中国による「沖縄のクリミア化」が始まる』惠隆之介
『北海道が危ない!』砂澤陣
『これでも公共放送かNHK! 君たちに受信料徴収の資格などない』小山和伸
『ちょっと待て!!自治基本条例 まだまだ危険、よく考えよう』村田春樹
『自治労の正体』森口朗
『戦後教育で失われたもの』森口朗
『日教組』森口朗
『左翼老人』森口朗
・『売国保守』森口朗
『愛国左派宣言』森口朗

 ところで、近代シナ文学の研究者に竹内好(よしみ)という魁偉(かいい)な人物がいました。この人はシナ学を志したくせに、肝心なシナの古典については無学であり、無関心でしたが、それはともかくとして、自分の専攻である近代シナ文学に執着するあまり、近代シナが格別に秀でた国であると信じるようになりました。これまた一向に珍しくもない、ありふれた自然な経過です。
 ところが竹内好の場合は、近代現代のシナを崇敬し高く持ちあげるにとどまらないで、現代シナを尊重し称賛する思い入れを梃(てこ)に用いて、ひたすら、わが国を罵倒する放言に熱意を燃やしました。なにがなんでも、常に悉(ことごと)くシナは正しく清らかであり、そのご立派な尊敬すべきシナに較べて、なにがなんでも、すべて、必ず日本は劣っており間違っている、という結論が一律に導きだされました。
 その生涯を通じて竹内好は、日本に対して肯定的な評価を下したことがなく、彼にとって日本はあらゆる面において否定と非難の対象にしかすぎませんでした。反日的日本人という言葉ができるより遙(はる)か遙か昔、半世紀以上も前から、竹内好は筋金入りの反日的日本人でありました。

【『悪魔の思想 「進歩的文化人」という名の国賊12人』谷沢永一〈たにざわ・えいいち〉(クレスト社、1996年/改題『反日的日本人の思想 国民を誤導した12人への告発状』PHP文庫、1999年/改題『自虐史観もうやめたい! 反日的日本人への告発状』ワック、2005年)】

 私はつくづくこの12人の著作を読んでこなかったことを感謝した。加藤周一の「夕陽妄語」(せきようもうご/朝日新聞連載)に目を通した程度である。とにかく掴みどころのない文章で後に谷沢と向井敏が腐していたのを読んで溜飲を下げた憶えがある。丸山眞男の『現代政治の思想と行動』を読まねばと思ったのは30代になった頃だ。マルティン・ニーメラー牧師の言葉が引用された「現代における人間と政治」は避けて通れないと感じた。が、ついぞ読む機会がなかった。丸山については進歩的文化人の代表であることは動かないが、小室直樹が師事しており政治学者としては優れた見識の持ち主なのだろう。最後は学生運動に愛想を尽かした

 他人の悪口を読むのは後味の悪いものである。感情を一旦突き放して見つめる冷静さを欠くと醜悪な文章になりやすい。「この人はシナ学を志したくせに」は書き過ぎだ。抑制が利いていない。それでも本書が教科書本であるのは確かで、彼らの正体を知らずに著書と親しんでいる人も多いことと思われる。

 竹内好の本は何冊か持っていた。あまり記憶にないので多分売れたのだろう。悪い印象は持っていなかったので本書を読んで吃驚仰天(びっくりぎょうてん)した。中国人は客をもてなすのが巧い。たとえそれがカネや女であったとしても、誰に何を与えればどう動くかをきちんと読んでいる。毛沢東や周恩来が生き抜いてきた政争は日本の比ではない。周恩来の養女・孫維世〈そん・いせい〉は留置所で惨殺されている。

 文化大革命時代には、女優としての名声の高さと毛沢東との男女関係から江青の嫉妬を買い、迫害を受けた。孫維世は養父である周恩来が署名した逮捕状を以って、北京公安局の留置場に送られ、1968年10月14日に獄中で死亡した。遺体は一対の手枷と足枷のみ身に付けた全裸の状態であった。一説には江青が刑事犯たちに孫維世の衣服を剥ぎ取らせて輪姦させ、輪姦に参加した受刑者は減刑を受けたと言う。また、遺体の頭頂部には一本の長い釘が打ち込まれていたのが見つかった。これらの状況から検死を要求した周恩来に対し、「遺体はとうに焼却された」という回答のみがなされた。

Wikipedia

 周恩来には表の顔と裏の顔があったが、そうでもしなければとっくに失脚していたことだろう。

 アメリカと中国は、表面的には対立していても裏の情報世界ではもともとツーカーなんです。そもそもCIAの前身OSS時代には、長官ドノバンの命令でOSS要員が延安の共産党根拠地に出向いて、対日抗戦を支援していた。60年代の中ソ対立時代も米中はあらゆる場面で結託してソ連に対抗していたし、79年のソ連アフガニスタン侵攻で、ムジャヒディンを支援しタリバン政権を後押ししたのも、米中の情報機関です。スパイマスター周恩来によって育まれた中国共産党の情報機関、中央委員会調査部は胡耀邦総書記の時代、公安部の一部と合併、国家安全部として、現在では、かつてのソ連のKGBをしのぐ巨大組織になっています。

【『この国を支配/管理する者たち 諜報から見た闇の権力』中丸薫、菅沼光弘(徳間書店、2006年)】

 中国の手に掛かれば政治家はもとより作家・ジャーナリスト・学者などはイチコロだろう。子供に飴を与えるようなものだ。中国へ渡ると親中派になって帰国する人が多いのも当然だ。細君を伴わない政治家は確実に女を充てがわれていると見てよい。

 左翼は国家の伝統を破壊し漂白した後に社会主義の樹立を目論む。人権・平等・ジェンダーといった綺麗事に騙されてはならない。彼らは単なる破壊者なのだ。

2020-07-05

ユーカリ・ムーンラグーンの芽が出た


ユーカリ・ムーンラグーンの種蒔き

 ・ユーカリ・ムーンラグーンの芽が出た

 6月26日に蒔いた種が昨日やっと芽を出した。今日見てみると4本から12本に増えていた。それにしても恐ろしく細い。明らかに糸よりも細い。種が細かく挽(ひ)いた胡椒みたいな大きさだったので納得できる。




 ユーカリの種類を選ぶ際は耐寒温度に留意する必要がある。因みにムーンラグーンは-7℃である。日本の気候に合っているといわれるグニーは-14℃だ。

 植物を育てると「待つ」ことを教えられる。子育てと全く同じだ。こちらにできることは環境を整えることだ。ただし手を加え過ぎるとひ弱になってしまう。水やり、追肥、植え替えにはタイミングがある。子育ても時機を誤れば抑圧する結果になる。

 そう考えると、やはり自然の営みに畏敬の念が湧いてくる。太陽との距離を一定に保ちながら、グルグル自転するだけでこれほど多用な生物を育んでいるのだから。