・『病気の9割は歩くだけで治る! 歩行が人生を変える29の理由 簡単、無料で医者いらず』長尾和宏
・『病気の9割は歩くだけで治る!PART2 体と心の病に効く最強の治療法』長尾和宏
・『ウォーキングの科学 10歳若返る、本当に効果的な歩き方』能勢博
・『本当のナンバ 常歩(なみあし)』木寺英史
・『健康で長生きしたけりゃ、膝は伸ばさず歩きなさい。』木寺英史
・『常歩(なみあし)式スポーツ上達法』常歩研究会編、小田伸午、木寺英史、小山田良治、河原敏男、森田英二
・『トップアスリートに伝授した 勝利を呼び込む身体感覚の磨きかた』小山田良治、小田伸午
・『間違いだらけのウォーキング 歩き方を変えれば痛みがとれる』木寺英史
・『ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング』田中宏暁
・『サピエンス異変 新たな時代「人新世」の衝撃』ヴァイバー・クリガン=リード
・『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン
・『アルツハイマー病は治る 早期から始める認知症治療』ミヒャエル・ネールス
・『脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方』ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン
・運動によって脳は物理的に変えられる
・『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット
・『トレイルズ 「道」と歩くことの哲学』ロバート・ムーア
・必読書リスト その二
だが何より大きな発見は、2つのグループがまったく異なる結果を示したことである。
ウォーキングを1年間続けた被験者たちは健康になったばかりでなく、脳の働きも改善していた。MRIの画像は、脳葉の連携、とくに側頭葉と前頭葉、また側頭葉と後頭葉の連携が強化されたことを示していた。
簡単にいえば、脳の各領域が互いにより協調しながら働いていたということだ。脳全体の働きが1年前より向上していたのである。身体を活発に動かしたこと、つまり【ウォーキングが、何らかの作用によって脳内の結合パターンによい影響を与えた】のだ。
【『一流の頭脳』アンダース・ハンセン:御舩由美子〈みふね・ゆみこ〉訳(サンマーク出版、2018年)】
読みやすい上に一分の隙(すき)もない良書である。説明能力の高さそのものがスタイルを確立している。科学が絶対なのではなく、科学的解釈に説得力があるということがよくわかった。
記憶力や認知機能に関しては筋トレよりも有酸素運動の方が効果があり、ウォーキングよりもランニングが優(まさ)るとのこと。要は「狩猟採集生活に還れ」ということだ。1万年前と同じ狩猟採集生活を送る東アフリカ・タンザニアのハッザ族は一日に8~10km(1万1000~1万4000歩)歩いている。これが一つの目安となろう。
収穫はそれだけではなかった。おそらく、こちらのほうが重要である。
それは定期的なウォーキングが、実生活にもプラスの効果をおよぼす脳の変化をもたらしたことだ。心理テストの結果、「実行制御」と呼ばれる認知機能(自発的に行動する、計画を立てる、注意力を制御するといった重要な機能)が、ウォーキングのグループにおいて向上していたことがわかったのである。
要するに、【身体を活発に動かした人の脳は機能が向上し、加齢による悪影響が抑制され、むしろ脳が若返る】と判明したのだ。
ここで一旦、これまで読んだことを振り返り、もう一度じっくり考えてほしい。
ランニングで体力がつく、あるいはウェイトトレーニングで筋肉が増強できることは知っているはずだ。それと同じく、【運動によって脳は物理的に変えられる】。
脳の変化は、現代の医療技術で測定することができるので、そのことは確認済みだ。脳を変えれば、認知機能を最大限まで高められることもわかっている。
まずは買い物を狩猟と捉え直すことを提案したい。一日三食摂っている人であれば三度買い物に行ってはどうだろう? 休日であれば遠くのスーパーに出向くのもいいだろう。勤め人であれば一つ手前の駅やバス停で降りて歩くことを心掛ける。もちろんエスカレーターやエレベーターは利用せず階段を上る。それだけでどんな薬やサプリメントよりも効果がある。
ではなぜ、そんな素晴らしいことが広まらないのだろうか? もちろんカネだ。製薬会社やメーカーは儲からないため手をつけない。そして驚くべきことに消費者側もまた対価を支払わないものに対して不信感を抱いている側面がある。つまりマネーという手段を経なければコミュニケーションが成立しなくなっているのだろう。消費者はカネを支払うことで満足感を得ているのだ。
広く知られたプラセーボ効果に「高価な薬は100%効く」というのがある。偽薬であっても高いカネを支払えば、霊験(れいげん)あらたかな妙薬と化すのだ。金銭に対する我々の信頼は既に信仰の高みにまで至っている。